らご/羅針盤【1997】
ノイズ界大物が「歌う」だって!?
渋谷系、というと多くの人がイメージするのはこういう曲だろう。
こういう所謂オッシャレ―で気取ったような音楽。
誰が言ったか知らないが別名偏差値の高い音楽。
それ故に今では渋谷系を聴いてたら負けのような風潮がなんとなく漂う。
しかしこれは例外だから聴いてもいいよねみたいに扱われがちのが後期渋谷系。
具体的には大体ファンタズマ以降からFPMくらいまでのトラットリア周辺の人たち。
それまでの渋谷系とはうって変わってかなり前衛的で海外人気も高い。
また広義だとサニーデイ・サービスやフィッシュマンズもここに含めることがある模様。
え?と思う人がいるかもしれないが、主に海外でそういう捉えられ方をしている。
中国人と韓国人と日本人の区別もつかない奴らにゃ差が分からないんだよ
また、トラックメイカーやらシティポップやら昨今の音楽界も元をたどれば後期渋谷系であり
そのためか最近の人はバンド・ソロに関わらず渋谷系キライ!とか言っときながら
みんな後期渋谷系風でやっている感じがする。
でもこっちもやっぱり偏差値が高い。多分63は下らないだろう。
しかし、そんな東京の私立大学蔓延る渋谷系たちの中で異彩を放つのがBoredomsだね。
Boredoms - Vision Creation Newsun (full)
これと暴力温泉芸者などはノイズで後期渋谷系の中でもさらに異色。
こういうもはや偏差値を超越している奴らはデス渋谷系と称される。
もともとオシャレな渋谷系に一生つきそうになかったDEATHという単語。
ここまでくると、もう渋谷系とは何なのか禅宗寺院で座禅組んで考えたくなってくる。
このBoredomsは皆さんご存知の通り日本のヤバいバンドの一つで
なんでもNirvanaの全米ツアーの前座をやっていたらしい。
音楽性ゆえ、日本ではコアな音楽ファンにしか知られないが海外の人気はかなりあるようで、
海外の音楽の本に普通にメンバーやバンドの名前が登場してくるし
先述の通り(デス)渋谷系なのだが結成自体はそれより前で1986年ころらしい。
山塚アイ氏の色んな意味で伝説的なハナタラシを前身として結成されたようだ。
知らない方のためにその伝説の一部をウィキから引用すると、
客席にもの投げ込みすぎである。
ちなみに筆頭であるユンボとはショベルカーのこと。
この「ショベルカーでライブハウス破壊」は最早山塚アイの代名詞になっており、
ニコ動でショベルカーで物を壊すシーンが流れると
もちろん、こんなことが許されるはずもなく、多くのライブハウスで出禁を食らったそうな。
Boredomsのギタリストは結成間もなく脱退してしまうのだが、
そこで新しく入ってきたのが山本精一氏。 山塚アイほどではないものの彼もまた変人である。
山本氏の趣味の範囲はかなり広いようで、
Boredoms主催のイベントでノイズではなくフォークロックで登場する。空気読め
そのためそのバンドは想い出波止場なる四畳半フォークをおちょくったような名前を付けられるのだが
色々な音楽性を取り込むにつれ結局エクスペリメンタル・ノイズバンドと化す。
でもBoredmosよりポップ。
とはいえど、想い出波止場にはフォークの残骸も残らなかった為
山本さんは別のフォークロックバンドを組むことになる。それが羅針盤。
結成自体は1988年であるもののBoredomsのほうが忙しかったのかメジャーデビューは1997年。
1stアルバムのらごが非常に高い評価を受け、「歌ものバンド」として名をはせる。
その一曲目「永遠の歌」は非常に素晴らしく、アンセムと化している。
いままでノイズばかり聞かされてきたから温度差で心臓がビックリしたかもしれない。心臓発作で倒れないでくださいね。
この飾りっ気のないボーカルに飾りっ気のないギターに飾りっ気のないキーボード...
リードギターが不思議な動きをしていたり、曲終わりが妙だったりとそれまでの経験を活かしながらも
基本的には朴訥で平和なフォークロックである。
こういう曲も作れるんだ!と思ってしまうが、前衛にひた走ったからこそ作れたのかもしれないね。
このバンドではやはり歌を重視しているようで
この曲の他にも幾つも「○○のうた」というタイトルの曲がある。
このアルバムに入っているものだとかえりのうた。
ギター一本で弾き語る、従来の山本さんの曲とは全然違うベクトルの曲である。
しかしやっぱり終わりの構成が面白い。ギター一本弾き語りでも面白いことができるのは凄い。
この羅針盤はフォークロックファンからの支持も篤いようで
例えばトリビュートアルバムでロビンソンをカバーしている。
ほとんど丸ごとカバーであるが、原曲よりさらに内省的になった感じ。
テンポは多分少し早めなのに、なぜそうなるんだか不思議。
このカバーはスピッツのファンの間でも屈指のものとして数えられているらしい。
同じアルバムに入っているPOLYSICSの謎カバーとともによく語り草になる。
なんでキングクリムゾン風なんだ…*2
いまでも山本精一氏はバリバリ頑張っているらしく、
ある先輩によればライブハウスに行ったら普通にいたことがあったらしい。
山本さん自身ライブハウスを運営されているそうなのでいつか会ってみたいね。
ちなみにそのライブハウスでも山塚アイはライブ禁止らしい。えぇ…