そよ風ポップ
人生何があるか分からないもの。
音楽ファンの間で話題炸裂中のディグ・イン・ザ・ディガー6/1更新分の選盤を担当させていただいた。
思い出に間にあいたくて(1/2) pic.twitter.com/Yk4NvtuWc3
— ディグインザディガー【公式】 (@diginthedigger) June 1, 2021
結構メッセージ性の強い回のアルバムを選ばせてもらえて嬉しい。ありがとうございます...
まだ見ていない方は是非一度。
もう見てる人も、もう一回、もう一回だけ!(ハンバーガーちゃんリスペクト)
そして、この中で出てくるおじさんがアンニュイな顔しているアルバム、これが今回僕が選んだ桐ケ谷仁のWindyになります。
80年代は土曜日までが平日だったので、シティポップには「土曜夜めっちゃ最高ウェーイ」みたいな歌が点在しているのはシティポップ好きならよく知っていると思う。
みんな知っている有名どころの人ではEPO「土曜の夜はパラダイス」山下達郎「土曜日の恋人」なんかかな。
あんまり有名なところじゃないなら佐野元春と縁が深い佐藤奈々子の「土曜の夜から日曜の朝へ」なんかも入ってくる。
こうやってみると妙に良い曲が多いね。
そして今作、桐ヶ谷仁のWindy収録の「土曜日のダウン・タウン」もその一つ。*1
桐ヶ谷仁はアルファレーベルの男性歌手第一号。
第一号は華々しくデビューさせたい!という思惑があったのかどうかは知らないが前作1stはアルファ総出で作っており、
YMOと愉快な仲間たちは揃い踏み、その他深町純から佐藤博まで、参加メンバーの構成を聞いたらその手のファンが衝撃のあまり卒倒するような面子。
フォーク出身ということもあって他のシティポップに比するとフォーキーな作風。
柔らかな声質も相まって曽我部恵一を思い出す方も多いらしい。顔もちょっと似てるしね。
今作では同時代のAORを参考により都会派の音楽を目指し、それ故現在でもシティポップの名盤として知られる。
参加面子は前作ほどではないもののやはり鉄壁の布陣であり、PARACHUTEのメンバーに加え難波弘之、コーラスにはEPOなど。
とりあえずどんなアルバムでも一曲目を聴けば大体わかるので聴きましょう。
メロウな導入部からシティポップへ移行するのが素敵。
山下達郎なんかを聴いていると春先でも暑くなってくるが、このアルバムに関しては逆に微風のような涼しさが感じられるのが特徴的。
例にもれず海辺のドライブなんかで映える感じの曲である。
フォーク出身であるので、同時代のフォークを感じさせる曲もしっかり入っている。
編曲と相まってビリーバンバンのような雰囲気。
ニューミュージックを志向した、所謂はっぴいえんど周辺の人たちは当時はやりのフォークのような曲を避けたことは有名だが
今になって聴くと、独特の味があってこれはこれで良い気がしてくる。
そしてこの歌にフュージョン~プログレの馬鹿テク音楽家がバックを付けているのだから面白い。
この時代じゃなきゃ絶対に出てこない音楽。
そして件の土曜日のダウンタウンはこんな感じ。
土曜日からの解放ソングの例にもれず、やはり良い曲。
さっきの曲とはうって変わってフォークを微塵も感じさせない。
この三曲、三者三様に違った作風であり本当に同じ人??と思ってしまうが、同じ人の同じアルバムの曲なのです。エーホントー
フォークから王道シティポップまで作風が非常に幅広いのが桐ケ谷仁の魅力。
ただ、どんな作風であれ涼しく気怠げな雰囲気を常に漂わせているのが桐ケ谷仁の大きな特徴。桐ヶ谷さんはボサノヴァがお好きらしいので、そこに影響されたのかも。
ディスコティックじゃないとあまり海外で受けないシティポップにしては珍しく韓国などでも結構人気な様子。
さて、なぜ僕がディグディガでこのアルバムを選んだのか気になる方も多いと思う。
レコ屋で漁っている原作の栄免建設氏から「この中でどれが良いですか」と見せられたレコードの中に入っていたから
...だけではなく、桐ケ谷仁は金澤寿和氏のレコメンドアーティストであるからである。
金澤寿和氏はAOR・シティポップ系音楽ライターなのだがディガーとしての性質も強い人物であり、近年のシティポップブームの陰の立役者の一人、なんて紹介もされる人。
以前にもこのブログでした話題だが、彼の生み出した合言葉Light Mellowがディガー集団lightmellowbuの名称に使われているところから見て取れるように、現在の日本のディガーに彼の価値観なりセンスなりが多分に受け継がれていることは言うまでもない。
つまるところディグを主題にした漫画に使うということだったので、金澤氏を示唆するようなアルバムを「ディガー」の漫画に登場させてあげたかったのである。
その意味で言うと最高なのは東北新幹線なのだが、あれは存在自体がフィクションなのでしょうがない。
あまりにレアなのでラマダンしないと普通の会社勤めの人には買えないブツである。
とはいえど、栄免氏の行ったレコ屋に桐ケ谷仁が置いてあっただけでも奇跡的、そしていくつか選んだなかでこれを描いていただけたことに感謝である。
僕は桐ケ谷仁のレコード見たことないです。欲しい人頑張ってね。
*1:水曜日ではない。念のため