Timer漬けになろう
ヘイヘイヘイヘイヘイヘイ!
キヨシロー聴いていますか?キヨシローだよキヨシロー。
昨今はやれアンチノスタルジーだ、やれ80’s万歳だなどと元気なのは良いことだが
このシーンにこの人物がいたらどう思ったんだろう?と思う筆頭が忌野清志郎である。
彼は僕がまだ小学生ぐらいの時に亡くなったんだったと思うが、
普通に衝撃的で連日ニュースになっていたことを覚えている。
なんだか殺しても死にそうにない人というイメージ*1があったので
みんな仰天したに違いない。僕もした。
しかし最近の若者音楽好き界隈ではあんまり彼の名をきかず、
同様に知名度に比してあんましサブカル系の若者に聴かれてないことで知られるサザンより
さらに輪をかけて聴かれてない(と主観的に思う)。
忌野清志郎といえば、根っからのロッカー!というイメージだが、
RCサクセションの初期曲は割と朴訥なフォークロックである。
この「僕の好きな先生」が最初のヒット曲。
ちなみに、この先生は実在する人物で小林晴雄さん(88)。
度々忌野清志郎特集的なのにコメントを寄せている。
ちなみに当時からキヨシローのセンスは確かで
この曲の入った1stアルバムはズバリ「初期のRCサクセション」。
...まあ、実際そうなのだが相当自信がないとこの題は付けられない。
このアルバム名は後にパロディの標的となり、
最近だと台風クラブがパロディでつけていたね。
一応ヒットはしたRCサクセションだったが後が続かず
しばらく低迷の時代に入る。
その間、精力的にライブ活動を繰り返す中で電化&衣装が派手になり
80年に皆聴いたことあるだろう「雨上がりの夜空に」「トランジスタ・ラジオ」で大ブレイク。
YMOと並ぶ当時唯一の存在になる。
この「イエーって言え!」というコール、誰だったかのパロディーのはず。思い出せない。
YMOファンの皆様方には坂本龍一と組んでいる「い・け・な・いルージュマジック」のが有名かもね。
坂本龍一との温度差よ。
こういう感じで優等生のYMOと不良のRCサクセションという対比だったらしい。
しかし、キヨシローはまだ物足りなさを感じていた。
誰にでも分かるような強い批評性をもつロックができないか。
そんなわけでキヨシローは誰でも知っている洋楽ロックの名曲に
当時の社会を風刺する独自の日本語詞を乗っけたアルバムを制作する。
これが音楽をよく知らない人でも知っているCOVERSである。
だが、この歌詞の中には反原発歌が含まれており
原子炉を作っていたEMIの親会社東芝が猛反発。
半沢直樹ならここで親会社に盾突きやっちめる所だが
もちろんそんな人いないどころか
当時のEMIの社長が東芝の天下り役員だったため企画が流れてしまう。
その時出た広告がこれまた有名な「素晴らしすぎて発売できません」というやつ。
結局、他のレコード会社から発売することができたのだが
EMIといえばかのビートルズをも擁する"ロック"の会社であるので*2
このアンチロック的な姿勢にはキヨシローも怒りを通り越して呆れたに違いない。
さて、それと同時期にとある覆面バンドが登場する。その名もTimers。
いわゆる学生運動風のファッションで、その見た目通り神出鬼没でライブを行った。
どうやらメンバー名などはGSのタイガースをモチーフにしているらしいが、
一体正体は誰なんだ・・・!?!?
・・・まあ、どっからどう見ても忌野清志郎なんですけど。
彼らが唯一残したのがこのアルバムThe Timers。
まず最初は挨拶からスタート。
モンキーズのテーマのカバーで、所謂サージェント・ペパーズ式の奴だね。
そしてここから既にぶっこんで来る「大麻が大好き~♪」というフレーズ。
COVERSで散々な目に合わせたEMIへの反逆のアルバムの始まりである。
お次は社会を皮肉った歌。
偽善者→二トン車→親会社子会社と、
大滝詠一も真っ青の韻の踏み方で軽快に攻めていく。
この手の、韻を踏みながら皮肉る曲だと
スターリンのロマンチストなんかが思い浮かぶが、
この曲の歌詞をよく見てみると一番の構造なんてそれとよく似ている気がする。
さらにスターリンは自分自身アナーキストひっくるめてロマンチックと切り捨てたわけだが
Timersも「偽善者は歌うよ」と、自分自身も誰かさんと同じ偽善者と悟っている感があるネ。
二番煎じじゃないかって?
いやいや、スターリンに比してリスナーの圧倒的に多いキヨシローがこういうことをやったのは結構凄いことなのである。
EMIに真正面から喧嘩を仕掛けたのはロックン仁義。
語りの部分で「最近のは軽いサウンドばっかり」 「好きな歌さえ歌えない」「ちょっと歌詞を変えただけで目くじら立てる」と
EMI...というかEMI以外の音楽業界にも爆撃する。
こういう曲ばかりじゃございません。
セブンイレブンCMで流れまくるデイ・ドリーム・ビリーバー日本語版の初出はTimers。
この曲の歌詞は亡くなった母親をイメージして訳したものらしい。
それ故原曲以上にセンチメンタルなものになっており
アルバムの箸休めとしてとても良い働きをしている。
そしてアルバムの終わり方もテーマで締めるのがお約束。
大麻が切れてきた、急いで帰ろう!ということで終わる。このノヴェルティ感覚大好き。
さて、Timersを語る上で外せないのが数々の放送事故である。
まずはとても有名なフジテレビでの生放送事故。
COVERSのラジオオンエアを拒否したFM東京を罵倒した。
古舘伊知郎が深刻な顔をしているのが分かるし、
カメラの後ろではテレビ局職員の人たちが慌てふためていたらしい。
だが、カメラさんはノリノリのカメラワークでこの騒ぎに便乗している。
事故を楽しむな。
お次はNHK。
NHKでは御法度の商品名・明星即席ラーメンのCMソングを歌ってみせた。
放送外でも危ない歌を歌いまくっており、
こういう姿勢はその後のロッカー、例えば甲本ヒロトとかに影響を与えているそうだが
あんまりいわゆるはっぴいえんど史観を採用する人のフォロワーは見かけない。
でも、彼は大滝詠一のハンド・クラッピング・ルンバをカバーしていることを知っておこう。
キヨシローの新しく作った歌はほぼラップ。カッコいい。
ちなみにこの曲が入っているのは細野晴臣のTin Panのアルバムなので
思いっきりはっぴいえんどの中である。最後で細野晴臣も歌ってるし。
このはっぴいえんどに近いんだか遠いんだかよく分からない距離感、
パンクロッカー・ハードロッカーのイメージからポップスファンに敬遠されがちなのかもしれない。
ただ、この人の曲はもれなく素晴らしいので是非聴いてみてくださいネ。
*2:もっともセックス・ピストルズを秒で解雇した前科持ちだが