EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

銀界/山本邦山+菊地雅章【1971】

(定義上の)邦楽ジャズ

銀界

銀界

 

 

ジャズ、聞いてますか?

僕はそんなに聴いてません。ハイ。

なにぶん長い長い歴史があるので何から聴けばよいか分からず、

学校の近くのディスクユニオンの長いジャズの棚を行ったり来たりしては

結局買わないみたいな事態を何度となく繰り返している。

 

ただ、ジャズは商業音楽として成立しつつも前衛に行く一歩手前まで攻めるので

それなりに聞きやすいうえに前衛的で楽しい。

自由度も、ロックやポップスと同じかそれ以上に広いんじゃないかと思えてくる。

 

最近は例の80'sブームに乗っかりフュージョンも聴かれるようになったからか

あまりジャズに関係のない周りの人も結構フュージョンめいたのを聴いている。



こういうのね。この人は渡辺貞夫という日本を代表するサックス奏者。

この曲は中学の頃昼放送のOPに使ってた。

フュージョンは買い物を邪魔しないBGMとして使われることも多く、

よくある店内BGMとかもフュージョンに色濃い影響を受けている(らしい)。


ハードオフBGM 1080p 高音質

こういう歌詞がのりそうなメロディが日本のフュージョンの特徴。 

 

逆にかなり前衛的で買い物の手が止まるジャズもあり、

その中の一人として今回紹介するのは菊地雅章さんという方。

こちらも日本を代表するジャズ・ピアニストの一人だ。

 

菊地雅章さんといえばエレクトリック・ジャズ。

これは電子楽器を取り入れたジャズで、フュージョンの兄みたいなやつ。

かのマイルス・デイビスハービー・ハンコックなんかが得意とする。


特に初期はフリージャズっぽくて前衛的なモノが多い。

ハービー・ハンコック位になると大分穏やかになるけどね。

Rockit

Rockit

  • provided courtesy of iTunes

 

 

日本においては菊地さんのSusutoがエレクトリック・ジャズ名盤の誉れが高く

マイルスに「自分より俺の音楽を知っている」と言われたほど。

テロリロテロリロテロリロテロリロテロテロテロリーwwwww

 カッティングギターの上でぐるぐるしたキーボードが繰り返される。楽しいね。

菊地さんと言えばこういうイメージ。

 

この曲は日本のジャズのアンセムと化しているようで、

もう一人の菊地さん、菊池成孔もほぼ同じアレンジでこの曲をカバーしている。


DCPRG - Circle/Line~Hard Core Peace

 

でも、今回取り上げる銀界はこれとはベクトルが真逆。

なにせ銀界は伝統楽器・尺八を中心にしたアルバムなのだ。

なんだか古今亭志ん生が真面目に古典落語をやっているような不思議さがある。

 

一曲目から雰囲気が凄まじい。

www.youtube.com

最初は尺八が不在でジャズバンドが同じフレーズを繰り返すが、

この時点で十分「」の雰囲気が完成している。

そこに満を持して飛び込んでくる尺八もまた音が切り裂くようで凄いですネ。

この尺八はもう一人のクレジット、山本邦山さん。人間国宝である。ドヒャー

滋賀の生まれの方らしい。やはり京都に近いからか、江戸というより京の感じ。

 

 

でもこの曲は「」であり、二曲目からが本番。

www.youtube.com

 始まりは静謐そのものである。

最初は尺八のソロと思い出したように挟まるバンドの掛け合いで 

音を楽しむというよりかは、楽器と楽器の間の残響を楽しむような感じだ。

中盤は結構ジャズジャズしくなっており、

人間国宝を置いてきぼりにしてずんずん進むパートまである。

それでも決して「和」から離れない。

 

 

そしてジャケ写回収の曲「龍安寺の石庭」。


Stone Garden of Ryoan Temple

 頭の中で「龍安寺の石庭は京都東山文化の最高傑作で・・・」の様な文を任意のナレーターに読ませよう。

もう龍安寺で延々と流れているようなビデオになるよ!

以前ここの枯山水を一回見に行ったことがあるのだが、

写真で見るほど大きなものではない。

それ故に岩の大きさとか壁の傷跡とかが素朴な白石に映えていた気がした。

この曲も、飾り気のない尺八と派手な西洋楽器との対比が打ち出された曲で

なんだか似た構造を感じるぞ!

 

 

概して日本風といわれる音楽はヨナ抜きを使えど若干「中華」の気が入るものだが

このアルバムは初めから終わりまであくまで純和風、そして京風を保っているのが凄い。

似たように中華じゃない和風テイスト音楽に新月があるが、

あれは本人たちもよく分かってない手法で和のテイストを出している。



これを意図してやっちゃうのがジャズマンの凄さである。

もののブログによるとヨナ抜きの陰旋法らしいが、

それだけでここまで行けるものだろうか。凄いね。

 

そしてこのアルバムで大々的に伝統音楽を意識して曲を作った菊地さんが

あのテロリロテロリロテロリロテロリロテロリーに行くのだから面白い。

電子音楽と伝統音楽は意外と近い位置にあるよ!という話はあらゆるジャンルで聞くけれど

ジャズでの例が菊池さんなのかもしれないね。

 


山本邦山 - 銀界

 

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