日本のクリスマスといえば!
SEASON'S GREETINGS (20th ANNIVERSARY EDITION)
- アーティスト: 山下達郎
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2013/08/28
- メディア: CD
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有名な話だが、一部のシンガーソングライターには季語がついているそうな。
そして山下達郎はなんとどっちもである。
山下達郎と言うと80年代では「夏だ!海だ!タツローだ!」という、
サザンも同じ文句でやらされてたと言われるキャッチコピーがつくほど「夏男」と言うイメージだったらしいが
僕の友人に聴けば八割がた「ああ、クリスマス・イブの人でしょ!」と返事が返ってくる。
こういう世代間の認識がずれが季節をまたぐ季語として採用されている理由だろう。
そもそもクリスマス・イブはMelodiesのB面最終曲で、やや地味曲扱いであった。
先述の夏男のイメージからの脱却を図るための曲だったらしい。
FHD 山下達郞 クリスマス·イブ 30th Anniversary Edition Full HD
しかし今はPVができるほど人気。というか日本のシングルチャートに連続でチャートインした最多年数の曲(30年)である。
これまた有名な話だが、JR東海のCMに使われたことから一気に広まったそう。
昔からタツローファンだった父親にその当時の話を聞いたところ
「今更売れたんだ」という感じだったらしい。
個人的には高校受験の期間中よく聴いていたので、塾へ行く寒い通学路が思い出される。
そして、これには英語版がある。それが今回ご紹介するSeason's Greetingsに収録されているバージョン。
このアルバムはタツローがアルバムこの前作ったばかりなのになんか作りたいな状態になっているときに作られたもので
それ以前にも作られていたアカペラ・カバー・アルバムのクリスマス版、という企画からスタートしたらしい。
最終的にはアカペラとオーケストラアレンジが混ざり合ったクラシカルなアルバムに。
では聴いていきましょう。
一曲目は古典的な合唱曲”愛するイエスよ、我々はここにいる”より。
Acappella Variation On A Theme By Gluck - Tatsuro Yamashita
しかし、この曲について調べようと思ってもバッハの方しか出てこない。
めちゃめちゃマイナー曲のようだ。こういうのどっから引っ張ってくるんだ?
この曲はオープニングナンバーらしく、1分に満たないので
次の曲から本番。BELLA NOTTE。
Bella Notte - Tatsuro Yamashita
前の曲もそうだったが、正確無比なアカペラ。でも声は機械で弄ってないようですよ!
そしてこの歌の音域の広さ。歌手としての山下達郎に舌を巻きましょう。ベロベロ。
このBella Notteと言う曲は全く知らなかったので、ライナーの解説を読んでみると
ディズニー映画・わんわん物語の挿入歌だそうだ。
Lady and The Tramp - Bella Notte HD
心の中の寺田心「クリスマスアルバムなのにクリスマス関係ないじゃん!」
実はこのアルバム、このほかの曲も結構クリスマスソングじゃないものが入っており、
「あくまで冬の曲を集めたアルバム」だそうだ。
帯には日本クリスマスアルバム最高峰とか書きやがってるくせに。
さて、上の動画を聴くと原曲も一応アカペラ歌唱があるが全くアレンジの異なるものだというのが分かる。
原曲は讃美歌風だが、カバーの方は完全に山下達郎節。僕はカバーのほうが良いな。
このアルバムのもう一つの醍醐味、オーケストラアレンジでは
例えば名曲「煙が目に染みる」をカバーしている。
Tatsuro Yamashita - Smoke Gets In Your Eyes (2013 Remastered Version)
先ほどとはうって変わって「大人数でやる音楽」を楽しめる。
ちなみにフルオーケストラ。フィルスペクターよりずっと豪華だぜ。
そして、それに負けないタツローの声が凄い。
荘厳で美麗なアレンジだが、これは服部克久氏によるもの。
山下達郎のオケは大体この人がやってます。
個人的な思い入れがあるのはこの曲。My Gift To You。
Tatsuro Yamashita - My Gift To You (1993)
この原曲はAlexander O'nealという人のものなのだが
これが入っている同名アルバムがうちの父親のイチ押しクリスマスアルバムなのだ。
なのでクリスマスシーズンには家でよくこれがかかっていた。
深層記憶に訴えかけられる曲である。温かいあの日はどこへやら。
そして目玉は前述のクリスマス・イブ英語バージョン。
まあ、そりゃ普通に良いよね。あたりまえだ。
山下達郎のラジオサンデー・ソングブックではクリスマスくらいになるとよくこれがリクエストに入っているイメージがあるネ。
ここではちょっと歌詞についてみてみましょう。訳詞はBig Waveの時と同じAlan O'Day。
歌詞カードにある日本語訳も一緒にどうぞ。
All alone I watch the quiet rain
Wonder if it's gonna sonow again
Silent night, Holy night
(ひとり 静かな雨を見ながら思う
また雪になるのだろうか?
静かな夜 聖なる夜)
I was praying
you'd be here with me
But Christmas Eve ain't
what it used to be
Silent night, Holy night
(君がいてくれることを
祈りに託していたけど
今年のクリスマス・イブは
そうはならなかった
静かな夜 聖なる夜)
If you were beside me
Then I could hear angels
And I'd give you rainbows
for Christmas
(もし君が隣にいてくれるなら
天使もおりてくる
そしたら 僕も君に虹をあげよう
クリスマスの贈り物に)
山下達郎-Christmas Eve(English Version)
韻をきちんと踏んでいるうえ、元より少し踏み込んだ内容になっている。
「僕も君に虹をあげよう」の部分は70年代のタツロー曲パレードの歌詞を彷彿とさせるね。
英語版の歌詞は「心深く秘めた思い 叶えられそうにない」で終わる日本語版よりもほんの少し希望があるね。
色々ねじれていた中学の僕は失恋歌ばかり掘り下げていたが英語版もツボだっただろう。
この英訳で見事だなあと思うのは次のセクションの歌詞で下の太字箇所。
Somewhere far away
the sleighbells ring
I remember
when we used to sing
Silent night, Holy night
(どこか遠く彼方
ソリの鈴が鳴っている
覚えているよ
君と一緒に歌ったね
サイレントナイトを 聖なる夜に)
元からある「サイレントナイト、ホーリーナイト」の部分を
クリスマスキャロルの曲名と解するというコペルニクス的転回。
そこの受験生。singは他動詞だからな。気を付けなさい。
あと今気づいたが、さてはバックのアレンジが日本語版と違うな?
上の広瀬すずのものと比べてみてください。キーボードの音に注意すれば分かりやすいですナ。
このアルバムの感じを聴いていると、有名なビーチボーイズのクリスマスアルバムを思い出すネ。
The Beach Boys - Christmas Album - Full Album
ビーチボーイズは非常にとても凄く夏のイメージだが、
このアルバムに入っているオリジナル曲Little Saint Nickはクリスマス曲
のスタンダードになっている。
山下達郎ほどではないにしろ、夏男イメージ脱却の一歩になったのかもしれない。
さて今年の冬も街角ではクリスマス・イブをはじめ
去年も聴いたようなクリスマスキャロルが垂れ流しになるだろう。
しかしある研究結果によると、クリスマスソングは毎年何度も何度も聴かされるため
精神的にストレスに感じてしまうことがあるそうだ。
僕も孤独感を増幅させられてストレス~
そんなときは、クリスマスソング少なめのこのアルバムを聴いて
いつもとは違うクリスマスを過ごすのも良いかもしれません。