12月の旅人よ
共産圏の音楽、聴いてますか~!!
共産圏の音楽というと一見するとゲテモノ音楽の香りがするが、最近はMolchat Domaに代表するSovietwaveのおかげでなんだかんだ一般的にもそこら辺の再評価が進みつつある。
つい最近ではソ連のフリージャズをコンパイルした終わってるディスクガイドが出版されるなど、この風潮は加速傾向。
また、以前このブログで東独パンクを取り上げたが結構好評だったので、ソ連圏に限らず共産圏全体について興味がある音楽ファンが増えてきているのかもしれない。
共産圏において主にレコードを出していたのは国営レーベル。
その他でレコードを手に入れるためには密輸レコードや肋骨レコードのような違法手段を用いるしかなかったらしい。大抵そこでは「資本主義的」と禁じられた海外の楽曲が出回った。
自主制作(もちろん違法)で自分の音楽を出した人もいたが、そこから人気になった多くの音楽家は国営レーベルと契約し正規の手段でも作品を発表した。
つまり、共産圏の音楽を知るには国営レーベルを知ることが最も手っ取り早い。
そんなわけで今回はそんな共産国営レーベルと良良良(よよよ)な作品をまとめた記事です。
ちなみに共産圏なので当時物のレコードのジャケは大体ペラペラです。
MELODIYA
音楽をある程度漁った方なら何度もお目にかかったかもしれないレーベル・メロディア。
ソ連の国営レーベルであり、古典クラシックからニューウェーブまでカタログ数は6万にもなるといわれる超巨大レーベル。
現在でも一応存続しているらしく、過去録音のアーカイブや配信などをおこなっているらしい。
それ故にちょくちょく配信に来てたりする。まずはこのレーベルから。
Disco Alliance-Zodiac
MELODIYAの看板バンドといえばZodiac!同時代の資本主義圏でもよく知られていたチープなテクノポップバンドであり、現在のSovietwave方面からの再評価も熱いね。
日本ではソ連のYMOと呼ばれ、共産圏にこんなに優れたバンドがいるのかと当時から話題になっていた。
党もそれをよく分かっていたらしく対外向けのラジオ放送ではZodiacを頻繁に流していたらしい。
たまに壁レコにこれが貼ってあるが、意外と買えるくらいの金額なので余裕のある方は是非。
Discophonia-Argo
これもディスコ・ファンク好きの間では有名な一作。
1曲目の間が抜けた"DISCO"の掛け声が笑いを誘うが、資本主義国のエレクトロファンクと遜色ないクールな作品。
また地方に伝わる民謡なども参照しているらしく、その点もユニークで楽しい。
Labyrinth-Melodiya
レーベル名を冠したジャズバンド。
それだけあって相応に気合が入っており、同時代のジャズとしてみてかなり先進的な取り組みをしている。
明らかにエレクトリックジャズやロックの影響受けまくりであり、ほぼジャズファンクやジャズロックといった趣。
資本主義的ロックじゃなくてもこれだけできる、という共産党の主張が聞こえてきそうだ。
AMIGA
東ドイツの音楽を牛耳っていたのはAMIGA。こちらも一応存続しているらしい。
メロディアが国内音楽に絞っていたのと対照的に、Pink Floydなどの一部の海外の旧譜も発売していたのが特徴的。
お隣の西ドイツはクラウトロックやenjaレーベルのような世界的にも知られる音楽を多数輩出したことで有名だが、AMIGAの音楽家たちもそれに影響を多少なりとも受けた、高度な音楽性を持った音楽家が沢山いる。
特にドイツのテクノを語る上では絶対に外せないレーベルであり、一部の音楽家は東西統一後も一線で活躍したほど。是非聴こう。
Amiga A Go Go
後の時代になってAmigaの優秀な音楽をコンパイルした、コンピレーションの名盤。
特にVol.1はレアグルーヴ界隈からの評価があつく、今でも活躍する音楽家も多数収録されている。
70年代風レトロフューチャーな炊飯器のようなジャケも素敵。
Der Traum Von Asgard-Reinhard Lakomy
AMIGAレーベルの良心ともいえるReinhard Lakomyの一番人気の作品。この人がいたからこそ東ドイツの音楽の芸術性が保たれていた...とも言われる。
陰鬱でちょっと前衛的なニューウェーブ。現在流行りのSovietwaveに近い内容でカッコいい。
クラウトロックの影響力は壁に隔たれたはずの隣国まで届いていたようである。
Planetenwind-POND
これもまたクラウトロックの影響を感じさせる、AMIGAのテクノポップス。
A面全部を使った表題曲は正直ダレルのだが、B面の諸作は今のディスコでかかっていても全然問題ないどころか盛り上がること必至で上出来。
実際このレコードを買う人はB面目当てで買うようだ。逆タルカス現象。
Supraphon
チェコのレーベル。実はチェコには三つ国営レーベルがあったそうで、そのうちの一つがこれ。主に国外向けに作っていたらしい。
スメタナやドヴォルザークなどの録音に有名なものが多く、クラシックファンには結構なじみ深いかも。
また最近になって柴崎裕二氏などの協力で日本国内で再発されているものも多く、入手難度高めなことが多い共産国営レーベル中では最も音源が手に入れやすいかもしれない。
Symbiosis-Jazz Q
政府に迫害されながら活動したジャズバンド。Supraohonはそこら辺結構寛容で、政府から反感を持たれたバンドもたくさんいるらしい。
ジャズバンドといっても演奏の幅は広く、プログレみたいなものからR&Bなものまで様々なジャンルを縦横無尽に横断していく。
チェコのレコード屋でDJが血眼になって探すのがこのレコードらしい。
Olympic– Želva
チェコのGSのような立場にあるバンドはコレ。
どの国もこういうロック入りたての時期の曲は民族音楽の影響が色濃いが、こちらも例にもれずどこかヨーロッパ内陸部の雰囲気を感じるね。
所謂辺境ガレージ好きに人気らしいけれど、普通に良いので万人におすすめ。
Kure V Hodinkach-Flamengo
チェコのプログレバンド。この1stがあまりに先進的過ぎて政府に解散させられたというプログレ冥利に尽きる最期を遂げている。
大分ハードロックに寄ったイタリアンプログレみたいな雰囲気を携えておりかなり素敵。クリムゾン好きな人にはおススメ!
EGREM
キューバの国営レーベル。サブレーベルにAREITOがある。
この二つはキューバンジャズでは絶対に外すことのできないレーベルであるので、その手のファンには非常に有名と思われる。
例えばChucho ValdesのIrakereなんかはここ。普通に日本盤も出回っているので共産国営レーベル中では最も一般に知られている一つかもしれないね。
Irakere-Irakere Grupo
というわけでIrakere。知らなかった方はこのアルバムから!
ハービー・ハンコックやリターン・トゥ・フォーエバーと一緒に再発されるほどの超名盤。
最も脂がのっているころの彼らのライブ録音であり、やっている人もその界隈では有名な人ばかり。フュージョン好きなら聴くっきゃないね。
Días Y Flores-Silvio Rodriguez
キューバにおけるフォークは「ヌエバ・トローバ(=新しい歌)」と言われたのだが、その運動を牽引した一人がSilvio Rodriguez。現在でもスペイン語圏を中心に人気があるそうだ。
このアルバムではフォルクローレと南国的陽気さが混ざったそんなヌエバ・トローバの世界を満喫できる。キューバ行きたーい。
Música Electroacústica- Juan Blanco
70-80年代はどこの国を探しても必ずコンピュータミュージックをやっている人がいるのだが、キューバでの例がこの人。
かなり前衛的な音楽だがパーカッションがなるほどキューバ音楽のそれであり、機械的なコンピュータ音楽を有機的にさせている。
未来的なのに土着を感じさせる不思議な感じ。他のアルバムではなかなか味わえない。
ここで紹介したレーベルはまだまだ氷山の一角のうちの一角。世界は広い。
是非深遠な共産音楽の世界に足を踏み入れてみよう。