ピカソとかバンコクみたいな長い名前って名付けた時点で覚えさせる気があるのかよく分からないよね。
はい。題名が長いです。多分今までレビューしてきたものの中でもぶっちぎりに。
この作品はCipiti Recordsというイタリア・ミラノ発のレーベルから出ていたもの。
幾つか聴いてみたところ、ジャズとロックの中間を狙うような作品を幾つも取り揃えている、ロックレーベルともジャズレーベルとも言い難い立ち位置。イタリアンロック関連で著名なCramps Recordsと似た傾向があるね。ちなみにCrampsもミラノ発。ミラノ人はこういうのが好きなのだろうか。
ただ、アヴァンなものが多いCrampsよりもっとフュージョンに近い雰囲気を好んでそろえている感じ。後期Crampsもこんな感じだけれど、70年代初期はここがそういうのを取り扱っていた模様。
一応EMI傘下のレーベル*1なのでメジャーレーベルなのだけれど、この通りインディな感覚があり日本で言うところのトラットリアを彷彿とさせるね。ただメジャーということもあり同時代的にもまあまあの知名度があったらしく、サンレモ音楽祭というイタリア国内で有名なフェスイベントに度々出ていたらしい。
あとこのレーベル、今回紹介するモノに限らず名前が長いアルバムがちょくちょくある。
例えば下の曲の入っているアルバムはNessuno Siam Perfetti…ciascuno abbiamo i suoi difettiである。長え。
そして中身が普通に良い。
さてこのキラキラネーム爆付ジャズロックレーベルから出ているStasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa*2は所謂ラウンジジャズなのだが、今までほぼ再発がかかっていなかったと聞いてビックリするほどにレベルが高いものになっている。
イタリアンジャズといえばブラジリアンジャズ!*3
アコースティックジャズから電化ジャズに切り替わるのがいつ聴いても新鮮。即興部でも落ち着き払ったサックスとノリノリなオルガンとの対比でメリハリがついており、ともすれば退屈になってしまいがちなボッサの味を引き立たせているね。
このオルガンの音作りはやはり本場ブラジルを意識しているのだろうか、ローターをかけていなかったり倍音の重ね方などがワルターワンダレイそっくり。
見逃しがちだが、ベースの動きが変態的で笑えてくる。同じ動きを二回としてやらねえぞという気迫を感じる。
最も人気なのがTREQUARTI。題名通りTre=三拍子になっている。
ラウンジジャズとのたまっておきながらこの硬派な曲ですよ。
さっきみたいなボサノヴァも多いのでラウンジジャズか~と思って気を抜いているとこういうモダンジャズなものもぶち込んでくるので気が抜けない。少しかすれてもたっているサックスが良い味を出しているね。
後半はモードジャズみたいに。ラウンジ向けに改造したKind of Blueという感じだ。
これを作ったのはピアニストのサンテ・パルンボ氏。トニー・スコットと演奏した経験があるなど相当の実力者らしい。
この他にもCitipiにいくつかライブラリーミュージックの好盤を残している。
中でもSwayはCipitiの作品に珍しく前衛音楽的なアプローチもしているアルバム。
今回紹介したようなものをイメージすると大分裏切られると思うが、イタリアンロックファンの琴線に触れるものがある。
カルト的な名盤らしく、一聴して損はないハズ。Cipitiマラソンでもするかな...