EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Not the same/Roby Duke【1982】

布教用AOR

ロング・アフタヌーン (生産限定盤)

ロング・アフタヌーン (生産限定盤)

 

 

昨今、なんだかニューエイジが流行っている。

とはいっても風の時代がどうたらこうたらの方ではなく、音楽の方。

 

こういう音楽はその出自的に全く見向きもされていなかったのだが、

00年代からアングラ界隈のDJがネタ的にかけていたらしい。

それが広まるきっかけになったのがみんな大好きVaporwave

 

www.youtube.com

Vaporは80年代のダサいと思われていた諸々の文化(含シティポップ)をアリにしていったが、

ニューエイジみたいなうさん臭い音楽まで""アリ""にしてしまったのだ。どっひゃあ。

これがブレイクスルーになったようで10年代に起こったアンビエント、そしてニューエイジの再評価につながったらしい。面白いね~

www.youtube.com

 ただジャンル自体の思想が結局風の時代がどうたらこうたら的なやつなので、

それが広まる危うさが指摘される…なんてこともあった。

ここら辺をどう解釈するかが見どころ。

ここまで広まってしまうと音楽だけじゃなく、文化全体を巻き込んだイベントになってきているようだ。

 

 それはさて置いて、この話を聴いた時僕にはある一つのアルバムが思い浮かんだ。

それこそがRoby DukeのNot The Same

AORファンなら知っているかもしれないが、それ以外には多分ほぼ知られていないマイナー名盤である。

しかも海外でも知名度は皆無と言っていいほどらしい。

 

なぜ知られていないか?理由は簡単である。

このアルバム、キリスト教を布教したり教徒に聴かせたりするために作られたものなのである。

ジャンルはコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック(CCM)というものに分類されるが

これは一見普通のロックやポップスに聴こえるものの歌詞にバンバンキリスト万歳みたいな話が出てくるというなかなか尖り散らしたジャンルである。

 

その歌詞ゆえに本国では特殊なジャンルとして扱われているようで、

丁度日本のニューエイジ盤みたいな立ち位置らしい。

しかし英語の分からない日本のリスナーにとってはそんなのどうでも良いことで、

むしろ妙に良い曲が多く、名曲の宝庫として扱われている。*1

 80年代のCCMはメロハ―路線とAOR路線に大別できるのだが、今作はAOR系CCM最高傑作といっても差し支えないようなアルバム。

 

一曲目からAORとしての完成度が異様に高い。

 

海辺をオープンカーが駆け抜けていくような爽快感がたまらない。

なんだか夏のディズニーランドの水辺で流れてそうな一曲。

よく聞いてるとゴッドとかジーザスとか聴こえてくるが、無視しよう。

 

バックがかなりカッチリとしているが、それもそのはずTOTOのメンバーがいるらしい。

AORの名盤には大体TOTOのメンバーがいる。これは憶えておこう。

 そして上の動画サムネを見て分かる通りこのおじさんである。

AORの名盤は大体こういうオジサンが歌っている。これも憶えておこう。

なお、おじさんジャケが素敵すぎるので日本盤は差し替えが入っている。

AORの名盤はジャケが大体さし変わっている。これもついでに憶えよう。

 

この写真当時26-28歳(マジです)だったらしいが、その歌声は天下一品。

 なんだかボズ・スキャッグスを彷彿とさせる伸びやかな歌声。

そして個人的にはボズ・スキャッグスより曲が良いんじゃないかと思えてしまう。

 あと、この曲もだがカッティングギターとストリングスのアレンジが美麗。

ちなみにこのギターやアレンジャーたちもCCMの人であったりする。福音派色々独占しすぎでは?

 

 

タイトル曲もミッドテンポでカッコイイ。

間奏前の各パートの絡み合いが素晴らしく良い....

AORはシティポップに比してツマラナイと思うことも多いのだが、これに関しては別格である。あまりにレベルが高すぎる。

これだけの逸材がキリスト教の一部の人にしか聴かれていないなんてもったいないと思ってしまうのは僕だけではないはず。

 

 

 さてこのアルバムを調べている中で驚くべき事実を発見した。

なんとかのLight Mellowでおなじみの金澤寿和氏が初期に解説を執筆されたアルバムであるそうだ。

lightmellow.livedoor.biz

これに関してはちょっと驚かざるをえなかった。

何故ならば、日本においてニューエイジ再評価の先鋒に立っていたのは金澤氏に影響を受けたディガー集団・lightmellowbuだからである。

そもそも彼らの名も金澤氏の合言葉「Light Mellow」からであり、上に貼った金澤氏のブログの題名にもこれが使われている。

で、そのLight Mellowってなんぞやというと、こういうことらしい。

それは、心地良い音楽を形容するひとつの言葉。ジャンル用語でもなければ、特別な音楽専門用語でもありません。洋楽と邦楽の壁もなく、“洗練”や“都会”をキーワードにして、ポップス、ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、フォーク、ボサノヴァ、ラテン、そして時には歌謡曲…。そんな様々な香りを溶かし込み、こうして1枚のディスクに無理なく収めてしまう。それが Light Mellowの極意です。

https://www.universal-music.co.jp/jp/light-mellow/

 

洗練、都会的というのを突き詰めていった結果、根源的ともいえる宗教の音楽に辿り着いてしまうのは皮肉な感じがする。

「洗練された都会」に住んでいても、人間の精神性は伝統的な宗教観が支配していた時代から何も変わっていないのかもしれない。

 


Roby Duke -- Not The Same (Full Album)

*1:曰く、福音派ずるい!

ⒸEPOCALC