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本州一下らない音楽レビューブログ

Christmas of Love/サニーデイ・サービス【2018】

下北沢にクリスマスが。

 去年の今頃何聴いていたかこの前考えていた。

そう思ってTwitterを見返していたら

YMOのボックス買ってた。

あれからもう1年か。早いな。

実際のところよく聴いていたのは何だったかと思えば

たしかサニーデイ・サービスホフディランだったと思う。

サニーデイについては去年の春ごろ滅茶苦茶ハマっており

常に新品の「東京」を持ち歩き、趣味の合う友人に配りまくっていた

一応まだ一枚だけ新品の東京がある。ほしい方がいれば僕まで。

 

サニーデイ・サービスとは何ぞやといえば、一回解散した後

なんだか最近になって復活した下北系を代表するバンド。

というか下北系とかサブカルの下地はすべてこの人達が作り上げた。

プラス相対性理論でも聴いていればればサブカル好きの人との会話をスムースにできる。

 

サニーデイは基本的に昔懐かしい感じのするフォークロック的な音楽性のバンドで

解散前は日本語ロック最右翼と言われていたそうな。

はっぴいえんど渋谷系的フォロワーでもあるね。

いま最右翼といったら色んな意味で椎名林檎っぽいが。

 

再結成後は逆にサイケや前衛にひた走っており、

コーネリアス小沢健二の中間を単振動的に行ったり来たりしているような感じだ。

解散前のラストアルバムがそんな感じだったので

そのやり方を推し進めているのだろう。

比較用に二つどうぞ。

↑解散前最後のアルバムの曲

 

↑再結成後の良い曲

 

しかし、去年ドラマーが亡くなってしまったので

次のアルバムがどう出るかは分からない。今までのドラムをサンプリングするかもしれない。

 

そんな悲しい雰囲気の中、11月に出たのがこの曲だった。

この通りストレート140㎞/hのクリスマスソング。

打ち込みドラムがドラマーの不在を思い出させる。

 

正直初めて聞いた時の印象は良くなかった。

ちょっと落ち着きすぎているなあ、という感じ。

しかし何回か聴いているうちにこの静けさが冬の景色によく似合うのが分かってきた。

なんだかこのバンドの出自的にも、東京の西の地域の商店街でかかってそうな雰囲気だね。

聴くたびに平和な心になれる、サニーデイらしいとても優しい歌。

 

サニーデイ・サービスはメロやアレンジと同じかそれ以上に歌詞が大事なバンドなので

ちょっと一番だけ詞を見ていきましょう。

 

電話のベルが鳴って驚き目ざめる

めざましの音だと知ってまたまどろむ

いつからか僕は君のことを

何故だか懐かしく思ってしまう

ここだけ切り取っても十分下北系の文化系男子の話だと分かるのが凄いところ。

まあ、下北系文化男子の具現化のようなバンドだから当たり前。 

割と有名な日本のクリスマスソングはこういう感じの「クリスマス一人です」設定が多いが

そのシチュエーションだけだと文化系男子の要素だけしかつかない。

電話のベルに聴き間違えためざましのようなしょうもない日常で君のことを思い出してこそ下北系である。

 

 

窓の外には冷たい朝の息吹が

誰もまだ知ることのない予言を解く

氷のような街角を

もうそろそろ目覚めさせようと

 場面描写パート。普通の音楽は場面→心情が多い気がするけれど

サニーデイは心情が優先的だね。情緒のロックなのだろう。

 ここら辺の表現とかは凄く松本隆がしてナイアガラナイアガラ。

 

12の月が過ぎて君の歌を思い出す

もうすぐクリスマスが来るよ

争いごとが終わり

星の名前が決まり

愛をわかろうとする だれかが

 そしてサビで放たれる、このごった煮感。

ユーミンタツローと竹内まりやとジョンレノンを同じ鍋で煮込んだ感じになっている。

なんだか頭の中が忙しくなる。師走だからか。

 

 こうしてみるとサニーデイサービスはほかの渋谷系以上に

歌詞のパロディも多い感じだ。

フロントマンの曽我部さんは和文好きらしく

曲名に古い大衆小説の題をそのまんま引用したりもしている*1

そんな文学的な人だからこそ巧みにやれた業なのかもしれない。

 

松本隆も「自分の好きな文学と音楽が詞で繋がるとは思わなかった」と言っているように

案外音楽は色々な要素を入れられる寛大な器なのかもしれないネ。

Christmas of Love

Christmas of Love

 

 

*1:コーヒーと恋愛

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