タイトル通りです。
年末。
いつもだったら「もう12月か!!」なんて言うけれど、
ちょっと今年はイレギュラーすぎて、長い空白が延々と並べられているような日々が続き、
「やっと12月...」と感じざるをえない。
とっとと今年終われというのは万人が考えていたらしく、
バーガーキングは夏ごろからクリスマスキャンペーンをしていた模様。
さて、毎年この時期になるとTwitter上では「今年の新譜ベスト」が各アカウントから回ってくる。
「今年のベスト」は歳時記に入れても良い気がするが、実は僕は年間ベストを選んだことがない。
サブスクを使わずに旧譜を漁りまくる人間だった*1ので、新しいアルバムを買う余裕がなかったのだ。
しかし!今年は21世紀の科学技術の結集・Apple Musicに登録し、沢山新譜を聴いたので新譜ベストを選べるぞ!
というわけで今回は今年の良かったアルバム15選です。早速やっていきましょう。
15位 VISTA-toconoma
toconoma - DeLorean (Official Visualizer)
現代インスト界の先頭に立つバンドの四作目。
アヴァンポップのコーナーで見つけ、サブスクで聴いたらビックリするほど格好良かった作品。
ポストロック的ミニマルさとダンスミュージック的ポップさが混在する、他の例をあまり知らない作風。
オシャレだけど、この手のインストは日本じゃそんなに流行んないんだろうな...
と思ったら重度の音楽好きじゃなくても知っているほど有名なバンドらしい。凄い時代。
どうやら僕が知らなかっただけのようだ。知ってるんだったらみんな早く教えてよ!
14位 2R0I2P0-Boris & Merzbow
BORIS with MERZBOW - Away From You (Official Music Video)
ヤバいバンドBorisとヤバいプロジェクトMerzbowが手を組んだら案の定ヤバい作品が出来上がった。
音楽と言うよりは楽器で再現した宇宙の気という感じ。
全編がノイズとアンビエントのせめぎあいで占められているのだが
2020年全体にわたって繰り広げられた、あの静かなヒリヒリ感を思い起こさずにはいられない。
「今年」だから出せた音楽という意味ではこれが一番かもしれない。
13位 SIGN-Autechre
静謐を体現する人たちが突然発表した新作二枚の内のひとつ。
僕はあまり彼らを聴いてこなかったのだが、どこかダウナーなイメージがある。
だが、今作はビックリするほど元気。
クラッチノイズを切り開くようにアンビエントがなだれ込む開幕からノっている。
その後も(この人たちに使うと思わなかったが)メロディアスな展開が続き、なんだか楽しくなってくるぞ...!
これから人にAutechre勧めるときにはこの盤を使うと思う。良良良。
12位 Komonzo-ウ山あまね
神様クラブの人。のソロ。
最近のトラックメイカーはシティポップフォロワー故、丸い音使いがちな気がするが
この人は全体的にかなり尖った音にしている点で画期的。
また随所随所にノイズや何故かアニメのサンプリングが挟まる。面白すぎる。
真面目なことをやっているはずなのにノヴェルティの気が感じられるのはあまりに前衛的だからかもしれない。
11位 Magic Oneohtrix Point Never- Oneohtorix Point Never
Magic Oneohtrix Point Never [解説・ボーナストラック収録 / 国内盤 ] (BRC659)
- アーティスト:Oneohtrix Point Never,ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー,OPN
- 発売日: 2020/10/30
- メディア: CD
Oneohtrix Point Never - Long Road Home (Official Audio)
アンビエントと言えばOPN、猫も杓子もOPN。そして魔法になったOPN。
そもそもOPNの名の由来はラジオ放送の聴き間違いらしく、
ならばラジオ仕立てのアルバムを作ってまえ!ということでできたのがこれだということ。
確かにFM放送感がある音像に、海外の電波を拾ったら流れてきそうな感じの楽曲とラジオ感はマシマシ。
始まり方や終わり方も、一昔前のテレビでもあった「こちら周波数○○、△△放送です」みたいなサンプリングと天気予報のBGM風アンビエントと
「ラジオあるある」を最大限に駆使した作品。
10位 Memory of Holo Love-The mellows
Vaporwaveをバンドでやるいかれた人たち。
The Novembersもお気に入りである。
以前レビューしたので詳しくはそちらをどうぞ。
9位 We Will Always Love You-The Avalanches
The Avalanches - We Will Always Love You (feat. Blood Orange) (Official Audio)
世界最高のサンプリングアルバムことSince I Left Youを生み出した人たちの最新作。
以前まではメロウかつアッパーな雰囲気が持ち味だった気がするが、
Autechreとは逆にこっちはダウナーに変化。
とはいってももともとのメロウさは健在なので、上のPVのような夜空を思わせる美しい作品に仕上がっている。素敵。
ちなみに客演が豪華で、日本からはCorneliusが参加、思う存分に暴れてくれている。
8位 Les Mamans du Congo & RRobin -Les Mamans du Congo & RRobin
#4 - Les Mamans du Congo & RROBIN - Boum (Official Audio)
日本語で「コンゴの母ちゃんグループ」となる音楽グループ。
そんな名前からは想像つかないアフリカンビートとクールなミニマル。カッコイイ!!
この手の民族音楽×現代のポップスが好きなのでここに選んだ。
アフリカの民族音楽をベースにした歌唱と言うことで「ラップの元祖」みたいな技法なのかもしれないね。
Mkwaju好きな人はこれも好きそう。
7位 Notes On A Conditional Form - The 1975
The 1975 - If You’re Too Shy (Let Me Know)
今音楽ファンが一番好きなロックバンド。
実は個人的に彼らの良さをイマイチ分かっておらず
最高傑作の呼び声高い前作もピンと来てなかったのだが、
今作はかなり僕の肌に合っており、今までで一番好きなアルバムである。
でも市井の声は「そこまでじゃないよね」で悲しい。
一回全部聴き返してみたけど、やっぱりこれが一番いいな...。
私的一押しポイントは佐藤博をサンプリングネタに使ったTonight。
6位 Sleep On The Wing- Bibio
Bibio - Sleep On The Wing (Official Music Video)
プロデューサー系で一番信用しているぞ!Bibio!!!
というわけで、フォーク系トラックメイカーという独特な立ち位置のBibioさんの新作。
フォークの路線をさらに推し進めもはやポストクラシカル。
サイケで民族音楽的な良曲がコンパクトに収まっている。
これは涙なしには聴けません。
でも、周りでこれ聴いている人あまりいない...ちょっと寂しい...
この手のPenguin Cafe Orchestraみたいなのには目がないのでもう誰がなんと言おうがこの位置。
5位 アダンの風- 青葉市子
Ichiko Aoba - Porcelain (Official Music Video)
多くの人にとって「攻殻機動隊で歌っている人でしょ」というだけの認識だった青葉市子がここにきて大躍進。
ジブリ映画のようなアンビエントとフォークが混ざり合ったような雰囲気で淡々と歌う青葉市子が印象的。
ジャケ含めてなんだかシガーロスを思い出すのは僕だけじゃないはず。
海外でも大評判のようでRYMで祀り上げられていたらしい。
個人的には青葉市子は単色のちゃんと読み込めているのかよく分からないジャケもあったので
今作は人物写真で分かりやすくなったのも高評価点。ジャケも大事である。
↑来年出る新作は、ちゃんと読み込めてるんだかよく分からないジャケだった
4位 The Slow Rush-Tame Inpala
Tame Impala - One More Year (Official Audio)
バンドらしいが、ジャミロクワイよりさらにバンド感のないバンドの新作。
サイケ感は維持しつつも今までよりポップに仕上がっている印象。
前衛的でありつつも耳馴染みの良いアルバムであるからか、多くの人が今年のベストに挙げていた印象。かく言う僕も自粛期間に何回も聴いた。
この一曲目One More Yearほど端的に今年を表した言葉はないね...
3位 狂-GEZAN
GEZAN / 東京 (Official MUSIC Video)
すみません、今までただの邦ロックバンドだと思っていました。反省します。
初っ端からシティポップをはじめとした現代社会にケンカを吹っかけ、
プログレの如くシームレスでポストパンクな曲が繋がっていくさまは「現代の「狂気」」という評にふさわしい。
やはりパンクを通過した人がポストパンクをやると切実性が増すね。いやはや、非常に良い作品。
これは文句なしで今年一番のロックアルバムでしょう。
2位 Human Error Club- Human Error Club
HUMAN ERROR CLUB - HELLO (2020)
カリフォルニアのジャムバンド。
かなりマイナーな存在らしく、全く情報が出てこない。僕はあるフォロワー氏がツイートしたところから知った。
余裕あるアンビエント風のキーボード、それをノリの良いドラムスが支えているが、
驚くなかれ、これすべてジャムセッションで作った曲なのである。
それ故落ち着いているように見えて、どこか攻撃的な感じも受ける。そういう意味でクラウトロックっぽい。
アルバム全編にわたってこの小洒落たアグレッシブ音楽は続き、BGMとしても正面から向き合っても飽きることはない。
最大瞬間風速はそこまででもないが、長いこと楽しめるタイプの名盤である。
知らなかった方も是非!
1位 古風-冥丁
Meitei / 冥丁 - Oiran II / 花魁 II (Official MV)
今年の圧倒的一位。他より頭一つ以上抜けていた。
冥丁は広島在住のトラックメイカーだが、いわゆる「トラックメイカー」と言って想起するような感じの音楽性ではなく
ヨナ抜き音階に頼らずに生み出す「和」の空気をいっぱいに携えたサウンドスケープが特徴。
今作ではサンプリングを大々的に取り入れており、レコードに吹き込まれた昭和初期の日本人、そして彼らが見たであろう大正・昭和期の日本の姿が鮮やかに描かれている。
そしてこういうものは必ずと言ってよいほど過去の賛美の要素が入ってくるが、今作は真逆で過去への皮肉も同時に込められているサウンド。
そして平易でありつつも情にダイレクトアタックしてくるメロディーラインで涙が止まらない。
こんな凄い人が日本にいることが嬉しいし、そもそも日本であるからこそ生まれた音楽であろう。
冥丁、今後とも要注意。
というわけで、今年のベスト15枚でした。
いつもより新譜聴いたと言っても、たぶん他の音楽オタクより聴いてないのでこれからはもっと聴かないとね。
では皆様、素敵な年末を!
*1:一か月に中古CDを40枚以上は買っていた