なにこれ?-なんなんでしょうね。
この世には謎の名盤と言われるものがいくつかある。
出た当時に流行らず、製作者もよく分からないやつである。
例えば、最近だと俗に言う俗流アンビエントとかいうやつに多い。
吉村弘や日向敏文など、この系統で人物にスポットライトが当たった例も多いが、
基本的には「読み手知らず」の音楽を愛でる。
特に上の記事で紹介されているラプスクラブなる謎の団体が出してたNew α Soundというのがすごい人気。
かのLight Mellow Buの柴崎氏がBook OFFで見つけ、上の記事で発表して以降音楽ファンから名盤扱いされている、という珍奇な経歴の名盤だ。
で、ラピスクラブってなんだろうなァカルトくさいなァと思って調べてみると
老舗のパワーストーン販売店らしく、ラピスラズリとか売ってるらしい。
こういうちょっと怪しい店結構好き。お香屋とか。
そこではオマケとしてこういうヒーリングミュージックを配っているらしく
その中の一つとしてNew α Soundシリーズがある模様。
しかしながら柴崎氏が見つけたときには108円だったこのCD、あまりに評判が良すぎたため
今や10000円近くするという馬鹿みたいな高騰っぷりを見せている。
それでもSOLDになっているものがちらほらある。そこまでして買ってしまう音楽オタクの悲しき性。
他にも百円ショップで売られていたCDも1000円以上で売られているというから驚き。
音楽とはよく分からないものである。
そんな中、先日局所的に話題になっていたアルバムがある。
なんでも最近まで誰が作ったのかはもちろんのこと、いつ、どこで録音されたのかも不明だったとのこと。
そしてDiscogsによると現在確認されているオリジナルアルバムはたったの0.0025オンド(=2枚)。*1
Discogsで所有していると言っている10人、お前らは何者だ。
そんなオカルトじみたTHE CONSTANT SOUNDというアルバムが再発するというので話題になっていた。
これのジャンルはというと、大雑把に言えばサイケポップだがもっと詳しく言えばサンシャインポップである。
ビーチ・ボーイズやスペクター、ママス&パパスに影響を受けたサイケ・ポップで、重厚なコーラスと美メロが特徴。
ビーチボーイズ的コーラス大好きな日本人が溺愛するタイプの音楽なのだが
ジャンル自体が後々になってコレクターが再発見したものなので埋もれた音源が御嶽山のごとくとある。
例えば、渋谷系好きの人ならサイケといえばSalt Water Taffyやロジャー・ニコルスが思い浮かぶ人も多いと思う。
しかし彼らはどちらも後々評価された人であり、そしてサンシャイン・ポップ。
サンシャイン御嶽山の一部だったわけ。
で、このThe Constant Soundは誰が作ったかというとレッキング・クルー。
60年代から70年代アメリカのスタジオミュージシャンたちで、スペクターやビーチ・ボーイズも雇っていた。
このアルバムは1968年、彼らのうちの一人が先導になりひっそり録音されたもの。
つまりサンシャイン・ポップに関して誰より詳しい人たちが作ったものである。
そんなの悪いわけがないね!!!
あまりにもレアなのでYouTubeに全体音源がないのだが、一曲だけ動画で味わえる。
The Constant Sound - Candy Egg (1967)
これで分かる通りのかなりレベルの高いサイケ。
単純にメロディが良いのももちろんのこと、コーラスなど編曲面もドリーミーで良良良。
イージーリスニング風のオーケストラも彩りを添えているが、リバーブがかなり深く、
合唱風のコーラスと相まってちょっとした楽団みたいになっている。
またこの曲はメロウな一品だが、アルバムの他の曲はSalt Water Taffyみたいな楽しい感じ。
ソフトロックが好きな人なら誰にでも自信をお勧めすることができるし、
ソフトロックが好きじゃない人にでもお勧めできる。要は全員聴け。
さて、このアルバムように伝説と言われていたアルバムが再発され、すぐにでも聴くことができるようになった例が最近多い。
例えば、本ブログにもたびたびご助力いただいている浅井直樹氏のアバ・ハイジなんかもそうだろう。
サブスクリプションに来ているものも少なくなく、ニッチな音楽ファンにはこれまでにないほど恵まれた環境になっているのは確か。
そして聴き手から直接声が届くので、作り手にとっても恵まれた環境でもある。
実際イノヤマランドのように最近になってまた精力的に活動し始めた方も多い。
伝説的な人のライブや新作が楽しめるのであるから非常にありがたいことである。
音楽ファンにとって最も幸福な時代を最大限に楽しもう。
そして浅井直樹氏も精力的に活動中、こんどアルバム出るそうです。是非。
あ、勝手に宣伝しているだけです。悪しからず。