一年の総決算に、一年の始まりに。
ナイアガラ・カレンダー 30th Anniversary Edition
- アーティスト: 大滝詠一
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: CD
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もう年の瀬も近づいてきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
部屋の掃除はしましたか?
鏡餅は買いましたか?
紅白をのぞいて、大晦日や年始に何の音楽聴くか決めましたか?
え?まだ決まってないって?
そんなあ、スケジュール管理がなってないよ!
カントが呆れるよ!
カントは規則正しい生活習慣で知られた。
(中略)
あまりに時間が正確なので、散歩の通り道にある家では、カントの姿を見て時計の狂いを直したと言われる。
/呼んだ?\
あ~あ。めんどくさい人来ちゃった。
ところでカント先生は何聴く予定なんですか?
/Niagara Calendar\
というわけで今日は大滝詠一のNiagara Calendarを紹介しますネ。
前回がこれの最終曲「クリスマス音頭」だったので
ネタ被り感があるけど許してください...どうか命だけは...
あまり知られていないことだが、大滝詠一はコンセプトアルバム大好きである。
あの有名なロンバケも「コンサート」というコンセプトが一応あり、
そのためチューニングで始まって、Fun×4の最後でアンコールの手拍子があり
それを受けてボーナストラック(のはずだった)のさらばシベリア鉄道へ続く、という仕掛けになっている。
だから↑この曲だけアルバムから浮いている感があるし
CDのリマスタリングの際、一回外された。
また、自分のラジオを題材に作ったGo!Go!Niagaraなんかは完璧にコンセプトアルバムである。
挨拶で始まり挨拶で終わる、典型的なコンセプトアルバム。
ナイアガラーには有名なシンガーソングライター少年・KEEPON君のお気に入りアルバムでもあったね。
この子凄いっすよ。70年代大滝詠一の生まれ変わりか。
そしてNiagara Calendarにももちろんコンセプトがあり、それが「一年12か月にそれぞれの曲をつける」というカレンダーアルバムと呼ばれるもの。
この時点で大滝詠一が良くやるパロディが満載で、
まずコンセプト的にはジュリー・ロンドンのカレンダーガールのパロディ。
さらにデザインはエルヴィスのシングルだと言われる。
どっちにもクリソツ。こういうところ渋谷系の先駆と言われるだけありますナ。
カレンダーアルバムであるので、ナイアガラーは年末年始にこれを聴き
「あの月はあんなことがあったなぁ」
「来年のこの月はコレをしよう」
とか活用している話をよく耳にする。
つまり、ナイアガラーにとってのゆく年くる年である。
さて、では一曲一曲見ていきましょう。
まずRock'n'Rollお年玉でスタート。
最初、カレンダーを破ってから
「「「明けましておめでとうございます」 」」
という始まり方。ここの多重録音の雰囲気が結構好き。
曲調としてはかなり王道なエルヴィス風ロックンロール。
「ロックの始祖はエルヴィスだから1月は・・・」とか思ったのかもしれない。
確かリヴァーブエフェクターがスタジオにないだったか何かで
歌はトイレで歌っているようです。太古の宅録。
メロディにもオールディーズの丸ごと引用や
はっぴいえんど時代の曲「春らんまん」を引用したりしている。
というか、この人正月の歌ばっかり歌ってるな。
2月の「Blue Valentine's Day」は70年代大滝の名曲。
珍しい「男目線のヴァレンタインの歌」。
70年代は松本隆に手伝ってもらっていないので
大滝詠一がセルフで詞を書いている。
大滝詠一は基本的にふざけた詞を書くのだが
たまにこういう素朴で目の付け所が面白い詞を持ってくるのでビックリする。
同じような素朴な詞は6月の「青空のように」でも楽しめる。
多分この曲が70年代大滝詠一の中で一番皆の思う「大滝詠一」像に近い。
後々十八番になるウォール・オブ・サウンドを実践しており
凄く「らしい」音像に仕上がっている。
またコード進行が「夢で逢えたら」と同じ。
だから物凄く狙って作った曲であろう。良い曲なわけです。
夢で逢えたら同様、いろんな人にカバーされており
特にFishmansのカバーが良いのでぜひ聴いてくださいネ。
ノヴェルティ的なので好きな曲は10月の「座読書」。
「すわって踊る」というNHKテレビ体操みたいな提案をする曲。
一応ダンスミュージック、かなりリズム感を大事にしただろうので
Bメロで韻を踏みまくってる。
やはり日本語で韻を踏もうとすると滑稽になるのだと痛感。
そういえば、最初の歌詞「さあさあ、ダンスのニューモード」は
明らかにロコモーションのパロディだね。
こんな感じで大滝詠一のアルバムの中でも特にパロディが多いのが特徴。
このアルバムは当時かなり力を入れて取り組んだようで
「これが売れなかったら音楽やめる」といったほどだったらしい。
しかし、あんまり質が良いミックスができず*1プロモ不足でもあったため全く売れなかったそうだ。
そしてこれが売れなかったせいで一期ナイアガラレーベルは店じまい、ということになる。
この後出した数作の後の79年から、ナイアガラが復活する81年まで沈黙期に入る。
この時、大滝さんは腑抜け状態であり、奥さんから何か言われても「あぁ…」と言うだけだったそうな。あの飄々とした大滝詠一でさえ鬱になる時がある…
それの反動か、次作のロンバケでとんでもないことになって戻ってくるけどネ。
このアルバムの30周年盤やオリジナル版はジャケットがカレンダーになっている。
実際、77年末に出してカレンダーとしても使えるようにしたらしい。
このカレンダーだが、ライナーによれば
なんとこの先2023、2034、2045、2051、2062、2073、2079年…にも使える*2ということだ。
次の2023年を楽しみに待ちましょう。
坂崎幸之助が語る、“俺の大瀧詠一”その3 (Audio 2019/11/15) NIAGARA CALENDAR 1977年12月発売 ナイアガラ・カレンダー 大滝詠一 4枚目