EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Hit Vibes/Saint Pepsi【2013】

シティポップブーム爆心地はこちらです。

keatscollective.bandcamp.com

 

シティポップが大ブームと言われて久しい。

結構前からだと思う。もうかれこれ3年くらい経つんじゃないかな。

これは世界中を巻き込んだものであり、一般層にももちろん浸透している。

タピオカを飲みながらチェキや写ルンです撮ってシティポップ聴くのがおしゃれな時代だ。なんか90年代初頭臭い

正直個人的に邦楽には洋楽よりもレベルが高い曲がたくさんあると思うので

これを機に他ジャンルの邦楽も世界に広まっていただきたいものである。

 

さて、もう手垢がつきまくった話題だが、シティポップブームはいかにして生まれたのだろうか。

本格的なブームになったのは竹内まりやのプラスチック・ラブの動画からだと言われているね。

www.youtube.com

あんまり竹内まりやらしくはないディスコチックな曲。でも確かに外国人受けよさそう。個人的には地元の高層ビルを思い出す。

再生数は記事執筆時点で 27,195,873回である。

例えるなら、幕末志士のマリオ実況の1.6~1.7倍

さらにこの他にもは1300万回くらい再生されている動画もあるようだ。足すと4000万回くらいか。

30年以上前の極東の曲であることを考えるとなかなか物凄い数である。

 

コメント欄を見るとみんな英語なので本当に世界で流行ってるんだなと実感。日本語探すほうが難しい。

このコメントをよく読むと、海外シティポップ界隈の掲示と化していると分かり

竹内まりや周辺のシティポップの情報が英語で書かれている。

山下達郎の奥さんだよね、というコメントも英語で書かれていたが

それに竹内まりや俺の嫁みたいな返信がついているのをみてどこのアニオタかいなと思ったりもした。

 

英語版の歌詞も有志によって作成されており、英語版の歌ってみた動画もある。

その中には竹内まりやを萌え化した絵をバックに歌っているものも。

www.youtube.com

80年代と現代日本との邂逅。でもちゃんと竹内まりやだとわかる絵。かわいい。

 

さて、これはあくまで「本格的な」ブームの話。

爆弾が爆発するには爆弾本体ではなく導火線に火がくべられていないといけません。

大ブームとなる以前に何があったか。

それに関係するのが金欠の音楽ファンが手を染める"Vaporwave"というジャンルでございます。

 

Vaporwaveとは2011年くらいからインターネットで生まれたジャンル。

無料で落とせるか、そうではなくてもめちゃめちゃに安いというありがたい仕様。

archive.org

こちらはVaporwaveの代表的名盤だけれど、普通に無料。ひええ。

内容はと言うと主に80年代の商業音楽やCM曲を速度をめっちゃ落として無断でサンプリングするという

著作権法何のそのというアングラ極まりないもの。


MACINTOSH PLUS - リサフランク420 / 現代のコンピュー (Music Video)

そしてその結果商業音楽が気味悪く変化した異形が誕生した。

なんだか近未来の消費が飽和したディストピアにかかってそうである。

PVも上の動画のようなダイアーストレイツっぽい昔風の変なCG。曲名も80年代に産業で世界を席巻した日本語なのだが、なんか極度乾燥を感じる、いわゆるえせ日本語

Superdry 極度乾燥(しなさい) ブルー コロンスプレー 25ml/0.84oz

Superdry 極度乾燥(しなさい) ブルー コロンスプレー 25ml/0.84oz

 

 

これらの特徴は消費主義批判を意図してであるらしいのだけれど

同時にモノがあふれてた頃は良かったよね的な雰囲気もあり

なんだかありもしないノスタルジーを感じると一部で人気。

 

Vaporwaveは誕生以降インターネット上の音楽のお手本のように扱われることになり

この基本形から派生する形でいろんなジャンルがインターネットで生まれていく。

ちょっと前によく言及されていたLo-Fi HipHopなんかもどうやらVaporwave由来らしい。

www.youtube.com

この女の子、いつ書き物終わるんだろ。

 

そんななかで、消費主義批判のVaporwave由来のくせに「イエーイ!80年代サイコー!!消費万歳~!!」というコンセプトを持ったサブジャンルが発生する。

それがFuture Funk

www.youtube.com

こんな感じで日本のアニメの絵にノリノリディスコチックになったシティポップというバブリーな感じに仕上がっております。

近未来感はあるけど、Vaporwaveとは違って享楽的な雰囲気が漂う。

これの制作者はフレンチ・ディスコの影響を受けている人が多いようで*1

多分、日本好きのオタクが多いような気がする。

フレンチ・ディスコと言ったら、まあ例の曲もあるし・・・

↑例の曲

 

このFuture Funkはなんと本家Vaporwaveより人気らしい。

このジャンルでシティポップが盛んに取り上げられ

「これも良いけど元ネタも良いね!」という感じでブームになっていったそうだ。

 

そしてFuture Funkの発端であるHit Vibesこそがシティポップブームの起点だったらしい。

もちろん、無料で落とせるよ。記事冒頭のリンクから落としてみよう!

では内容を見ていきましょ。

 

一曲目は話声とその後にサンプリングが続く小品というなかなか古風な始まり方。


SAINT PEPSI: HIT VIBES

こういうの結構好きで、たくさん集めて「壮大に何も始まらない」というプレイリストを作っている。

 

割と好きなのは4曲目のCherry Pepsi


SAINT PEPSI: CHERRY PEPSI

サンプリングの仕方がめっちゃうまいですね(小並感)。

こういうディスコティックでメロディアスなのは海外の人々も日本人の我々も楽しめる。よかよか。

なんかすごく聴いたことあるのに、元ネタが思い出せない・・・多分有名なはずなのに・・・

 

そして重要なのは7曲目のSkylar Spence


SAINT PEPSI: SKYLAR SPENCE

からからんという氷の音ともに迫る、聴き覚えのあるカッティング・・・

やった!タツローだ!Love Talkin'だ!


Tatsuro Yamashita - Love Talkin' (Honey It's You)

昔から聴いていた曲がサンプリングされているのは普通にうれしい。

原曲よりもだいぶスピードアップさせているね。

どこかの評に山下達郎が踊らされている」とあったけれど、まさにそんな感じ。

消費主義万歳の裏にどこか気味悪さが見え隠れするところがVaporwave直系だということを思い出させます。

 

このアルバムはほぼ全体にわたって「気味悪く踊らされた80年代の音楽」を楽しむことができ、

DJめんどくさくなった時、これをかければよいんじゃないかという説もございます。

ディスコのアルバムとしても優秀ですナ。

 

このアルバムに使われたタツローからFuture FunkやVaporwaveのサンプリングネタとしてシティポップなどの邦楽が頻繁に使われることになり、

その後の経過はすでに説明したとおり。

 このアルバムが出たのが2013年なので本格的なシティポップブームはその2~3年後ということになるね。

インターネットが普及しているからか立ち上がりからブームまでがすごく早い。
さらにその後のブームを担ってきたのは例の竹内まりやの動画をはじめとした違法転載動画の数々。
つまりシティポップブームは一見ノスタルジックで懐古的だけれど
実はインターネット上での様々な要因が重なり合って生まれた
とても21世紀的なムーブメントであることがわかるね。

 

 

そんな感じでFuture Funkに限らず、Vaporwaveのアルバムは世界中の知られざる80年代音楽コンピとして機能しているので

古い曲を漁りたい人にはお勧めだと思います。

消費税も上がったことだし是非無料で落としまくってください。


SAINT PEPSI - Hit Vibes (FULL ALBUM)

 

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