Oasis/Il Guardiano Del Faro【1978】
イタリアからの熱帯夜
※先日選んだ非英語圏ベスト30に入れておきながら、このブログで全く触れてこなかったため、今回はこれです
みんな好きなアルバムにPlantasiaというのがある。
電子音楽・アンビエント好きの間ではそれなりに知られているアルバムであるのだが、一応説明すると、あるマットレスメーカーの販促用に企画されたアンビエントアルバム。
「植物とそれらを愛する人々のための暖かな地球の音楽」なるうさん臭さがにじみ出るテーマながらも内容は抜群によいため、最近になって音楽通の目に留まり再評価されたのである。
そしてPlantasiaが大好きな音楽ファン、通称植物とそれらを愛する人々は他のレコードやCDにまでその蔦をグネグネと伸ばし、様々な広く知られていなかったナイスなアンビエント音楽を発掘し、それらを愛しているとか。
そんな植物とそれらを愛する人々におすすめなのが今作Oasis。某兄弟の方ではない。
作った人はIl Guardiano Del Faro(=灯台番)ことFederico Monti Arduini先生。
白黒写真なのに目が異様にキラキラしているこの方である。
彼は所謂神童であったようで、ラジオから聞こえてきた曲を即座にピアノで演奏できるほど。
生来の音楽大好き人間で、親の持っていた灯台のある家でよく友人たちと歌っていたらしい。
高校生くらいになると内緒で曲を作ったりもしていたらしいのだが、ある日友人がイタズラで彼の音楽を勝手に録音・あるプロデューサーに持っていたところ気に入られ一気に音楽の道へ。友人、コネが凄い。
晴れて名門リコルディ*1でプロデューサーになった彼だが、ある日運命的な出会いをする。
プロデュースする音楽家に弾かせる予定だったそれを自分で弾いてみたところ、ドはまりしてしまい試奏のはずが録音までしてしまう。
身バレしないよう「灯台番」というヘンテコ名義でリコルディに持ち込んでみたところなんとリリース、そしてチャート一位を取ってしまった。
これがその1stアルバム。
灯台番なる謎の人物がチャートで一位を取ったとイタリア中で話題となり、彼は一躍時の人になったのである。日本での冨田勲的な立ち位置かもね。
彼が最も力を入れて取り組んだのがOasis。例の灯台に引きこもって作り上げた、自他ともに認める傑作である。
ジャケット絵の星空が広がるような出だし。
音作りにはPlantasiaに近いものがあるのだが、あちらに比べ緩やかな曲想なのが今作の特徴。Plantasiaが昼の作品とすれば、こちらは夜の作品ともいえるかもしれない。植物も寝静まるような夜の音楽である。
次の曲では打ち込みドラムが入りテクノテクノしてくるのだが、やはりどこか穏やかである。
メロディもしっかり弾きつつも決してハイにはならず、異国情緒あふれる緩やかな夜の雰囲気がアルバム内で保たれる。
ちょっとでも「作曲」しすぎてしまうと途端に崩れてしまうアンビエントにおいて、このメロディ感は他の人ではなかなか味わえない。
流石神童と呼ばれた人物である。
イタリアはディスコ音楽が盛んであるからか、ディスコを冠した曲も入っている。
確かにディスコっぽいのに決してアッパーではない。なんだこれ。
この曲がこのアルバムの奇跡的なバランス感を物語っているね。
イタリア国内でこそ有名であった彼だがシティポップよろしく海外でも知られ始めたのはつい最近のようで、特にOasisについてはこの2,3年で様々なところから何度も再発がかかっている模様。
日本向けにもつい最近出ており、なんと帯付きである。僕は買っちゃった。
DLコードがついていなくてちょっと凹んでしまったが、ともあれ内容は非常に良いのでレコードプレーヤー持っている人は是非買ってみよう。
ただしこの方、プロデューサーとしては「レーベル内の全プログレプロジェクト差し止め」のトロフィー持ちなので、イタリアンプログレファンの敵でもある。
イタプロファンは蜂起せよ。
↑Il Guardiano Del Faroによって発売を止められたと主張するプログレバンドの音源。かなり良いので発売できなかったのが勿体ない。
*1:ちなみに、彼のヒット後現代音楽分野は凋落します