Carlos Aguirre Grupo(Rojo)/Carlos Aguirre Grupo【2004】
南米悪魔融合
僕は(詳しいかはさておいて)ブラジル音楽好きなのだが
ブラジル音楽を掘っていると自ずと行き当たるのが隣国アルゼンチンの音楽である。
というのも、知らぬ人にはナンジャラホイという感じであろうが意外とアルゼンチンには良い音楽が多いのである。
ポストロック好きならアルゼンチン音響派が思い浮かぶかもしれない。
Juana Molinaは国民的コメディアンからSSWになった異色の経歴の持ち主。
こういう結構通向けの曲なので、元々のイメージと乖離しすぎて売れなかったとか。
ポストロックそのもの!というよりは、それのフォーク的解釈という感じ。
こういう音楽が出てくる背景にはアルゼンチンに伝わるフォルクローレが重要になってくる。
友人にラテン音楽の鬼がいるのだが、彼によれば元々スペイン王朝でフランスを真似て演奏されていた音楽が植民地に伝わり
当地の音楽と融合など色々あった結果土着化したのがこれらしい。
実は南米で唯一ブラジルはフォルクローレの影響がほぼないと言われている。
ブラジルだけがスペインではなくポルトガルに支配されたため、フォルクローレとはやや違った音楽があるというわけ。
そして逆に最も影響が濃く残っている国の一つがアルゼンチンらしく、故に互いに影響しあえどブラジル音楽とは全く違う音楽が楽しめる。
もっとも有名なフォルクローレは、サイモン&ガーファンクルのカバーでも有名なコンドルは飛んでいく。
う~ん、アンデス~
これに代表されるように、ブラジル音楽が享楽的傾向にあるのに対してアルゼンチンは内省的傾向にある音楽性。
故に意外とファン層はかぶらなかったりする。
そして、現代のフォルクローレで中心的な位置を占めているのは今回ご紹介する Carlos Aguirreである。
この人はそんな近いようで近くないブラジル音楽とフォルクローレの感覚を混ぜてしまった人。その意味でかなり偉大である。
Carlos Aguirre Grupo(Rojo)は彼の作品中でも特に名盤と呼ばれることの多い一枚。
ところで、(Rojo)ってなんやねんと思った人がいるかもしれないが、これは赤という意味。
バンド名と同じ名のアルバムを複数出しているので色で区別しているのだ。
セルフタイトル複数出しは南米の人だとよく見る気がする。この禁じ手使っているのはWeezerだけじゃないぞ。
ラテン系の適当さが表れているのだろうか。
アルバム名は適当だが、再生すると同時に彼のブラジル音楽愛が伝わる。
フォルクローレらしいフォークギター爪弾きから始まり、すぐにラテンなリズムの打楽器類が入ってくる。
南米の蒼い海が目に浮かぶような素敵な音楽が続くのだが、よく聴くと構成やコード進行がすごく面白い。
こういうタイプの謎構成はブラジルの実験的なMPBに多い感じがするが、そこら辺の影響なのだろうか。
そういう観点でもブラジル音楽っぽいのだが、やはりどこか内省的。
ショーロや初期のボサノヴァみたいな感じも受けるね。
他の曲もブラジル音楽の感覚が見え隠れする。
曲名で思いっきしリオと言ってしまっているしね。
この曲のギターの弾き方は個人的には超絶技巧ボサノヴァBaden Powellを思い出す。
この急激に上がったり下がったりする感じね。
この人の弾き方をデフォルメして代わりに歌乗っけたような雰囲気を受ける。
歌ものだけではなく、アルバム後半にはインスト曲もいくつか入っているが
こちらも少しでもラテンジャズが好きならぶっささる内容。
出だし部分の各パートが己の道を突っ走っているような絡み合いがとてもおいしい。
個人的一押しポイントは前半部から後半にかけてのつなぎ部のギターアルペジオ。
...なんて思っていたら実際エレクトリックバンドでやったライブ音源を発見!
ちょっと音が悪いのが残念だが、ピアノの超絶演奏っぷりが凄い。
で、そのピアニストがCarlos Aguirre御本人のようだ。さすがでございます。
このアルバムはアルゼンチン音楽オタク*1にとってはメジャーな名盤であるらしいのだが、なんとこのアルバムDiscogsになかった。
Discogsって意外と載ってないのだが、これがなかったのには驚き。
僕新しいアルバムページの作り方分からないんで有識者、お願いします。
ちなみに、このアルバムのジャケットは組み立てることができるらしい。
その触れ込みもあってこのアルバムのCDをわざわざ買ってみたのだ。ちょっとやってみよう。
…
……
…………
いやこれどうやって組み立てるの???
*1:世界広し。