この前選んだ洋楽30選小レビュー
空前のランキングブームの波に乗れ!
先日あった邦楽100選以来ネット上では様々なランキングや名盤関連のハッシュタグが飛び交っている。
例えば、#オールタイムベストエモだとか#過小評価されてると思う私的に最高な邦楽アルバム10選だとか。
やります。エモ好きの方、ポストロック好きな方はよろしくお願いします。
— ジュン (@h8_wa) October 9, 2020
投票は10/30(金)23:59まで。
※得票が少なかったら企画自体を無しにする可能性はあります。ご了承ください。#拡散希望RT #オールタイムベストエモ#オールタイムベストポストロック
以下、ルール pic.twitter.com/9ybSFIqByl
こうなってくると一種の社会現象と呼べるものになってきた。*1
今年の流行語は「コロナ禍」「鬼滅の刃」「名盤ランキング」の三つ巴に違いない。
さてそんな中で一番にのっかったのはModern Age氏の #みんなが選ぶ洋楽オールタイムベストアルバム100_In2020だろう。
#みんなが選ぶ洋楽オールタイムベストアルバム100_In2020
— Moden Age (@92012849r) October 1, 2020
#みんなが選ぶ邦楽オールタイムベストアルバム100_In2020
ルールを発表しました。気軽に参加してください。皆様の30枚がランキングを作ります。 pic.twitter.com/RzF1LJhm2u
ただ、最初は英米オンリーとのことだったのでユーロロックやボッサ好きの僕は参加を控えようかな...と思っていたが、
すぐにルール変更。日本以外全部という筒井康隆並の太っ腹になったのですぐに参加した。
今回は邦楽に引き続き洋楽の方の僕の選盤を紹介させていただきます。
正直に言うとあんまし洋楽しらないんだけどね...
30位 Trout Mask Replica-Captain Beefheart&The Magic Band
でました。世紀の大迷盤でござい。
ジャムセッションで作られたような奇々怪々な曲が連なり、何も知らないと即興で作られたものなんだろうな、と思ってしまうが
実はそうではなく、Captain Beefheartがちゃんと頭で考えて作曲したものであるらしいから驚き。
で、それを再現するためにバンドは8か月毎日12時間練習させられた。ひでえや!*2
そんな練られたアルバムだからか、この手のアルバムにありがちな方向性が分からなくて飽きるということがあんまりなく、
むしろアルバムの1/4くらい過ぎたときにはもう謎の力でノリノリなっていること必至。
29位 All Things Must Pass-George Harrison
みんな言うことだがBeatlesのソロはどうしてもBeatles期の曲に比べて見劣りしてしまっている気がする。
ただし、この人は例外。一番脂がのっている時期で解散したので直後のこのアルバムの完成度が凄い。
多分後々のAORとかのポップスの源流はこのアルバムなんじゃなかろうか。
バンドでもっと作ってほしかった感もあるが、このアルバムが元々は3枚組なので許しているところもある(かも)。
28位 Hit Vibes-Saint Pepsi
昨今流行っているシティポップだが、大きく盛り上がり始めたのはここかららしい。
Future Funkの始祖的な盤で、手元の蒸気波ガイドでもFuture Funkでは一番頭に載っている。
シティポップ、R&Bやディスコなどの古い音楽のワンフレーズが執拗に繰り返され、繰り返され、繰り返され...
「亡霊のように踊らされている」、というのは非常に素晴らしい例えだね。
以前レビューしたので詳しくはそちらもどうぞ。
27位 Concerto Grosso n.1-New Trolls
イタリアンロックの名盤。
もう手垢がギトギトについた話題に「ロックとクラシックの融合」というのがあるが
それを地で行く...というかある意味での最適解を導き出したのがこの盤。
オケとバンドが一緒になってポール・モーリア風の音楽を鳴らし
そしてその間に挟まる泣きのギター。
若干一発ネタ感も否めないが、プログレ屈指の名演だと思う。
このアルバムが凄すぎてNew TrollsといえばConcerto Grossoみたいな感じになってしまい
本人たちはそれを払拭しようと頑張ったようだが諦めたらしくConcerto Grosso n.3まで作っている。興味ある人は是非。
26位 Valtari-Sigur Ros
これについて調べてみたが、なんとSigur Rosのなかではイマイチ認定されているようだ。
そんな!こんな良いアルバムなのに!?
内容はアンビエントをポストロックでやってみました!という感じ。
例えるなら映画の前に流れる音楽を集めてきたようなアルバム。
他のSigur Rosのアルバムよりも輪をかけて落ち着いており、その点の印象がロックファンには良くないのだろうか。
僕はアンビエントとポストロックが好きなので好き。
カレーにカツ乗せればうまいのと同じである。ウム。
ところでこの前脱税がどうのと話題になっていたが大丈夫だろうか。
結構金銭面で苦しいとか。がんばれ!!
25位 To Pimp A Butterfly-Kendrick Lammer
僕はどうもラップが苦手でHip Hopはトラックだけでいいよ…的な立場をとっているので
あんましラップというのを聞かないがこの人は別である。
というか、後ろでやっている音楽家が全員ジャズ畑の人なので
ほとんど最近のジャズに語りがのっているような構成だ。
ラップで見え隠れする嫌なマッチョさがあんまり感じない音像で好き。
どうやら歌詞も凄いらしいのだが英語分からないので割愛。
調べてみたら、なんか凄かったです。(小並感)
24位 Autobahn-Kraftwerk
どこかで見かけたレビューに
電子音鳴らしてニアニアしていた陰キャがみんなにも分かるような曲を作ったらこうなった
というのがあったがまさにそういうアルバム。
今まで実験室の中だけの存在だったシンセサイザーを外に引っ張り出してきた偉大な盤。
というか英米のアルバムしかないような名盤選にも普通に入ってくるあたりすげえ。
ちなみにこれの日本盤の帯が面白かったのでお時間あれば下の記事を読んでみてくださいな。
23位 1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabbiati Restano!-Area
1978 (Gli dei se ne vanno, gli arrabbiati restano!) [2018 Remaster]
- 発売日: 2018/10/26
- メディア: MP3 ダウンロード
ボーカルがヤバいバンドの名作。
どうヤバいかと言うとホーミー、オペラ等々考えられる限りの全ての技法を使っていくという変人。
またバンドの演奏力もすごすごでフリージャズ的な音楽が炸裂していく。
同時代的な評価がこのアルバムの直前までほとんどなかったのが信じられないほど凄い人たち。
これはボーカルが脱退する前の最後のアルバムで
他のアルバムに比べてよりポップに仕上がっているのだが
それでいて実験精神も忘れていないのが流石。
プログレ好きでは有名なのだが、一歩他界隈に行くと途端に無名になるバンド。
知らない人は是非聴いてほしい。
22位 In The Court of Crimson King-King Crimson
In The Court Of The Crimson King (50th Anniversary Edition) [Blu-ray]
- アーティスト:King Crimson
- 発売日: 2019/11/08
- メディア: Blu-ray
これ、解説いる?ってくらいのアルバム。
プログレに珍しく全体的に割と短めでこの前もペプシのCMで使われてたね。
本国ではそこまで有名でもないという話をたまに聞くけど、どうなんでしょう。
僕は絶対にガセネタだと思う。
21位 KID A-Radiohead
ネタバレ。オケコンは選んでません。
つまり僕のレディヘで一番好きなのはこれってことになります。
オケコンも良いんだけれど、あんまりオルタナチックなものが好きではないんですよね...
あと、アンビエント好きなのでこっちのほうが好きなのかもしれないね。
そういえば受験の前の日に聴いてたら不安が倍増したな。受験生諸君は真似しないように。
20位 Tago Mago-CAN
略してたまご。*3
ボーカルがダモ鈴木という日本人なので、我々にとっては馴染みやすいドイツのバンド。
このアルバムが特に名盤の誉れが高く、クラウトロック関連でみないことはない。
四つうちの所謂ハンマービート的なリズムが延々と続き、
いつの間にかトリップした感覚へと連れていかれる合法麻薬。
日本人による日本語の歌が聴ける稀有な洋楽名盤でもある。
19位 Floral Shoppe-Macintosh Plus
今の音楽界を定義づけていると言っても過言ではない一枚。
これがなければシティポップがここまで流行ったかどうかは怪しいし、
そもそも80年代に注目さえ集まらなかったかもしれない。
また、アルバム自体も作った人のセンスが炸裂しているのにも注目。
普通この手のサンプリングトラックは一曲に数曲の元ネタを使うが、
一曲に一曲だけ使うハードスタイルで攻めたのは偉大過ぎる。
ちなみに、これの看板曲現代のコンピューを人力でカバーしている変人がいた。阿保。(誉めている)
MACINTOSH PLUS - リサフランク420 現代のコンピュー (Cover)
18位 Penguin Cafe Orchestra-Penguin Cafe Orchestra
もっと評価されるべきなアルバム、其の一。
恐らく、ジャンル的にはポストクラシカルなのだが、
にしてはなんだか妙にポップで、シリアスさはあんまり感じない。
そしてどこかロック的でもあるのだが、どこがと言われると答えに窮してしまう。
一言で言い表すのが難しいバンドなのだが
それを見事に言い表したバンド名。ペンギンでカフェでオーケストラなんだよ。
このクラシックともロックともつかない謎の音楽性で
あるレコ屋ではプログレに、またあるCD屋ではジャズに置いてあるという妙な存在。
技術ではなく音像で勝負、バンドでロック以外をしようという発想は
後続のポストロック勢に影響を与えた。
ちなみに、この人たちのトリビュート盤が大体はっぴいえんど界隈なので
Penguin Cafe Orchestraもはっぴいえんど史観扱いされることがある。それはやりすぎ。
17位 E2-E4-Manuel Göttsching
僕は1枚に一曲しか入ってないアルバムが大好きなのだが
その中で一番好きなのがこれ。
発売時点では「Tangerine Dreamじゃんwww時代遅れwww」と言われ、全く見向きもされなかったのだが
ハウスでサンプリングされるようになると評価が一変。
今やハウスの始祖的な大名盤扱いを受けている。
実際聴いてみるとTangerine Dream感もあるのだが
それ以上にノリが良く、所謂New Ageとは一線を画していたことが分かる。
一家に1枚は置いときたいアルバム。
16位 Acabou Chorare-Os Novos Baianos
MPB初期作にして最高傑作の内の一つ。
今一度ブラジル音楽というのは何だったのかを見つめなおして作られた
ブラジル人にしかできないサイケだ。
詳しくは記事をご覧くださいな。
15位 In The Aeroplane Over The Sea-Neutral Milk Hotel
日本人が好きそうなのにあんまり日本人が知らないと言われる名盤。
その良さはピッチフォーク満点の折り紙付き。さあ聴いた聴いた!
感覚としてはRubber Soulに近い感じ。
だが、あれよりもずっとサイケになっておりコンセプトアルバム仕立て。
Rubber Soulの作風のままSgt.Peppersに突入したBeatlesみたいなアルバムである。
確か20世紀末の作品だったと思うのだが、ピコピコサウンドやオルタナが跋扈する中、
こういうフォーキーな歌ものをやったのは皆驚いただろう。
14位 Blonde on Blonde-Bob Dylan
2枚組アルバムで一番好きなやつ。
歌詞も良いらしいが、普通にメロと声が好き。
前に記事を書いたのでこれもそれを読んでみてね。
13位 Arti+Mestieri-Tilt
個人的にはイタリアンロック最高峰。
基本的にはちょっと芋臭く、斜に構えたようなジャズロック。
それでも十分魅力的なのだが、そのバンド隊の下で筋肉ムキムキのドラマーがバカスカ叩くという
なかなか独特の構成で成り立っているバンド。
欧州の田舎道の上で馬車が荷車を引っ張っていくようなイメージの音楽が繰り広げられ
まさにイタリアの田舎!一気に聴ける。
マグリットみたいなジャケ写も大好き。
一つだけ難点を挙げるとしたらドラムのミックスが小さいこと。
元々のドラムの出音がでかすぎたのだろうか?
12位 Odessey&Oracle-The Zombies
Sgt.Peppersが出たとき、世は空前のサイケ戦国時代と化し
数多のサイケバンドが出ては散ったらしいが、
マニア以外にもちゃんと受け継がれて聴かれているのはこのバンド位かもしれない。
Time of the Seasonがこのアルバムでは一番有名でカバーも多いが、
他にも良曲ぞろい。というかTime of the Seasonが一番地味曲説がある。
一回このアルバムの鍵盤を弾いたことがあるが、コードだけなのにめっちゃ大変だった。なにあれ。
11位 Herbie Hancock-Head Hunters
一曲目のベースを聴いた時点でもうノリノリ。
ジャズの名盤であり、ファンクの好盤であり、フュージョンの始祖。
これだけ色んな分野を取り入れつつ難しくなっていないのは流石すぎる。
このブログの記事もあわせてどうぞ。
10位 NEU!'75-NEU!
このポップな意匠から度々パロディの標的になるクラウトロックの代表的存在。
名曲と誉れが高いのはHallogalloで、一般的な知名度が高いのはそれが入っている1stだろうけれど
アルバムとしての完成度は圧倒的に3rdであるこれだと思う。
ほとんどの曲で彼らの十八番ハンマービートが打ち鳴らされるが
トランスあり、パンクあり、アンビエントありと実に豊富。
いかに様々な人々に彼らが影響を与えるかを予感させる一枚。
9位 Funeral-Arcade Fire
最近までポストロック勢に勘定していたのだが、
調べたらどうやらそうではないらしい。うそん。
で、そういう人たちの1stアルバム。
でも相当にクラシックみたいなことをやっていて
音像の構築とかもポストロックっぽいと思うな...。
でもこの手の人たちに比べて歌の比重が大きいのが特徴。だから分けられるのかも。
海外ではかなり流行ったらしいが、日本では取り残されてしまい、
そのことが日本音楽業界では大失敗として認知されている様子。
その反省が今のビリー・アイリッシュのプロモに繋がってるらしい。 へえ。
8位 Since I Left You-The Avalanches
もっと評価されるべきなアルバム、其の二。
サンプリングアルバムの最高峰といえばこれ。
実際内容が凄まじく良く、こいつはすげえや...となる。
また、このノリがVaporwaveに受け継がれているのは確実だろう。
でも、あんまり名盤選で見かけない。なんでだ。サブスクにないからか。
これも記事でいっぱい書いた。
7位 TNT-Tortoise
ポストロックの超名盤。
この謎の落書きが脱力感を誘うが、中身は全く手を抜いていない。
かなり難しい演奏をしているのに、そう感じさせない爽快感のあるアルバムだね。
ポストロック全然知らないし…みたいな人に勧めるなら絶対にコレ。
いつか演奏してみたい。管楽器で参加します。
6位 Loveless-My Bloody Valentine
お待たせいたしました。マイブラです。
文句なしのシューゲイザーの名盤。
というかこれ以外シューゲイザーと認めない過激派が存在する。
でもこのアルバムだけマイブラの中でさえ異質だよね。 なんなのこれ。
70年代がキンクリ、10年代が花の専門店なら、
90年代における中核はこれとニルヴァーナの二大巨頭だろう。
5位 Revolver-The Beatles
そしてBeatles。ここは外せません。
個人的にはSgt.Peppersはそこまで...という感じなのでこれを推したい。
まあ、これについて僕が語る必要はないかもしれないけれど
まずジョージの曲から始まるのがみんなで作ってる感があって良いし、
サウンド的も統一感があって好き。
4位 The Velvet Underground&Nico-The Velvet Underground
もうさっきから文句なしの名盤が連続していて僕からのコメント必要なのかという気になっているが、
まあ名盤っすよ。はいはい。
所謂アヴァン・ポップの先駆けになった作品で
特にクラウトロック勢はこのアルバムに影響を受けた人が多い気がする。
ところでこのジャケのバナナ、実際にはがした人はいるのだろうか。
下にはピンクの果肉が隠れているというが、実際見てみない限りには信用できない。
僕の当分の目標はオリジナル盤のバナナを剥くことである。
3位 Tarkus-ELP
プログレって難しい!というイメージがあるのは
7割ピンフロの狂気のせいだと思っている。
あれが有名なので初心者がまず聴いてしまい、難しい...と諦めてしまうのではないだろうか。
そんな中で僕がお勧めしたいのはELPのタルカス。
かなり軽快にずんずんと進んでいき、曲調も明るい。
また、プログレ長い長い!と言われるが、このアルバムは短い曲をつないでいるだけなので
そう思って聴けば全然OK。なんなら一曲だけプレイリストに入れたって構わない。
それでいてプログレらしさにあふれているかなりの好盤だと思う。
B面は適当とよく言われるが、個人的にはそっちも好き。
2位 Wave-Antonio Carlos Jobin
世紀の名盤。一民族音楽であったサンバをここまでソフィスティケートして
さらに一番脂ののっている時期のロックと対等に張り合えるまでにしたのは偉大過ぎる。
そしてBeatlesは一応初期は既存のロックの文法にあくまでも則っていたが、
ジョビンは他数人で新ジャンルを作り上げ、彼らとかち合ってたのだからすさまじい。
新ジャンルって言ってもジャズじゃん!と思うかもしれないが、当時のジャズ人からすると全くの別物で
Beatlesとともにボサノヴァにも立ち向かわねばならず、ジャズはかなり苦境だったようだ。
このアルバムは思っている以上に名盤かもしれぬと思いこの順位。
1位 Pet Sounds-The Beach Boys
そしてこれ。これも世紀の名盤。
ただ、Beach Boysはサイケ嫌いで有名なので
サイケ臭いこのアルバムが名盤と言われるのは皮肉めいているね。
よく分からないな...という話を聞くけど、そうだと思う。分かりにくい。
なんども聴いたとき不意に分かる系の名盤の始祖かもね。
前にも記事で言ったが、これはどうもSmileへの前哨戦という感じで
家が建たなかったから土台を有難がっているのだと思う。
その後Smileを再現する試みが何回か行われているが、
確固たる完成品があるPet Soundsに比べて何か抜けている感じがし、未完成な印象がぬぐえない。
Smileが完成しなかったのは本当に残念。
完成していたら文句なしでこの位置に収まっていたことだろう。
とまあ、以上30枚でした。
最初にも言ったけれど、あんまり洋楽詳しくないので
大分偏りのあるランキング*4になってしまった気がするけど気にしない気にしない。
まだデッドラインには時間があるので、参加したい人はお早めに!
The Legitimacy of the Modern Age (Studies in Contemporary German Social Thought)
- 作者:Blumenberg, Hans,Wallace, Robert M.
- 発売日: 1985/10/21
- メディア: ペーパーバック