EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

2021年の新譜で良かったものを16枚並べる記事

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並べます。

年末年始と言えば、帰省、紅白、初詣、そして今年の年間ベストというのは江戸時代からの常識、知らない人はいないでしょう。

そういうわけで今回の記事は今年の洋邦混在年間ベスト15のご紹介です。これは国民の義務であり、最近ボドゲアリーナとToeicの勉強しかしてない僕も書くのです。ええ。

 

※一枚だけ、どうしても入れなくてはということでこの記事公開後に追加した作品があります。

 

16位 Back In Mono-The Courettes

Back in Mono [Analog]

Back in Mono [Analog]

  • アーティスト:Courettes
  • Cargo Duitsland
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まずジャケが最高。思いっきり某ロネッツの某名盤のパロディ。また、アルバム名も弾丸を気軽にぶっ放すことで有名なフィルスペクターの名言"Back to Mono"のもじりだね。

内容もオールディーズチックでウォールオブサウンド。あまりにも50年代の空気感が忠実に再現されており、本当に今年の新譜なのか???と疑問に思ってしまうほど高レベルに仕上がっている。

今年は結構オールディーズ的なニュアンスがある洋楽曲がちょこちょこあったのだけれど、今作はアルバム一枚に渡ってオールディーズに向き合った点で頭一つ抜けている。これから来る(かもしれない)50年代リバイバルへの一つの道しるべを立てたような気がする。


今年の新曲でオールディーズ調なものの例

また、単なる再現にとどまらないところがこのアルバムの偉大なところ。程よく歪ませたギターなどのガレージロック的要素もガールズポップに入れているのである。

僕の先輩のラモーンズ好き曰く「ラモーンズは50年代ガールズポップの影響がある」とのことだが、このアルバムはまさにラモーンズ+ロネッツみたいなことをやっているのではなかろうか。

 

15位 Sphere-Salamanda

Sphere

Sphere

  • Small Méasures / Métron Records
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韓国の二人組ユニット。でっかいトマトを持ち帰る健康的な宇宙人が描かれているジャケが印象的。

このSFチックなジャケなのでサイケデリックorアシッドな音世界が広がっているのかとおもいきや、意外や意外純粋なミニマルミュージックでなんなら自然派と言っても差し支えないような音作りの楽曲たちが揃っている。

本人たち曰く、スティーライヒに影響を受けたとのこと。でもライヒにはない、Mkwajuとかを彷彿とさせる土着的・民俗的な香りが随所から漂ってくる。もしかすると、ジャケに描かれているのは宇宙人ではなく天使かそれに準ずる使者なのかもしれない。


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また単なるミニマルというわけでもなく、音が急に変調したりノイズが挟まれたりと現代的なIDM風解釈もちょこちょこ挟まれているので新鮮に聴けるのも良良良。

 

14位 大土蔵録音2020 - 山田参助とG.C.R.管絃楽団

大土蔵録音2020

大土蔵録音2020

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VIDEOTAPEMUSICのアルバム内での客演でも知られる、山田参助による戦前歌謡のカバーアルバム。♪海はコバルト♪の歌詞で有名な「夏の行進曲」から全く無名な曲まで収録されている。

これの凄いところは戦前の機材を戦前の録音方法で、そしてアルバム名通り戦前に作られた土蔵で録音すると徹底してオリジナルのレコードと同じ録音を目指して作られている点。似たコンセプトの民謡クルセイダーズが全く新しいアレンジで見せているのとは対照的だね。

こう聞くと当時のものそのままだと古臭くなっちゃうんじゃ?と思ってしまうが、今までの録音ではありえない高音質で聴かされると下手な最近の音楽よりも新鮮に聴こえるので不思議。現代のリスナーが無視しがちな戦前歌謡の先進性にスポットライトを当てた点で唯一無二。

問題はサブスクにないこと。今年のアルバムでサブスクにない良作が結構あるのだが、一種の抵抗なのだろうか。

 

13位 The Heart Pumps Kool-Aid - Seth Graham & More Eaze


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こう見えてちょっと斜に構えたクラシカルな歌ものアンビエントアルバム。これほど外見と中身が違う物体に出会ったのは久々である。

Corneliusと青葉市子の「外は戦場だよ」という曲があるが、基本路線としては大体あんな感じ。音は基本的に最小限度にとどめられ「間」を主体としたドローンを主軸にしている。教会音楽っぽい空気感を感じる節々もあり、細かく調べれば宗教音楽由来の要素もいくつかありそうだ。

 

ただこのジャケを採用する人がそれで終わるわけがなく。突然チェロ等のインプロの断片や謎のデスボイスが挟まるなど、ただのアンビエントにとどまらない狂気も忘れていない。アンビエントはある程度の条件を満たせばなんでも許容できる懐の広さが魅力だが、そんなアンビエントの枠組みの広大さを思う存分に使いまくっている印象がある。

また個人的にはシームレスにつながっている箇所がちょくちょくあるという、曲再生が基本の現代としては時代錯誤な構成もイチオシ。しかもそれでいてちゃんとシャッフル再生で聴いても違和感が無いように作られているのは見事としか言いようがない。

 

12位 A Good Fool - Michael Seyer

A Good Fool

A Good Fool

  • Michael Seyer
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LA在住のSSW。Men I Trustのツアーサポートもしているらしい。

フィリピン出身だからか、東南アジアや台湾のインディーっぽいニュアンスを感じる空気感とシンセ使い。しかもそれがアメリカ的な音で鳴っているので、イワユル普通のベッドルームポップとは一線を画すものになっている。落日飛車とか好きな人にはおススメ。

 

また、昨今の三大流行・R&BAORアンビエントを巧みに組み合わせた、なかなかにハイセンスなことをしているのも特徴。ここら辺を取り入れている人もよくいたけれど、どの観点から切り取っても高水準にまとまっているのは流石。そもそも曲自体のレベルも高く、音楽に特段興味のない友人にも気兼ねなく勧められそうだ。

僕はSteive HiettのNever Find The Girlを思い出した。それの現代版と云うのが一番自然かな。


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11位 Close Your Eyes and Sing Me My Dreams - Henry Solomon


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こちらもLA出身、若手サックスプレイヤーらしい。今年は元Vampire WeekendのROSTAMの新譜に参加していたことでも彼の名前が挙げられていた。


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このように他人の曲でもお構いなしにお洒落なサックスを自由奔放に演奏していたが、ソロではそれがさらにさらに楽しめる。

今作は長谷川白紙のような、手数の異様の多い打ち込みドラムが鳴り響くベッドルームジャズともいうべき作品。PV等でVaporwave的意匠を引用しているところからも、そこらへんの影響も抜きにして語れないハズ。

特筆すべきは、手数の多さ故ハイパーポップじみているのだがミックスの妙なのかハイパーポップにありがちなノイジーな取っつきにくさは全くと言っていいほどなくされている点。ハイパーポップの一番おいしいところだけを丁寧に掬いとって提示しており、大変にリスナー思い。ここまで優しい音楽家はなかなかいない。友達になって

これからハイパーポップ入門としてこれを勧める機会が多くなりそうである。それほど良くできている。

 

10位 月の兎はヴァーチュアルの夢をみる - 月ノ美兎


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はい、ご存知VTuber界に多大なる影響を与えたこの方のアルバム。僕は(今や伝説になっている)この人の初回配信を生で見たことがあるので、ここまで来たか...と一種感慨深い気持ちになった。

ASA-CHANG&巡礼、長谷川白紙等々、作家陣が凄いのは言わずもがな。キャラものに豪華作家陣がついたという類似性から00年代初頭のNew Chappieと比較されている文章を何回か見かけたけれど、20年代初頭の文化を示す未来への資料と言っても良い気がするね。


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また凄いのはこれだけてんでバラバラな偉大なる作家陣を一つのアルバムとして提示できてしまう月ノ美兎のキャラ強度である。New ChappieはChappie自体の無個性によって音楽人たちに統一感を持たせていたが、今作は月ノ美兎のパワープレイにより偉大なる音楽家たちがまとめ上げられていると云う彼女以外にまねできない芸当で一作品に仕上がっている。しばらくこれ以上のキャラソンアルバムは出てこなさそうだ。

 

9位 第一集 - わがつま

第1集 [Analog]

第1集 [Analog]

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新進気鋭のSSWの新譜。前からサンクラで話題だったらしい。

飾りなし、純粋なる曲の良さだけで今年のベストに入れたアルバム。これほど曲が良いからこそ、ピアノで弾き語っているだけで成立するのである。ピアノ弾き語りはギター弾き語り以上に曲の良さが必要になるからね。

カネコアヤノや柴田聡子なんかと比べられることが多いような気がしたけれど、彼等より断然ポップサイドなのも特徴。またカネコアヤノが非常にシリアスに歌うのに対し、わがつまは肩の力を抜き、ある種牧歌的ともいえるようなボーカルとメロであるので今までの現行フォークとは全く傾向の違うものとして捉えた方がよさげ。

どちらかというと初期の折坂悠太の空気感の方が近いのかなという気もする。ただやはり折坂悠太ともまた別軸であるので、わがつまは一つの発明をしたと言っても良いかもしれない。


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8位 アトリエの小謡 - 鈴木雄大

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はい。この記事が16枚という半端な数値になったのはコレを追記でねじ込んだためです。この記事投稿直後に聴いたのだけれど、これはどうしても今年のベストに入れるべきと思った。

秋田のトランぺッター・鈴木雄大氏が自身の活動するアトリエ"studio"内で収録したアンビエント&ポストロックなアルバム。アンビエントよろしくそのアトリエの空気感がパッケージングされており、ヘッドホンよりもステレオで聴きたい。

「アトリエ」というだけあって音楽以外の芸術家も多くいらっしゃるようで、楽音以外に後ろで彫刻を削っている音やろくろの回転する音等の非楽音も入っている。そういった非楽音を含めたアルバムということで、どこか石原洋のformulaを彷彿とさせる作風。


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しかしながらformulaが都会の喧噪を主題としたのに対して、田舎の静けさ異種芸術の交差に焦点が当たっているのが特徴的。またこれを紹介してくださったレコ屋の店主さん曰く日によって聴こえ方が変わるとのことで、よりナマモノに近いものである気がする。

販売方法も独特。通販・店頭販売のみなのにCDはなく、各曲をイメージした紙にサンクラのダウンロードコードのみがついているという仕様。いかにもCDが入ってそうなパッケージにただ絵しか入っていないのは斬新すぎる。

7位 Sturle Dagsland - Sturle Dagsland


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今年のどうせみんな入れるやつ枠。他にはbetocover!!、そしてPrannoul。これ読んでる君もどうせどれか入れているんでしょ。

この記事でもたびたび言っていたかもしれないけれど、民族音楽的な要素をどのように入れるかという昨今の命題に一つの答えを出したのがコレ。この作風で真っ先に思い浮かぶのはArcaだけれど、ある種未来感のあるArcaに比べてこちらは土着の民間信仰の儀式のような土臭さがプンプンする。

もちろんArca的な未来感もあるので内容と楽音にズレができ、不可思議なニュアンスになっているような感じ。こういう点は大滝詠一的なノヴェルティ論が使えそうだ。宇宙人の実験材料にされて異形化したレッツオンドアゲイン見たいな風もする。これを聴いて難しく思った方はノヴェルティソングとして捉えると分かりやすいかもしれない。

あとこれ30分ないんですね。昔King Gnu初めて聴いた時も思ったけれど、最近の音楽は密度が高い。

 

6位 Pájara - Clara Presta

Pájara (RCIP-0324)

Pájara (RCIP-0324)

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アルゼンチンのSSWの新譜。去年アルバムが話題になっていたRodrigo Carazoも協力しているらしい。今作も、前にこのブログでも紹介したCarlos Aguirre Gruppoのようなフォルクローレ

大きな特徴として、多種多様なフォルクローレを取り入れている点がある。フォルクローレと一口に言ってもアルゼンチンは勿論、ブラジルのミナス派の人がやるのようなものから「コンドルは飛んでいく」のようなアンデス系まで様々。それをこのアルバムでは客演等を駆使して一つのアルバムに落とし込んでいる。意外と今までありそうでなかったコンセプト。

また、ただの良いフォークに終始しないのもアルゼンチンらしい。つづれ折るように同じフレーズが輪唱していくのはポストロック的な感性も感じさせ、アルゼンチン音響派にも多大なる影響を受けているのもよみとれる。現代フォルクローレの新スタンダードを示す意図があったのかもしれないね。

 

5位《水を掬えば月は手に在り》《FOUJITA》 - 佐藤聰明


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日本を代表する現代音楽家、佐藤聰明が近年携わった映画音楽二つをまとめたサントラ。前半の「水を掬えば月は手に在り」は中国のドキュメンタリー映画、後半の「FOUJITA」は日本の小栗康平の映画かららしい。

佐藤聰明といえば名盤と言われるのは太陽讃歌。これはピアノによる短いフレーズをディレイしていくミニマムミュージック。


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今作のジャケも太陽讃歌に似ているが、中身は全くミニマムではなくむしろ東アジアの音楽をどのようにして自然なオーケストラにするかという題目で作られている。

「水を掬えば月は手に在り」は監督の意向により杜甫の詩を参考にして作曲しているらしいのだが、中国のみならず和な邦楽要素もたっぷり。佐藤聰明は邦楽器を使って作曲するのに長けており、今作でもその邦楽器遣いを堪能できる。中国映画なのに...

FOUJITAは日本映画なのに逆に邦楽器は使わずオーケストラだけで勝負。おい、と誰しも思ってしまうが、こちらでは佐藤聰明の売りの一つ「無音を聴かせる」オーケストレーションを堪能できる。

昨今のサントラ盤でもかなり良い出来のもののはず。個人的には地元の仙台フィルを使っているのが嬉しい。

 

4位 Silence/Motion-Blackwater Holylight


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今回のベスト唯一のハードロックかつメタル。活動歴は長いらしく、今作は4thになる。

サウンド的にはサイケデリックドゥームメタルであるのだが、女性ボーカルの方の力が抜けきっておりまるでシューゲイザーのようなことになっている。しかもそのボーカルと一緒に時折デスボイスも炸裂するので、一体これは何なのだ・・・?という気分になること請け合い。

ドゥームメタルシューゲイザーの親和性についてよく議論がなされてきたが、ちゃんと実践し、ここまで高水準でまとめ上げたものは聴いたことがない。メタルというと他と比べて硬直したジャンルの印象があったのだが、これはあまりにも新鮮。考えを改めねばならない。今後この手のメタルバンドが増えることを願ってこの順位。

SleepとPixiesが一緒くたになった不可思議音楽を是非聴いてみよう。

 

3位 Doll's Love Songs - Boys Age

 


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Bandcampには去年の暮れに来ていたのだが、配信開始は今年なので今年のベストに入れた。著名な宅録作家のフルアルバム。

NieRシリーズのような退廃SFチックな世界観をローファイなシティポップ要素を用いてコンセプトアルバムで表現したアルバム。普通に曲のレベルが高いのはもちろんのこと、今の時代にコンセプトアルバムを出す意義、かすれた合成音声を使う必然性を持たせるコンセプトなど様々な点で画期的な作品。

長谷川白紙等の前衛を攻める宅録作家が多い中、あからさまに前衛狙いではない宅録ポップスがどうあるべきか答えを出した貴重な作品

ブログ記事にもしてあります。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

2位 Searching for the Disappeared Hour - Sylvie Courvoisier & Mary Halvorson

Searching For The Disappeared Hour

Searching For The Disappeared Hour

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ギターとピアノによるアヴァンジャズ。恐らく即興演奏。

両者特殊奏法は当たり前。水に潜った時のような音を出すギターやミニマムなピアノフレーズが頻出し、洋館の廊下の不気味な深夜が想起させられる。ベートーヴェン「月光」の露骨な引用もあるしね。*1

ギターもピアノも一定のリズムを曲の最初から最後まで保つことはなく、互いに最も遠い位置を目指して演奏しているような印象さえ思えるほどズレにズレまくっている。が、決してバラバラではないのが不思議。なんなら夜のBGMとして実家で流してもあまり問題ないほどに聴きやすい。

とあるレビューでガラスの破片のようなアルバムと表現していたが、まさにそんな感じ。トゲトゲしさと美しさの共存が、このアルバムには内包されている。

またこの手の前衛ジャズアルバムは概して聴きにくかったり非音楽ファンには勧めづらい節があるのだが、これはその点もちゃんとクリアしてくれている。そんなアルバム滅多にないので高順位。

 

1位 心眼銀河 - 志人

templeats.net

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はい、今年のベストはこちら。志人の心眼銀河。日本語ラップの名MCの新譜。今年は絶対的名盤と言えるものが少なかったように思えたけれど、今作については頭一つ抜けていたように思う。

とりあえず以前記事にしたのはこちら。

epocalcgarage.hatenablog.com

この後これを聴いているうちに、これは一種のModern Timesへの返答なのじゃないだろうかと思ってきた。Modern Timesは2017年のPUNPEEの1stアルバムで、既に日本語ラップの名盤と言われている代物。


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これが出たときの評は次のようなものであった。

・様々なサブカルからのサンプリングを一つのテーマで回収した統一感

・隠しトラックなどのフィジカル面の仕掛け

・新しいヒップホップの立ち位置を確立した意義

心眼銀河は、Modern Timesに似た構造をしている。

例えば、心眼銀河はサブスクで配信されていない。一見不便だが、これはには大きな理由がある。それは届くときに分かるのだが、ネタバレになってしまうのでここでは伏せておこう。フィジカル要素が届くとき(=聴取直前)に分かるのは、Modern Times隠しトラックや小ネタが聞いた後の体験になるのと対になる。また、アルバムに関連する詩集などの作品もあり「フィジカルで出す意義」を意識しているのが伝わってくる。

また内容も古典文学から引用する彼の得意技は勿論、ラップの仕方も声明のようなものから文化系ラップのようなものまで、トラックもYAMAHAの機材を用いたパソコン音楽クラブ的アプローチをしている等々、様々な新旧日本文化を模したものになっている。それらを「心眼銀河」なる一つの哲学でまとめ上げているのじゃなかろうか。

さらに京都の山奥で木こりをしながら感じたであろう物事を記述していくスタイルは、享楽的な未来像への警鐘をならしたModern Timesとは別ながら似たストイックさがあるね。ヒップホップのみならず、文化のオルタナとして機能しているように思う。今までの志人の活動の集大成ともいえるかもしれない。

心眼銀河はModern Timesを真摯に受け取りつつ、それとは違う未来観を提示しているように思う。本当に輝ける未来とは、遠い田舎のような懐かしいものなのだ。その未来への澪標が心眼銀河に示されている。

 

 

今年は総じていかにして既存のジャンルから脱出するかというテーマがあった気がする。そろそろVaporwaveに次ぐ新しいジャンルの発見が必要になってきたころかもしれないね。

ここに入らなかった良いアルバムも多々あったので、是非こちらも参照してみてください。

epocalcgarage.hatenablog.com

*1:𝙱𝙸𝙾𝙷𝙰𝚉𝙰𝚁𝙳

2021年年間ベストに入れたかったアルバム

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供養、供養♪

そろそろ各音楽アカウントから今年のベストが出始める季節。

僕も今年の一月一日に「2021Best」のプレイリストを作り、一年間にわたってそこに聴いた音楽を適宜ぶち込んだりぶち抜いたりして計15枚選んでいます。

が、15枚のみに絞るという条件でやっているので泣く泣く2021ベストから抜いたアルバムも数多あるわけです。

ベストに入らなかったからと言って言及せずにいるのも勿体ない...!

...というわけで、今回は2021ベストに入らなかったけど良かった新譜の供養になります。

 

tamayura - 玉響

tamayura

tamayura

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ラウンジジャズ。Amazonのオススメ機能で妙に推されたので買ってみたら、異様にレベルが高かった。

基本的にはTake Fiveといったスタンダードのカバーで構成されているのだが、正直ある程度聴かないとカバー曲と気づかないほどにまで過剰に編曲されている。編曲の方向性も昨今再評価が進む日本のアンビエントジャズを彷彿とさせ、五臓六腑に染みわたる。

数曲入っているオリジナルもそれらのカバー曲と遜色ない出来。可能であれば岐阜とか長野あたりの森の中で聴きながらキャンプしたい。参加者募集中。

問題はサブスクにない上、Youtube等でも試聴できないこと。

その為かこれについて言及している人は殆どいなかったように思う。これが忘れられてしまうのは勿体ないよ~

 

Good Timing - Adeline Hotel

Good Timing

Good Timing

  • Ruination Record Co.
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ほぼアコースティックギターアルペジオのみによるインスト作品。

そう聞くとアンビエントとかポストロックとかなのかな~と思ってしまうが、確かにその二つのような場面も多いもののそのどちらでもない。どこかで聞いたことあるような気がするのにジャンル不定という奇天烈な音楽性である。*1

これを聴いているとロマネスクみたいなフラクタル模様が頭に浮かぶ。これらのアルペジオは即興演奏らしいのだが、似たフレーズが手を変え品を変え次々に立ち現れる様は数学的な美的センスを感じる。風に吹かれているようなちょっとした爽やかさもあるね。

空を舞う新聞のようなジャケも印象的。知的かつ開放的な音楽性をよく表しているように思う。

 

ギタリシア - 浅井直樹

浅井さん!すみません!ベストに入れてないです!ごめんなさい!

このブログに多大なる貢献をしていただいた浅井直樹さんの新譜。

再評価著しい一作目のアバ・ハイジが30年ほど前であったため、奇跡の2ndといわれた。発売時にはちょっとした話題になっていた。

アバハイジのサイケ感は保ちつつも、よりクラシカル&オーセンティックな音楽性の楽曲が多いね。あと自主制作だった一作目と比すると、編曲に相当力が入れてあるのが嬉しい。

ちなみに今年一番聴いた曲はこのアルバムの(Let's sing a) Singer-Songwriter's Songです。全ての音楽好きに刺さる内容。皆聴いてみよう。

 

From Me To You - Quadeca

弱冠20歳・期待のラッパーのメジャーデビュー作。ラップ以外にもコントや実況動画をネットに投稿している、一種のYoutuber的な人物であるようだ。

僕とも年齢が近く*2、同様にナーディーな人物であるためか個人的に受け入れやすい音楽性。ジャケは白黒だが、色彩豊かな楽曲群が揃っている。

またトラックも凝っているのが高評価。割とラップの迫力で押し通しがちなヒップホップにおいて、トラックだけでも十分凝っているものの上でそれと同レベルのラップを繰り出されるとひれ伏すしかなくなる。トラックとラップのバランス感覚も絶妙。

個人的には海外ヒップホップの中ではこの数年の中でも良かったものの一つ。本当にベストギリギリで落としてしまった。恐らく他の方の年間ベストでも相当見かけることになるハズ。

 

Ophilia - Psychic Mirrors

psychicmirrors.bandcamp.com

新人ファンクバンドのデビュー作。

Zappを彷彿とさせる80年代風のファンキーさや打ち込みといった昨今のブームに呼応しつつも、50-60年代オールディーズの要素を要所要所に取り入れているのが画期的。壮大なオールディーズ調の曲から静かなベッドルームポップにしれっと移行していくのはちょっとした感動を覚えてしまった。これからどう向かうか考えあぐねている音楽界にオールディーズという新提案をしている新譜がいくつかあったが、その中でも良い出来の一つ。

ただ、ちょっと長くてまとまりがなかったのが難点。その為将来コンパクトなアルバムを発表した際は話題になるはず。注目しておこう。

 

beautiful days - Belinda May

beautiful days

beautiful days

  • Belinda May
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名古屋のインディーポップバンドのEP。ジャンル的にはドリームポップになるんですかね。

ただただ曲の良さ一本で勝負をかけるパワータイプのバンド。そしてこれも曲の良さだけで今年のベストに入れたくなる魔力を放つ。

何より一曲目のeveryday in loveが馬鹿みたいに良い曲。何を食べたらこんな曲を作れるようになるのか教えてほしい。

全体通してもかなり良かったのだが、一応シングル扱いなのでベスト「アルバム」からは外しました。年間ベストトラックを作るなら上位にくる。

 

City Slicker - Ginger Root

City Slicker

City Slicker

  • Acrophase Records
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これもかなり話題になっていたよね。アメリカ発シティポップ。

二曲目のLorettaがキラーチューンであり、竹内まりやがラジオで流すなど日本国内での反響も大きかった。将来的にも現在のシティポップブームを象徴する曲として認識されそうである。


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ただ、EP全体として見るとやや迫力不足だったかもしれない。こちらも年間ベストトラックを作るならかなり上位にくる。

 

Destiny Waiving - Ulrich Schnauss & Mark Peters

ギター主体のアンビエント

ギターでアンビエントというと比較的自然派なものが多いように思うが、このアルバムは珍しくクラブ向きの作風。ちゃんとドラムも入ってくるし、ベースラインもうねうねしている。

現代風にチューンアップされたアシュラテンペルという感じの趣。都会派な雰囲気の中にクラウトな部分が見え隠れする。La Dusseldorfとか好きな人とかにはオススメ。

アルバムジャケットのように、夜の高速道路をかっ飛ばして聴いたら気分爽快なことうけあい。ベストには入らなかったけど、今後も何度か聴き返すことになりそうなアルバムだ。

 

Crying Silence - Yandere

Yandereの死ぬほど良すぎて眠れないEP。

Yandereは京都にいると自称する謎のトラックメイカーで、ポストインターネット的作風が持ち味。メロはインディー風*3なものの、たまに入る手数の多いビートなどにナードコア文脈を感じさせる。ジャケもどこかから拝借したのか自分で描いたのか、アニメ絵ばかり。

先日発表されたこのEPは彼女(?)の一種の到達点と言っても良いような内容。イントロ然としたアンビエントから始まり、その後の歌ものをじっくり聞かせる構成になっている。

多分にVapor的な感覚があるものの、2000年代のプラスティックな空気感を熟成し、20年後の今に配送してきたのかと思うほどに2000年代風。近いうちに巻き起こるであろう00年代リヴァイバルの予感を感じさせる作風になっている。

またEPの構成も三曲のみながら過不足の無い完璧な構成になっており◎。今後に期待大。

 

 

今回Apple Musicのライブラリを見直してみたのだけれど、新譜を思ったほど聴いていないらしい。

結構頑張って聴いたように思うのだけれどまだまだの模様。精進します。

*1:名前はジムオルークのGood Timesのパロディなので、ポストロックを意識している部分は多いかもしれない。

*2:一つ年下

*3:空気感含めちょっとGuitarっぽい

EPOCALCに10の質問

暇つぶしSP

 

 

 

はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問

という企画があるらしい。たまにはてなブログがやっているお題である。なんでも参加賞ももらえるそうだし、運が良ければ万年筆が当たるらしい。

blog.hatenablog.com

丁度暇だったので、自己紹介を兼ねて答えていこうじゃないか。なおTwitter等に共有はしないので、この記事を見つけた君はラッキー!

 

ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

僕はEPOCALCと云う人ですが、この名前は旧い表計算ソフトの名前ですね。

FACOM 9450というパソコンに内蔵されていたものです。

ja.wikipedia.org

母がOL時代に使っていた機種らしく、EPOCALCという文字列をDOS的な画面に打ち込んでいたという話をよく聞いていたのでそこから付けました。80年代の何かの名前にしたかったというのがあります。

そしてEPOCALC's GARAGEというブログ名ですが、これは敬愛すべき音楽家大滝詠一のブログ・Amigo Garageから付けました。以前は過去記事が見られたのですが、残念ながら現在は入り口が残っているのみです。

www.fussa45.net

 

はてなブログを始めたきっかけは?

一つ記事のアイディアが浮かんだからです。それがこちら。

epocalcgarage.hatenablog.com

これを書かんがために作ったと言って過言ではありません。当ブログ全体を見てもやはり完成度は一番二番を争いますね。

また、音楽界隈ではギャグ的な要素を入れたレビュー等を避ける傾向があります。これはいくつかの音楽雑誌やブログが無思考にギャグ要素を取り入れ、それにより音楽を貶めるような表現をしていたためです。取り扱いを誤った人が沢山いたために、そもそも取り扱うなという規範ができてしまったように思います。

しかしながら大滝詠一が示したように音楽(というか芸術全般)と笑いは不可分であり、評論においてもそれは同様だと思います。ギャグによってギャグを使わない音楽レビュー以上の論点を示唆する。それが当ブログの当分の目標です。

 

自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

さっき上げたナイアガラーの記事も良いんですが、楽家のいいね欄が一番ですかね。

epocalcgarage.hatenablog.com

完全に思い付きで作った突貫記事なんですが、意外とまとまりある面白い記事になったと思います。

楽家の皆さん、新しい表現方法としていいね欄はいかがでしょうか。

 

ブログを書きたくなるのはどんなとき?

レビュー記事はこれは良い!と思ったアルバムがあり次第作っています。企画記事も基本思い付いたとき作っていますね。

つまりスランプになると途端に何も書けなくなるんですね。これではいけないとブレインストーミングみたいなことで作ろうかなと思ったこともあったんですが、良いアイディアが思いつきませんでした。

ただ、以前MOZAIC MAGAZINEに寄稿したときは「新しいウェブ媒体の立ち上げ」というお題をいただいて作りました。

それが結果的にちょっとした評価を頂けるくらいの完成度になったことを考えると、お題出し係でも雇えば良い記事が沢山出来るのかもしれません。

 

下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?

100記事近くあります。大体没記事です。

代表例は再発版の発売当日に出そうと思ったけど間に合わなかった都市通信のレビューやオリンピック関係のせいで没になった某小山田氏をネタにした記事など。(※追記:小山田氏をネタにした記事は公開いたしました。)

また性質上他メディアとのネタ被りも多く、記事DJという全く関係ない引用だけで成り立たせるレビュー記事を書いていたのですが、オモコロの引用選手権とネタ被りの印象があったので没にしました。

omocoro.jp

 

自分の記事を読み返すことはある?

よくあります。その都度書き直したりしていますね。

 

好きなはてなブロガーは?

よく言及していますが、まず脱R論さんですかね。レビューの温度感はここからきています。

drr.hateblo.jp

 

国会図書館内の音源全部頭の中に入っていそうな音楽ディガーのブログと言えばこちら。いつもお世話になっております。

zangiriheads.hatenablog.com

 

ここから先は音楽関係以外。

www.ajimatics.com

数学オタクの鰺坂もっちょさんのブログ。僕は(一応)数学科大学生なのでよく読ませていただいています。数学にあまり馴染みのない人でも面白く読み通せるのが魅力的。*1

 

あとはこの人も外せないでしょ。

arufa.hatenablog.jp

はてなブログが誇る偉大なるブロガー・ARuFa!この人は漫才におけるダウンタウンに当たりますよね。彼以降、ブログの在り方を変えてしまったと言っても過言ではないはず。

他にも好きなブロガーさんは沢山いるのだけれど、意外とはてな民は少なめ。最近だとnoteも多いですからね。その他の方々はリンク集をご覧ください。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

 

あ~あ、こんなにリンク張っちゃった。はてなブログってリンク張られると通知行くんですよね。あらかじめ謝っておきます。すみませんでした。

 

はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

毎日サーバー管理お疲れ様です。記事削除依頼のメールはもっと優しい文面にしてください。よろしくお願いいたします。

 

10年前は何してた?

まだ小学生ですね。ヤマハ音楽スクールに行っていましたが、まだ音楽ファンではないです。10年後音楽ブロガーやっているよと言っても「?」という感じでしょう。

 

この10年を一言でまとめると?

 

 

 

 

*1:いいですか音楽関係の皆さん、音楽界隈の外ではこういうギャグ的かつ理知的な文章が沢山あるんですよ!

Ambient1/Brian Eno【1978】(AIによる自動レビュー)

※面倒くさかったので、AIに文を書かせました。その為数々の虚構が入っています。鵜呑みにしないでください。

AMBIENT1/MUSIC FOR AIRPOR

AMBIENT1/MUSIC FOR AIRPOR

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2021年現在、アンビエント音楽、ないしは環境音楽は身の回りにあふれているものとなっている。アンビエント音楽とは人々に意識されずに周囲の空気を変える音楽のことである。

エリック・サティの「家具の音楽」がアンビエントの思想を最も初期に実践した例と知られているが、現在まで続くアンビエント音楽はある一枚のアルバムによって定義づけられていると言って過言ではない。

それが今回紹介するブライアン・イーノAmbient 1/Music For Airportである。


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1978年にLP盤で発売された本作は、当時その先進的な音楽性から大きな話題を呼び、現在でも多くのアーティストに影響を与えた傑作として名を残している。

本作に収録された楽曲の多くは、航空機や自動車などの移動体に搭載されたスピーカーを通して再生されることを前提として作曲されたものであり、飛行機や自動車の走行音などが収録されていることからも、本作の制作背景を容易に想像することができる。

また、この中には、後にテクノポップと呼ばれることになる電子音楽をいち早く取り入れた作品も収録されている。

 

本作では、これまで誰もが耳にしたことのあったようなクラシックの名曲が数多くサンプリングされている。例えば、バッハ作曲のG線上のアリアでは、ヴァイオリンの弦を擦った音をサンプリングし、ドビュッシー作/ラヴェル編曲による月の光ではピアノの音をそのまま録音している。他にも、モーツァルト作/シューベルト編曲の歌曲"Das Lied von der Museen des Flutes"がサンプリングされていたり、ショパン作のバラード第1番ト短調が使用されたりと、クラシック音楽に対する敬意を感じさせる作りとなっている。

そして何より特筆すべき点は、本作が現代音楽における一つの到達点であるということであろう。

それまで前衛芸術と呼ばれていたものが、既成概念を打ち破るという意味ではポストモダン的であったのに対し、本作はあくまで既存の枠組みの中でいかに新しいものを生み出すかという挑戦的な姿勢が見られるのだ。実際、本作を聴き終えた後には、従来の前衛芸術とは明らかに異なる印象を受けるはずである。

本作は、アンビエント音楽の歴史を語る上で非常に重要な作品であることは間違いないが、一方で同時に、アンビエント音楽の未来を担う新人たちの登竜門とも呼べる存在でもある。というのも、本作には、後のテクノポップシーンにおいて中心的人物となるデヴィッド・ボウイ坂本龍一といった面々が参加しているからである。

彼らは本作で実験的手法を用いながら、自分たちの持ち味を発揮していた。彼らが活躍した1980年代こそが、アンビエント音楽にとって一つの転換点だったといえるだろう。

 

現役音楽ブロガーEPOCALC氏による批評

僕より文章が断然上手い。こうやって人間の職業は奪われていくのでしょうか。

そしてAIが言うにはAmbient1ってAutobahnとDiscreet Musicの合わせ技みたいなアルバムだったんですね。聴きなおします。

 


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Stasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa/Complesso di Sante Palumbo【1973】

ピカソとかバンコクみたいな長い名前って名付けた時点で覚えさせる気があるのかよく分からないよね。

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はい。題名が長いです。多分今までレビューしてきたものの中でもぶっちぎりに。

 

この作品はCipiti Recordsというイタリア・ミラノ発のレーベルから出ていたもの。

幾つか聴いてみたところ、ジャズとロックの中間を狙うような作品を幾つも取り揃えている、ロックレーベルともジャズレーベルとも言い難い立ち位置。イタリアンロック関連で著名なCramps Recordsと似た傾向があるね。ちなみにCrampsもミラノ発。ミラノ人はこういうのが好きなのだろうか。

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ただ、アヴァンなものが多いCrampsよりもっとフュージョンに近い雰囲気を好んでそろえている感じ。後期Crampsもこんな感じだけれど、70年代初期はここがそういうのを取り扱っていた模様。

一応EMI傘下のレーベル*1なのでメジャーレーベルなのだけれど、この通りインディな感覚があり日本で言うところのトラットリアを彷彿とさせるね。ただメジャーということもあり同時代的にもまあまあの知名度があったらしく、サンレモ音楽祭というイタリア国内で有名なフェスイベントに度々出ていたらしい。

 

あとこのレーベル、今回紹介するモノに限らず名前が長いアルバムがちょくちょくある

例えば下の曲の入っているアルバムはNessuno Siam Perfetti…ciascuno abbiamo i suoi difettiである。長え。

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そして中身が普通に良い。

 

 

さてこのキラキラネーム爆付ジャズロックレーベルから出ているStasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa*2は所謂ラウンジジャズなのだが、今までほぼ再発がかかっていなかったと聞いてビックリするほどにレベルが高いものになっている。

 

イタリアンジャズといえばブラジリアンジャズ!*3

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アコースティックジャズから電化ジャズに切り替わるのがいつ聴いても新鮮。即興部でも落ち着き払ったサックスとノリノリなオルガンとの対比でメリハリがついており、ともすれば退屈になってしまいがちなボッサの味を引き立たせているね。

このオルガンの音作りはやはり本場ブラジルを意識しているのだろうか、ローターをかけていなかったり倍音の重ね方などがワルターワンダレイそっくり

見逃しがちだが、ベースの動きが変態的で笑えてくる。同じ動きを二回としてやらねえぞという気迫を感じる。

 

最も人気なのがTREQUARTI。題名通りTre=三拍子になっている。

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ラウンジジャズとのたまっておきながらこの硬派な曲ですよ。

さっきみたいなボサノヴァも多いのでラウンジジャズか~と思って気を抜いているとこういうモダンジャズなものもぶち込んでくるので気が抜けない。少しかすれてもたっているサックスが良い味を出しているね。

後半はモードジャズみたいに。ラウンジ向けに改造したKind of Blueという感じだ。

 

これを作ったのはピアニストのサンテ・パルンボ氏。トニー・スコットと演奏した経験があるなど相当の実力者らしい。

この他にもCitipiにいくつかライブラリーミュージックの好盤を残している。

中でもSwayはCipitiの作品に珍しく前衛音楽的なアプローチもしているアルバム。

今回紹介したようなものをイメージすると大分裏切られると思うが、イタリアンロックファンの琴線に触れるものがある。

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カルト的な名盤らしく、一聴して損はないハズ。Cipitiマラソンでもするかな...

 

 

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*1:後期は別のところになる

*2:今宵は自宅で間接照明のもと君とソファーに寄りかかって、という意味らしい。嗚呼1975

*3:???

ⒸEPOCALC