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本州一下らない音楽レビューブログ

Music From The Penguin Cafe/Penguin Cafe Orchestra【1976】

テクノじゃないニューウェーブ

Music from the Penguin Cafe

Music from the Penguin Cafe

  • アーティスト:Penguin Cafe Orchestra
  • 出版社/メーカー: Virgin
  • 発売日: 2008/06/09
  • メディア: CD
 

 最近聴いてとてもよかったので取り上げます。

その名もPenguin Cafe Orchestra

 

バンド名にOrchestraとつく人たちは結構いるが、

大体いうほどオーケストラじゃない。

ぱっと思い浮かぶのはYMOELOだが、

どっちもテクノテクノしていて

オーケストラってなんだっけという気分になる。*1

最近だとちょっと変わり種で蓮沼執太フィルなんてのもあるが

確かに後ろのオケが充実しているものの、フォーキーな歌もので

あまり「フィルハーモニー」という感じの音楽でもない。

www.youtube.com

 

しかし、PCO*2はクラシックではないものの

「オーケストラ」の言葉がぴったりとあてはまるバンド、ないしは楽団である。

 

 

このバンドはどうやら80年代にアングラ文化系の人たちの間で流行ったらしく、

今検索すると、そういう感じの人たちのブログが多数ヒットする。

しかし、今では半分「忘れられかけられているバンド」という趣らしい。

 

ジャンル的には環境音楽で、何せイーノのやってたObscureレーベルから出したそうな。*3

環境音楽、というとなんか変なシンセがぴょーとかぴーとか延々と言ってるイメージがあるが、

この人たちはラウンジミュージック的な意味での環境音楽であり、

ペンギンがやっている"Penguin Cafe"という喫茶店でかかってそうな音楽を作ろうという

なかなかカワイイコンセプトのバンドである。

そのファーストが今回取り上げるMusic From Penguin Cafeであります。

 

一曲目のPenguin Cafe Singleからバンドの世界観全開である。


Music From The Penguin Cafe | Penguin Cafe Single

なんかオシャレなフランスのコメディ映画のOPにありそう。

それのBD版のチャプター選択画面には冒頭1分がループで流れている。間違いない。

エレピとストリングスの掛け合いが主で音色的にはクラシカルなのだが、

短いパートの執拗な繰り返しが多くあったり、途中で前衛音楽的になったりするなど

ニューウェーブ的な要素もかなり多分に含まれていて

一概にただの心地よいラウンジミューシックと言い切れない曲。

また、クラシカルなプログレのエッセンスも感じられるね。

BGMとして流すもよし、ちゃんと聴きこむのもよしの万能選手。

 

このアルバムでの必聴曲はB面の一曲目「The sound of someone you love who's going away and it doesn't matter」。


Music From The Penguin Cafe | The sound of someone you love who's going away and it doesn't matter

タイトルも長いが、この曲自体も11分ある大作。

ちなみに、邦題だと君の恋人が去っていく音がするけどたいしたことじゃないよとなる。たいしたことあるぞ。

 やさしく物悲し気なギターのアルペジオが印象的。

感傷的で穏やかで、失恋を励ますような曲だなあと思っていると

7分ぐらいからぶっ壊れサウンドが展開される。なるほど、これが恋人が去っていく音か。

調和だけではなく、こういう「破壊」の精神も持ち合わせているのが

他のイージーリスニングと一線を画す、PCOならではの特徴であるネ。

 

 

実はこのアルバム、今でこそ名盤扱いされているが、

出た当時はそんなでもなかったらしい。

この後、2ndであるセルフタイトルが非常に高く評価され

 その名を一気に広めることになる。

Penguin Cafe Orchestra (Reis)

Penguin Cafe Orchestra (Reis)

  • アーティスト:Penguin Cafe Orchestra
  • 出版社/メーカー: Caroline
  • 発売日: 2008/06/09
  • メディア: CD
 

日本ではこっちのほうが1stより先に出回ったらしいね。

とても取っつきやすいものの、前衛的で印象に残りやすくCMやバレエ音楽にも起用されたそうな。

さらには後続のポストロックへの影響も無視できず、

結構Arcade Fireとかjoan of arcとかにこんな雰囲気の曲がある。

 

しかし今やほとんど忘れられた存在になっているらしく、

昔やってたカルテットというドラマでこのバンドの曲"Music For A Found Harmonium"という曲が取り上げられた際、

公式サイトで伝統音楽扱いされたという事例もある。

www.tbs.co.jp

いまでもサイト上ではTraditionalのまま。おーいそれでよいのかー。

 

www.youtube.com

これが問題の曲。京都で見つけたハーモニウムという楽器を使うために作ったらしい。

 まあ、確かにトラッドフォークに聴こえるっちゃあ聴こえる。

 

 

最近は結構俗流アンビエントみたいなのが流行っており、

それに芸術的な再解釈をしたような曲が多く見受けられる。

そんな現代のトラックメイカーたちこそ

ラウンジミュージックに芸術的肉付けをしたPCOを再発見し

ガンガン聴いて取り入れていくべきと思います。

 

あ、PCOのLPを見つけた方はご連絡くださいませ。


Telephone and Rubber Band - Penguin Cafe Orchestra

*1:もっともELOはバックにオケがいるけど

*2:この略称は主に多嚢胞性卵巣症候群を指すそうだ。なんかヤダ。

*3:曰く、「Obscure最大の功績はPCOを見つけたこと」

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