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本州一下らない音楽レビューブログ

Viva/La Dusseldorf【1978】

Viva クラウトロック

ヴィヴァ <Progressive Rock 1300 SHM-CD>

ヴィヴァ

 

 若者というのは常に大人に反抗しようと試みるものだ。

そんな反抗・反駁の繰り返しによって歴史ができてきたのは言うまでもないネ。 

 

音楽だってもちろん例外ではなく、

パンクに代表されるように、

旧世代のシーンにかみつくことによって

新ジャンルがポコポコと生まれるのである。

 

そういう音楽ジャンルは、時代を下るにつれ

どんどん「未来への絶望度」が高まっている気がする。

パンクを例に挙げると、

有名なピストルズGod Save The QueenのNo future連呼が思い出される。


Sex Pistols - God Save The Queen

No Future For You!

 

 

最近はやりのVaporwaveも「過去の懐古」という側面があり、

「未来に希望があった時代への憧れ」があるというのは常々言われていることである。

 

しかし、今回注目したいのは反駁されたサイドの音楽、

プログレからの返答である。

 

 

さてパンクの成立経緯をおさらいすると、

権威的・超絶技巧的なプログレに対して、

どんな人でもすぐ演奏できる音楽を!

ということで生まれたのだった。

 

 ↑楽器始めたての人がこんなことできっこないわけで。

 

 パンクが出てきて、プログレサイドの人たちはどうしたかというと

ニューウェーブに寝返ったり、AOR等産業ロックに手を染め始めた。

 


Asia - only time will tell

あの日の影はどこへやら。

 

しかし、プログレの中でも異質なあいつらは何とパンクに反抗した。

 それがクラウトロックの雄・La Dusseldorfである。

 

 

このバンドはNEU!の片割れ・クラウス・ディンガーのバンド。

例の8つ打ち・ハンマービートの上に歌やシンセと言った上物がのっかり

後期NEU!的な雰囲気が終始漂う。

と言うか、ほとんどNEU!のメンバーと同じらしい。

主要な一人が抜けたから名前を変えたようだ。

どっかのキリンジとは大違いである。

 

上の曲は1stアルバムの曲であるのだが、

2ndアルバムVivaが最も評価されている。

1stと2ndの間に例の拳銃sがアルバムを出すのだが

先述の通り、それへの回答となっていると言われている。

 

一曲目はタイトル曲からスタート。


La Düsseldorf - Viva

Viva!」と絶叫するボーカルに

なんだか統率が取れてるんだか取れてないんだか分からないlo-fiバンドが続く。

歌としては「地球人達よ、愛こそ生命なんだ!!」とか言ってるらしいです。

出だしからこのアルバムを象徴するかのような「躁」の曲で

鬱屈した英国パンクに食ってかかっている。

まあ、失恋してHallo Galloなる謎曲を生み出し、

その後も未練たらたらの歌を歌っていた人に言われると少しアレだが。

 

(多分これ失恋歌

 

このバンドで一番売れたシングルは3曲目のRheinitaらしい。


La Duesseldorf-Rheinita

7分間同じような展開が続くアンビエント的な曲である。

一応NEU!印のハンマービートがてくてくと続いているが、

正直あんまりNEU!感はない。

やっぱりギターも少しは欲しい。

 

A面にはこのような小品が収められているが

このアルバムの存在意義はB面である。

B面にはプログレらしく一曲のみ収められており、

その曲名はCha Cha 2000。


La Düsseldorf - Cha Cha 2000 (long version)

テーマは2000年代への希望。

明らかに「未来なんかねぇ~!」と言ったピストルズを意識している。

曲としてはピアノが割と全面であるものの

NEU!的なギターも聴け、

アンビエント過渡期を感じさせて面白い。

時折入る語りは英独混交

「未来が呼んでいる!」

「未来に向かって僕と踊ろう!」

「目を開いてごらん、楽園だ!」

「僕らがすべきなのはCha Cha Cha・・・」

みたいなネジが吹っ飛んだように陽気なものから

「過度の飲酒・喫煙・ドラッグ依存はやめましょう」

「貧しい人と分かち合いましょう」

みたいな道徳の教科書じみた文句まで様々。

こんな吹っ飛んだ人にドラッグ依存を指摘されても。

 

 

しかしこの20分の大作は凄まじく、

強制トリップさせられるという声が多数。

また、未来を手放し褒めているというよりかは

ちょっとディストピア的楽園感がある。

 

 

このアルバムは英米の主要ミュージシャンにも受け入れられ、

パンク後のニューウェーブとかに影響を強く与えている。

その中にはピストルズのメンバーによるP.I.L.も含まれているので

カリフォルニアロールみたいなことになっている。

 


Public Image Ltd.- Albatross

さっき言ったCha Cha2000の様なディストピア感もニューウェーブに強くみられるネ。

 

 

ちなみにLa Dusseldorfは度々来日しており、

1996年にはCha Cha2000を三時間以上ぶっ続けでやるという

狂ったライブを行ったそうだ。

このライブ盤はCD2枚組に収録された。

たま~に売られているので気が向けば買ってみてください。

僕は地元で一回だけ売ってたのに、逃してしまったのを後悔中です。

 


La Düsseldorf VIVA on TV 1978

 

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