供養、供養♪
そろそろ各音楽アカウントから今年のベストが出始める季節。
僕も今年の一月一日に「2021Best」のプレイリストを作り、一年間にわたってそこに聴いた音楽を適宜ぶち込んだりぶち抜いたりして計15枚選んでいます。
が、15枚のみに絞るという条件でやっているので泣く泣く2021ベストから抜いたアルバムも数多あるわけです。
ベストに入らなかったからと言って言及せずにいるのも勿体ない...!
...というわけで、今回は2021ベストに入らなかったけど良かった新譜の供養になります。
tamayura - 玉響
ラウンジジャズ。Amazonのオススメ機能で妙に推されたので買ってみたら、異様にレベルが高かった。
基本的にはTake Fiveといったスタンダードのカバーで構成されているのだが、正直ある程度聴かないとカバー曲と気づかないほどにまで過剰に編曲されている。編曲の方向性も昨今再評価が進む日本のアンビエントジャズを彷彿とさせ、五臓六腑に染みわたる。
数曲入っているオリジナルもそれらのカバー曲と遜色ない出来。可能であれば岐阜とか長野あたりの森の中で聴きながらキャンプしたい。参加者募集中。
問題はサブスクにない上、Youtube等でも試聴できないこと。
その為かこれについて言及している人は殆どいなかったように思う。これが忘れられてしまうのは勿体ないよ~
Good Timing - Adeline Hotel
ほぼアコースティックギターのアルペジオのみによるインスト作品。
そう聞くとアンビエントとかポストロックとかなのかな~と思ってしまうが、確かにその二つのような場面も多いもののそのどちらでもない。どこかで聞いたことあるような気がするのにジャンル不定という奇天烈な音楽性である。*1
これを聴いているとロマネスクみたいなフラクタル模様が頭に浮かぶ。これらのアルペジオは即興演奏らしいのだが、似たフレーズが手を変え品を変え次々に立ち現れる様は数学的な美的センスを感じる。風に吹かれているようなちょっとした爽やかさもあるね。
空を舞う新聞のようなジャケも印象的。知的かつ開放的な音楽性をよく表しているように思う。
ギタリシア - 浅井直樹
浅井さん!すみません!ベストに入れてないです!ごめんなさい!
このブログに多大なる貢献をしていただいた浅井直樹さんの新譜。
再評価著しい一作目のアバ・ハイジが30年ほど前であったため、奇跡の2ndといわれた。発売時にはちょっとした話題になっていた。
アバハイジのサイケ感は保ちつつも、よりクラシカル&オーセンティックな音楽性の楽曲が多いね。あと自主制作だった一作目と比すると、編曲に相当力が入れてあるのが嬉しい。
ちなみに今年一番聴いた曲はこのアルバムの(Let's sing a) Singer-Songwriter's Songです。全ての音楽好きに刺さる内容。皆聴いてみよう。
From Me To You - Quadeca
弱冠20歳・期待のラッパーのメジャーデビュー作。ラップ以外にもコントや実況動画をネットに投稿している、一種のYoutuber的な人物であるようだ。
僕とも年齢が近く*2、同様にナーディーな人物であるためか個人的に受け入れやすい音楽性。ジャケは白黒だが、色彩豊かな楽曲群が揃っている。
またトラックも凝っているのが高評価。割とラップの迫力で押し通しがちなヒップホップにおいて、トラックだけでも十分凝っているものの上でそれと同レベルのラップを繰り出されるとひれ伏すしかなくなる。トラックとラップのバランス感覚も絶妙。
個人的には海外ヒップホップの中ではこの数年の中でも良かったものの一つ。本当にベストギリギリで落としてしまった。恐らく他の方の年間ベストでも相当見かけることになるハズ。
Ophilia - Psychic Mirrors
新人ファンクバンドのデビュー作。
Zappを彷彿とさせる80年代風のファンキーさや打ち込みといった昨今のブームに呼応しつつも、50-60年代オールディーズの要素を要所要所に取り入れているのが画期的。壮大なオールディーズ調の曲から静かなベッドルームポップにしれっと移行していくのはちょっとした感動を覚えてしまった。これからどう向かうか考えあぐねている音楽界にオールディーズという新提案をしている新譜がいくつかあったが、その中でも良い出来の一つ。
ただ、ちょっと長くてまとまりがなかったのが難点。その為将来コンパクトなアルバムを発表した際は話題になるはず。注目しておこう。
beautiful days - Belinda May
名古屋のインディーポップバンドのEP。ジャンル的にはドリームポップになるんですかね。
ただただ曲の良さ一本で勝負をかけるパワータイプのバンド。そしてこれも曲の良さだけで今年のベストに入れたくなる魔力を放つ。
何より一曲目のeveryday in loveが馬鹿みたいに良い曲。何を食べたらこんな曲を作れるようになるのか教えてほしい。
全体通してもかなり良かったのだが、一応シングル扱いなのでベスト「アルバム」からは外しました。年間ベストトラックを作るなら上位にくる。
City Slicker - Ginger Root
これもかなり話題になっていたよね。アメリカ発シティポップ。
二曲目のLorettaがキラーチューンであり、竹内まりやがラジオで流すなど日本国内での反響も大きかった。将来的にも現在のシティポップブームを象徴する曲として認識されそうである。
ただ、EP全体として見るとやや迫力不足だったかもしれない。こちらも年間ベストトラックを作るならかなり上位にくる。
Destiny Waiving - Ulrich Schnauss & Mark Peters
ギター主体のアンビエント。
ギターでアンビエントというと比較的自然派なものが多いように思うが、このアルバムは珍しくクラブ向きの作風。ちゃんとドラムも入ってくるし、ベースラインもうねうねしている。
現代風にチューンアップされたアシュラテンペルという感じの趣。都会派な雰囲気の中にクラウトな部分が見え隠れする。La Dusseldorfとか好きな人とかにはオススメ。
アルバムジャケットのように、夜の高速道路をかっ飛ばして聴いたら気分爽快なことうけあい。ベストには入らなかったけど、今後も何度か聴き返すことになりそうなアルバムだ。
Crying Silence - Yandere
Yandereの死ぬほど良すぎて眠れないEP。
Yandereは京都にいると自称する謎のトラックメイカーで、ポストインターネット的作風が持ち味。メロはインディー風*3なものの、たまに入る手数の多いビートなどにナードコア文脈を感じさせる。ジャケもどこかから拝借したのか自分で描いたのか、アニメ絵ばかり。
先日発表されたこのEPは彼女(?)の一種の到達点と言っても良いような内容。イントロ然としたアンビエントから始まり、その後の歌ものをじっくり聞かせる構成になっている。
多分にVapor的な感覚があるものの、2000年代のプラスティックな空気感を熟成し、20年後の今に配送してきたのかと思うほどに2000年代風。近いうちに巻き起こるであろう00年代リヴァイバルの予感を感じさせる作風になっている。
またEPの構成も三曲のみながら過不足の無い完璧な構成になっており◎。今後に期待大。
今回Apple Musicのライブラリを見直してみたのだけれど、新譜を思ったほど聴いていないらしい。
結構頑張って聴いたように思うのだけれどまだまだの模様。精進します。