ドライブしながら聴きましょう
”Big In Japan”という言葉があるそうだ。
日本でだけやたら流行る洋楽音楽家のことを指すらしく、
若干揶揄の意味が込められている。
この中にはランナウェイズやイアン・ギラン・バンドなんかが入るらしい。
色々聞いてみたが、なんかちょうどそのころ日本で似たような音楽が流行っているときに
海外で偶々似たようなことをやっている人が売れるような気がする。
また、メロディが分かりやすいものも売れやすい気もする。
この手のインスト主体のバンドが日本では意外と売れるらしい。
で、今回紹介するLarry LeeのMaroonedもBig In Japanの一つ。
日本でやたらめったら見かけるが、本国ではどマイナーアルバムである。
Larry Leeはカントリーバンド、The Ozark Mountain Daredevilsのドラマーで中心人物だったらしい。
ドラマーがリーダー格というのも珍しい気がする。
プロデューサーはかのイーグルスの担当でもあったようで、
それ故にそこそこの人気はあったらしい。
またカントリーといえど都会的な曲が多いのも特徴。
AORを先取りしていた、なんて言われることもある。
Maroonedはそんな都会的な面が前面に出たようなアルバムである。
一曲目からもう飛ばしていっている。
全然カントリーじゃねえ。
ウォールオブサウンドを彷彿とさせるわしゃわしゃ感と
メロやギターの爽やかさが合いまって
「君は天然色」の様な突き抜けっぷりである。
日本の夏もこういうからっとした感じだったらよかったのになんて思ってしまうネ。
一番有名なのはシングルにもなった"Don't Talk"。
引き続き爽やかウォールオブサウンド。
そしてここでは歌詞に"A Long Vacation"というワードが出てきており、
100匹目の猿現象が起こっている。
AORのコンピにもよく入っているのだが、
AORというとスティーリー・ダンだとかクリストファー・クロスだとか、
落ち着いて洗練された曲が多いので、
底抜けに明るいアメリカンポップス風のこの曲は
大抵コンピの中で洒落たバーにアロハシャツで入っちゃった人みたいになっている。
このアルバムの凄いところは捨て曲が一切ないところ。
この調子でずーーっと続いていく。
ちなみに、レコーディングメンバーがかなり錚々たる顔ぶれで
Chcagoのビル・チャンプリン、TOTOのデヴィッド・ハンゲイト、The Bandのリック・ダンコ、
The BeatlesやThe Whoでピアノを弾くニッキー・ホフキンスまでいる。
これだけ集まって全米80位代だったそうだ。何故だ。
しかし日本ではシティポップに音楽性が近しいことに加え映画で使われたこともあり、
かなーり売れたらしい。
まさにBig In Japanである。
そしてこのアルバムの独特な点はその商法にもある。
まず鈴木英人のジャケが爽やかだが、じつはコレ差し替え。
差し替え前はLarry Lee本人が微笑みながらこちらを見るというもの。
中身AORなのにジャケだけカントリーである。
さすがにこれでは売れないと思ったらしい。
さらにアルバム名まで変えた。
その名も「ロンリー・フリーウェイ」。
Maroonedの一言も入っていない、
というか鈴木英人だけ見て決めたと思わしきアルバム名だ。
さらに、シングル曲Don't Talkの題を"ロンリー・フリーウェイ"と変更。
もう何の跡形もない。
この手のジャケ変更はAORによくあることなのだが、
その中でも特にひどい例としてこのアルバムが挙げられる。
最後にこのアルバムの帯文句で締めくくろうと思う。
フリーウェイを駆けぬける真紅なキャディ、、まぶしい午後の乾いた心・・・。
気ままにアクセルを踏み、ラジオのボリュームをめいっぱい上げる。
音が流れ、青空にとけ込んでいく。なぜか淋しげ、ひとりぼっちのフリーウェイ。
ダッセ~!!!