東京は桜の中。
春先に投稿しようと思っていましたが
ネタがなさ過ぎてこれです。
桜の季節と言えばなんだろうか。
あ、フジファブリックとは関係なく。
桜の季節には
卒業式だとか、入学式だとか
遠くの街に行くだとか
桜のように舞い散ってしまうだとか
一か月くらいで色んな事が終わって始まりますナ。
海外だと年度始まりは秋らしいが
日本では桜が見られるから春、とのことだ。
明治天皇の鶴の一声。
そのせいで日本の受験生は寒空の下会場に向かう羽目に…
明治天皇も気分で出した判断で、ここまで影響が出るとは思っていなかっただろう。
しかし、やはり卒業や入学の時に桜が咲いていると美しい。
「散って去る」とも「新しい芽吹」とも取れるしね。
そんな始まりと終わりが同居する季節に是非聴きたくなるのが
サニーデイ・サービスの東京。
数ある日本の名盤の中でもとびきりに優しいアルバムで
僕の大好きなアルバムの一つでもあります。
サニーデイ・サービスは一応渋谷系のバンドらしい。
フロントマンの曽我部恵一氏が組んだ学生バンド・ロックンロールスターが起点で
そこからメンバーが変わり、サニーデイ・サービスになった。
メジャーデビュー当初は思いっきり渋谷系で
なんせ究極の渋谷系なんていう、うまいラーメン屋みたいな呼ばれ方もされたそうな。
うん、たしかにただの渋谷系だね。
恐らくこのままだったら他の渋谷系バンドたちとともに邦楽の歴史から消えていただろう。
しかし、ある時突然曽我部氏が古い邦楽に開眼。
1stアルバムでいきなり古臭いフォークソングのような作風に大変化する。
ここまで変化したので、当たり前だがレコード会社の人は困惑。
会社総出で大反対されたそうな。社員だったら絶対僕も反対する。
そして一部の評論家からもイロモノバンドだ、邦楽風渋谷系だなどと思われたらしい。
そんな世間の評価を気にせず、この作風を突き詰めた結果
名盤「東京」が生まれることになる。
では実際に聴いていきましょう。
まずは短めのタイトル曲でスタート。
この曲の時点で濃密な名盤の香りがする。
昔歩いた田舎のあぜ道の風景が克明に想起される。
一気にアルバムの世界観に取り込まれてしまう見事な出だし。
そして次の「恋に落ちたら」が素晴らしい。
あ~Ah~あ~名曲。
オリジナルラブの田島さんも絶賛したそうな。
懐かしく、丸っこいメロディとアレンジで
「君」への思いを歌う歌。
当時の渋谷系のシーンの歌は「青春サイコー!」なものが多い気がするが*1
この曲の主人公は「君」とは結ばれてないような気がする。
なにせ主人公は「したくなる」「はず」「だろうか」と
一切具体的な行動を起こしていない。おい。
それでも幸せに感じているという
己の身の丈を知っている文化系男子の恋愛ソングでしょう。
なんか中学時代を思い出す。
この後も名曲が連打されるが
僕自身では選べないのでPVがあるものを紹介します。
まずは「あじさい」。
最初に謎のヴァイオリンが入る。
たぶん大滝詠一の「乱れ髪」のパロディだと思うけど真偽は不明。
こちらはアップテンポで、梅雨時の晴れ間のようなウキウキ感があるネ。
だけど「恋に落ちたら」と同じように多分「かわいい人」とは結ばれてないね。
アルバム全体に漂う屈折した幸福感の度合いでは
「恋に落ちたら」とツートップ。こういうの大好き。
こういう詞は結構大滝=松本曲に多いんですよ。ペパーミント・ブルーとか。
ところで、この曲についてなんだけれど、曲調も詞も
下ののらきゃっとの動画にめっちゃ似合うと思うんですが、皆さんどうですか。
私と一緒にVRChatワールド探訪 SAKURA hiroba編
PVが有名なのは「青春狂走曲」
こちら、スペースシャワーTVでスピッツ並みにヘビロテされたものになります。
白黒映像で全員ほとんど真顔で淡々と演奏するPV。ちょっと怖い。
この曲は「東京」の先行シングルだったので
当時の音楽通の多くはこの曲でサニーデイ・サービスと邂逅したわけである。
この曲からサニーデイの快進撃が始まったと言って過言ではない。
あと言われるまで全然気づかなかったが、
この曲は古いフォークロックと当時のヒップホップを融合させたものらしい。
サニーデイが単なる古い邦楽のパロディから後々脱却することを物語っているね。
あと、これとほとんど同じ題名のサンボマスターの曲があるけど、
この曲意識したのかね。全然曲調違うけど。
このアルバムは従来の渋谷系に対する強烈なオルタナとして機能し、
中村一義をはじめとして多くのフォロワーを生み出した。
またはっぴいえんどの再評価にもつながることになったね。
渋谷系はナイアガラからの影響が濃いと言われ、
実際山下達郎がSongsを再発する際、帯文句に渋谷系を意識したものを載せたという逸話もある。
しかしながら、後続の渋谷系たちはそのことを半ば忘れていたわけである。
そんな本来のところから離れてしまった渋谷系に
「君たち、基本を忘れてない?」
と語りかけたのがサニーデイだったんだと思う。
これはプログレに対してロックの基本系を示したパンクにとても良く似ている。
だから、僕はこのアルバムは「君」への無条件の優しさにあふれると同時に
日本でも屈指のパンクなアルバムであると思うのです。