ピッチフォークで0点の奴を聴いてみる。
おのれピッチフォーク!
突然だが、僕は「駄作」が結構好きである。
打ち切り漫画、クソ映画等々、そういったもの。
下らなく突っ込みどころが豊富で、しかしそれはあくまで真面目に作られたものなのでかえって面白い。意外と好きな人も多いんじゃないだろうか。
しかし、音楽にはそういうものは少ない。
音楽は聴き手に依存する部分が多く、ある人には最悪でも、ある人には最高な曲だってある。どんな音楽も「駄作」と断じられない。
そう思っていた僕だったがある日、あるフォロワーさんが呟いていた。
「ピッチフォークで0点アルバム特集があれば逆に見たい」
・・・・・・。
その手があったか!!!
さて、ピッチフォークとは言わずと知れた超有名音楽メディアであり、10点満点で古今東西のアルバムの評価を付けるのに快感を覚えるサディスティックな人々の集団である。
10点満点のレビューなぞめったに出るものではなく、日本の大名盤でさえ8点台に落ち着くという結構厳しい評価。
この記事を投稿する直前に10点を取ったFiona Appleは大ニュースになっていた。
また編集部のバンドの好みがあるらしく、同じような音楽なのに点数が全然違うことも。低い点を付けられたバンドのファンからは不当にけなされている!という声がちらほらあるほどである。
とはいえど、良いものには良いと正当な評価を付け、実際満点レビューは全て押しも押されぬ名盤ばかり。そういう点では信用できるメディアでもある。
でもPolysicsのベストが邦楽の中で一番高いのがいまだに何故か良く分からない。
しかしながら、光ある所に影があり、勝者の裏に敗者あり。
その中で先述した満点アルバムと同様に、あまり知られていないが0点アルバムも僅かながらにある。
広いこの世には同じことを考える物好きがいるようで、このブログでも度々利用している音楽バカが集まるサイト・RYMでピッチフォーク0点アルバムをまとめている人がいた。
今回はそれらからいくつか聴いてみたのでレビューしつつ紹介します。
Bachman‐Turner Overdrive/The Definitive Collection 【2008】
Bachman‐Turner Overdriveとは、カナダのバンド。
70年代に一世を風靡したらしい。
そう、結構有名で知名度のある人でも0点になりうる。
というかこれから紹介する人の多くは有名な人。
で、これは何かというとベスト盤らしい。
内容的には「似た曲の寄せ集め」という感じであり*1ベストならもうちょっと飽きさせない工夫が欲しかったかも。
また、確かに今の耳で聴くと退屈かもしれないが、0点というほどまででもない気がする。
過悪評価という日本語があるなら、そういう感じである。ピッチフォークらしい。
Flaming Lips/Zaireeka【1997】
あの大御所・フレーミング・リップス。
これはCD四枚組のアルバムで、各ディスクに8曲ずつ入っている。
しかし、単なる32曲入りのアルバムというわけではなく、全てのディスクを同時に再生させないとちゃんとした曲にならないという驚きのシステムである。
当時のピッチフォーク評は「CDプレーヤーもう三台買わせるのか!」と酷評だったらしい。
もっとも、その後評価を改め「変なCDのしかけ10選」に選んだり反省文を書いたりしている。
その性質上、サブスクにはない。
DJセットでやろうにも2セット必要になるので聴きづらいことには変わりはない。
あんまり音が良くないが、Youtubeに全部合わせた音源があったよ。内容は割と「らしい」もので結構よいアルバム。これも過悪評価だろう。
Jet/Shine On【2006】
Jetはオーストラリアのバンド。
結構売れており、iPodのCMにも使われていたらしいが、その曲がイギーポップの曲に似ていると指摘されているなど、
このアルバム以前にもいろいろ問題があったそう。
で、問題のこのアルバムだが、これの批評ページには文が添えられておらず、
代わりに動画が添付されているが、その動画が酷い。
気になる方は下のリンクから飛んで見てみよう。
まあ、確かに新規性もなく(ビートルズの曲をそのまんま等)、歌詞もかなり平々凡々。
新規性とか前衛性を重視しがちなピッチフォークからすれば妥当かもしれない。
しかしながらレビューの仕方が酷い。なんか某地下室タイムズみを感じる。
KISS/Music From The Elder【1981】
なんとあのKISSも0点を取っている。
この人たち、本当に有名無名にかかわらず0点を付けているのだ。
海外の音楽家たちは明日は我が身と震えながら曲を作っているのかもしれない。
このアルバムはある映画のサントラだったそうだがその映画が公開中止となってしまい、メンバーが憤慨して発表したものらしい。
全くKISSに詳しくない僕が聴いてみたところ可もなく不可もなくなアルバムであった。が、どうやら普段のKISSとは全く毛色の違うものであったそう。ピッチフォークだけではなくQ誌でも酷評。さらに一般にも失敗作と言われていたよう。
音楽でここまでマイナス評価が一致するのは結構珍しい。
もしかしたら当時から失敗作の代名詞扱いだったのかもしれない。
Sonic Youth/NYC Ghosts & Flowers 【2000】
Sonic Youthのアルバムも入ってしまった。
このアルバムは機材盗難後に作られたという代物。
ギターが盗まれた!程度ではなく、バンド一式盗まれたらしい。
おい警備員。
その為、それ以前とは音が違ってしまっているそうな。
そこがマイナス要因かな??と思いきや
なんだかSonic Youth節が板につきすぎていてツマラナイらしい。
Sonic Youthへのこの評価はよほど衝撃的だったのか、
聴いてみたが、普通に僕は好きだった。
この批評へのファンからの評価もそんな感じのようで、「いたずらに零点を付けるのはいかがなものか」というピッチフォーク批判の対象となるレビューでもあるようだ。
コーネリアスのMellow Waveについた評みたいなものなのかもしれない。
あるいは、ピッチフォークの発言力のせいで本来とても良いはずの作品が不当な扱いを受けている事例なんかも数あることが分かった。というか今回紹介した作品のほとんどがそうじゃないか?
なんにせよ、ピッチフォークは鬼のように怖がられる存在であるのだろう。
ピッチフォークとは悪魔の持っているような三又槍のことらしいけれどそのネーミングは結構妥当なもの。色んな意味で悪魔的である。
*1:同様の指摘がRate Your Musicにあり