EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Pet Sounds/The Beach Boys【1966】

名盤(諸説あり)

Pet Sounds (Original Mono & Stereo Mix Versions)

Pet Sounds (Original Mono & Stereo Mix Versions)

  • 発売日: 2001/02/05
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

何度か他の記事内でも言っているが、

このブログは脱R論というブログに多大なる影響を受けている。

drr.hateblo.jp

取り上げている音楽は広範にわたり、

文体も硬くなく、かといってチャラくもないので

私的お気に入りブログランキング一位に万年降臨する。

ニコ動的なシステムがあれば、もっと評価されるべきのタグをすべての記事につけたいくらいだ。

 

しかし去年か一昨年くらいに管理人さんが癌になってしまい

それ以降、少々ブログから離れ気味の様子。

記事内に有頂天の「君はGANなのだ」とか貼ってたので意外と大丈夫かなと思っていたのだが

去年の大晦日以来全く音沙汰がなく、とても不安に思っている。

早く元気になっていつものキレキレの記事を書いてくださいね。

 

 

で、この脱R論で度々上がる話題に「Pet Sounds分からねえ」というのがある。

drr.hateblo.jp

上のレビュー記事でも、明確に苦手と言っている。

なんでも超の付く名盤というよりかは微の付く妙盤らしい。

この言い回し、脱R論かこのブログ以外の音楽ブログじゃ絶対出てこないね。

 

大丈夫。こういう人、一つの市町村作れる位いるのだ。

かの村上春樹も「最初聴いたとき、そこまで衝撃を受けなかった」という話をしているし、

当時の反応もいつもに比べるとあまり良くなかったらしい。

(それでもラジオで強制ヘビロテし、リスナーを洗脳したそうな。)

しかし評論では絶対的な名盤でRYMでもRolling Stoneでも高順位。

 

その二極化した評価故にいいね!と言えば「権威に目がくらんでいる!」言われるし

駄目ね、といえば「全然げーじつを理解できてないね!」と言われる、

どういうコメントを言えば良いかわからんアルバムの一つでもある。

 

この記事ではじめて触れる人もいるだろうから、

The Beach Boysについてサクッと解説しておこう。

 

彼らはアメリカのロックバンドで、The Beatlesより古株。

今なおいるので、現存する最も古いバンドの一つでもある。

音楽性的にはサーフィン&ホットロッドという、

一言でいえば青春の夏!!!みたいなイメージの人たちだ。

Fun, Fun, Fun

Fun, Fun, Fun

  • provided courtesy of iTunes

 特徴は何といってもそのコーラスワーク

合唱風の対位法的で複雑なハモリがかなり耳につく。

また曲作りも一見素直に見えて異様で

二小節だけ転調するみたいなことが頻繁に起こる。

それもこれも中心人物ブライアン・ウィルソンによるもの。

彼らのフォロワーは特に日本に多く、大瀧詠一山下達郎細野晴臣も、

はてはCorneliusもフォロワーといって差し支えない。

海外だとクラフトワークとかもそうらしい。

まあサブカル御用達のバンドだ。

 

 

The Beach Boysはさっき言った夏!!のイメージであったものの、

The Beatlesアメリカでも売れ始めると彼らを超えるために色々試行錯誤をしはじめる。

しかしThe Beatlesはそれを簡単にいとも超えていく一方で、

どう頑張っても超えられないよ状態になったウィルソン氏は病んでいき、

結果できたのがPet Sounds

無駄にRTを稼ぐことに終始するTwitterの偽メンヘラ垢にもこの病みっぷりを見習ってほしい。

 

 

一曲目のWouldn't It Be Niceがこのアルバムで一番素直。

Wouldn't It Be Nice

Wouldn't It Be Nice

  • provided courtesy of iTunes

いつもの彼らのコーラスであるのだが、どうも暗い。

なんだか夏というより初秋の風がする曲である。

このアルバム、通しでこんな雰囲気だが、

それは恐らくウォール・オブ・サウンドを取り入れたからだろう。

フィル・スペクターがやったという、リヴァーブマシマシのアレである。

Be My Baby

Be My Baby

  • provided courtesy of iTunes

イギリス出身の奴らを超えるにはアメリカの技を使うしかないと思ったのか。

 

邦題は「素敵じゃないか」なのだが、 

皆さんご察しの通り原題は仮定法なので、

正確には「素敵だっただろうね」が良いはず。

多分それだとちょっとアレなのだろう。

一回仮定法で歌詞全訳したことがあるのだが、かなり絶望的になった。ヤンデルネー

 

 一時期はやった陽だまりの彼女で取り上げられたので

陽の者にとりあえずBeach Boys勧めるときにはこの曲を使おう。

 

 

陰の者はGod Only Knows好きなのが相場だ。

God Only Knows

God Only Knows

  • provided courtesy of iTunes

 コーラス少ねー!

その代わりにかなり充実している後ろのホーン隊。

ほとんどバンド関係なくなっているがゆえ、

ブライアン・ウィルソンのソロと言われることもままある。

後から入ってくるコーラスも輪唱のようで不思議な感じ。

フリッパーズ無許可サンプリングしたことでも有名だね。

 

 玄人好みなのがCaroline, No

Caroline, No

Caroline, No

  • provided courtesy of iTunes

かなーりスローテンポな一曲。これまたコーラスが少ない。

 こういう緩い曲が多いので、Pet Soundsは硬派なロックを好む人に受けが悪い印象。

でもこんな雰囲気、最近のシティポップ的なものに多い気がする。サックスの感じとか。

 

 

まあ、聴いてもらった感じで分かると思うが

賛否両論あるのもなんかわかるアルバムである。

 

この後、これに触発されたBeatles例のサージェント・なんだか・かんだかを発表。

  これは正直過大評価臭いな~と思っていたが、

レコードで聴いたら分かった。めっちゃ音良いわ。

丁寧な音作りというのがPet Soundsに通じるのかもね。

 

当時からこのサージェント・うんぬん・かんぬんは評価され、

後の「アルバム一枚で一作品」の理念を生み出したマイルストーンであるね。

 

さて問題は、これを聴いた米ロック界のヤンデレ*1ブライアン・ウィルソンの体調である。

案の定正気を保つことができず、次なるアルバムSmileで同じパートを複数曲に出すという

クラシックの交響曲を応用した手法で曲作りをすることにした。

だが結局あまりに複雑すぎて(本当に)発狂し、頓挫してしまう。

ちなみにそのアルバム中に入るはずだったのが、かの有名なGood Vibrations。

 

Good Vibrations

Good Vibrations

  • provided courtesy of iTunes

 正直Beatles越えしている気がしてならない曲である。

この曲を聴くとサビでAメロがハモるような構造になっていたり

全く毛色の違うパートが差し込まれていたりと

なんだかクラシック的なことをガンガンやっている。もはやプログレ

 

 

Smileは長らく封印状態だったが、

21世紀になってから実際に蔵出しされた。

正直万人受けしそうだし、色々面白いことやっているし、コーラスもあるし、

ちゃんと発売できていればPet Sounds越えしていた気がしてならない。

というかPet SoundsはSmileのための布石であって、

結局家が建たなかったので土台を有難がっているような感じがする。

だから賛否入り乱れるのだろう。

 

 

 

これは僕の個人的な見解に過ぎないのだが、

なんかね、Pet Soundsって人生追い込まれた時に聴くと良いと思うヨ。

僕の場合は受験失敗を含め数多の災難が一気に来た時があり、

その時「ああ、めっちゃ良いな・・・」と思いつつ一人公園で泣きながら聴いた覚えがある。 

それ以降大好きなアルバムなのですよ。うん。

 


The Beach Boys - Wouldn't It Be Nice (Original Video)

*1:英ロック界はシド・バレット

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