"LONG"だから良いんです。
度々使わせていただいているRate Your Music(通称RYM)というサイトがある。音楽に世界一うるさいという噂のある国・イギリスのサイト。
世界各国の音楽オタクが集まっては世界中のあらゆる音源を比較し発展性のないランキングを議論しあう、要約すれば音楽関係の面倒くさい奴らの国際共同墓地である。もちろん僕も骨をうずめているよ。
これの網羅っぷりは凄まじく、ビートルズから僕の音楽の先生まで、あらゆるアーティストのアルバムが取り上げられ、アルバムのランキングが組まれているので歴史上全漫画登場人物がでてくるバトルロワイヤルを見ているようなわくわく感があって楽しい。
さてさて、これの1位から20位までを見てみよう。(記事執筆時点)
1
2
3
4
5
6
7
- アーティスト: MY BLOODY VALENTINE
- 出版社/メーカー: CREAI
- 発売日: 2012/05/07
- メディア: CD
- 購入: 12人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (40件) を見る
8
9
10
11
12
13
14
ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!/アンテナズ・トゥ・ヘヴン
- アーティスト: ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!
- 出版社/メーカー: Pヴァインレコード
- 発売日: 2000/09/25
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
15
16
17
18
19
20
素晴らしい。このランキングを作り上げた先人の英霊に敬礼。
この通りRYMはアートロックやプログレ系を挙げる傾向がある。
なぜならロックオタクが多いから。
また比較的古い作品が高順位。
なぜならロックオタクが多いから。
でも割と90年代以降の盤があるので保守的、というではなさそうだ。*1
面白いのはGodspeed You! Black Emperorがいること。
Godspeed You! Black Emperor - Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven [FULL ALBUM]
カナダのポスト・ロックの人たちで、その音楽性から「プログレの再来」とも呼ばれる。
音楽的に一番近しいのはシガー・ロスとかだが、この系統で他にいる有名な音楽家たちを差し置いて高順位なのは驚き。
では、日本のアルバムで一番順位の高いアルバムは何なんだろうか。
それが今回ご紹介するFishmansのLONG SEASONである。
ちなみにこれの評価は、クラウトロック屈指の名盤・CANのEge Bamyasiの次であり
ストーンズのLet It Bleed,ニールヤングのHarvest,WilcoのYankee Hotel Foxtrot,
クリムゾンの太陽と戦慄,ツェッペリンの2nd,クラフトワークの人間解体,
ディランのフリーホイーリン,ストーンローゼスの1st,YesのFragile等々・・・
よりも高順位にいるという末恐ろしいアルバムである。お前本当に邦楽か?
このFishmansという人たちはもともと大学のサークル内のバンドだったらしく、その後インディーズ→メジャー→タイアップとこんなに順調な滑り出しあるかいなというほど順調な滑り出しだったようだ。
またこのころに大滝詠一の「青空のように」をカバーしているらしく、大滝ファンとしてそこは普通にうれしい。
初期はこのカバーのようなレゲエを作っていた。
もっと詳しく言えばダブだが、これについては今クールのアニメと同じくらい詳しくないので偉そうなことは言えない。
その後、今でも名曲と言われる「いかれたBaby」を出した後からバンドの音楽性が一風変わったものになり始める。
さらにポリドールに移籍してから、その変化は加速。
その変化の一種の到達点とも言えるのが移籍第一弾アルバム「空中キャンプ」である。
こちらは国内でよく名盤リストに載るものの一つであり、目にした方も多いかもしれない。かなり静かで内省的なサウンドや歌詞になっている。
しかし、当時表舞台では小室サウンド、アングラでは渋谷系が流行っていたことを考えるとこの静かさはかなーりオルタナティブだったのだろうね。
しかしこれにも飽き足らずさらに誰も作らないような作品を作り上げた。それがこのLONG SEASON。
Fishmans - Long Season (Full Album)
このアルバムレビューにはトラックリスニングなぞいらない。
なぜならば、なんとこれは35分一曲という凄まじいアルバムだからである。長い曲聴きなれてない人はビックリするはず。
たまに「長い曲はもっと短くできる」と豪語される方がいるが、この曲に関してはこれ以上短くできない。したらこの曲の雰囲気が損なわれてしまうだろう。
まあつべこべ言わず寝る前に聴いてみてよ。途中で寝ていいからさ。
何やら沈んだ シーズン・・・という声で35分の旅はスタートする。
そこからシンセで作ったと思わしき雑音とともに、親方、メロディが!
ここら辺の感じはなんとなく都会の雑居ビルの間の誰もいない路地を思い出しますね。
そしてシレっと歌が入ってくる。この歌のエコーのかかり方や繰り返すピアノのフレーズ、途中で入る子供たちの歌が物凄くサイケで夢を見ているような感覚になるね。
ここでの歌詞も良い。
東京のどこかを恋人か親友かであろう「君」と夕方に出かけている描写だが
その時の幸せな様子、でもいつかそれが失われるだろうという予感が感じられて素敵。
またふわふわしたサウンドにもとてつもなく似合っている。
夕暮れ時を二人で走ってゆく
風を呼んで 君を呼んで
東京の街のスミからスミまで
僕ら半分 夢の中バックミラーから落っこちて行くのは
うれしいような さみしいような
風邪薬でやられちまったみたいな
そんな そんな 気分で走ってる 走ってる
走ってる 走ってる
くちずさむ歌はなんだい?
思い出すことはなんだい?
風邪薬でやられたことないのにすごく分かるのは何故。
8:30くらいから曲は次のフレーズに突入。ここら辺はなんて歌っているか全くわからないけど気にしない。いいね?
この部分ではボーカルでこれでもかと遊んでおり、理屈抜きに楽しい。歌うまい人は良いなぁ・・・
14:00くらいから踏切のように加工されたキーボードとともにさらに次のフレーズへ。
ここでは謎のヒューンポポポポポポン...という音が出迎えてくれます。マジで何の音なのこれ。
ここの箇所はこの曲全体の中でもなかなか前衛性にあふれる部分で好き。
かなり激しいパーカッションの使い方や風鈴のような音など、子供のころに行った山奥の田舎でのお祭りの情景が思い出されます。
20:40くらいで一回音が途切れ、歌が戻ってくる。
海鳥のような口笛やこの箇所全体にずっとかかっている風のようなエフェクト、モールス信号のようなとぎれとぎれの電子音など、前のフレーズとは対照的にどこか海を思わせる。
ここの二つのフレーズは「もう戻れない昔の懐かしい情景を夢に見る」ということなのかな。
25:30くらいからこのアルバム以外では聴いたことないような音を出すヴァイオリンとともに最終フレーズに突入。
最初のアレンジの上にギターソロやアコーディオン、新しいストリングス、女性ボーカルまで入れてしっかりビルドアップ。終わりへと向かいます。
この曲全体としては、まさに夢を見ているような印象ですね。
今に嫌気がさして、昔に戻るけれど、やることを思い出して帰っていく、というような。
全体的に決して暗くないはずなのに、どこかペーソスが残る内容です。日本人的だあ。
この次のラストアルバムも良い盤ではあるものの実験やりすぎ感があってあんまり好きではないので、個人的にはFishmansの一番好きなアルバムはこれ。
またFishmans海外勢いわく「Fishmansは一番最初にLONG SEASONを聴け!」とのことです。日本じゃ絶対にできない。さすが海外の皆さんは長尺の曲になれてらっしゃる・・・
ちなみにFishmansはこれをライブで結構やっていたそうです。
しかも毎回アレンジ変えて。
さすが世界のトップアーティストはやることが違うぜ・・・!
LONG SEASON’96~7 96.12.26 赤坂BLITZ
- アーティスト: フィッシュマンズ,佐藤伸治
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2016/06/29
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (10件) を見る