EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

2021年年間ベストに入れたかったアルバム

f:id:EPOCALC:20211128200224p:plain

供養、供養♪

そろそろ各音楽アカウントから今年のベストが出始める季節。

僕も今年の一月一日に「2021Best」のプレイリストを作り、一年間にわたってそこに聴いた音楽を適宜ぶち込んだりぶち抜いたりして計15枚選んでいます。

が、15枚のみに絞るという条件でやっているので泣く泣く2021ベストから抜いたアルバムも数多あるわけです。

ベストに入らなかったからと言って言及せずにいるのも勿体ない...!

...というわけで、今回は2021ベストに入らなかったけど良かった新譜の供養になります。

 

tamayura - 玉響

tamayura

tamayura

Amazon

ラウンジジャズ。Amazonのオススメ機能で妙に推されたので買ってみたら、異様にレベルが高かった。

基本的にはTake Fiveといったスタンダードのカバーで構成されているのだが、正直ある程度聴かないとカバー曲と気づかないほどにまで過剰に編曲されている。編曲の方向性も昨今再評価が進む日本のアンビエントジャズを彷彿とさせ、五臓六腑に染みわたる。

数曲入っているオリジナルもそれらのカバー曲と遜色ない出来。可能であれば岐阜とか長野あたりの森の中で聴きながらキャンプしたい。参加者募集中。

問題はサブスクにない上、Youtube等でも試聴できないこと。

その為かこれについて言及している人は殆どいなかったように思う。これが忘れられてしまうのは勿体ないよ~

 

Good Timing - Adeline Hotel

Good Timing

Good Timing

  • Ruination Record Co.
Amazon

ほぼアコースティックギターアルペジオのみによるインスト作品。

そう聞くとアンビエントとかポストロックとかなのかな~と思ってしまうが、確かにその二つのような場面も多いもののそのどちらでもない。どこかで聞いたことあるような気がするのにジャンル不定という奇天烈な音楽性である。*1

これを聴いているとロマネスクみたいなフラクタル模様が頭に浮かぶ。これらのアルペジオは即興演奏らしいのだが、似たフレーズが手を変え品を変え次々に立ち現れる様は数学的な美的センスを感じる。風に吹かれているようなちょっとした爽やかさもあるね。

空を舞う新聞のようなジャケも印象的。知的かつ開放的な音楽性をよく表しているように思う。

 

ギタリシア - 浅井直樹

浅井さん!すみません!ベストに入れてないです!ごめんなさい!

このブログに多大なる貢献をしていただいた浅井直樹さんの新譜。

再評価著しい一作目のアバ・ハイジが30年ほど前であったため、奇跡の2ndといわれた。発売時にはちょっとした話題になっていた。

アバハイジのサイケ感は保ちつつも、よりクラシカル&オーセンティックな音楽性の楽曲が多いね。あと自主制作だった一作目と比すると、編曲に相当力が入れてあるのが嬉しい。

ちなみに今年一番聴いた曲はこのアルバムの(Let's sing a) Singer-Songwriter's Songです。全ての音楽好きに刺さる内容。皆聴いてみよう。

 

From Me To You - Quadeca

弱冠20歳・期待のラッパーのメジャーデビュー作。ラップ以外にもコントや実況動画をネットに投稿している、一種のYoutuber的な人物であるようだ。

僕とも年齢が近く*2、同様にナーディーな人物であるためか個人的に受け入れやすい音楽性。ジャケは白黒だが、色彩豊かな楽曲群が揃っている。

またトラックも凝っているのが高評価。割とラップの迫力で押し通しがちなヒップホップにおいて、トラックだけでも十分凝っているものの上でそれと同レベルのラップを繰り出されるとひれ伏すしかなくなる。トラックとラップのバランス感覚も絶妙。

個人的には海外ヒップホップの中ではこの数年の中でも良かったものの一つ。本当にベストギリギリで落としてしまった。恐らく他の方の年間ベストでも相当見かけることになるハズ。

 

Ophilia - Psychic Mirrors

psychicmirrors.bandcamp.com

新人ファンクバンドのデビュー作。

Zappを彷彿とさせる80年代風のファンキーさや打ち込みといった昨今のブームに呼応しつつも、50-60年代オールディーズの要素を要所要所に取り入れているのが画期的。壮大なオールディーズ調の曲から静かなベッドルームポップにしれっと移行していくのはちょっとした感動を覚えてしまった。これからどう向かうか考えあぐねている音楽界にオールディーズという新提案をしている新譜がいくつかあったが、その中でも良い出来の一つ。

ただ、ちょっと長くてまとまりがなかったのが難点。その為将来コンパクトなアルバムを発表した際は話題になるはず。注目しておこう。

 

beautiful days - Belinda May

beautiful days

beautiful days

  • Belinda May
Amazon

名古屋のインディーポップバンドのEP。ジャンル的にはドリームポップになるんですかね。

ただただ曲の良さ一本で勝負をかけるパワータイプのバンド。そしてこれも曲の良さだけで今年のベストに入れたくなる魔力を放つ。

何より一曲目のeveryday in loveが馬鹿みたいに良い曲。何を食べたらこんな曲を作れるようになるのか教えてほしい。

全体通してもかなり良かったのだが、一応シングル扱いなのでベスト「アルバム」からは外しました。年間ベストトラックを作るなら上位にくる。

 

City Slicker - Ginger Root

City Slicker

City Slicker

  • Acrophase Records
Amazon

これもかなり話題になっていたよね。アメリカ発シティポップ。

二曲目のLorettaがキラーチューンであり、竹内まりやがラジオで流すなど日本国内での反響も大きかった。将来的にも現在のシティポップブームを象徴する曲として認識されそうである。


www.youtube.com

ただ、EP全体として見るとやや迫力不足だったかもしれない。こちらも年間ベストトラックを作るならかなり上位にくる。

 

Destiny Waiving - Ulrich Schnauss & Mark Peters

ギター主体のアンビエント

ギターでアンビエントというと比較的自然派なものが多いように思うが、このアルバムは珍しくクラブ向きの作風。ちゃんとドラムも入ってくるし、ベースラインもうねうねしている。

現代風にチューンアップされたアシュラテンペルという感じの趣。都会派な雰囲気の中にクラウトな部分が見え隠れする。La Dusseldorfとか好きな人とかにはオススメ。

アルバムジャケットのように、夜の高速道路をかっ飛ばして聴いたら気分爽快なことうけあい。ベストには入らなかったけど、今後も何度か聴き返すことになりそうなアルバムだ。

 

Crying Silence - Yandere

Yandereの死ぬほど良すぎて眠れないEP。

Yandereは京都にいると自称する謎のトラックメイカーで、ポストインターネット的作風が持ち味。メロはインディー風*3なものの、たまに入る手数の多いビートなどにナードコア文脈を感じさせる。ジャケもどこかから拝借したのか自分で描いたのか、アニメ絵ばかり。

先日発表されたこのEPは彼女(?)の一種の到達点と言っても良いような内容。イントロ然としたアンビエントから始まり、その後の歌ものをじっくり聞かせる構成になっている。

多分にVapor的な感覚があるものの、2000年代のプラスティックな空気感を熟成し、20年後の今に配送してきたのかと思うほどに2000年代風。近いうちに巻き起こるであろう00年代リヴァイバルの予感を感じさせる作風になっている。

またEPの構成も三曲のみながら過不足の無い完璧な構成になっており◎。今後に期待大。

 

 

今回Apple Musicのライブラリを見直してみたのだけれど、新譜を思ったほど聴いていないらしい。

結構頑張って聴いたように思うのだけれどまだまだの模様。精進します。

*1:名前はジムオルークのGood Timesのパロディなので、ポストロックを意識している部分は多いかもしれない。

*2:一つ年下

*3:空気感含めちょっとGuitarっぽい

EPOCALCに10の質問

暇つぶしSP

 

 

 

はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問

という企画があるらしい。たまにはてなブログがやっているお題である。なんでも参加賞ももらえるそうだし、運が良ければ万年筆が当たるらしい。

blog.hatenablog.com

丁度暇だったので、自己紹介を兼ねて答えていこうじゃないか。なおTwitter等に共有はしないので、この記事を見つけた君はラッキー!

 

ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

僕はEPOCALCと云う人ですが、この名前は旧い表計算ソフトの名前ですね。

FACOM 9450というパソコンに内蔵されていたものです。

ja.wikipedia.org

母がOL時代に使っていた機種らしく、EPOCALCという文字列をDOS的な画面に打ち込んでいたという話をよく聞いていたのでそこから付けました。80年代の何かの名前にしたかったというのがあります。

そしてEPOCALC's GARAGEというブログ名ですが、これは敬愛すべき音楽家大滝詠一のブログ・Amigo Garageから付けました。以前は過去記事が見られたのですが、残念ながら現在は入り口が残っているのみです。

www.fussa45.net

 

はてなブログを始めたきっかけは?

一つ記事のアイディアが浮かんだからです。それがこちら。

epocalcgarage.hatenablog.com

これを書かんがために作ったと言って過言ではありません。当ブログ全体を見てもやはり完成度は一番二番を争いますね。

また、音楽界隈ではギャグ的な要素を入れたレビュー等を避ける傾向があります。これはいくつかの音楽雑誌やブログが無思考にギャグ要素を取り入れ、それにより音楽を貶めるような表現をしていたためです。取り扱いを誤った人が沢山いたために、そもそも取り扱うなという規範ができてしまったように思います。

しかしながら大滝詠一が示したように音楽(というか芸術全般)と笑いは不可分であり、評論においてもそれは同様だと思います。ギャグによってギャグを使わない音楽レビュー以上の論点を示唆する。それが当ブログの当分の目標です。

 

自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

さっき上げたナイアガラーの記事も良いんですが、楽家のいいね欄が一番ですかね。

epocalcgarage.hatenablog.com

完全に思い付きで作った突貫記事なんですが、意外とまとまりある面白い記事になったと思います。

楽家の皆さん、新しい表現方法としていいね欄はいかがでしょうか。

 

ブログを書きたくなるのはどんなとき?

レビュー記事はこれは良い!と思ったアルバムがあり次第作っています。企画記事も基本思い付いたとき作っていますね。

つまりスランプになると途端に何も書けなくなるんですね。これではいけないとブレインストーミングみたいなことで作ろうかなと思ったこともあったんですが、良いアイディアが思いつきませんでした。

ただ、以前MOZAIC MAGAZINEに寄稿したときは「新しいウェブ媒体の立ち上げ」というお題をいただいて作りました。

それが結果的にちょっとした評価を頂けるくらいの完成度になったことを考えると、お題出し係でも雇えば良い記事が沢山出来るのかもしれません。

 

下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?

100記事近くあります。大体没記事です。

代表例は再発版の発売当日に出そうと思ったけど間に合わなかった都市通信のレビューやオリンピック関係のせいで没になった某小山田氏をネタにした記事など。(※追記:小山田氏をネタにした記事は公開いたしました。)

また性質上他メディアとのネタ被りも多く、記事DJという全く関係ない引用だけで成り立たせるレビュー記事を書いていたのですが、オモコロの引用選手権とネタ被りの印象があったので没にしました。

omocoro.jp

 

自分の記事を読み返すことはある?

よくあります。その都度書き直したりしていますね。

 

好きなはてなブロガーは?

よく言及していますが、まず脱R論さんですかね。レビューの温度感はここからきています。

drr.hateblo.jp

 

国会図書館内の音源全部頭の中に入っていそうな音楽ディガーのブログと言えばこちら。いつもお世話になっております。

zangiriheads.hatenablog.com

 

ここから先は音楽関係以外。

www.ajimatics.com

数学オタクの鰺坂もっちょさんのブログ。僕は(一応)数学科大学生なのでよく読ませていただいています。数学にあまり馴染みのない人でも面白く読み通せるのが魅力的。*1

 

あとはこの人も外せないでしょ。

arufa.hatenablog.jp

はてなブログが誇る偉大なるブロガー・ARuFa!この人は漫才におけるダウンタウンに当たりますよね。彼以降、ブログの在り方を変えてしまったと言っても過言ではないはず。

他にも好きなブロガーさんは沢山いるのだけれど、意外とはてな民は少なめ。最近だとnoteも多いですからね。その他の方々はリンク集をご覧ください。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

 

あ~あ、こんなにリンク張っちゃった。はてなブログってリンク張られると通知行くんですよね。あらかじめ謝っておきます。すみませんでした。

 

はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

毎日サーバー管理お疲れ様です。記事削除依頼のメールはもっと優しい文面にしてください。よろしくお願いいたします。

 

10年前は何してた?

まだ小学生ですね。ヤマハ音楽スクールに行っていましたが、まだ音楽ファンではないです。10年後音楽ブロガーやっているよと言っても「?」という感じでしょう。

 

この10年を一言でまとめると?

 

 

 

 

*1:いいですか音楽関係の皆さん、音楽界隈の外ではこういうギャグ的かつ理知的な文章が沢山あるんですよ!

Ambient1/Brian Eno【1978】(AIによる自動レビュー)

※面倒くさかったので、AIに文を書かせました。その為数々の虚構が入っています。鵜呑みにしないでください。

AMBIENT1/MUSIC FOR AIRPOR

AMBIENT1/MUSIC FOR AIRPOR

Amazon

 

2021年現在、アンビエント音楽、ないしは環境音楽は身の回りにあふれているものとなっている。アンビエント音楽とは人々に意識されずに周囲の空気を変える音楽のことである。

エリック・サティの「家具の音楽」がアンビエントの思想を最も初期に実践した例と知られているが、現在まで続くアンビエント音楽はある一枚のアルバムによって定義づけられていると言って過言ではない。

それが今回紹介するブライアン・イーノAmbient 1/Music For Airportである。


www.youtube.com

 

1978年にLP盤で発売された本作は、当時その先進的な音楽性から大きな話題を呼び、現在でも多くのアーティストに影響を与えた傑作として名を残している。

本作に収録された楽曲の多くは、航空機や自動車などの移動体に搭載されたスピーカーを通して再生されることを前提として作曲されたものであり、飛行機や自動車の走行音などが収録されていることからも、本作の制作背景を容易に想像することができる。

また、この中には、後にテクノポップと呼ばれることになる電子音楽をいち早く取り入れた作品も収録されている。

 

本作では、これまで誰もが耳にしたことのあったようなクラシックの名曲が数多くサンプリングされている。例えば、バッハ作曲のG線上のアリアでは、ヴァイオリンの弦を擦った音をサンプリングし、ドビュッシー作/ラヴェル編曲による月の光ではピアノの音をそのまま録音している。他にも、モーツァルト作/シューベルト編曲の歌曲"Das Lied von der Museen des Flutes"がサンプリングされていたり、ショパン作のバラード第1番ト短調が使用されたりと、クラシック音楽に対する敬意を感じさせる作りとなっている。

そして何より特筆すべき点は、本作が現代音楽における一つの到達点であるということであろう。

それまで前衛芸術と呼ばれていたものが、既成概念を打ち破るという意味ではポストモダン的であったのに対し、本作はあくまで既存の枠組みの中でいかに新しいものを生み出すかという挑戦的な姿勢が見られるのだ。実際、本作を聴き終えた後には、従来の前衛芸術とは明らかに異なる印象を受けるはずである。

本作は、アンビエント音楽の歴史を語る上で非常に重要な作品であることは間違いないが、一方で同時に、アンビエント音楽の未来を担う新人たちの登竜門とも呼べる存在でもある。というのも、本作には、後のテクノポップシーンにおいて中心的人物となるデヴィッド・ボウイ坂本龍一といった面々が参加しているからである。

彼らは本作で実験的手法を用いながら、自分たちの持ち味を発揮していた。彼らが活躍した1980年代こそが、アンビエント音楽にとって一つの転換点だったといえるだろう。

 

現役音楽ブロガーEPOCALC氏による批評

僕より文章が断然上手い。こうやって人間の職業は奪われていくのでしょうか。

そしてAIが言うにはAmbient1ってAutobahnとDiscreet Musicの合わせ技みたいなアルバムだったんですね。聴きなおします。

 


www.youtube.com

 

 

Stasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa/Complesso di Sante Palumbo【1973】

ピカソとかバンコクみたいな長い名前って名付けた時点で覚えさせる気があるのかよく分からないよね。

www.discogs.com

はい。題名が長いです。多分今までレビューしてきたものの中でもぶっちぎりに。

 

この作品はCipiti Recordsというイタリア・ミラノ発のレーベルから出ていたもの。

幾つか聴いてみたところ、ジャズとロックの中間を狙うような作品を幾つも取り揃えている、ロックレーベルともジャズレーベルとも言い難い立ち位置。イタリアンロック関連で著名なCramps Recordsと似た傾向があるね。ちなみにCrampsもミラノ発。ミラノ人はこういうのが好きなのだろうか。

www.youtube.com

ただ、アヴァンなものが多いCrampsよりもっとフュージョンに近い雰囲気を好んでそろえている感じ。後期Crampsもこんな感じだけれど、70年代初期はここがそういうのを取り扱っていた模様。

一応EMI傘下のレーベル*1なのでメジャーレーベルなのだけれど、この通りインディな感覚があり日本で言うところのトラットリアを彷彿とさせるね。ただメジャーということもあり同時代的にもまあまあの知名度があったらしく、サンレモ音楽祭というイタリア国内で有名なフェスイベントに度々出ていたらしい。

 

あとこのレーベル、今回紹介するモノに限らず名前が長いアルバムがちょくちょくある

例えば下の曲の入っているアルバムはNessuno Siam Perfetti…ciascuno abbiamo i suoi difettiである。長え。

www.youtube.com

そして中身が普通に良い。

 

 

さてこのキラキラネーム爆付ジャズロックレーベルから出ているStasera In Casa Seduti In Poltrona Con La Luce Diffusa*2は所謂ラウンジジャズなのだが、今までほぼ再発がかかっていなかったと聞いてビックリするほどにレベルが高いものになっている。

 

イタリアンジャズといえばブラジリアンジャズ!*3

www.youtube.com

アコースティックジャズから電化ジャズに切り替わるのがいつ聴いても新鮮。即興部でも落ち着き払ったサックスとノリノリなオルガンとの対比でメリハリがついており、ともすれば退屈になってしまいがちなボッサの味を引き立たせているね。

このオルガンの音作りはやはり本場ブラジルを意識しているのだろうか、ローターをかけていなかったり倍音の重ね方などがワルターワンダレイそっくり

見逃しがちだが、ベースの動きが変態的で笑えてくる。同じ動きを二回としてやらねえぞという気迫を感じる。

 

最も人気なのがTREQUARTI。題名通りTre=三拍子になっている。

www.youtube.com

ラウンジジャズとのたまっておきながらこの硬派な曲ですよ。

さっきみたいなボサノヴァも多いのでラウンジジャズか~と思って気を抜いているとこういうモダンジャズなものもぶち込んでくるので気が抜けない。少しかすれてもたっているサックスが良い味を出しているね。

後半はモードジャズみたいに。ラウンジ向けに改造したKind of Blueという感じだ。

 

これを作ったのはピアニストのサンテ・パルンボ氏。トニー・スコットと演奏した経験があるなど相当の実力者らしい。

この他にもCitipiにいくつかライブラリーミュージックの好盤を残している。

中でもSwayはCipitiの作品に珍しく前衛音楽的なアプローチもしているアルバム。

今回紹介したようなものをイメージすると大分裏切られると思うが、イタリアンロックファンの琴線に触れるものがある。

www.youtube.com

カルト的な名盤らしく、一聴して損はないハズ。Cipitiマラソンでもするかな...

 

 

www.youtube.com

 

*1:後期は別のところになる

*2:今宵は自宅で間接照明のもと君とソファーに寄りかかって、という意味らしい。嗚呼1975

*3:???

心眼銀河/志人【2021】

神様が棲む村のうた

templeats.net

ヒップホップ、特にラップというと個人的にはあんまり聴かない。トラックの方はよく聴くのにね...

が、なんにでも例外と言うものがあるもので、この人は別だよな~という方がいる。志人である。その手のファンには著名らしいけれどこのブログで紹介するのは初めてなのでまずは略歴を。

 

志人MCなのるなもないという方と一緒に降神というユニットをやっていたラッパー。

降神は所謂文化系ラップとしての解釈もできるグループだと思うのだが、詩のお手本のような硬派な韻の中に教科書で読んだような文章たちからの引用がしれっと使われ、僕のような部外者の思うヒップホップのイメージを打ち砕いてくれる、他に類例を知らない作風。これを聴いてしまうと安易に文化系ラップとか言いたくなくなる。


www.youtube.com

これが入っているアルバムは自主制作で出たらしいのだがこの通り恐ろしいほど完成度が高く3000枚というインディーズにしては破格の売上を誇ったそうな。「インディーズではあり得ないほど売れた」と言われたあの相対性理論のシフォン主義が4000枚と近い数字、メジャーから出たはずの大滝詠一「レッツ・オンド・アゲイン」の3.7倍と言えばその破格具合が分かると思う。

なのるなもないも志人と比肩する人物なので是非聴いてみてね。

 

そして降神で二枚アルバムを出した後志人はソロでのアルバムを出し始めるのだが、神がかった領域へ突入する。


www.youtube.com

なんか最早ヒップホップとかではない。*1

声明や民謡を彷彿とさせる何かの気迫が凄まじい。ラップで大事な韻も踏んでいない方が珍しいなる状態になっている。ヒップホップファンによれば彼こそ日本語ラップの最高到達点とのこと。和魂洋才の擬人化である。

昨今は民謡クルセイダーズに始まり日本の古い文化を現代風にソフィスケイトして演奏するのが一種のトレンドになっているが*2、その先頭を突っ走ったのが志人なのかもしれない。

 

その後は京都の山で木こりをするなど音楽家というか、仙人じみたことをしている模様。

www.youtube.com

あまりに凄すぎてロバート秋山の動画に見えてきた。

 

そして彼の最新作こそが心眼銀河。今年の五月に出た。

こらそこ!発売5か月たった今更書くのかとか言わない!お金がなかったんだよ!

 

ただこの作品、著名音楽家の新作であるにも関わらずサブスクなし、Youtubeのティザーなし、販売も限定されたインディーズ盤と非常にハードコアな商法をとっている。

ただ最後の慈悲としていくつかサンクラに曲が投稿されているので、ここから試聴しよう。

一曲目の震えあがるほどレベルの高いインストアンビエント後、志人の十八番・ポエットリーリーディングのようなラップが始まる。

 

soundcloud.com

寺で説法を受けている気分になるのは僕だけではないはず。

志人印の固い韻で綴られた詩で「心眼銀河」の哲学が伝えられる。そこらで砧を打っている村のようなリズム感が癖になるね。

そしてそこから歌ものにシームレスにつながるのもプログレ好きとして大好物です。

 

このアルバムではサンプリングなしに80's~90'sのヤマハ機材*3を使って作曲しているらしい。

それゆえかヤマハ音源独特の空気感が出ており、先日記事化した吉村弘にも通じる音像が散見される。この曲ではないが、Creekによく似たころころした音も出てくる。

epocalcgarage.hatenablog.com

ただ吉村弘は都会の中の自然を想起させられるけれど、志人飛騨や木曽の夜を想起させられる。似た機材でも人によってこんなに変わるんですね。

冥丁など和の空気を携えたアンビエントが昨今人気だけれど*4、それに対しての回答とも捉えられるね。

 

今作ではボーカルのスタイルが曲毎に違う。例えば下の曲では比較的ラップらしいラップが聴ける。

soundcloud.com

そしてどんなスタイルでも志人流になるのは流石。Sam Gendelばりに記名性が高い。

外来語が詩中に出てきても全く日本的空気感を失わないのはこの人にしかできないね。

 

無意識中に祈りの手みたいに合掌して聴いてしまった。借金してでもとっとと買うべきだった。

僕は45分以上あるアルバムは助長に感じてしまうのだが、このアルバムは一時間以上あるのに短いとさえ思ってしまう。唯一無二の世界観に浸っていたくなるね。

 

個人的にはPizzicato Fiveさえらジャポンと対にして飾りたいように感じた。

 


www.youtube.com

さえらジャポンは享楽的、都会的作風で「どこかでみた世界」なのにどこにもない日本像を構築し社会批判したものだと思うのだが、
心眼銀河は内省的、自然主義的作風で「見たこともない世界」なのにどこかにあったかもしれない日本像を構築し自然回帰を謳ったような印象を受ける。

 

そしてなにより、このアルバムはゴッホの絵に感じるそれと同じような悟りの境地に近い人が作った芸術作品独特の迫力と一種の恐ろしさが漂っている。作風がまるで違うのに志人フィッシュマンズは同じ感覚を何故か感じる、と誰かが言っていたが、それもこの境地故かもしれない。

このアルバムを聴いて夜の京都の街なんか歩いたらこの世ではない場所に行ってしまう気分になるはず。京都住みの人は是非異世界に行ってみよう。*5

 

このアルバム、アートワーク面も非常に凝っており最も豪華なものだと冊子がついてたり和紙でくるんであったりするらしい。

templeats.net

ここまでのモノだと神棚に飾りたくなる。

僕は予算の都合上通常版しか買えなかったのだが、非常に恐れ多いことに志人氏の書が入っていた。オーラが凄まじい。腰が抜けた。

そして何よりこの書を見ているとご利益がありそうである。さあ神棚へ...


www.youtube.com

 

おまけ

 

折坂悠太・国府達矢・志人などなどが一堂に会した貴重極まりない写真

 

*1:本人もラップをやっている意識はないとのこと。

*2:これとか面白いよね。

*3:志人にもDTMの新時代が到来している模様

*4:そして志人から彼らへの影響も大いにあるだろう

*5:志人のCD聴いたら異世界に転生した件

ⒸEPOCALC