いざシルクロードを渡る長旅へ。
この世には未発表アルバムという何故名の知られているのか不可解なものが存在する。
有名なのはビーチボーイズのSmileかな。
名盤Pet Soundsの次のアルバムで非常に期待されていたけれど
構成があまりに複雑で作曲のブライアンウィルソンの気が狂ったらしく
ジャケットまで印刷されていたのに発売中止になってしまった。
どう気が狂ったかというと
録音中にスタジオで消防士の格好をしたり、
レコード会社の重役夫人を悪魔呼ばわりしたりなど。
しかし、中学生の頃の僕ならやりかねなかった内容なので
中学の頃の僕はブライアンウィルソン並に狂ってたのかもしれない。
「世界で一番有名な未発表アルバム」として昔から有名で
ブライアンウィルソン自身が作り直したものや当時の録音を再編集したものなどが発売されているヨ。
あとは全部楽器以外の道具を使って曲を作るといういかれたコンセプトの
Pink FloydのHousehold Objectsなんかも有名かな。
こちらは録音さえしなかったもよう。まあそんなことできっこないよね。
またナイアガラ的には大滝さんがなんとなく放った(とされる)発言から生まれた未発表アルバム
2001年ナイアガラの旅というのも紹介しておきたい。
2001年に発売予定だと80年代から言い続けてきたが
何にも手を付けていないという理由で発売されていない。
この人、ブライアンウィルソンより狂ってやがる。
さて、未発表アルバムなかには「全部できているのにレコード会社に難色を示されて発表できない」というパターンもある。だいたいそれの理由は「曲が長すぎるから」。
ハウス系テクノの元祖アルバムマニュエル・ゲッチングのE2-E4もその理由で危うく未発表になりかけた。
E2-E4 - 2016 - 35TH ANNIVERSARY EDITION
- アーティスト: MANUEL GOTTSCHING
- 出版社/メーカー: MG.ART
- 発売日: 2016/01/29
- メディア: CD
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しかし数年を挟んだのち発売した時にはタンジェリンドリーム的なアンビエントは時代遅れとみなされ、評価は散々だったようだ。可哀そう。
今回のSleepのDopesmokerも曲が長いことで有名なアルバムである。
このSleepというのはどんなバンドかというとジャンル的にはメタル。うわーメタル苦手。
・・・って思っている方でも大丈夫。
メタルの中でも大人しい「ドゥームメタル」というジャンルに分けられていて割とイケる。メタル苦手な僕でもイケる。
Sleep - Dragonaut [Official Video]
歌もギターの音も容姿も優しい。でも乱暴に見せようとしてるのがなんかかわいい。
日本だとこのジャンルには人間椅子が入るらしいね。
Sleepは2ndまでは上の動画のような割と普通の時間内に収まる曲を作っていたようだけれど、
3rdのこれでなぜか発狂。一曲一時間という狂気のアルバムをレコード会社に提出。
これを持ってこられたレコード会社の人は困惑。当たり前だ。
こんなの発売できないとまさかの発売拒否されてしまった。
長いのがお嫌い?と曲名を変えて10分程度短くし6トラック分の信号をいれるという
問題の本質を全く捉えられていない取引を持ち掛けたが
やっぱり発売拒否されてしまう。
これが1994年。
このあたりのゴタゴタが原因でバンドも解散してしまう。
その後1999年、短くしたバージョンの方が発売されたが
フルバージョンの方は2003年まで待たねばならなかったそうな。
つまり発売に10年近くかかっていることになる。うひゃあ。
ではその10年にもわたる論争を引き起こした内容を見ていきましょう。
この手の曲には「コンセプト」があるが、このアルバムのコンセプトは
これまた論争を呼ぶ内容。色々凄いな。
ギターのブオーンと言う音からスタート。シンセみたい。
その後なんかリズムギターみたいなものを弾き始め、ドラムスがバタバタ入ってくるが、
コードはズ―――っと同じものの繰り返し。
その上に歌が来たりギターソロが来たり一応ある程度の変化があるものの、
大きな緩急はないまま64分間を走り抜ける。
販売許可しなかった理由がわかるぜ。
しかしながら、それでもなんだか64分聴いてしまうのがこの曲の恐ろしいところで
だんだんと脳が麻薬でやられたように*1くらくらしてくる
なんだか現代によみがえりしサイケロック的な感じでもある。
僕が思うに、長尺の曲は大体サイケデリックなものになりやすい気がする。
この前紹介した「Long Season」もそうだったネ。
長い曲と言うのは必然的に繰り返す部分が多くなりがちであるので
こういう夢や幻想に連れられるような曲になるのかもしれない。
最近はあんまりこういう長くて良い曲というのを見ない。
強いて言えば、Vaporwaveの名盤Palm Mallとかかな。
一曲目はショッピングモールの風景をテーマにした大曲。
その一曲目が22分であるが、一アルバム一曲ではない。
でもこの曲もどこか懐かしいどこかに連れていかれるような気分になるネ。
今いる人も、誰か一アルバム一曲だけのものを出してくれないかな。
それとも今、音楽界にそれをできるほどの余裕がないのかな。
でも、そういう曲が次の音楽シーンを作っていく気がするヨ。
*1:註.これは比喩であり、実際に使用した訳ではありません。