EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Hallogallo/NEU!【1971】

反復の美学。

 

Neu

Neu

 

 

 

アジカンが彼らの2nd"ソルファ"を再録したアルバムを出したのも記憶に新しいと思う。てかもう3年たつのか。

皆さんは聴きましたか?

 

もちろん僕は聴いてません。 邦ロックそんなに好きじゃない。

各所であんまり評判が良くなかったそうですね。

「当時の初期衝動がなくなった!」と言っている方がちらほら。

しかしながら、僕の仲間内は比較的最近のアジカンから入っているせいか

むしろこっちが良い!と評している人のほうが圧倒的に多い。

この感じを見るに、多分内容的には正しくアップデートされていて

文句を言っているのは面倒なおっさんと化した元バンドキッズのような気がするネ!

アジカンファン諸君!君たちもナイアガラー同様面倒な存在になったんだよ。ようこそ。

 

それはさておき、そんな先入観のない初々しい僕の友人でも「あんまり好きじゃないアレンジ」と言っている曲がある。

それがRe:Re:。元曲は結構好きなのでちょっと驚いた。

どれどれ、どう悪いの?彼からイヤホンを受け取って僕は聴いてみた。

 

イントロ長っ!1分以上あるじゃん!

そして同時にこう思った。

これHallogalloじゃん!


Neu! ''Hallogallo''

 

10分あるからこれ聴きながら記事を読もう。多分記事終わるほうが先だよ。

 

では2016年版Re:Re:の(多分)元ネタになったHallogalloという曲とNEU!というバンドについて説明しましょう。

 

NEU!はジャンル的にはクラウトロックと呼ばれるプログレの流派に属している。

しかしプログレの一種、とは言っても

基本的に陰鬱or難解or叙情的の三択を強いられている普通のプログレとは違って

クラウトロック爽やかで明るい曲が多い。

音楽的にはギターやドラムによる短いフレーズの執拗な繰り返しが特徴。あとシンセもよく使う。

こんな感じで今のテクノやパンクと近い触感があるからプログレに分けることを好まない人も多いヨ。

 

 

NEU!はもともとクラウトロックの代表格・クラフトワークから分派独立する形で結成されたバンド。

 

The Man Machine (Remastered)

The Man Machine (Remastered)

 クラフトワークYMOの参考になったことでも有名だね。

しかし、クラフトワークのファーストアルバムの制作最中、リーダーがやめるというまさかの事態が起こり

そんなら意味ないしやめるか、ということでドラムのクラウス・ディンガーとギターのミヒャエル・ローターが新しく作ったのがNEU!

まあすぐにリーダー戻ってくるんだけど。何したいのこの人。

 

バンド名についてはポップアートの一種らしく

新製品に何でもかんでも「新!」とついていたのでNEU!にしたとか。

クラフトワークも当時ドイツには政府主導の原発の広告がいっぱいあったから

発電所を意味するクラフトワークにしたそうだね。

 

NEU!はその後ファーストアルバムを発売する。それがあの赤文字で書いてあるアスキーアートにできそうなやつ。

 

 

 

 

┏━━┓
  | NEU! |
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できた。レベル低いけど。

Hallogalloはこのアルバムの一曲目で

内容は八打ちのドラムの上にワウを利かせたリズムギター、たまに乗っかる謎ギターソロ、それが延々と続く

という今聴いても新鮮、というかナニコレな代物です。

 

日本の前衛ポップバンド・Baffalo Daughterがアメリカ人とドライブしたとき、これを流したらそのアメリカ人が

「なんだいこの曲!イントロだけで終わっちゃったよ!HA☆HA☆HA」

ということを言ったという話があるけれど、そのアメリカ人の感想は全く誤りではない。

なぜこんな変な曲が出来上がったかというと

ドラムスのクラウス・ディンガーが片思いしていた北欧の女の子に失恋してしまっており
そのショックでこんな曲が生み出されたらしい。失恋すげえ。

 

しかし当時評価は散々で塩化ビニールの無駄遣い」という2chに書き込まれていそうな評論が残っている。

ちなみに売り上げ枚数は3万枚。これはわずか37.5オンド*1である。

しかしながら、デヴィット・ボウイやブライアン・イーノが絶賛しており、イーノがアンビエントに接近するきっかけになった曲でもあるね。

また八打ちドラムが延々と続くこのドラムパターンは「ハンマービート」と言われており、

後々のクラウトロックの中で頻繁に登場するパターンであるし、

今のハウスのビートの源流ともいえる。

加えて「執拗に曲の一部を反復させる」という考え方そのものも、後のクラウトロックの基本になっているね。

さらには、Public Image LimitedというピストルズのボーカルがやっていたバンドやDevoといった、ストパンクやニューウェーブに影響を与えているヨ。

つまりこれは長い時間かかって評価された曲、ということだね。

同時代的な評価や売り上げが、その後の評価や売り上げに必ずしも一致しない例のひとつでもある。

 

さて、なぜアジカンがわざわざこの曲のオマージュをしているかと言えば、恐らくザゼンボーイズを意識しているからだと思われる。

ザゼンボーイズナンバーガール解散後に向井氏がやっているバンドで

めっちゃクラウトロックなバンドである。


Zazen Boys - Weekend

はい、おさらい。クラウトロックの特徴は?

そうだね。短いフレーズの繰り返しだね。グリフィンドールに10点。

ザゼンボーイズは繰り返される諸行無常短いフレーズに乗せてギターや歌を入れる、という何ともクラウトなバンド。

 

初期アジカンと言えばナンバガ「透明少女」をアップデートしたような曲を作りまくっていたイメージがある。

おそらく、アジカン的には「俺らはもう次のステップに行ったんだぜ」という意味を込めてナンバーガールのその先であるザゼンボーイズの作風「クラウトロック」を真似たんだと思う。

 

でもそれはちょっと失敗だったと思う。中途半端になっている。

歌が聴きたい人にとってはあまりに歌の入りが遅すぎるし、僕としては全部イントロでよかった。

ともあれ有名なバンドであるアジカンクラウトロックをオマージュする曲を出したのはある意味勇気のある行動だと思う。

 

さあ、皆さん。アジカンに続いてクラウトを広めていきましょう。

 

キューネ ザワークラウト(バレル) 810g

キューネ ザワークラウト(バレル) 810g

 

 

 

*1:大滝詠一の伝説のアルバム"Let's Ondo Again"の初回売り上げ枚数800枚を1とした、本ブログ独自の単位。SI単位系登録を狙う。

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