EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

The Timers/The Timers【1989】

Timer漬けになろう

THE TIMERS スペシャル・エディション(DVD付)

THE TIMERS スペシャル・エディション(DVD付)

  • アーティスト:THE TIMERS
  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: CD
 

 ヘイヘイヘイヘイヘイヘイ!

キヨシロー聴いていますか?キヨシローだよキヨシロー。

 

昨今はやれアンチノスタルジーだ、やれ80’s万歳だなどと元気なのは良いことだが

このシーンにこの人物がいたらどう思ったんだろう?と思う筆頭が忌野清志郎である。

 

彼は僕がまだ小学生ぐらいの時に亡くなったんだったと思うが、

普通に衝撃的で連日ニュースになっていたことを覚えている。

なんだか殺しても死にそうにない人というイメージ*1があったので

みんな仰天したに違いない。僕もした。

 

しかし最近の若者音楽好き界隈ではあんまり彼の名をきかず、

同様に知名度に比してあんましサブカル系の若者に聴かれてないことで知られるサザンより

さらに輪をかけて聴かれてない(と主観的に思う)。

 

 

忌野清志郎といえば、根っからのロッカー!というイメージだが、

RCサクセションの初期曲は割と朴訥なフォークロックである。

この「僕の好きな先生」が最初のヒット曲。

ちなみに、この先生は実在する人物で小林晴雄さん(88)

度々忌野清志郎特集的なのにコメントを寄せている。

 

ちなみに当時からキヨシローのセンスは確かで

この曲の入った1stアルバムはズバリ「初期のRCサクセション」。

初期のRCサクセション+4

初期のRCサクセション+4

 

 ...まあ、実際そうなのだが相当自信がないとこの題は付けられない。

 

このアルバム名は後にパロディの標的となり、

最近だと台風クラブがパロディでつけていたね。

初期の台風クラブ

初期の台風クラブ

  • アーティスト:台風クラブ
  • 発売日: 2017/08/23
  • メディア: CD
 

 

一応ヒットはしたRCサクセションだったが後が続かず

しばらく低迷の時代に入る。

その間、精力的にライブ活動を繰り返す中で電化&衣装が派手になり

80年に皆聴いたことあるだろう「雨上がりの夜空に」「トランジスタ・ラジオ」で大ブレイク。

YMOと並ぶ当時唯一の存在になる。


この「イエーって言え!」というコール、誰だったかのパロディーのはず。思い出せない。

 

YMOファンの皆様方には坂本龍一と組んでいる「い・け・な・いルージュマジック」のが有名かもね。


坂本龍一との温度差よ。

こういう感じで優等生のYMOと不良のRCサクセションという対比だったらしい。

 

しかし、キヨシローはまだ物足りなさを感じていた。

誰にでも分かるような強い批評性をもつロックができないか。

そんなわけでキヨシローは誰でも知っている洋楽ロックの名曲

当時の社会を風刺する独自の日本語詞を乗っけたアルバムを制作する。

 

これが音楽をよく知らない人でも知っているCOVERSである。

カバーズ

カバーズ

 

 だが、この歌詞の中には原発が含まれており

原子炉を作っていたEMIの親会社東芝が猛反発。

半沢直樹ならここで親会社に盾突きやっちめる所だが

もちろんそんな人いないどころか

当時のEMIの社長が東芝天下り役員だったため企画が流れてしまう。

その時出た広告がこれまた有名な「素晴らしすぎて発売できません」というやつ。

f:id:EPOCALC:20200802235510j:plain

結局、他のレコード会社から発売することができたのだが

EMIといえばかのビートルズをも擁する"ロック"の会社であるので*2

このアンチロック的な姿勢にはキヨシローも怒りを通り越して呆れたに違いない。

 

 

さて、それと同時期にとある覆面バンドが登場する。その名もTimers。

いわゆる学生運動風のファッションで、その見た目通り神出鬼没でライブを行った。

どうやらメンバー名などはGSのタイガースをモチーフにしているらしいが、

一体正体は誰なんだ・・・!?!?



・・・まあ、どっからどう見ても忌野清志郎なんですけど。

 

彼らが唯一残したのがこのアルバムThe Timers

まず最初は挨拶からスタート。

タイマーズのテーマ~Theme from THE TIMERS

タイマーズのテーマ~Theme from THE TIMERS

  • provided courtesy of iTunes

モンキーズのテーマのカバーで、所謂サージェント・ペパーズ式の奴だね。

そしてここから既にぶっこんで来る大麻が大好き~♪というフレーズ。

COVERSで散々な目に合わせたEMIへの反逆のアルバムの始まりである。

 

お次は社会を皮肉った歌。

偽善者

偽善者

  • provided courtesy of iTunes

偽善者→二トン車→親会社子会社と、

大滝詠一も真っ青の韻の踏み方で軽快に攻めていく。

この手の、韻を踏みながら皮肉る曲だと

スターリンのロマンチストなんかが思い浮かぶが、

この曲の歌詞をよく見てみると一番の構造なんてそれとよく似ている気がする。

さらにスターリン自分自身アナーキストひっくるめてロマンチックと切り捨てたわけだが

Timersも「偽善者は歌うよ」と、自分自身も誰かさんと同じ偽善者と悟っている感があるネ。

二番煎じじゃないかって?

いやいや、スターリンに比してリスナーの圧倒的に多いキヨシローがこういうことをやったのは結構凄いことなのである。

 

 

EMIに真正面から喧嘩を仕掛けたのはロックン仁義

ロックン仁義

ロックン仁義

  • provided courtesy of iTunes

語りの部分で「最近のは軽いサウンドばっかり」 「好きな歌さえ歌えない」「ちょっと歌詞を変えただけで目くじら立てる」と

EMI...というかEMI以外の音楽業界にも爆撃する。

 

こういう曲ばかりじゃございません。

 セブンイレブンCMで流れまくるデイ・ドリーム・ビリーバー日本語版の初出はTimers。

この曲の歌詞は亡くなった母親をイメージして訳したものらしい。

それ故原曲以上にセンチメンタルなものになっており

アルバムの箸休めとしてとても良い働きをしている。

 

そしてアルバムの終わり方もテーマで締めるのがお約束。

 

タイマーズのテーマ~Theme from THE TIMERS

タイマーズのテーマ~Theme from THE TIMERS

  • provided courtesy of iTunes

 大麻が切れてきた、急いで帰ろう!ということで終わる。このノヴェルティ感覚大好き。

 

 

さて、Timersを語る上で外せないのが数々の放送事故である。

 まずはとても有名なフジテレビでの生放送事故。

COVERSのラジオオンエアを拒否したFM東京を罵倒した。

古舘伊知郎が深刻な顔をしているのが分かるし、

カメラの後ろではテレビ局職員の人たちが慌てふためていたらしい。

だが、カメラさんはノリノリのカメラワークでこの騒ぎに便乗している。

事故を楽しむな。 

 

お次はNHK

彼らがNHKの番組をおちょくるのはまだ想定の範囲内だが、

NHKでは御法度の商品名・明星即席ラーメンのCMソングを歌ってみせた。

 

放送外でも危ない歌を歌いまくっており、

憧れの北朝鮮だとか、原発音頭とかあるね。





 

こういう姿勢はその後のロッカー、例えば甲本ヒロトとかに影響を与えているそうだが

あんまりいわゆるはっぴいえんど史観を採用する人のフォロワーは見かけない。

 

でも、彼は大滝詠一ハンド・クラッピング・ルンバをカバーしていることを知っておこう。

 


忌野清志郎大滝詠一が一緒に聴けるのはここだけ!

キヨシローの新しく作った歌はほぼラップ。カッコいい。

ちなみにこの曲が入っているのは細野晴臣のTin Panのアルバムなので

思いっきりはっぴいえんどの中である。最後で細野晴臣も歌ってるし。

 

このはっぴいえんどに近いんだか遠いんだかよく分からない距離感、

パンクロッカー・ハードロッカーのイメージからポップスファンに敬遠されがちなのかもしれない。

ただ、この人の曲はもれなく素晴らしいので是非聴いてみてくださいネ。

 


忌野清志郎 - 覚醒剤音頭

*1:志村けんのような

*2:もっともセックス・ピストルズを秒で解雇した前科持ちだが

Acabou Chorare/Os Novos Baianos【1972】

サイケ+ボサノヴァ=? 

Acabou Chorare

Acabou Chorare

  • アーティスト:Novos Baianos
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: CD
 

 

多くの日本人音楽リスナーは音楽を洋楽邦楽に大別し、

やれなんとかが邦楽の名盤だ、かんとかが洋楽の名盤だ

等とアン・プロダクティボーな議論を日夜行っているものと思われる。

 

しかし、僕は問いたい。「洋楽」という分け方は大雑把すぎませんかと。

 

「洋楽とは邦楽の対義語で、日本国内以外の外国で生産される音楽全てのことをさす。」

これはWikipedia先生のお言葉です。

ja.wikipedia.org

 

そうすると洋楽というのは196-1か国それぞれの「邦楽」を寄せ集めたものであり、

たった日本一国の邦楽と対比させるのはちょっと乱暴なのではないかと。

そして、Wikipedia先生のありがたいお言葉があるのにもかかわらず、

実質洋楽とは英米音楽、どんなに広くても米+西欧を指しませんかと。

そう言いたいわけです。はい。

 

つまり洋楽名盤ランキングなるものは大抵英米名盤選であり、

その国の人しか聴いていない世界各国の「邦楽」名盤を見逃しているのである。

各国には各国の「風街ろまん」があるに違いないのだ。多分。

 

 

さて、手垢まみれの反欧米論を述べたところで

実際そのような名盤が存在するのか、というと割とあるらしい。

 

例えばお隣韓国であると、K-POPの始祖的存在「ソテジワアイドゥル」の1stが幅を利かせる。

I Know (Club Mix)

I Know (Club Mix)

  • provided courtesy of iTunes

 なんだか声の感じとかが某漫才グループを思い出すが

この通り当時としては珍しいラップのアルバム。そしてバカ売れしたらしい。

日本においてのラップアルバムといえば佐野元春だとかいとうせいこうとかが思い浮かぶが、

彼らは決して当時の評判が高くなかったことを考えると対照的。

それらしいヒットは「今夜はブギーバック」まで待たねばならないことを考えると

日本の場合、少し早すぎたのかもしれないね。

 

インドだと、ジョージ・ハリスンにも影響を与えたシタールのアルバムが名盤と謳われる。

Bhimpalasri Fast Teental

Bhimpalasri Fast Teental

  • Pandit Nikhil Banerjee
  • インドクラシック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 特にどこでも取り上げられているのがコレ。

シタールの三巨匠の一人Nikhil BanerjeeAfternoon Raga。

なっている楽器は終始タブラとシタールだけなのだが、

なんだかそれだけでお腹いっぱいになる超絶技巧サウンドが展開される。

 

 

で、ブラジル。ブラジルと言えばまあ多分ボサノヴァのなんかでしょ~と

色々名盤選を見てみるとそうでもないらしい。

なんでもボサノヴァ後のMPBなるジャンル*1が幅を利かせており、

その中でもOs Novos BaianosAcabou Chorareが高位によくいる。

 

 

彼らは所謂トロピカリアの一つ後の世代の人。

トロピカリアとは何ぞや、と言えばこれまたブラジルの名盤で

「南米のサージェントペパーズ」と呼ばれるシロモノ。

で、このアルバムに参加したジルベルト・ジル*2カエターノ・ヴェローゾ等の面子もトロピカリアと呼ぶ。

トロピカリアはこの後世界中に影響を与え、BECKの曲にもその名を冠したものがあるほど。

Tropicalia

Tropicalia

  • provided courtesy of iTunes

 

しかしながら、音楽的に革新的な彼らは政治的にも革新的で、

多くのメンバーが時の軍事政権に追われる身となってしまい、バラバラになってしまう。

 

そんな中、次世代ブラジルを担うバンドとして出てきたのがNovos Baianos。

元々名無しバンドだったらしいが、プロデューサーから「新しいバイーア*3人」を意味するこの名前をもらったらしい。

 

1stは割と普通のサイケポップでブラジル感は特にない。

Se Eu Quiser Eu Compro Flores

Se Eu Quiser Eu Compro Flores

  • オス・ノーヴォス・バイアーノス
  • MPB
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 だが、かのボサノヴァの父ことジョアン・ジルベルトに会うと一変、

2ndでアコースティックサウンドへと転向する。

 

名盤は一曲目からやってくる(今週の標語)



バチーダするアコギと男女の歌い分け、というボサノヴァ的な調子で始まるが、

すぐにサイケなギターが登場。そのままサンバと化す。

ボサノヴァとサンバというのはそれぞれ子と親の関係だけれど、

それをこうして一曲につないでまえ!というのはかなりサイケ的

ブラジルだからこそ出てきうるサイケ音楽であるネ。

そしてサンバやボサノヴァを下敷きにしているだけあって非常にメロディアで日本人にも聴きやすいのも高得点。

 

 

別に完全にボサノヴァやサンバに寄っているわけでなく、

割とサイケ寄りの曲もあるのだが、なんかブラジルである。

 

もしかしなくてもリズム隊のおかげなのだが。

この曲ではボサノヴァでもよくある言葉遊びの歌詞が中心にされていて

ナンセンス歌詞好きのナイアガラー的にも満足。

 

こういう元気な曲ばかりではなく、センチメンタルな曲もある。


アコギ一本で弾き語っているうえ、歌詞の感じがとたけけっぽい

この緩急がこのバンドの素晴らしいところ。

ブラジル人がみんなただ一直線に元気なわけではないのだ。

 

 

この名ポップソングの詰まった内容、その革新性などから

日本においては「ブラジルのシュガー・ベイブなんて呼ばれ方もする。

 

実際その二つ名に恥じず、各々のソロ活動もある程度成功しているようで

度々再結成ライブなんかもやっている模様。


絵に描いたようなヒッピー。

この通り、ブラジルではかなりの人数を動員する相当なレジェンドグループらしいが、

日本においてこの人達を知っている人は数少ない。

 

是非非西欧圏の音楽を聴いてみよう。

 


(CD COMPLETO) Novos Baianos - Acabou Chorare [Áudio Oficial]

 

 

 

 

*1:いわゆるJ-POPとかK-POPに当たるジャンル

*2:「東京恋愛専科」の元ネタはこの人の曲

*3:ブラジルの州

永井博のジャケで永井博っぽくないものを探す。

さようなら、今までの永井博

 

はあい、レディース・エン・ジェントルメン、おとっつあん・エン・おっかさん。

f:id:EPOCALC:20200722185643j:plain

 

EPOCALCです。よろしくお願いします。

帰省して勉強以外やることないので

こないだ買ったばかりのiPadで0奏聴きながら書いています。

Different Speeds

Different Speeds

  • Reizen
  • エレクトロニック
  • provided courtesy of iTunes

 

 

f:id:EPOCALC:20200722185911j:plain

さて、なぜか一部ではEPOちゃんボードと呼ばれていますが

今回僕の顔を隠しているレコード、このアルバムはなんでしょう?

 

そうですね、Niagara Song Bookですね。そう書いてありますね。

恋するカレン

恋するカレン

  • NIAGARA FALL OF SOUND ORCHESTRAL
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 スリザリンに30点。

 

ではポッター、このジャケ写の画家の名は?

…おやおや、選ばれし子はこんなのも分からないのか。

(笑うマルフォイのカット)

グリフィンドールにマイナス20点。

 

 

 

このジャケットのアーティストは永井博さんという方で

80年代に一世を風靡したイラストレーターの一人。

*1

 

このジャケに代表されるように、独特の青い色で統一されたリゾートの絵が多い。

 

永井博さんは大滝詠一A LONG VACATION というアルバムで用いられて以降、

「オフィスで働くクールなビジネスマンのためのオアシス...」的なイメージの代表格として扱われ

80年代にはレコードや雑誌、ポスターなど様々な箇所で使われたらしい。

父親も昔、永井さんのジグゾーパズルを持っていたそうだが、

青空が同じ色すぎて作るのにめっちゃ戸惑ったそうな。

 

 

最近も音楽界での80年代リヴァイヴァルの影響で永井さんの絵を見る機会が多くなった。

中にはアメリカで最優秀アルバムデザイン賞みたいなものをとっている永井さんジャケもあり

海外でも認められつつある。

 

 

 ※ちなみにコレ、去年グラミーにもノミネートされていたやーつ。

 

永井さんは、そのイメージからシティポップやAOR風のお洒落な音楽に使われることが多い。

しかし。中には流行に乗っただけで全然そんな感じじゃないやつもあるのでは????

 

そういうわけで探してみよう、ホトトギス

 

 

 ㊙探し方!

公式サイトにアクセスしてみても

あまりに膨大な量のお仕事をされていらっしゃるからか「主な仕事」などのコーナーはなく、

世界一平和なネット掲示板があるだけだった。

f:id:EPOCALC:20200722080954j:plain

 

そういうわけで、こうなったらアレを使うしかない。

 

 

 

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 馬鹿正直に検索して調べる。

 

 

 

①No Way Back/AAA
No Way Back (DVD付)(スマプラ対応)

No Way Back (DVD付)(スマプラ対応)

  • アーティスト:AAA
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: CD
 

 まず一番最初に引っかかったやつからちょっと違う。

 

 かのAAAがシングルで永井博絵を使っていたらしい。

ちなみに通常版はロンバケの絵。

No Way Back

No Way Back

  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

www.youtube.com

 しかし、中身は全くそういう感じの曲ではない。

 一応カッティングギターとかが入っているのだが、

シティポップとかFuture Funkとかでは全くない。

なんだろうこれ...J-POP?なの?これ?

僕には分からないタイプのジャンルだ。

 

村上春樹SMAPThe Beach Boys引用を怒ったのと同じように

ちょっとした信者に怒られそうである。

ameblo.jp

 

 

②ジャズマン/サザンオールスターズ
 

天下のサザンのシングル。

 昼のプールサイドの絵だ。

でもさ、一回考えてみよう。

みんなそんなもんだと思っていてスルーしていたかもしれないが

曲調的には全くシティポップ的ではないし、お得意の湘南サウンドでもなくないすか??

サックスが前に出ているこの曲は名の通り結構ジャズジャズしく、

海っぽくも昼っぽくもプールサイドっぽくもない。*2

正直この曲のシングルになんで永井博なのかよく分からない。

夜景とかの絵が似合うんじゃなかろうか。

 

もしかすると、昔からのファンの方は「違和感なんてないよ!」と言うかもしれない。

その感じ方の差が今のブームが捨象した永井博像かもしれないね。

 

 

 ③Coastline/Geoffroy
Coastline

Coastline

  • Geoffroy
  • インディ・ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 永井博がどーのこーのと言っておきながら

これ、厳密には永井博ジャケではない。

 というのも、このアルバムのジャケット、盗作なのだ。

 永井さんの手によるTeen RunningsのNOWのアルバムジャケットの。

Sightseeing

Sightseeing

  • provided courtesy of iTunes

 

 昨今のVaporwaveに乗っかったパロディだと思われる。

このアルバムを見つけるきっかけになった記事では

同じ絵をそのまんま無断流用し、LPリリースしようとした作品も紹介されており、

Vaporの無法地帯度がうかがい知れる。

 

ただ今回の場合は模写であり、無断流用ではないので

永井さんサイドはこのくらいは見逃しているそう。

ただ、Teen Runnings側は少々不満な様子。

 

 

…確かに、中身を聴いても洋楽インディーポップ・ストレート120km

これパロディする意味あったか...?という気がして釈然としない。

一応Men I Trustがフィーチャリングされているのでそんなヘンテコな人物ではないはずなのだが…

 

Thirsty (feat. Men I Trust)

Thirsty (feat. Men I Trust)

  • Geoffroy
  • インディ・ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

色々調べてみたんですが、Google先生の戦闘力ではこのくらいです。

もし何かほかにらしくないものを知っているよ!

鈴木英人にもこんなのあるよ!という方は

どしどし連絡をください。お待ちしています。

 

 

 

Time goes by...永井博作品集

Time goes by...永井博作品集

  • 作者:永井 博
  • 発売日: 2017/07/15
  • メディア: 大型本
 

 

*1:

f:id:EPOCALC:20190914181647j:plain

 

一応このブログで特に画像を設定せずに投稿した場合、

Twitterで拡散すると永井さんの上の画像が表示されるようになっています。

*2:ナイトプールっぽくはあるかもしれない

Head Hunters/Herbie Hancock【1973】

新時代のジャズだぜよ!

ヘッド・ハンターズ(期間生産限定盤)

ヘッド・ハンターズ(期間生産限定盤)

 

 

ジャズと言うと、結構難しいイメージがある。

実際そのイメージが当たっている曲も少なくない。

先日ここに書いた「銀界」なんかはそこら辺の大学生に聴かせたら逃げ出す

epocalcgarage.hatenablog.com

 

ジャズの偉いところはその先進性だと思う。

ほとんどのジャズジャズしている人はあまり懐古的にならず

常に前を向いて頑張っている印象がある。

リバイバルと言って古いものに頼りがちなポップスやロックとは一線を画す大事な要素だと思っているのだが、

それ故にこの人笑顔で一体何やってるんだサイコパスかこいつ状態に陥りやすい。

 

例えばラリー・オークス

この人はジャズの中でもさらにとりわけ先進的な人なのだが

彼の演奏があまりにぶっ飛びすぎていたため

「こんなのジャズじゃねえ!」と聴衆からブーイングされ、

警察に通報されるという事件が起こったことがある。

www.theguardian.com

駆け付けた警察は「ジャズじゃない」と判断。お前が決めるな。

結局特に何事もなく終わったのだが、この「ジャズ警察事件」をきっかけに

音楽界隈で「これは○○じゃない!」文句を垂れる人ことを「○○警察」というようになったそうな。*1

 

そんなジャズ界隈でも先進性と聴きやすさを兼ね備えようとしたのはハービー・ハンコック

マイルス・デイビスのバンドにもいた名ピアニストで

音楽博士とともに電気工学博士も持っている理系の鏡である。

 

初期はかの有名なブルーノートにいくつか作品を残しているが、

そのどれもがジャズのわりに聴きやすく、かといって先進性を捨てていないものばかり。

Maiden Voyage

Maiden Voyage

  • provided courtesy of iTunes

 

彼がブルーノートを離れる頃マイルス・デイビスエレクトリックジャズにハマっていくのだが

時を同じくして師匠ともどもエレクトリック沼にハマっていく。まあ電気工学博士だし。

 

マイルス・デイビスエレクトリックジャズは例にもれず難しい

そこら辺の大学生に聴かせたらやっぱり逃げていくだろう。

Spanish Key

Spanish Key

  • provided courtesy of iTunes

 

ハービー・ハンコックもうちょっと聴きやすくできないか?と考え

色々試行錯誤の上アルバムを作る。それがこのHead Hunters

 

この一曲目からもう引き込まれるぞ!


Herbie Hancock - Chameleon (FULL VERSION)

 

ノリノリなシンセベースに始まり

16ビートで色々と楽器隊が乗っかってくる、

滅茶苦茶にファンキーなジャズ

ファンクと言うと、この時代以前にはスライ&ファミリーストーンなんかが思い当たるが

ああいう人間味のある芋臭い曲ではなく、リズム隊が正確無比

ジャズらしい洒落た雰囲気を漂わせているね。

Family Affair

Family Affair

  • スライ&ザ・ファミリー・ストーン
  • R&B/ソウル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そして間奏ではELPもかくやというほどのシンセ捌き。

ちなみにこの間奏では、シンセのチューニングを間違って設定してしまい

慌てて演奏中に元の音程に調節しなおしているのが注目ポインツ。

 なんだかジャズなのにどこか同時代のロック的でもあるね。

 

 そしてなんといっても普通に聴きやすい

さあ、聴くぞ!と構える必要はなく、風呂場で鼻歌歌いながら聴ける

 

この曲のシンセベースはARP ODYSSEYというキーボードで鳴らしているのだけれど、

ODYSSEYの存在意義の6割弱くらいはベースなのは多分この曲のせい。

このアルバムを聴いた坂本龍一がすぐに買ったという話もあるね。

 

次のWatermelon manブルーノート時代の持ち曲のセルフカバー。


Watermelon Man

 

しかし、かなりファンキーになっていて原曲とはほとんど別物になっている。

Watermelon Man

Watermelon Man

  • provided courtesy of iTunes

 

 なんだか一緒に挟まる謎の掛け声と相まって

ホーミーみたいな管楽器の音が印象的。

これが強烈に印象的で、当時の人にとっては衝撃的だったらしく

今やこっちのセルフカバーバージョンの方が有名になっているほど。

...前も似た経緯の曲の記事書いた気がしてきたな。 

 

 

この聴きやすくも前衛性や先進性に富んだこのアルバムはジャズチャートで一位と大反響、

ローリングストーンの「最も素晴らしいアルバム500」の中にも498位ギリギリ滑り込む。

まあ、でもローリングストーンロック推しなのに入り込むのは流石。

ロック・ジャズ双方に影響を与えたアルバムということだね。

 

このロックとジャズの合わせ技のような音楽は後にフュージョンへと進化し、

聴きやすくも先進的な音楽として世界中に広まることになる。

朝焼け

朝焼け

  • provided courtesy of iTunes

そのためかHead Huntersにはフュージョンに必要な技法がこれでもかと詰め込まれているとも言われる。

 

さてこのアルバム自体は前述のとおり大成功だったのだが

往年のジャズファンからは「ピアノを弾けなくなったから奴はシンセに逃げたんだ!

と不評だったらしい。僕はピアノからそういう逃げ方したけど

ライブ中そういうヤジが飛んできたこともあったそうだが、

その場でピアノを持ってこさせ、華麗に弾いて見せたというカッコいい話がある。

 

その後もなんだかAORを歌ってみたり、ヒップホップをやってみたり

それらで例のごとくジャズファンに怒られたかと思えばどどどどジャズのバンドを組んでみたり

マイルスと同時代の人とは思えないほどの精力的な活動をしている人である。

そしてそのどれもが後続に影響を与えているから凄い。

 

Lite Me Up!

Lite Me Up!

  • provided courtesy of iTunes
Rockit

Rockit

  • provided courtesy of iTunes
Finger Painting

Finger Painting

  • The V.S.O.P. Quintet
  • ジャズ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

 

「ジャズ」というのは何物にも囚われない心意気だという出所不明の話をたまに聞くけれど

ハービー・ハンコックがそれを最も地で行っている人かもしれない。

出所不明の話だけど。


Head Hunters | Herbie Hancock | 1973 | Full Album

 

 

*1:YMO界隈では、YMO警察のことをテクノポリスと呼ぶらしい。

Waterloo Road/jason crest【1969】

超カルトバンドの超有名曲

Collected Works of Jason Crest

Collected Works of Jason Crest

  • アーティスト:Crest, Jason
  • 発売日: 2009/05/12
  • メディア: CD
 

 

この前ふざけてThe LambというThe1975の丸パクリをしてるんじゃないか?と話題だったバンドにスポットを当ててみた。

epocalcgarage.hatenablog.com

誰でも何かしらオマージュ元的なのはあるけれど、

もうちょっとオブラートに包むのが良かったと思います。(多分)

 

まあでも尊敬する楽曲にオマージュをすること自体はよくある話で、

オマージュ厳禁にしたら渋谷系の息の根が止まる。


…似すぎでは?

 でもこういうオマージュとかカバーとかで知る曲も多いよね。

 

オマージュ問題に巻き込まれないためには歌詞を変えてカバーする手をお勧めする。

たとえばSurfin’ USAはチャックベリーの歌詞変えカバー。

 

この手は面白くて楽なので多くのコミックバンドで使われる。

 

歌詞変えてないのにカバーの方が有名」という曲もある。

例えば有名なのはTwist&Shoutとか。

www.youtube.com

この曲はビートルズのイメージが染みに染みついているが、

よく思い出せばトップノーツの曲である。

というか、ビートルズ聴きすぎてトップノーツの方に違和感を感じる体になってしまった人も多いのでは?

どうしてくれるビートルズ

 

この前京都行ったとき回転寿司屋で何故かガンガンかかっていた「夏祭り」もそう。

夏祭り

夏祭り

  • ジッタリン・ジン
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 もともとはジッタリン・ジンというイカ天バンドの曲だったが、

 今はWhiteberryバージョンの方が有名。

…というか、誰だか知らんが太鼓の達人の曲だと皆思ってるでしょ?

ちょっと心が読めるんですよね、僕。もしかしてあなた辛いことある?

 

 

そしてカバーの方が有名な曲の最たるものがjason crestのWaterloo Roadだろう。

まず聴いてみてほしい。


Jason Crest - Waterloo Road

 

なんだか甘いメロディ、間奏に挟まる洒落た管楽器。

そう、これはかのオー・シャンゼリゼの原曲である。


Les Champs-Élysées(オー・シャンゼリゼ)/ダニエル・ビダル(歌詞付)

 

そもそもjason crestってだれ?というと、イギリスのサイケバンド。

現在はサイケのコンピにたまに顔を出す謎のカルトバンド的扱いだが、

当時はデビューしたは良いものの全く鳴かず飛ばずという感じだったようだ。

これはまずいな・・・と思ったプロデューサーは外部の作曲家に依頼。

で、できたのがこの曲だったというわけ。

 

この曲がたまたまイギリス旅行中のフランス人歌手の耳にとまり、

作詞家にフランス語Verを依頼しできたのがオーシャンゼリゼ。らしい。

 

ちなみに元々ウォータールー通りだったのがシャンゼリゼになっているのはローカライズの意味だけではなく

Waterlooがイギリスにフランスが負けた地・ワーテルローと同じつづりだからそうだ。

日本人にはそういう経験が少ないからかよく分からない感覚。

Fat Man」とかそういう感じだろうか。

 

そしてこれを吹き込むと大ヒット。全仏1位に輝いたそうだ。

その後の顛末は皆さんが良く知っている通り。

日本人でも空でフランス語で歌える人も珍しくないとんでもない有名曲になった。

 

そしてjason crestもウハウハ…ということにはならなかった。

残念ながら解散。結局アルバムも出さないままに終わってしまったらしい。

曲が評判になったのに売れずに終了なんて不運すぎる。

 

もっとも、先述の通りその後とあるコンピに取り上げられて局所的な人気を得、

稀に転がっているCDやレコードはかなり高価格で取引されている。

 

実際聴いてみるとjason crest、Waterloo Road的な曲は少ないものの実は結構良い曲が多い。例えばこれのB面もなんだか楽しい。

Education

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  • jason crest
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 カルトバンドになったのもなんだか納得。

全部サブスクにあるので是非是非聴いてみよう。

 

ちなみに、Waterloo Roadの作曲者のやっていたのはThe Four Penniesというバンドなのだが

四畳半フォークっぽく、Waterloo Road的な明るいサイケはほとんどない。

www.youtube.com

Waterloo Road的な曲が彼らから見つかりましたらご一報を。

ちなみに作詞者のやってたバンド"The Jugular Vein"はそもそも見当たりません。

こちらもご一報を。

 

 

 

 

 

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