EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Wave/Antonio Carlos Jobim【1967】

究極のラウンジ・ミュージック。

Wave

Wave

 

 

 今度、もしビートルズが自分以外誰も知らなくなっていたらという、

音楽好きなら一度は妄想したであろう題材をモチーフにした映画が公開される。

www.youtube.com

コメント欄に「なろう系かよ」というコメントがあった。確かに。 

 

実際この状況下なら、ビートルズだけじゃなく

ビートルズの影響下の多くのバンドが壊滅状態だろうから

有名なロックはほぼ全部自分のものと偽れるだろう。

だから僕だったらビートルズもろじゃなく、楽器を練習してプログレやってみたい。

 

ビートルズがいない状況下で生き残っているのは

有名どころではボブディラン、ビーチボーイズくらいなのかな。

もっともこれらの人たちもビートルズの影響は無視できないので今とは全然違う音楽になっていたはずだ。

日本ではロックはほぼGS発祥で(GSを通過していないはっぴいえんどは実は特殊
GS自体ビートルズ人気にあやかったものだからかなり危うい。
ただ、細野晴臣がボブディラン由来、大瀧詠一がフィルスペクター由来、鈴木茂ベンチャーズ由来なので
一応はっぴいえんど作曲班は無事です。
ただし、松本隆ビートルズ由来。
はっぴいえんど肝心の歌詞はアウツ。
残念。

 

ちなみに、これとほとんど同じ題材の漫画に「僕はビートルズ」というものがあるが

こちらは音楽ファンから評価最悪だったので

その二の舞にならないことを祈ろう。

 

僕はビートルズ(1) (モーニングコミックス)
 

 最後らへんがひどかったらしい。終わり悪けりゃすべて悪し。

 

さて、この映画の名前は"Yesterday"である。

これはもちろん皆様ご存じ初期ビートルズの名曲からとられたもので

知らない人はほぼいないんじゃないだろうか。

イエスタデイ

イエスタデイ

  • provided courtesy of iTunes

 Wikipedia大先生によればこの曲は

世界で最も多くカヴァーされた曲

 というとんでもない記録を持っている。

 

じゃあ二番目は?というと、

今回取り上げるアルバムWaveを作り上げたブラジルから来た男、カルロス・ジョビンによる

イパネマの娘であるというのがもっぱらの説である。

 Waveの続編Tideというアルバムに入っているヨ。

イパネマの娘

イパネマの娘

  • provided courtesy of iTunes

 彼はビートルズの次にポップミュージックに貢献した男」として知られており、

ボサノヴァという一ジャンルを確立した人物である。

ちなみにそのことを言われて、ジョビンは

ビートルズは四人で僕は一人だから僕のほうが上だね!」

というぶっ飛ばしてやりたいセリフを放ったという逸話があります。

 

ところで、ボサノヴァって何ぞやというと

バチーダというギターの奏法や

サンバに類似するリズムを持っているジャズ風の曲のこと。

こういっても何言ってるかわからないと思うので

実際聴いたほうが早いですナ。

 

このアルバムの一番の名曲と言えば

オープニング曲であり表題曲でもある”Wave”でしょう。


Antonio Carlos Jobim - Wave 1967

曲名を知らなかった人でも聴いたことあるのでは?

歌のようなインスト曲ですよね。どこか飄々としている。

ちなみに楽器は全員で10人います。でも重くならず、こんなに風通しの良いのはどうしてなんでしょう。

そして曲全体にわたって冷静に刻み続けるアコースティック・ギターが印象的ですネ。

先ほど紹介したバチーダというのはこの独特のギターのリズムをアコギの4弦までで弾きながら

5弦・6弦でベースを刻むという奏法。

ボサノヴァ特有の転調の多い妙なコード進行と相まってかなり難しいそう

この奏法を編み出したのがジョアン・ジルベルト。ジョビンとともにボサノヴァの父と言われています。

 

Wave

Wave

  • provided courtesy of iTunes

バチーダしながら歌える凄い人。 

歌詞はジョビンが自ら作っているみたいです。

 

また、ボサノヴァはブラジルのサンバから派生しているので

非常に物静かなのにノれるという不思議な特徴を持っています。

こういうところが静かでも飽きない理由なんでしょうな。

 

個人的には演奏できる楽器であるピアノとホルンが使われているので

他を打ち込んだりして一度一人で演奏してみたいですね。

 


Antonio Carlos Jobim - The Red Blouse

そして、このアルバムではほぼこの調子のボサノヴァが最後まで続くことになります。

そのためこのアルバムを延々とかけ続けることでBGMにできるという優れものとしてカフェやレストランなどで重宝されたそうな。

その意味で後々のアンビエントに影響を与えたのかもしれない。

ちなみにこの動画のサムネは赤色のジャケットだけれど

赤色のジャケットは日本盤のみです。

僕は緑ジャケのほうがアルバムの中身に似合っていて爽やかだと思います。

 

さてカルロス・ジョビンはあまり知られていないがかなり多彩な作曲家であったらしく、

次のようなボサノヴァ以外の曲も残している。


Tom Jobim - Ligia

ボサノヴァの面影はいずこへ。

でも映画音楽チックで素敵。

彼のスタンスとしてブラジルの音楽を基調に「興味ある音楽をやる」というのがモットーだったようだ。

 

もしかすると、ビートルズがいなかった世界でその場所に収まることになるのは

メロディーメーカーとしても作曲家のスタンスとしてもビートルズに肉薄する

カルロス・ジョビンになるのかもしれませんネ。


Tom Jobim - Wave - 1967 - Full Album

 

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