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本州一下らない音楽レビューブログ

Concerto Grosso N.1/New Trolls【1971】

クラシック?ロック?

Concerto Grosso

Concerto Grosso

  • アーティスト:New Trolls
  • 出版社/メーカー: Warner
  • 発売日: 1999/10/15
  • メディア: CD
 

明けましておめでとうございます。

 最近あんまりプログレ聴いていないので

自戒の意味を込めて今回はこれです。

 

 

「ロックとクラシックの融合」ほど聴き飽きた言葉はないと思う。

だってめっちゃありがちじゃないですか。いろんな人やってるし。

偏見かもしれないけどV系の人が連呼しているイメージがある。ゴシックロックってやつなのかな。

それ故、このコンセプトはかなり作り手の技量が試されると思う。

日本でちゃんと融合できているのはくるりとかなのかな。

ブレーメン

ブレーメン

  • provided courtesy of iTunes

 岸田さんはクラシックに造詣が深く、音楽理論も学んでいる方なので

ここまで違和感なく融合できているのだろう。

実際交響曲も作ってらしたもんね。

 

プログレッシブロックも結構クラシックの要素が含まれている…

とは言うものの、結構ロックロックしていて

「お~クラシック~いえ~」みたいな作品は少ない。

ELPの一部の作品にはクラシックっぽい…

というかまんまのものがあるけどね!

Promenade

Promenade

  • provided courtesy of iTunes

 展覧会の絵のカバー。もとい、発表会のオルガン。

 

しかし、中には思いっきりクラシックなものも存在する。

それがNew TrollsConcerto Grosso N.1。

 

New Trollsはイタリアのバンド。

最初はごくごく普通のロックバンドだったらしいが

だんだんプログレに移行したという経歴の持ち主。

ちなみにプログレブーム終了後はクイーンみたいになる。

 

そして、Conceto Grosso N.1プログレ期を代表するアルバム。

そもそもコンチェルト・グロッソとは

Wiki先生によるとバロック期の音楽形式の一つ

ヴァイオリン×2、チェロ×1のトリオと

オーケストラが互いに掛け合いながら演奏しあう形式らしい。

ja.wikipedia.org

このアルバムでもちょうどそれに似た音楽を楽しめます。

正月ですし、ニューイヤーコンサート的な趣で聴いてみましょ。

 

このアルバム、曲名もクラシック風。「第一楽章・アレグロからスタート。


New Trolls: Tempo: Allegro

音出しから始まる所がいかにもコンセプトアルバム。

そしておもむろにヴァイオリンがソロで弾き始めると

それに対抗するかのようにロックバンドが殴り込む。

そのあとコンチェルト・グロッソの形式通り交代交代で

オーケストラとロックが入り乱れ、バロック調のクラシックを紡ぐ。

この冷静沈着で大人びたオーケストラ隊

熱気あふれる若者のようなロックのバランスが素晴らしく

わずか二分程度の小品だが十分圧倒される曲になっている。

作曲とオーケストラの指揮はエンリケ・バカロフという人によるもの。

この人は荒野の用心棒など映画の劇伴で有名な方で

そのせいか、ちょっと映画のサントラの曲っぽくもあるね。

このアルバム自体も何かのサントラだ、という話も聞くのだけれど

具体的にどんな映画なのかは知らない。情報提供を頼みます。

 

第二楽章・アダージョでは歌が入ります。


New Trolls - (concerto grosso) Adagio

Adagio*1ということでゆっくり聴かせるバラードのようになっています。

イージーリスニング風でなんか放送終了後のテレビでBGMになってそうな感じ

歌詞はハムレットからの引用らしく、

死か眠りか、眠れば夢を見るだろう

という名台詞らしい。

シェイクスピアはちょうどバロック期と重なるので引用したのだろう。

当たり前だが、曲の雰囲気に合っていて◎。

曲の後半ではオーケストラとロックバンドがついに同時に演奏しはじめ

見事な絡み合いを見せてくれる。

ここにクラシックとロックの融合の一つの完成系が見て取れるね。

 

もちろん三曲目は第三楽章・カデンツァ。


New Trolls: Tempo: Cadenza - Andante con moto

前楽章のモチーフを再登場させているのが「らしい」

なんかこの曲位クラシック成分が強くなるともはやロックいらない気もしてくるが

それを言ったらおしまいなので黙っておこう。

なんだかポールモーリアっぽい感動的な盛り上がりをして終了。

 

・・・と思わせといて第四楽章がある。


New Trolls - Concerto Grosso - Shadows (per Jimi hendrix) (1971)

うって変わってロックバンド主体の楽曲。Per Jimi hendrixってあるしね。

ギターの音もジミヘンっぽい人間の声の様な音作り。

前の三曲と音楽性がだいぶ違うが、

通しで聴くと意外と前の曲と違和感なくつながり

第三・第四楽章間で「クラシックとロックをつなぐ」という意味で

融合させていることが分かる。

 

B面曲は20分余りの大曲

これもまあ良いのだが、

A面に比べると少し見劣りしてしまう。

タルカスみたいなもんである。

 

このアルバムはプログレの名作が多いイタリアにおいても傑作と呼ばれるが

そのせいで「New TrollsといえばConcerto Grosso」みたいなイメージがついている。

そのためNew Trollsは色々試行錯誤してそのイメージを覆そうとするものの

やっぱりこれが一番良いです。うん。

 

ちなみにこのアルバムはN.1だが

実はConcerto Grosso N.3*2まである。

でもN.1が一番良いのだが

機会があったら是非聴いてみてください。

N.2のキーボード使いとかは面白い。

 


Concerto Grosso Per i New Trolls - New Trolls(Full Album)(HD)

*1:ゆるやかに

*2:N.3はほんの数年前に出た

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