趣味趣味音楽30枚
先週末、Twitter上でちょっとした旋風を巻き起こしていた催しがあった。
皆さんの投票による邦楽アルバムベスト100ランキングやりたいと思います。
— JMX (@JmxMbp) August 12, 2020
①邦楽アルバムを30枚選んで「順位をつけて」僕にDM下さい。DMが嫌なら@JmxMbp にリプでもOKです。僕をフォローする必要は全くありません。参加自由です。
②締め切り 8月22日午後10時まで
画像は細かいルールです【必読】 pic.twitter.com/beYqp0Ilg8
JMX氏主宰のみんなで邦楽Top100をきめるというイベントである。
このブログでも名盤ランキングをやったが、
バーコードバトラーで決めるというアホな決め方をしたので
ちゃんとしたランキングをこの際作っておこうかな、と思って参加させてもらっていた。
で、そこから数日の間に伏見瞬をはじめとして結構有名人まで参加するかなり巨大なイベントに化す。
ベスト30こっそり投票するつもりだったんですが、真剣に考えはじめちゃって結果最高のセレクションができたので公開します https://t.co/xGua6H83rE pic.twitter.com/uTj3lRts2w
— Shun/伏見 瞬 (@shunnnn002) August 21, 2020
この人出てきたときはビックリした。
結局計180人分ほどのデータになったそうだ。
180×30で総数5400の集計データである。
これだけの膨大なデータを一人で集計するため、
100選を出すにはまだ時間がかかるそう。
さらにこのブログのネタも切れ気味になっていたので
僕が30選に選んだアルバム群をこの記事では紹介させてもらおう!
30位 ぱんださんようちえん-再生ハイパーべるーヴ
おい初手からヤバいのぶっこんできたなとお思いでしょうが、
その通り、頭から終わりまで電波ソングまみれの一枚なのだが、
自由奔放さは他の追随を許さない。まだ電気グルーヴの方が大人しいまである。
いまでもその手の名盤として認識されているらしく、
同人アルバムには珍しく再発までされているのだが
なかなか中古で安く転がっていない。
個人的には21世紀日本版Trout Mask Relicaだと思っている。
29位 溶けだしたガラス箱-吐痙唾舐汰伽藍沙箱
70年代音楽界役満みたいな人選で作られたアシッドフォークの名盤。
五つの赤い風船はなんだか売れ線フォークだったイメージがあるかもしれないが
巫olk脱出計画というまことにサイケなアルバムも出しており
かなりアングラ色も濃かった模様。というかバンド名が普通に狂っている
そこでの経験をさらに昇華したのがこのアルバムのようだ。バンド名さらに狂った
五つの(ryのサイケ感やコーラスワークはもちろんのこと、ジャックスの脆さ、
さらにはバックメンバーのおかげでクルセダーズやはっぴいえんど、クリエイションのロック感まで一緒くたになっており
70年代初頭時点での邦楽ポップスの総括的な盤でもある。
28位 東北新幹線-東北新幹線
再評価著しく、最近サブスク解禁までされたシティポップ影の名盤。
シティポップはなんだか元気なイメージがあるがこちらは比較的ダウナー。
以前レビューしたので詳しくはそちらをどうぞ。
僕は東北人でもあるので妙な愛着がある。
27位 銀河鉄道-銀河鉄道
70年代の高校生バンドの唯一作。*1
これの凄いところは作風がほぼ完全に初期サニーデイ・サービスなのである。
当時としてはかなり先進的なことをやっていた人々に違いない。
また、サニーデイ・サービス自身もほとんど70年代に近づくことができていたこともこれで示される。
彼らがそのまま続投して音楽界に本格的に乗り込んでいれば
日本の音楽的水準はとんでもないことになっていただろう。
26位 平成-折坂悠太
昨年のCDショップ大賞受賞作。
最近のフォークだと、前衛音楽や打ち込みなど新しいものを取り入れる感じがするのだが
この盤ではもちろんそれは取り入れたうえであくまで演歌や民謡をベースにしており、
しかも散らからずにきちんと全部まとまっている。
大滝詠一の発言に「もう演歌はポップスとしてお払い箱なんだよ」と言うものがあるが、
このアルバムのせいで息を吹き返してしまった。
大滝詠一でさえ読み切れなかった名盤である。
ちなみに折坂氏のフェイバリット・ソングはズンドコ節だそうだ。予想通り過ぎる。
25位 新月-新月
ジャパニーズ・プログレの名盤。
プログレはその土地その土地の民謡を参照することがまあまあ多いのだが、
それを日本でやると前述の折坂悠太になってしまうので
あんまり日本のプログレでは引用せず、海外クラシックを参考にしている感がある。
そのなかで新月のこのアルバムだけは妙に和風なのである。
一曲目の鬼なんて完全に日本の冬の情景が目に浮かぶし、
インスト曲もヨナ抜きじゃないのにどこか和風なのである。
良く分からない技法によって成立している、謎の名盤だ。
24位 The Timers-The Timers
キヨシローの覆面バンドの1st。
ここまで反骨精神むき出しのアルバムはそうそう日本でみれたもんではない。
詳しくは下の記事をどうぞ。
23位 エアにに-長谷川白紙
去年出たばかりの作品。
だけれど結構な人数これを30選に選んでいるのを見るに、ランキングに入ること間違いなしであろう。
例によって音楽理論ゴリゴリなのだが、比較的ポップにまとめられている印象。
そのバランスが良いので皆選びたがるのかもしれない。
あと、個人的に長谷川氏の知り合いが周りに割といるので
いつか出くわすんじゃないかと心配している。
だって、彼は絶対物腰柔らかそうに見えて裏で何考えているか分からないタイプの怖い人じゃないですか!
22位 My Lost City-cero
Ceroの名作と言われているのは断然3rdの方だけれど、
僕はこっちの方がお気に入り。
他のCeroの曲とは毛色の違う、元気な曲が多いのが特徴。
でもその中に見え隠れする東日本大震災を彷彿とさせる歌詞や明るいのだけれど不穏で狂った雰囲気が大好き。
先述の通り、東北人なので先の震災にも巻き込まれているのだが、
当時の町の様子はこのアルバムのような、妙な陽気さに包まれていたことを覚えている。
暗いシーンで明るい音楽を流す、という手垢のついた映像の手法があるが
あの震災の記憶ほどこのアルバムが似合うシーンはなかなかない。
21位 ライブ-村八分
伝説の京都のバンド唯一の公式アルバム。
バンド名が村八分だし、メクラなど普通に差別用語を用いていくなど、
今やったらバッシングがやまないであろうバンドである。
パンク・ロックを世界でも最も早く実現したバンドとしても知られ、
Charがセックス・ピストルズを聴いて「村八分と同じじゃん」と言ったことも有名。
あと、これは僕の偏見だが、はっぴいえんど好きはひい、ふう、みい、よ、
頭脳警察好きは謎の宣言、村八分好きは客の罵倒から演奏を始める。これは間違いない。
20位 海風-風
かぐや姫の元メンバーがやっていたバンド。
なのだが、フォークだと思った?残念シティポップでした!!!
しかもシティポップといってもかなりR&B的なものでカッコイイ。
母親の友人が昔このバンドのコピーバンドをやっていたらしく、
それ故小さいころからこれをよく聴いていた。
再評価してほしいバンドの一つ。
19位 一触即発-四人囃子
【Amazon.co.jp限定】一触即発~デラックス・エディション~ [3CD] (Amazon.co.jp限定特典 : デカジャケ 付)
- アーティスト:四人囃子
- 発売日: 2019/10/23
- メディア: CD
日本のプログレはここから始まった!伝説の四人囃子1stアルバム!
...あ、上は今妄想で作ったアルバム帯です。
内容も当時の海外レコード会社に胸を張って提出できるレベルで
海外の潮流をよくここまで短期間でかみ砕いて自分のものにできたなあ、とこれを聴くたびに思う。
よく聴くとプログレ以外のリファレンスもちょこちょこ混じっているので、耳を澄まして聴くこと推奨。
18位 MAP-group_inou
妙なラップと妙なトラックのユニットの最終作。
このユニットを偶然知った時はまだほとんど最近の*2日本の音楽を聴いておらず、
それ故とんでもなく衝撃的だったように覚えている。
結局知った直後にこれを出してじきに解散してしまうのだが、
最終作のこれが一番きれいにまとまっているような気がする。
名盤と言われるのは初期作なことが多いが、
最終作まで進化しつづけることできたのは稀有だと思う。
17位 Splash-Citrus
EPとシングルしか出さない宅録バンドで最長収録時間のEP。といっても15分だけど。
収録されている曲はcitrusのキャリア中でも名曲といえるものがそろっており
短さも相まって気付いたら終わってしまっているのが悲しい。
また途中で挟まる謎の語りが滅茶滅茶に面白く、
初めて聴いたとき、電車の中で笑い転げそうになった。
16位 All Vacation Long-Pictured Resort
今回の30選の中で一番趣味趣味で選んだもの。
大阪のシンセ・ポップバンドの1st。
シンセポップと言っても、その実ジャケの通りのシティポップであり、
しかも全曲大名曲という奇跡的な一枚。
現在もシティポップ最高峰バンドとしてファンも多いが、最近の作品から思うに
渋谷系から変容したフィッシュマンズの如く彼らも別の何かに変化していくんじゃないかと感じている。
15位 Susuto-菊地雅章
和製エレクトリックジャズの大名盤。
マイルスに「俺以上に俺のことを分かっている」と相棒か恋人にしか言わないセリフを言わせた人物の真骨頂。
ミニマム的な音楽なのだが結構激しく頻繁に拍子やテンポが変わる、楽しいアルバム。
プログレとかニューウェーブとか出て来たけど、ジャズ息してる...?
という時代に出てきたジャズの高らかな勝利宣言である。
正直もっと順位上な気もしてきたが、後の祭りってやつです。
14位 シフォン主義-相対性理論
所謂「サブカル」の道をきれいに舗装したのはこのバンドであろう。
言葉遊びを重視したナンセンスな歌詞とやる気なさげなボーカルが強力にクロスしており、
以降この組み合わせで音楽をやっている人を大量に見ることになる。
また、歌詞やボーカルに目が行きがちだがベースラインもすさまじく、
緩いメロに対比される形で変態的なベースが鳴り響くのも面白い。
というかどう演奏してるのこれ。
13 喜納昌吉 & チャンプルーズ-喜納昌吉 & チャンプルーズ
ハイサイおじさんは民謡ではなく、このアルバムが初出です。
で、そういうアルバム。ニューミュージック系のロックに沖縄民謡を合わせたもの。
忘れがちだがこのアルバムはライブ編集盤であるので、かなりノリノリの演奏が楽しめる。
これの偉大な点は日本にもロック的な音楽に応用できる民謡があるという発見をもたらしたことである。
細野晴臣なんかはもろこれの影響下にあると言っても過言ではないだろう。
ところで折坂氏の「平成」はこれを演歌の域まで持っていったもののように感じているが、
果たしてこれと同レベルの影響を与えられるだろうか。
12位 FAB FOX-フジファブリック
現在、2000年代は邦楽の闇のように扱われており、
実際僕が子供の頃は当時の流行曲に良いと思ったものが一切なく、*3
加えて邦ロックも全く好みではなかった。
ほとんど唯一聴けるのがフジファブリックである。で、一番気に入っているのがコレ。
ポップ系プログレ的な作風で、アルバム自体もコンセプトアルバムになっており
「アルバムとして」万人にお勧めできるアルバムに仕上がっている。
実は当時全く反応がなかったそう。何故。
11位 東京-サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービスは道を切り開いた者であろう。
これについての記事があるので詳しくはそちらを。
10位 僕の中の少年-山下達郎
皆さん、ヤマタツのどれ選ぶかは大体相場が決まっているが
僕は皆が選ばないこれ。多分一番多く聴いたヤマタツアルバムのはず。
当時、タツローは打ち込みとの付き合い方に悩んでいるころだったらしく、
このアルバムでも結構打ち込み系の音が聞こえてくる。
というかがっつりニューウェーブを意識していることが分かる。
このころのタツローは最早シティポップとは別物のように思えてくるので
何か新しい名称が必要かもしれない。
9位 Mint Jams-CASIOPEA
日本を代表するフュージョンバンドの名ライブ盤。
そう、ライブ盤なのだがミックスの妙で観客の声はほとんど聞こえない。
その為スタジオアルバムとライブ盤のいいとこどり的な、最高の形態の一枚である。
収録されている曲もCASIOPEAが一番脂がのっている時期の曲なので
フュージョン初心者の人に何か渡すならこのアルバムを。
8位 super ae-boredoms
最高のノイズバンドの傑作。
boredomsはこれかVISION CREATION NEWSUNで割れるが、僕はこっち派。
日蓮宗に光明真言というのがあるのだが、あれを彷彿とさせるボーカルに
めっちゃ重いギターがのってきて楽しい。
また、そういうヘヴィな方向にばかり寄るのではなく
ミニマムミュージックに傾倒した軽めの箇所も用意されていて一枚の充実度が高い。
ところでこれどう表記すべきなんだろうね。aeかareか。
æと書けば良いけどどう変換すればよいかわからんし…
7位 空洞です-ゆらゆら帝国
みんな挙げてるシリーズ其の一。
ゆら帝のラストアルバム。
激しめの曲やサイケを売りにしてきたゆら帝がここまで変わったのだから、
当時のリスナーは仰天したことであろう。
でもなんだか聴くと涙が出そうになる儚さが良いね。
ちなみに僕のお気に入り曲はひとりぼっちの人工衛星です。
6位 月の光-冨田勲
あなたのテクノはどこから?私は冨田勲から!
ということでこれを外すわけにはいかない。
いかんせんポップスやロックのファンからの集計なので冨田派は数少なく、ちょっと寂しい。
これの記事もあるのでそれもどうぞ。
5位 awakening-佐藤博
ちょっと前まで影も形もなかったのに
最近これの話ばかりよく聞く、シティポップの名盤。
やっていることがテクノ×シティポップという
最近の人がやりがちなことに手を出しているからだと思われる。
これまた記事があるので詳細はそちらへ。
4位 FANTASMA-Cornelius
みんな挙げてるシリーズ其の二。
でもまあ、後述の一位を除けば確実に一番聴いているものなのは確か。
今の人でこれに影響されていない人っているの?レベルの名盤だね。
これも記事に譲ります。
3位 lust-rei harakami
みんな挙げてるシリーズ其の三。
あまり最近のを聴いてこなかったので大学入ってから先輩に教わったものだが、
大学に入ってから聴いたものの中で今のところ一番良いアルバム。
ダブとミニマムといういかにも前衛な要素をここまでポップに、そして美しく仕上げられるのは流石。
そして大概音楽というのは晴れか雨かを想起させるものが多いのだが、
これに限ってはジャケ写のような真っ白な曇天模様が良く似合う。
ちょっと鬱屈としているからかな?
あ、この人せいでSC88Proはこういう儚げな曲に似合うと思っている方も多いかもしれないが、
本来はスーパーのBGMとかに使われているようなものだということをお忘れなく。
2位 LONG SEASON-fishmans
一枚にめっちゃ長い曲一曲だけ入っている狂気のアルバム。
fishmansは空中キャンプか宇宙日本世田谷を選んでいる人が多いが、僕は絶対にコレ。
これは本当にサウンドスケープが素晴らしく、
一体どうやって出しているんだ?というサウンドや
フィールドレコーディングのような要素まで込められており、
一曲とはいえお腹いっぱいになることができる。何より美しいしネ。
これも記事があるのでそちらも見てくれよな!
1位 A LONG VACATION-大滝詠一
まず文句。これを挙げている人が少なすぎる。
結構みなYMOとか敢えて外している傾向にあるが、
外されたYMOよりさらに輪をかけて少ない印象だったぞ!
恐らく、これを単なる耳に良いポップス曲集と思っている人が多いからだと思うが、
そんなのとは一線を画している超前衛アルバムなのを多くの人は分かっていないらしい。
JMX氏が仰るに、100選を集計したら各アルバムのレビューを一位に選んだ人に依頼するらしい。
いくら少ないとはいえ、ロンバケは多分入るだろうので
もしレビューを書くことになったらよろしくお願いします。