EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

этажи/молчат дома【2018】

 旧ソよりニューウェーブをこめて

soundcloud.com

何が書いてあるかわからないのは僕も同じです。

 

古い作品ばかり取り上げているので

多少は最近のものも聴いてみましょう。

 というわけでこちら。ベラルーシニューウェーブになります。

 

なんでこんなヘンテコリンなもの知っているかというと

前にフォロワーが「海外でちょっとしたミームになっている」

ロシア語ニューウェーブを集めた動画をツイートしており、

その動画からこれに行きついた、というわけ。

www.youtube.com

そのミームの名はDoomer

実際に検索してみると

この動画にも出てくるタバコを吸っている男性の絵がたくさん出てくる。

詳しく解説を見てみると、

将来に希望の持てない、破滅的な若者のことだそうだ。

そんな人が聴いてそうな音楽がDoomer Musicなんだろう。

 

いやーインターネットの発達は素晴らしいもので

昔だったら絶対に耳に入らないような物事が知れて良いネ。

 

 

旧共産圏では昔から意外とニューウェーブとかテクノ的なものが人気である。

 これを初めて聞いたときに思い出したのはゾディアック


Зодиак - Зодиак (1980) (HQ - Хорошее качество)

この通りの当時の欧米の流行を汲んだテクノ音楽

ソ連のラジオの一押し曲だったらしく、日本でもアルバムが出たらしい。

共産圏でもこんなバンドがあるのか!と皆驚き、

日本では「ソ連YMO」と呼ばれたそうな。

 

あと共産圏での名曲は東ドイツMartin ZeichneteのスポーツBGM用テクノ音楽。

www.youtube.com

この人は西ドイツから飛んでくるラジオを聴いてクラフトワークNeu!とかを聴いていたらしいが、

ある日政府に拉致られ、オリンピック選手強化用BGMを作ることになった。

やり方がえげつないのが共産圏らしい。

その拉致の結果生まれたのが

この、ドイツの香りがぷんぷんする滅茶苦茶良いアンビエント

しかし極秘に制作されたためつい最近まで日の目を見なかった。

この曲によるトレーニングのおかげで

東ドイツのオリンピック金メダル数が世界2位になったという話もある。

 

 

そして21世紀になって現れたмолчат дома。

この人たちは今まで世界に知られていなかった

共産圏のテクノを再評価する一つの潮流を生み出すかもしれないネ。

 

では聴いてみましょう。

一曲目はна дне。

soundcloud.com

キリル文字

活版印刷の文字を運ぶとき荷崩れしたから意味不明になった」

みたいなジョークがあるほど訳が分からないが、

音楽の方はだいぶ素直。ダンサブルなテクノに仕上がっています。

バーブが深くかかっており、去年出た曲とは思えないほど年季が入っている。

日本人からするとYMOのテクノデリックを彷彿とさせる作風だけど

あれよりずっと明るく万人受けするような雰囲気。

ロシア語や延々と続くバスドラム共産圏の工場の様な情景を思わせる。

もっとみんなに聴いてもらいたい、名曲。

 

一番再生されているのはтоскаという曲。

soundcloud.com

ボーカルメインの曲だが、

на днеに比べるとだいぶ落ち着いている印象。

ただ、リズム隊がなかなか面白い動きをしているので

リズム中心の曲のほうが受ける海外の人が好むのかもしれない。

ドラムパターンや曲調から

ちょっとBlue Mondayを思い出すね。

 

 

こんな感じで恐ろしく質の高く、それでいて旧ソ連圏ならではニューウェーブバンドになっている。

最近、欧米でもI Don't Know How But They Found MeだとかBlack Midiだとか

ニューウェーブクラウトロックみたいなバンドが支持され始めているが、

シティポップに続いて世界を席巻するのはDoomer Musicなのかもしれない。

実際消費主義を万歳して幻想を立ち上がらせる最近のCity Pop/Future Funkと対象的に

現実を冷徹な目で見つめようとする現実主義的な音楽なので

強烈なレジスタンスになりそうだ。

さあ実際どうなるかな?

 


Молчат Дома - Этажи

ⒸEPOCALC