EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

この前選んだ非英語圏洋楽30選小レビュー

ニッチな需要にお応えして

英語嫌いのエンジニアのための技術英語

英語嫌いのエンジニアのための技術英語

  • 作者:坂東 大輔
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: 単行本
 

 

 皆さんは憶えているだろうか。

あの名企画、#みんなが選ぶ邦楽オールタイムベストアルバム100_In2020を。

 偶然みのミュージックが同時期に同様のランキングをしていたこともあり、音楽好きの間で空前のランキングブームが勃発、

それは映画好きなど他界隈にまで波及するほどであった。

 

それから約9か月。 

新たな刺客が現れた。

#非英語圏オールタイムベストである。

 

以前の洋楽オールタイムベストでは「どうせ英米だけだろ...」と無視していた人たちもこれには興味炸裂。

 メタルファン・ポストロックファン・プログレファン・レゲエファンなど各界の様々な人が集いつつある。

ちょっと怖いものの、僕も彼らの中に飛び込んでみることにした。

 

しかし、ここで「シガーロスやArcaも行ける、よく考えればビョークマイブラ、ボブマーリー、クラフトワークも非英語圏じゃんwwwww」とかやるのはつまらなすぎる。半年ROMれ

そのため今回は絶対に普通にやったら洋楽名盤選にはまず入らないようなアルバム*1を中心に選んだ。

そういうのの中で好きな奴を30枚ということでかなり骨が折れたものの、なんとか選べたのでご紹介します。

 

30.Moving Waves/Focus

Moving Waves

Moving Waves

  • アーティスト:Focus
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD
 

まずは小手調べ。オランダプログレ

ヨーデルっぽいボーカルのハードロック」 ということでインパクト抜群であり、

代表曲Hocus Pocusは度々Twitterでバズっていた気がする。

それだけではなくユーロプログレらしい叙情的な曲もたくさん入っており、単なるボーカル一発芸バンドではない。

普通のプログレ名盤選でも絶対に上の方にくるアルバムの内の一つであるのだが、

オランダが普通に入ってくるあたりプログレファンの国際力が良く分かる。

今回のランキングはプログレファンの面目躍如といった感じだろうね。

 

29.Days Of Hunger/Geva Alon

Days of Hunger

Days of Hunger

  • アーティスト:Alon,Geva
  • 発売日: 2006/11/07
  • メディア: CD
 

イスラエルのSSW。多分今回の30枚の内で一番知名度が低いかと思われる。

なんでこんなのを入れたのかと言うと、確か僕が買った一番最初の非西欧圏CDだからだ。

何かのCMにこの中の曲Sunny Dayが使われており、気になって買った。

完全に思い入れのみで入れたのだが、許して下しい。個人的名盤なんてそんなもんでしょ

この人はちょっとカントリーっぽい歌い方の人物であり、当時ウィリー・ネルソンのStardustをよく聴いていたので気に入ったのかもしれない。

スターダスト(期間生産限定盤)

スターダスト(期間生産限定盤)

 

 そういうわけでAORファンにはもちろんおススメ。ディランやニール・ヤングとかのフォークが好きな方にもなかなかウケるんじゃなかろうか。

 

28.Hea Hoa Hoa Hoa Hea Hoa Hoa/Feeling B

www.discogs.com

旧東独のパンク。

音楽が自由にできない状況下で音楽をしようと思った偉人である。

詳しくは過去記事をどうぞ。

あと、ここで書いたせいではないと思うがAmazonにわずかにあった中古在庫が切れたようだ。

欲しい方はDiscogsで買おう。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

27.Show Me Love/Linus’ Blanket

韓国のポスト渋谷系バンド。

Advantage Lucyのコピバンから始まっているようだが、

フリッパーズPizzicato Fiveの合いの子みたいな最高の音楽性をしている。

こちらも詳しくは過去記事をどうぞ。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

26.Sheshet/Sheshet

www.discogs.com

イスラエルプログレそうプログレなのだが音楽性はかな~りソフト

大体70年代シティポップや渋谷系と同じくらいの優しさである。

camel等カンタベリー系の優しいプログレ曲と比しても柔らかく、もはやクロスオーバージャズなんじゃね?とも思えてしまう。いやCTIでももっと尖った音しているか?

ただ、ちょこちょこ挟まる変拍子やメロのモード感からプログレですと主張している気がするのも確か。

突然変異的に出てきたラウンジ・プログレである。

可愛いプログレ、というのは世界広しといえどもこのくらいであろう。

 

25.CQ/The Outsiders

CQ by The Outsiders (2011-04-05)

CQ by The Outsiders (2011-04-05)

 

オランダのガレージロック名盤。その手のファンにとってはなじみ深いバンドのはず。

 あまりこの手のガレージ・サイケを僕は聴かないのだが、このデステイル感あふれるジャケに惹かれて買ってみたのだった。

所謂ガレージサウンドの曲もあるのだが、澄んだ空気感の曲があったり偉く前衛なモノがあったりと色彩豊か。

言うなればやや乱暴になったヴェルベッツ

僕のようなガレージサイケにあまり馴染みの無い人にもおすすめできるアルバム。

ただちょっと長いのが難点。それさえなければもっと高位につけていたハズ。

 

24.Clube Da Esquina/Milton Nascimento

Clube Da Esquina

Clube Da Esquina

 

MPB、特にミナス派を作り上げたの名盤の一つ。

普通のロックファンでも「街角クラブ」の名でよく知っているだろう名盤だね。

ここに出てくる人たちにはA&R界隈の人が多いのでクロスオーバーのファンにもおススメ。

ただミナス派よろしくこれはブラジル音楽には珍しいフォルクローレの影響を受けている盤であるため、内省的かつ土着的な香りがする上サンバやボッサ感は少ない。

なので一般的なブラジル音楽のイメージで聴くとちょっとビックリするかもしれない。

でもやっぱりブラジル音楽に共通してある「あの空気感」はこのアルバムにも通して感じられる。夏の昼下がりに聴きたい。

名曲ぞろいのアルバムであり、後々ジョビンやヴェローゾに収録曲がカバーされることになる。

 

23. Sei Note in Logica (six notes)/Roberto Cacciapaglia

Sei Note in Logica (Six Notes) (Digitally Remastered at Abbey Road Studios, London 2000)

Sei Note in Logica (Six Notes) (Digitally Remastered at Abbey Road Studios, London 2000)

  • 発売日: 2010/10/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 イタリアのミニマルミュージック。

ミニマルの傑作にライヒの「18人の音楽家~」があるが、それと比するとアタック感より音の伸びに注目しているのが特徴。

結果として欧州田舎町の空気感が不思議と醸し出され、電子音もいるのにより緩やかでオーガニックな音楽性になっている。ポストロックファンにはイチオシ!

イタリアの良いところはこういう地中海付近の空気感を持った前衛音楽の快作がいくつもあるところである。どうしてだろう。

ちなみに門脇さんのニューエイジ入門のプレイリストにも入っており、なるほど環境音楽としての見方もあったのか~と勉強になった。

 

22.G.L.P.1002/I Marc4

www.discogs.com

ここまでで既に皆さんなんとなく分かったと思うが、僕はイタリアとブラジルの音楽が好きである。

そしてこれはボサノヴァを得意としているイタリアのジャズバンド。故に今回選ばないわけがないね。

この人たちのまず突っ込みたいところは全アルバムのジャケデザインと名前が同じである点である。

そのためこのように型番によって区別するほかないという妙な事態になっている。

さらに彼らは全アルバムにおいて高度なラウンジジャズをやっているので甲乙つけがたいのだが、僕は一番最初に聴いたこともあってこれかな。

ちなみに一般的にはG.L.P.1004が名盤とされているようだ。だからなんだよその呼び方。

 

21. Tropicalia/V.A.

Ou Panis Et Circencis [12 inch Analog]

Ou Panis Et Circencis [12 inch Analog]

  • アーティスト:Tropicalia
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: LP Record
 

 さきほどの街角クラブと双璧をなすのがこのトロピカリア。むしろこっちのが重要かも。

カエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルを中心にブラジルの若手音楽家に声をかけ、

みんなでブラジル版サージェントペパーズを作ろう!(大意)」と言って作られたもの。

実際内容はよく、当時にしては破格の3か月で二万枚の売り上げを誇ったそうだ。

その後のブラジル音楽を作り、国外にも影響した意味でもブラジル音楽入門に最適

またここに参加している音楽家を逐一追っても楽しめる、非常に便利な名盤である。

 

20.Amazing Ping Pong Show/Gym and Swim

Amazing PingPong Show

Amazing PingPong Show

  • アーティスト:Gym and Swim
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: CD
 

タイのシンセポップバンドのEP。シティポップっぽい80年代の雰囲気を携えている。

タイ発の音楽というとマニアックな感じがするが、この人たちに関しては今のインディー好きなら誰でも知っているんじゃなかろうか。 

たった五曲入りのEPだが、これがタイから出てきたのか!とかなり衝撃的な内容。

特にキラー・チューンSurfin' Babyのナンセンス極まりない歌詞とメロウな曲とのギャップが面白い。

また落日飛車*2とのコラボもあり、アジアのインディーズ新時代を告げた作品だと思う。

 

19.公衆道徳/公衆道

公衆道徳

公衆道徳

  • アーティスト:公衆道徳
  • 発売日: 2017/03/01
  • メディア: CD
 

 韓国の謎の音楽家本当に謎で一切素性が割れていないらしい。

韓国の名盤、というとKim Jung Miとかのフォークが強いわけなのだが、

それらを聴いても「良良~」とは思うのだが、本格的にハマるまではいかなかった。*3

そんな中公衆道徳はオリジナリティあふれる作風でアコギを主体としながら、変拍子にノイズにと様々な要素をぶち込んだというもの。

イメージ的にはPoint期のコーネリアスFantasmaチックなものを作ったという感じかな。ありそうでなかった音楽性である。

皆も好きそうなので意外に高位入りそうな予感がする一枚。

 

18.Dedalus/Dedalus

Dedalus [12 inch Analog]

Dedalus [12 inch Analog]

  • アーティスト:Dedalus
  • 発売日: 2014/01/07
  • メディア: LP Record
 

 イタリアのジャズロック

ジャズロック?えー、とか思っている方でも一回聴いてくださいバチバチにカッコイイんです。

ジャズロックと言っているがほぼエレクトリックジャズ。エレピの使い方がメロウでおしゃれ。

曲途中でドラムが止まったかと思うと謎のノイズセッションが始まるなど自由奔放。

ジャズとかロックとかそういう枠組みなんざぶっ飛ばせという感じがしており非常に素敵で良良良。エレクトリック・マイルス好きには非常におススメである。

尚、フォーマル和服にレコードで顔を隠して写真を撮る僕のスタイルは、これのジャケ(顔隠し+フォーマルコート)を若干参考にしている節がある。

 

 17.Avanti!/Giovanni Mirabassi

AVANTI!

AVANTI!

 

 イタリアのピアノソロによるジャズ。

ピアノ一台から非常に美しいメロディとハーモニーが紡がれていくのだが、面白いことにこれは反戦歌や革命歌であるとのこと。

音楽というのは人間が追い詰められたときに真価を発揮するとよく言ったものだが、まさにそういう状況下で生まれた音楽の普遍的美に気づかされる一枚。

実はこれと双璧になる形で似たコンセプトのCornelius CardewのFour Principles on Irelandも入れたかったのだが、Cornelius Cardewイギリス人でした。残念。

 

16. Mauro Pagani/Mauro Pagani

Mauro Pagani [Analog]

Mauro Pagani [Analog]

  • アーティスト:Mauro Pagani
  • 発売日: 2014/01/07
  • メディア: LP Record
 

 P.F.M.のヴァイオリニストのソロ。なのでP.F.M.自体は入れてないです。

変拍子を非常にポップに聴かせる冒頭曲から引き込まれる音世界。邦題地中海の伝説は仰々しくも結構ピッタリな名前だ。

バックがAreaとPFMとCanzoniere del Lazioのコラボ、しかもある曲ではあのデメトリオ・ストラトスが登場と、イタリアンロックファン悶絶物の一枚である。

よく中古LPが安く売っているので入手しやすい点でもおススメ。是非聴いてみよう!

あとこれLight In The Atticが再発してるのね。日本の環境音楽に続き、イタリアンプログレが流行する日も近い。

 

15.Attahk/Magma

アターク

アターク

  • アーティスト:マグマ
  • 発売日: 2001/12/12
  • メディア: CD
 

 一応真ん中に入れといたマグマである。

実は僕はそこまでマグマのファンではなく*4、これと有名どころ二枚くらいしか聴いていない。マグマちょっと暑苦しい...

ただこのアルバムは結構好き。暑苦しさが他アルバムより抑え目で叙情的な側面があり、比較的標準のユーロプログレに近いかな。

それ故に本当のファンは好きそうじゃないけど、Magma入門には僕はコレをお勧めする。

 

14.Etazhi/Molachat Doma

Etazhi

Etazhi

  • アーティスト:Molchat Doma
  • 発売日: 2020/03/27
  • メディア: CD
 

 みんな大好きMolchat Doma

なんだかんだで最近の非英語圏バンドで一番知名度あるのでは?

ちょくちょく他アーティストのリミックスなんかでも顔を出すようになってきている。

80年代リヴァイバルの波にのってどこまでも飛躍してほしいものである。

詳しくは過去記事をどうぞ。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

13.Carlos Aguirre Grupo(Rojo)/Carlos Aguirre Grupo

Carlos Aguirre Grupo (Rojo)

Carlos Aguirre Grupo (Rojo)

 

 アルゼンチン現代フォルクローレの名盤。

これは最近記事にした。

epocalcgarage.hatenablog.com

ジャケの組み立て方をわりとマジで教えてほしい。

 

12. Segundo/Juana Molina

Segundo

Segundo

  • アーティスト:Molina, Juana
  • 発売日: 2003/07/01
  • メディア: CD
 

 アルゼンチン音響派を定義する一枚。

フォルクローレをベースに据えているため電子音楽じみているのに柔らかで優しい雰囲気が特徴的で、アルゼンチンの郊外にいる気分。一日中聴ける内容。

その意味で、先ほど挙げたRoberto Cacciapagliaと実は似ているのかもしれない。

日本においても山本精一氏が積極的にかかわるなど、後期渋谷系~ポスト渋谷系文脈で重要になってくる。そもそも音響派という言葉も渋谷系文脈らしい。

 

11.Palepoli/Osanna

Palepoli

Palepoli

  • アーティスト:Osanna
  • 発売日: 2012/06/08
  • メディア: CD
 

イタリアのお囃子プログレと言えばこの盤である 。

ためてためてためてハッちゃけるまでの間が絶妙で、この間がなければこれほど魅力的になってはいなかったかもしれない。

この享楽的なんだか禁欲的なんだか分からない感じがとても地中海らしくて好感がもてる。

当時は「イタリアのクリムゾン」という文句で売り出されたらしい。ちょっと語弊しかないな... 

 

10.Oasis/Il Guardiano Del Faro

OASIS [12 inch Analog]

OASIS [12 inch Analog]

 

イタリアのアンビエント名盤。 イタリアンプログレを漁っていた時期にたまたま見つけた。

アンビエントと言ってもイーノのような静謐なミニマルではなく、Plantasiaに近いシンセポップ。

そしてPlantasiaは結構元気があるがこちらはメロウで穏やか。このジャケのような星が輝く夜に聴きたい音楽性である。

僕にオアシス良いよねと言ったらこっちが出てくるので注意しよう。

ちなみに最近知らないところで再発されていた模様。誰か教えてよ!!

 

9.Chico Buarque de Hollanda/Chico Buarque

Chico Buarque de Hollanda

Chico Buarque de Hollanda

  • 発売日: 2010/02/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ボサノヴァとMPBの中間地点みたいな名盤。

 この人自身はジョビンと共作するなど思いっきりボサノヴァ文脈の人なのだが、

 マーチングのリズムを取り入れたり、そもそも妙にリヴァーヴが深かったりと普通のボッサと比すると一風変わったアルバムになっている。

またアルバムのどの曲もかなりレベルが高く、純粋にポップスアルバムとして完成度が高いので万人にお勧め。ここから一曲、菊地成孔のcalendulaでカバーされたりしているね。

ちなみに、皆さん気づいたと思うが一時期Twitterでよく見た依存症後で元気になる人の画像はこのジャケである。

 

8.Walter Wanderley/Rain Forest

サマー・サンバ

サマー・サンバ

 

 最高のボサノヴァどころか最高のオルガンジャズと言っても良いかもしれない一枚。

ボサノヴァが都会的傾向を示しはじめていたころに、それを崩さず土着のサンバに近づこうとした作品である。

装飾音符を多用したオルガン捌きと涼し気な音作りは後続の音楽でよく参照されることになる。

個人的に思い入れが強く、高位に選ばせてもらった。

 

7.Araca Azul/Caetano Veloso

Araca Azul by Caetano Veloso

Araca Azul by Caetano Veloso

 

カエターノ・ヴェローゾが何を思ったか作った実験ポップスアルバム。 

それまでメロディアスなブラジリアン・ロックのイメージがあった彼が、亡命先のイギリスのプログレバンド達に影響されたのかかなり前衛的になっている。

ヴェローゾについては見た感じ1stのDomingoを入れている人が多かったが、あれはまだ純粋なボサノヴァをやっていた時期だったのでヴェローゾ本領発揮ではない気がする。それに加えて、これはトロピカリアの実験精神を具現化した作品ということで僕はこっちかな。

実は結構最近初めて聴いたものだがこういう理由でこの順位。

詳しくは過去記事をどうぞ。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

6. Concerto Grosso n.1/New Trolls

Concerto Grosso per i New Trolls

Concerto Grosso per i New Trolls

  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 これは凄い。「ロックとクラシックの融合」という命題への完璧な一解答を示した一枚。

クラシック・映画音楽ともに活発だったイタリアだったからこそなしえた盤であるような気がしてならない。

こちらも過去記事をどうぞ。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

 

5.Viva/La Düsseldorf

Viva

Viva

  • 発売日: 2018/06/28
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

NEU!は多分みんな入れるのでこっちを入れた。La Düsseldorfも大好きだしね。

 これのA面ももちろん頭のネジがぶっ飛んだような良い曲がたくさん入っているのだが、

白眉はB面、No Future連呼するパンクへ打ち出した、ある種の狂気を孕んだ未来への賛歌Cha Cha2000であろう。

これも過去記事があった。

epocalcgarage.hatenablog.com

ここら辺になると大体過去記事ありますね。

 

4.Acabou Chorare/Novos Baianos

Acabou Chorare by NOVOS BAIANOS

Acabou Chorare by NOVOS BAIANOS

 

 トロピカリアと街角クラブというブラジリアンポップス二大巨頭が早い段階で出たので、MPB最高位なににしたんだ??と思った方がいたかもしれない。圧倒的これである。

元々比較的普通のサイケをやってたグループ。日本においては「ブラジルのシュガーベイブ」なんて言われたりするらしい。

が、メンバーがジョアン・ジルベルトに会ってからバンド全体がボサノヴァと化し、ボッサ色の強いサイケで彩られた今作を発表した。

そのユニークさ、前衛精神、ポップスネス、どれをとってもMPB随一の名盤と言ってよいだろう。

 

3.Tilt /Arti e Mestieri

Tilt

Tilt

  • アーティスト:Arti E Mestieri
  • 発売日: 2010/01/05
  • メディア: CD
 

 イタリアンプログレ最高峰。異論は認める。

当ブログではすでに何度も使ったフレーズだが、斜に構えたメロディアスなジャズ隊にバカスカ叩くドラマー、という唯一無二な構成のバンド。

今作のA面はプログレらしく組曲になっているのだが緩急の付け方が素晴らしく良く、まったく飽きずに聴ける。そしてジャケがマグリットみたいで良い。

ちなみにこれは1stなのだが、2ndも物凄くお勧めできるアルバムになっているのでそちらも是非。

2.Joao Gilberto/Joao Gilberto

JOAO GILBERTO (Aguas de Marco)

JOAO GILBERTO (Aguas de Marco)

  • アーティスト:Gilberto, Joao
  • 発売日: 2000/06/10
  • メディア: CD
 

満を持してジルベルト大先生。

これは本当に偉大な盤であり、既にMPBに押され気味な時代のボサノヴァ最後の輝きという感じがする。

手数の少ないリズムに弾き語りギターという最小の編成なのだが、パンの妙か全く寂しい感じがしない。

そして各曲もなかなか前衛的。特に僕の大好きなのはUndiu

短いフレーズを何度も何度も繰り返し、ミニマルの先駆けのようにも感じられる。

実際Technovaやネコミミモードに代表されるミニマルボッサの影響元はここだろう。

その他収録曲も粒ぞろい。自信をもってお勧めできる名盤である。

問題はサブスクに来ていないこと。なぜだ~!!

 

 1.Wave/Antonio Carlos Jobim

Wave by ANTONIO CARLOS JOBIM (2015-09-30)
 

 有名だけれど、ワールドミュージック、ひいては世界の音楽を語る上で絶対に外せないと思うので一位です。おめでとうございます。

このアルバムの影響範囲は絶大であり、ジャズやポップスは勿論のこと、

そもそも西欧以外の音楽に注目しようという流れに勢いがつきはじめたのはこれ(とGetz/Gilberto)のヒットであったに違いなく、

その上ラウンジ音楽という意味で後のアンビエントにさえ接続できる。

音だけ聴いたロックファンから軟弱というレッテルを貼られているが、

ここまで意欲的に音作り・曲作りし、各方面に影響したロックアルバムなぞそうそうお目に掛かれないと思う。それこそビートルズ等数えるくらいではないかな。

僕が思うに、ビートルズがいなかったらジョビンが世界のポップスの祖になっていた可能性は十二分にあると思う。

その場合、仮にジョビンが自力でコンセプトアルバムの概念までたどり着けていたらどんなに面白いものになっていたか、すごく気になる所。

 

 

以上三十枚であった。

前回の洋楽名盤は好きな英米盤は大体入れ切った感があったのだが、今回は入れられなかったものも多く*5なんだかんだで英米よりユーロやブラジル等の方が好きなんだなあと思ってしまった。

このような企画は今までほとんどなかったのでどういう結果になるのか非常に楽しみなところ。

わくわくしながら待ちましょう。

 

~関連記事~

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毎日ワールド・ミュージック1998‐2004

毎日ワールド・ミュージック1998‐2004

  • 作者:北中 正和
  • 発売日: 2005/07/01
  • メディア: 単行本
 

*1:少なくともローリングストーン誌やピッチフォークのオールタイムベストには全部入ってないハズ,,,多分,,,,

*2:サンセット・ローラーコースターと言っている人いない説

*3:個人的に1975現象と呼ぶ。The 1975に全くハマれてないので。

*4:これは僕のいるサークルではかなり珍しい

*5:ヴァンゲリス関連諸作、ハワイアンなど

Doll's Love Songs/Boys Age【2021】

ディストピア系シティポップ

boysageband.bandcamp.com

※Bandcampの公開日が2020年末なのだけれど、Apple Musicが言うには2021とのことだったので一応2021年のアルバム扱いでお願いします。

 

 

シティポップ、聴いてますか?

 

昨今は猫も杓子もシティポップである。うっせえわは知らん。

去年末真夜中のドアが馬鹿流行りしはじめたときなんか物凄く驚いた。

「やったあ!」ではなく「なんで!?」という意味で。

news.yahoo.co.jp

本当に謎。シティポップと一口に言えど色々ある中で何故この曲なのだろう。

 

まあ日本で埋もれていた名曲が世界各国に知られるようになるのは良いことであるが、

大分前から世界の音楽界は溶解度曲線の実験が余裕でできるレベルのシティポップ飽和状態になっており、

いかに打破するか、新機軸を打ち出すかを皆考えつづけている。

このブログで紹介したものだと、シティポップブーム震源地・Vaporwaveをサイケロックとしてやる発想のthe mellowsや、

シティポップの皮をかぶりつつ、やってることがオルタナ44superがいる。

epocalcgarage.hatenablog.com

epocalcgarage.hatenablog.com

 

今回ご紹介するBoys Ageはthe mellowsと同様のサイケ感とともにシティポップの虚構性に注目し、それをSFの次元まで高めてしまった人物。

 

 

 

Boys Ageは結構古くから音楽を作っているらしく、コアな音楽ファンからの支持が篤い。

ちょっとTwitterでこの人の曲呟いたら沢山いいねが飛んできたところからうかがえる。

音楽性はthe mellowsにも通じるVaporwaveを人力でやったようなサイケポップだが、前後関係を考えるとむしろthe mellowsがこちらから影響されたようだ。


www.youtube.com

国内よりも海外で人気らしく、国内でも火がつくことを願うばかりである。

 

ここでさっき言った「シティポップの虚構性」ってなんぞやと思った方がいるかもしれないので解説。これは最近のシティポップに多いものである。

80年代のシティポップは純粋な都会性・享楽性を追求して曲を作っていたのだが、

不況が続く現在の作り手たちは、それを一種の皮肉として解釈し

「今はこんな世の中ではないよね、こうだったらよかったのにな」

と裏腹にして見せるという手法を使っている(ように感じる)。

このことは歌詞面は勿論曲作りでも頻繁に感じられ、こう思っているのは僕だけじゃないハズ。

 

これこそがシティポップの虚構性である。

 そして今作Doll's Love Songsはその虚構性を生かし

「これからはこんな世の中になるかもしれないね」

というSF的発想によってコンセプトを作り、アルバムにまとめ上げてしまった。

 

 bandcampにこのアルバムのコンセプトについてのイントロダクションがあるので、聴く前にまず読んでみよう。

 

-introduction-

A puppet does everything for its master and obeys him without saying a word. Because that is the role of the doll.
However, the doll adores its master's "feelings" and is devoted to his "wishes". That is unforgivable.
She, who cannot sleep, dreads the sleepless nights. And her make-believe body freezes in the cold that should not be there.
She is moved by the sunset she sees with her master, and anguished by her inability to fulfill her role.
Even so, the spring-loaded spool continues to turn, as if responding to her passion.

人形は主人に尽くし物言わずただ従う それが人形の役目
しかしその人形は 主人の想いを慕い、その願いに尽くす 
それは そうなってはならないものだったのに
眠ることのない“彼女”は眠れぬ夜に怯え
作り物の身体はある筈のない寒さに凍える
主人と共に見た夕陽に感動し役目を果たせぬ自分に苦悩する
それでもからくりの魔法は回り続ける
その熱に応えるかのように。

Doll's Love Songs​ Bandcampページより引用

 感情を持った人形、つまりおよそ恋したアンドロイドのお話である。SFだとよく見る題材だが、音楽だとあまり見たことないコンセプト。

 

その上でまず一曲目いってみよう。

www.youtube.com

 サイケデリックで丁寧なギターリフの後まず耳に付くのはざらついた機械音声による女性ボーカル。

クレジットによるとどうやらGalatea Talkを使っているらしい。

これは2003年頃にリリースされた古い合成音声で、故に古びたロボットのような独特の味がでている。

アルバム全体にわたって彼女がメインボーカルを執ることになる。

 

不気味や歌詞や陰影のくっきりした曲想も後々の楽曲にワクワクさせてくれるようなもので、

名コンセプトアルバム一曲目の必要条件、世界観の提示・没入の役割も完璧にこなしている。

 

続く二曲目もメロウで素敵。

www.youtube.com

 そしてこの鬱鬱とした歌詞である。

個人的に、Vocaloidをはじめ合成音声の曲はうまく発声させていない限り歌詞が入ってきづらいのだが

このアルバムは全体的に妙に歌詞が頭に入ってくる。

歌詞カードを読みながら聴きたくなる曲ばかりだ。

 

勿論、インスト曲も超がつくほど高純度。

www.youtube.com

 蜃気楼揺蕩う、都会の熱帯夜のような音楽

そんな美辞麗句で飾り立てずとも直感的に良い!と思えるような曲である。

ちなみにインスト曲はアルバムのコンセプトの分かれ目として機能しているようで、

ここまで三曲が「アンドロイドが今、『貴方』を懐かしむ」話であり、

ここから二曲が『貴方』がいたころの過去編になっている。

 

その二つからはこちらを。


www.youtube.com

 旧い歌謡曲のようなメロディであり、アルバム内だと一番素直な曲であるかもしれない。

ロボットの悲哀を歌う内容と相まってなんだかニコ動のボカロっぽさを感じるのは僕だけではないはず。 

 

 

そしてこの後一曲インストを挟んだ後、超名曲・An Imitationでアルバムは頂点を迎える。


www.youtube.com

アルバム中で最もシティポップの要素が強い曲。

宅録感の強いカッティングギターがこのアルバム全体に漂う退廃感をさらに醸し出す。

なにより歌詞がメタメタに強い。

最近歌詞を素通りすることが多かったのだが、ここまで歌詞の強い曲は久々である。

これと前後曲の歌詞から察するにどうやら何かしらの異変があり、『貴方』は『私』を庇って死んでしまったことが示唆される。

その歌詞でこのシティポップである。

ここまでの流れはこの曲へのカタルシスのためにあったと言っても過言ではない。

 

 実はこの絶望的状況下からこのアルバムの本領発揮である。NieR:Automataかよ。

 続くSpool Of The Dollもかなりの名曲。


www.youtube.com

 ダンサブルで非常に陽気な曲。往年のネオアコの香りがするね。

でも歌詞は引き続き悲痛で、自分だけ生き延びてしまった後悔がつづられる。

ここまでの二曲は歌詞の悲しさと陽気な曲なギャップ、そしてギターソロの確かさが坂本慎太郎ソロ諸作を思い出す。

歌詞のSF的発想にも通じる部分があるかもね。


www.youtube.com

 

 そしてこちらもまたメロウな名曲Hinageshiでおしまい。


www.youtube.com

今までの作風とちょっと違う、SSW色の強い曲。歌声も優しめに調声してある。

FM音源と思わしきころころしたシンセとギターの絡み合いが絶品。

 

この曲だけボーカルの音程が低く、歌詞の一人称が『僕』であるのが面白いね。

つまり歌詞の中だけで出てきた『貴方』目線の歌で終わるわけである。

アニメだったら考察班がわらわら湧いてくるような演出である。

 

 

とまあ、音楽面を深堀しても面白く、歌詞を見ても面白く、構成もまた面白く、

めっちゃ良い音楽聴きながらちょっとしたSF作品を見たくらいの満足感を得られる。なにこれ。

このサブスク全盛の時代にとんでもないコンセプトアルバムが出てきてしまったものである。ちょっと衝撃的だった。

是非皆さんもBandcampで買って聴いてみよう。サブスクより音質明らかによいので。

 

 

追記

 

インディ音楽紹介記事で多いご本人の反応をいただいたのですが、ここで紹介した話の流れは意図したものではないとのこと。

ただ、例えば俳句の世界では評論が作者にも分かっていなかった文脈を提示し超マイナーな句が名句になったものもある*1ので、むしろ評論冥利に尽きるのかもしれない。

自分だけのオリジナル解釈をしてライバルと競いあおう。

 

 


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*1:このパターンだと芝不器男「あなたなる夜雨の葛もあなたかな」における高浜虚子の解釈が有名

Carlos Aguirre Grupo(Rojo)/Carlos Aguirre Grupo【2004】

南米悪魔融合 

Carlos Aguirre Grupo (Rojo)

Carlos Aguirre Grupo (Rojo)

 

 

僕は(詳しいかはさておいて)ブラジル音楽好きなのだが

ブラジル音楽を掘っていると自ずと行き当たるのが隣国アルゼンチンの音楽である。

 

というのも、知らぬ人にはナンジャラホイという感じであろうが意外とアルゼンチンには良い音楽が多いのである。

ポストロック好きならアルゼンチン音響派が思い浮かぶかもしれない。

Quiero

Quiero

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 Juana Molinaは国民的コメディアンからSSWになった異色の経歴の持ち主。

こういう結構通向けの曲なので、元々のイメージと乖離しすぎて売れなかったとか。

ポストロックそのもの!というよりは、それのフォーク的解釈という感じ。 

 

こういう音楽が出てくる背景にはアルゼンチンに伝わるフォルクローレが重要になってくる。

友人にラテン音楽の鬼がいるのだが、彼によれば元々スペイン王朝でフランスを真似て演奏されていた音楽が植民地に伝わり

当地の音楽と融合など色々あった結果土着化したのがこれらしい。

ja.wikipedia.org

実は南米で唯一ブラジルはフォルクローレの影響がほぼないと言われている。

ブラジルだけがスペインではなくポルトガルに支配されたため、フォルクローレとはやや違った音楽があるというわけ。

そして逆に最も影響が濃く残っている国の一つがアルゼンチンらしく、故に互いに影響しあえどブラジル音楽とは全く違う音楽が楽しめる。 

 

 

もっとも有名なフォルクローレは、サイモン&ガーファンクルのカバーでも有名なコンドルは飛んでいく


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 う~ん、アンデス

これに代表されるように、ブラジル音楽が享楽的傾向にあるのに対してアルゼンチンは内省的傾向にある音楽性。

故に意外とファン層はかぶらなかったりする。

 

 

そして、現代のフォルクローレで中心的な位置を占めているのは今回ご紹介する Carlos Aguirreである。

この人はそんな近いようで近くないブラジル音楽とフォルクローレの感覚を混ぜてしまった人。その意味でかなり偉大である。

Carlos Aguirre Grupo(Rojo)は彼の作品中でも特に名盤と呼ばれることの多い一枚。

 

ところで、(Rojo)ってなんやねんと思った人がいるかもしれないが、これはという意味。
バンド名と同じ名のアルバムを複数出しているので色で区別しているのだ。

セルフタイトル複数出しは南米の人だとよく見る気がする。この禁じ手使っているのはWeezerだけじゃないぞ。

 ラテン系の適当さが表れているのだろうか。

 

アルバム名は適当だが、再生すると同時に彼のブラジル音楽愛が伝わる。


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フォルクローレらしいフォークギター爪弾きから始まり、すぐにラテンなリズムの打楽器類が入ってくる。

南米の蒼い海が目に浮かぶような素敵な音楽が続くのだが、よく聴くと構成やコード進行がすごく面白い

こういうタイプの謎構成はブラジルの実験的なMPBに多い感じがするが、そこら辺の影響なのだろうか。


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そういう観点でもブラジル音楽っぽいのだが、やはりどこか内省的

 ショーロや初期のボサノヴァみたいな感じも受けるね。

 

他の曲もブラジル音楽の感覚が見え隠れする。


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曲名で思いっきしリオと言ってしまっているしね。

この曲のギターの弾き方は個人的には超絶技巧ボサノヴァBaden Powellを思い出す。


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この急激に上がったり下がったりする感じね。

この人の弾き方をデフォルメして代わりに歌乗っけたような雰囲気を受ける。

 

歌ものだけではなく、アルバム後半にはインスト曲もいくつか入っているが

こちらも少しでもラテンジャズが好きならぶっささる内容。


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出だし部分の各パートが己の道を突っ走っているような絡み合いがとてもおいしい。

個人的一押しポイントは前半部から後半にかけてのつなぎ部のギターアルペジオ

 

電化フュージョン風にやったらCTI作品っぽくなりそう~

...なんて思っていたら実際エレクトリックバンドでやったライブ音源を発見!


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ちょっと音が悪いのが残念だが、ピアノの超絶演奏っぷりが凄い。

で、そのピアニストがCarlos Aguirre御本人のようだ。さすがでございます。

 

このアルバムはアルゼンチン音楽オタク*1にとってはメジャーな名盤であるらしいのだが、なんとこのアルバムDiscogsになかった。

Discogsって意外と載ってないのだが、これがなかったのには驚き。

僕新しいアルバムページの作り方分からないんで有識者、お願いします。

 

 

ちなみに、このアルバムのジャケットは組み立てることができるらしい。

その触れ込みもあってこのアルバムのCDをわざわざ買ってみたのだ。ちょっとやってみよう。

 

……

…………

 

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いやこれどうやって組み立てるの???

 

 

 

*1:世界広し。

Not the same/Roby Duke【1982】

布教用AOR

ロング・アフタヌーン (生産限定盤)

ロング・アフタヌーン (生産限定盤)

 

 

昨今、なんだかニューエイジが流行っている。

とはいっても風の時代がどうたらこうたらの方ではなく、音楽の方。

 

こういう音楽はその出自的に全く見向きもされていなかったのだが、00年代からアングラ界隈のDJがネタ的にかけていたらしい。

それが広まるきっかけになったのがみんな大好きVaporwave

 

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Vaporは80年代のダサいと思われていた諸々の文化(含シティポップ)をアリにしていったが、ニューエイジみたいなうさん臭い音楽まで""アリ""にしてしまったのだ。どっひゃあ。

これがブレイクスルーになったようで10年代に起こったアンビエント、そしてニューエイジの再評価につながったらしい。面白いね~

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 ただジャンル自体の思想が結局風の時代がどうたらこうたら的なやつなので、それが広まる危うさが指摘される…なんてこともあった。

ここら辺をどう解釈するかが見どころ。

ここまで広まってしまうと音楽だけじゃなく、文化全体を巻き込んだイベントになってきているようだ。

 

 それはさて置いて、この話を聴いた時僕にはある一つのアルバムが思い浮かんだ。

それこそがRoby DukeのNot The Same

AORファンなら知っているかもしれないけれど、それ以外には多分ほぼ知られていないマイナー盤。しかも海外でも知名度は皆無と言っていいほどらしい。

 

なぜ知られていないか?理由は簡単。

このアルバム、キリスト教を布教したり教徒に聴かせたりするために作られたものなのだ。

ジャンルはコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック(CCM)というものに分類されるが、これは一見普通のロックやポップスな曲の歌詞にバンバンキリスト万歳みたいな話を出すというなかなか尖り散らしたジャンルである。

 

その歌詞ゆえに本国では特殊なジャンルとして扱われているようで、丁度日本のニューエイジ盤みたいな立ち位置らしい。

しかし英語の分からない日本のリスナーにとってはそんなのどうでも良い上むしろ妙に良い曲が多く、名曲の宝庫として扱われている。*1

 80年代のCCMはメロハ―路線とAOR路線に大別できるのだが、今作はAOR系CCM最高傑作といっても差し支えないようなアルバム。

 

一曲目からAORとしての完成度が異様に高い。

 

海辺をオープンカーが駆け抜けていくような爽快感がたまらない。

なんだか夏のディズニーランドの水辺で流れてそうな一曲。

よく聞いてるとゴッドとかジーザスとか聴こえてくるが、無視しよう。

 

バックがかなりカッチリとしているが、それもそのはずTOTOのメンバーがいるらしい。

AORの名盤には大体TOTOのメンバーがいる。これは憶えておこう。

 そして上の動画サムネを見て分かる通りこのおじさんである。

AORの名盤は大体こういうオジサンが歌っている。これも憶えておこう。

なお、おじさんジャケが素敵すぎるので日本盤は差し替えが入っている。

AORの名盤のオジサンジャケは大体日本盤でさし変わっている。これもついでに憶えよう。

 

この写真当時26-28歳(!?)だったらしいが、その歌声は天下一品。

 なんだかボズ・スキャッグスを彷彿とさせる伸びやかな歌声。

そして個人的にはボズ・スキャッグスより曲が良いんじゃないかと思えてしまう。

 あと、この曲もだがカッティングギターとストリングスのアレンジが美麗。

ちなみにこのギターやアレンジャーたちもCCMの人であったりする。福音派色々独占しすぎでは?

 

 

タイトル曲もミッドテンポでカッコイイ。

間奏前の各パートの絡み合いが素晴らしく良い....

AORはシティポップに比してツマラナイと思うことも多いのだが、これに関しては別格である。あまりにレベルが高すぎる。

これだけの逸材がキリスト教の一部の人にしか聴かれていないなんてもったいないと思ってしまうのは僕だけではないはず。

 

 

 さてこのアルバムを調べている中で驚くべき事実を発見した。

なんとかのLight Mellowでおなじみの金澤寿和氏が初期に解説を執筆されたアルバムであるそうだ。

lightmellow.livedoor.biz

これに関してはちょっと驚かざるをえなかった。

何故ならば、日本においてニューエイジ再評価の先鋒に立っていたのは金澤氏に影響を受けたディガー集団・lightmellowbuだからである。

そもそも彼らの名も金澤氏の合言葉「Light Mellow」からであり、上に貼った金澤氏のブログの題名にもこれが使われている。

で、そのLight Mellowってなんぞやというと、こういうことらしい。

それは、心地良い音楽を形容するひとつの言葉。ジャンル用語でもなければ、特別な音楽専門用語でもありません。洋楽と邦楽の壁もなく、“洗練”や“都会”をキーワードにして、ポップス、ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、フォーク、ボサノヴァ、ラテン、そして時には歌謡曲…。そんな様々な香りを溶かし込み、こうして1枚のディスクに無理なく収めてしまう。それが Light Mellowの極意です。

https://www.universal-music.co.jp/jp/light-mellow/

 

洗練、都会的というのを突き詰めていった結果、根源的ともいえる宗教の音楽に辿り着いてしまうのは皮肉な感じがする。

「洗練された都会」に住んでいても、人間の精神性は伝統的な宗教観が支配していた時代から何も変わっていないのかもしれない。

 


Roby Duke -- Not The Same (Full Album)

*1:曰く、福音派ずるい!

今月のディグ(2021/3)

 

月一回、僕がレコ屋・CD屋・中古屋で適当に見繕ったものの中で数作、サクッと紹介するコーナーです。

 

夢の城/アコースティック・クラブ(見つけた場所:ココナッツディスク江古田) 

夢の城

夢の城

 

クラシックギター+室内楽インストバンドの作品。

N2.がボサモドキだったりジャズスタンダードが入っていたりとクロスオーバーを意識した内容だが、

時代的にペンギン・カフェ・オーケストラ久石譲などのアンビエント方面の人からの影響も感じる。

結局のところ一番近いのはゴンチチ。80年代のゴンチチと評するのが一番的確かつ手短かな。

単なる癒し系にとどまらず、かなり技術がないとできないような演奏も繰り広げられ

アンビエント作品としてかなり上質なものの一つのように感じる。

Book Offで俗流アンビエントと称して「集中力」を買い漁る人間は必聴。

 

 

 大地の息吹/Lee Spencer(見つけた場所:Book Off仙台店)

 そしてこちら本物の俗流アンビエント

買ったのは2月だけれど、聴いたのは3月なのでここで紹介。

なんでも時間から解放できるとのこと。さあ君も時間旅行者の仲間入りだ。

内容はと言うと、楽想や使っている楽器的にマニュエル・ゲッチングのE2-E4を思い出すかなりレベルの高いもの。

これがたったの280円だったのだからお得感が半端じゃない。

パッケージに作曲者名は書いてないが、Apple Musicに読ませると作者が出てくる。

調べてみたところ、あのスミスのジョニー・マーとバンド仲間だった人物のようだ。

やはり才覚ある人物の周りには優秀な人物が集まるのだろう。

このCDはシリーズものなので是非コンプリートしていきたい所存。

 

※追記

他のCDも買ってみたのだが、どうやらこのシリーズは過去のアンビエント・アルバムの再発シリーズらしい。 

故に結構良質なものが多いと思われる。見かけた人は是非。

 

 

 The Exotic Christmas(見つけた場所:Book Off高田馬場店)

www.discogs.com

渋谷系の超名門・トラットリアのコンピレーションアルバム。

その名の通り、世界中のミュージシャンの作ったクリスマスソングが入っている。

変態的な重なり方をしているアカペラ曲やクリスマススタンダードのクロスオーバー風カバー、極めつけにVenus Peterの楽曲など。流石トラットリアのコンピ、かなり内容は良い。

そしてそれに不似合いな510円という値段。安すぎ。

渋谷系はダサい」という風潮が漂っているためだろうか。シティポップとそんな違わない気がするんだけどな...

ちなみにもののブログによると狙って手に入れるのは至難の技らしい。根気よく古CD屋で探そう。

 

Stasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa/Complesso di Sante Palumbo(見つけた場所:レコードワン大阪)

www.discogs.com

タイトル長い。イタリアのラウンジ・ジャズ。

なんでもジャズファン垂涎の逸品らしく、限定500枚。で買ってしまった。

アコースティックなピアノ主体のジャズなのだがボサノヴァ的なリズム感が頻出する。なるほどラウンジ。

しかし、ピアノによる装飾的演奏やベースの遊び方が独特でアコースティックジャズなのにフュージョンのような演奏も随所にみられる。 

確かに他にはない妙な雰囲気を携えているアルバムである。

もしかしたら単体記事にするかもしれない。

 

 

 

 

ⒸEPOCALC