観光地は少し寂れてた方が良いよね
先日、ニューエイジ・ディスクガイドで高名な門脇氏が観光地楽団のカセットが売りに出されているとツイートしていた。
ちょっと高いけど、出てますね『カセットブック「観光地楽団」矢口博康 (¥5,000)』 フリマアプリ「メルカリ」で販売中♪ https://t.co/82sew27Bns
— ᴢɪɴɴɪᴀ (@telepath_yukari) January 29, 2021
5000円というなかなか強気な値段設定でありながら
このツイートのあとすぐに売れてしまった模様。人気だし仕方がないね。
まあ買ったの僕なんですけどね。
本作、観光地楽団は冬樹社の伝説的なカセットブックシリーズ「カセットブック SEED」のうちの一つにあたるもの。
ミックスメディアの先駆けであるカセットブック形式だがその中でも最初期のシリーズのようで、当時最先端を行っていた音楽家が参加している。
今でこそ音楽家がネタツイをして、ファンがクソリプぶら下げるのはよく見る光景だが、インターネットのイの字もない80年代、音楽家自身の文章が読めるのは貴重だったようで音楽ファンにとってかなり衝撃的な事件だったようだ。
内容も普通のLPやCDにない前衛的内容なものが多め。
例えばThe Vampire Weekendがサンプリングして話題になった細野晴臣「花に水」や初版がまだ世に出て2か月しか経ってなかったCD形式のみだったので誰も聴けなかったムーンライダース「マニア・マニエラ」など。
何より素晴らしいのはそのパッケージ。
冬樹社のカセットブック・シリーズ、こないだの「花に水」のカセット再発に続いてまた増えた。「如月小春のリア王の青い城」と題した作品で、"Book Performance"と称したカセットブック。〈SEED〉シリーズの作品ではない?如月小春の他の作品も2枚持ってるけど、これもかなりの傑作だった。 pic.twitter.com/uDYZ6VSYOA
— ᴢɪɴɴɪᴀ (@telepath_yukari) December 31, 2020
見てください、この統一感。
こういうシリーズ通してジャケのデザインが 統一されているヤツが大好物なのですよ。
一緒についてくるブックレットにも中沢新一とかが寄稿しており、コレクター心を揺さぶる。
というわけでこの人が僕のSEEDコレクション第一号である。故にレビューしないわけにいかない。
矢口博康氏はサキフォニスト。サザンや立花ハジメの曲にたまにクレジットされている。
なんでも、一聴しただけで彼のプレイだと分かるということで、「エスパー矢口」なる二つ名があるそうだ。うさん臭さが一気にアップした。
そんな矢口氏がバンドメンバーと次何やるか相談し、「楽しいことがいい!」「楽しいことといったら観光地だ!」ということで観光地楽団。
細野晴臣の「観光音楽」に通じるコンセプトだね。
内容はというと、「エスパー」と称されるほどのサックス捌きが楽しめる、ニューウェーブでエキゾチックな曲が沢山入っている。
ここの「一等賞」というのは運動会とかではなく、なんとなく商店街のくじ引きの気がする。
なぜなら、大体そういうのの一等は旅行だからだ。今作のテーマ的にね。
棚から牡丹餅の旅行へ向かっているような、うきうきな曲。
もちろんボーカル曲もある。語感の面白さを強調したものが多い。
Hiroyasu Yaguchi [矢口博康] 一 Souvenir from Kamchatka [カムチャッカじいさんの置きみやげ] 一 1984
正直、節回しやシンセ音など今の耳で聞くとやや古臭くなっている感も否めないのだが、
逆にちょっとさびれた、地方の観光地の雰囲気が出ていてアルバム全体にはとても似合っている。
個人的には松島の寂れ具合と重なる。昭和50-60年代に建ったような土産物屋の感じね。
ジャケに使われている東京タワーの内部もそんな感じだった。
YMOのような今でも現役なサウンドより、こっちの方が温かくて「観光音楽」的には良い。(気がする)
あと観光地全く関係ないサッカーの曲が入っているのだが、これが妙に良い。
そしてこれだけYoutubeに上がっていないので割愛。
聴きたい人はカセットかCDを買ってね!!(※入手困難)
さてブックレットの方だが、矢口氏がレコーディングに参加した桑田佳祐や立花ハジメはもちろん、
5000円+手数料100円払っただけのことはあった。
SEEDシリーズはどれも入手困難、めったに売りに出されないのだが
ここを起点にそろえていきたいものである。
花に水は細野晴臣でも一番好きだしね。
見かけたら僕に連絡ください。すぐに買います。