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本州一下らない音楽レビューブログ

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君は天然色/大滝詠一【1981】

二度と作れない名曲。

 

A LONG VACATION 30th Edition

A LONG VACATION 30th Edition

  • アーティスト:大滝詠一
  • 発売日: 2011/03/21
  • メディア: CD
 

 

 

最近、かくしごとというアニメが人気のよう。

 僕は最近まで知らなかったものの、

かの有名な「さよなら絶望先生」の方の作品だそうである。

 

そして、アニメのEDには大滝詠一君は天然色という曲が使われている。

www.youtube.com

このアニメを見た人の中には、テレビで聴いたことはあったけれど

君は天然色という曲名を知らなかったという人も多いのでは?

そんなあなたのために、大滝詠一ファンの管理人が

この曲を最大限に楽しむ方法をお教えいたします。

 

 

この曲は大滝詠一作曲・松本隆作詞の曲で、

日本の名盤選には絶対に顔を出すアルバム「A Long Vacation出だしの一曲目。

君は天然色

君は天然色

  • 大滝 詠一
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 その名盤たるや、音楽雑誌が取り上げると、

読者が「もうロンバケは十分だよ!!」と苦情を呈するほど

今までに途切れることなく評価され続けたものである。

 

 

こういう名盤の名曲には裏話がつきものであるが、

この曲にはなかなか物悲しい、有名な逸話がある。

 

松本隆氏は今でも作詞家として有名だが、

病弱な妹さんがいたことは一般にはあまり知られていない。

松本隆の妹思いはかなりのもので、

病気がちの妹さんが小学生の時、一緒にランドセルを背負って通学していた

という逸話もあるほどである。

しかし妹さんは常にいつ亡くなるか分からないほどで、

そのため松本隆の詞には生死の間の世界の様なほの暗さがあると言われる。

80年代に入り松本隆も有名な作詞家として地位を築いたころ、

妹さんが突然亡くなってしまう。

当時、「はっぴいえんど」でバンド仲間だった大滝詠一から作詞の依頼が来ていたものの、

ショックで精神的に参ってしまい、作詞を降りることにした。

しかし、大滝詠一は「いいよ、待つよ。」と落ち着くまで待ち、

結果生まれたのがこの君は天然色であった。

古代中国なら孔子の教えに入りそうな話である。

 

 

この妹の溺愛っぷりがかくしごと」の娘を溺愛する父親に重なる部分がある気がする。

なんかそうすると結構このアニメにぴたりとあてはまるような歌詞である。

君は天然色の歌詞、

唇つんととがらせて

何かたくらむ表情は

別れの気配を

ポケットに隠していたから

 

君は天然色

というのは前述の逸話から考えれば明らかに死の暗喩だが、

かくしごと」の父親目線では、娘が自立してしまう一抹の寂しさを掬い取ったようにも取れるね。

逆に娘目線であると考えた場合、このアニメ鬱展開になるかもしれない予感もする。

最初、アニメに使われると聞いたとき

「レトロでもないアニメに本当に合うのかなあ・・・?」

と思っていたが、杞憂だったようだ。

 

さて、楽曲面では大滝詠一らしく引用が使われている。言っちゃえばパクリ。

しかし引用というのは必ずしも思考放棄したパクリではない。

実際に見てみると、君は天然色にはイントロだけで2つの曲の要素が入っていると言われる。

まず、イントロの大枠と言われているのはハニーカムズというビートルズと同年代のバンドの曲のイントロ。

Colour Slide

Colour Slide

  • ザ・ハニーカムズ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

さらに、庵野監督の大学生時代の作品、DAICONのBGMでも有名な

ELOのメンバーが組んでいた70年代のバンド、ウィザードの曲の一部をプラスしてイントロができている。

See My Baby Jive (2006 Remastered Version)

See My Baby Jive (2006 Remastered Version)

  • ウィザード
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

さらにさらに曲全体の重厚なオケの感じはウォールオブサウンドというビートルズ以前の技法に基づいている。

Be My Baby

Be My Baby

  • provided courtesy of iTunes

この技法はかなり費用が掛かかり、スタジオの構造を熟知しないとできないため、

現在では完全な再現は不可能と言われている。 

 

他にもこの曲には多くの引用があると言われ、その数は20以上とも。

このパッチワークのような全く異なる出自の音楽を違和感なく同時に内在させる技

ただの引用とは言い難い大滝詠一の魅力なのだ。

 

 

この手の引用を使う曲作りは90年代に渋谷系というジャンルに受け継がれ、

そこではさらにPVやCDジャケットのデザイン面でも引用を頻繁にした。

 

ちなみに、この渋谷系は後々秋葉系アニメ文化と融合し

アキシブ系」というジャンルを生み出すことになる。

みんな大好きなこの曲も大滝詠一グランド・チルドレン

神前暁氏は代表的なアキシブ系作曲家だし、花澤香菜氏は良くアキシブ系を歌う。

 

つまり、大滝詠一がアニソンとして扱われるのは

ある意味「元祖アキシブ系」として妥当なのかもしれない。

 

ちなみに、たまに電波ソング的なアニソンがあるが、

あれは後期の前衛的な渋谷系が行くところまで行ったものが多く、

系譜的にはYMO大滝詠一のハーフ


月詠OP ネコミミモード

 

これなんか完全に嶺川貴子の曲に似たようなのある。


Takako Minekawa - Milk Rock (Cornelius Remix)

 

このようにアニソンにおける大滝詠一は意外と重要で、

今回使われたのもかなり意義のあることだと思う。

 

 

日本国内ではこれほどまでに重要視されているこの曲だが、

実は海外ではそこまでではないのが現状である。

ここ数年は70~80年代の日本の曲が世界的なトレンド

この前イギリスに留学した友人からは、

周りのイギリス人がはっぴいえんど聴いてたという驚くべき報告を受けた。

しかしながら大滝詠一はそのトレンドど真ん中の人物なのにも関わらず

全くと言っていいほど取り上げられる機会が少ない。

今回、このアニメを導火線として海外の音楽オタクにも大滝詠一が聴かれるようになるのを願うばかりである。

 


TVアニメ『かくしごと』本PV