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本州一下らない音楽レビューブログ

All Vacation Long/Pictured Resort【2016】

世界よ、これがシティポップだ。

 

ALL VACATION LONG

ALL VACATION LONG

  • アーティスト:PICTURED RESORT
  • 発売日: 2016/08/10
  • メディア: CD
 

 

先日、とあるポッドキャストに出させていただき、

そこで諸氏と「シティポップとは何ぞや」という非生産的極まることについて

あーでもない、こーでもないと話した。

 

その一応の流れとして出てきたのは、

「今シティポップと言われているものは80’sのそれではないよね~」

という話。

 

これは常々僕が思ってきたことである。

 

 

最近リヴァイヴァルしているというシティポップを見返してみると、

Plastic Loveだとか、Sparkleだとか、

クラブでかかっているようなものばかりであり、

それに呼応するかのようにシーンにおいても

ディスコでノリノリなリズム重視の奴が

「シティポップ・リヴァイバルだぁ~!!」と言ってもてはやされている。

reiji no machi (feat. イノウエワラビ)

reiji no machi (feat. イノウエワラビ)

  • パソコン音楽クラブ
  • エレクトロニック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

そうでなければ、環境音的な味付けを施したもの。

こっちは恐らく佐藤博とかの影響である。

Kiss In KIX

Kiss In KIX

  • Tsudio Studio
  • J-Pop
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

 

しかし!!!!!

小学生のころからシティポップを聴いてきた我々は騙されないぞ!!!

 

そもそも、そういう曲の呼び方はニューミュージックが一般的で

シティポップはメジャーな名前じゃなかったこと!!!

何より、ディスコや環境音楽風のシティポップだけじゃなく

AOR、歌謡曲的なシティポップもあったこと!!!

そしてそれが主だったこと!!!

竹内まりやと言えば「けんかをやめて」と「」だったこと!!!


駅 - 竹内まりや

 

 

 

また、同様の理由からか、シティポップで山下達郎と双璧をなす大滝詠一

正直そんなに取りざたされない状況である。

 


大滝詠一 恋するカレン LIVE音源

 

 

このリヴァイバルはシティポップの素晴らしい側面をかなり削ぎ落している感があり

なんだかなあ、という感じがしてしまうのも事実である。

 

そんな中、大滝詠一的な手法で立ち向かうバンドがいる。

我らがPictured Resortである。

 

 

Pictured Resortは大阪のバンド。

ジャンル的には一応ギターポップらしいのだが、

ネバヤンやヨギーがシティポップと偽れる言えるなら、

この人たちはギターポップとかいうより断然シティポップである。

 

しかも音楽性も、先述の通り80’sのあの感じそのものであり、

リヴァイバルで削ぎ落されてしまった部分をうまく拾い上げているイメージ。

第一、1stアルバムタイトルがAll Vacation Longというのが好感が持てる。

もろロンバケやんけ。

 

 

一曲目は"Good Weather"からスタート。

Good Weather

Good Weather

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 もうね、最初のリードギターだけで泣けてくる。

これだよ、今のリヴァイバルに求めていたのは!!!

 

プロフェット系のシンセ歯切れのよいカッティングに、

サイダーの様な爽やかメロディが乗っかる。

細野晴臣大滝詠一を再融合させた雰囲気。

また、ギターポップよろしくボーカルがウィスパー気味で

それが爽快感に拍車をかける。

ギターポップとシティポップの理想的なドッキングでもある。

 

一応これに合わせて踊れなくはないが、

四つ打ちで強制的にガンガン踊らせようとする昨今の曲とは違い、

ナイアガラ系に通じるノリの良さ

クラブでガンガン頭を振るような感じではなく、

ベランダで揺れるように聴く音楽という趣。

出かけるのも億劫な文化系の僕はこういう曲の方が好き。

 

 

二曲目も素晴らしいのですよ。

Away To Paradise (Classic Beach Ver.)

Away To Paradise (Classic Beach Ver.)

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 もうね、カッティングギターをこれほどに上手に使った曲って

この10年でこれくらいだと思うヨ。

 

動的なギターに対比されるような静的なキーボードの音作りも絶品で

泣けるね。泣けるキーボードランキング一位ですよ。*1

 

この後にも、インスト・歌もの含め色々続くが、

全部必聴の名曲と言って差し支えない。

なんでこんな凄いのがメジャー流通じゃないのかよく分からないレベル。

 

Electric Birdland

Electric Birdland

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes
Picture Of You

Picture Of You

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

全編を通して言えることは、

あからさまにクラブ・ディスコ向けにチューニングされた曲はなく、

かといって環境音楽によることもない、

純粋無垢のシティポップである。

 

もうPicture Resortって最高すぎてですね、

この人たちをいかに再現するかが僕の現在の課題です。

もっと売れてほしい。

 

去年、2ndアルバムも晴れて発売され、インタビューも公開されていた。

 

mikiki.tokyo.jp

これによると、かなり頻繁に引用をするようで、

大滝詠一に通じる音楽性はこの手法によるものかもしれない。

 

 

ちなみに、同様にリズム型でも環境音楽型でもないシティポップ人に

Pictured ResortのいるSailyardの姉妹レーベル、

Local VisionsHIRO.JP氏がいる。

 

こっちはremixとかで一応Future Funkも取り上げているものの謡曲で、

ディスコやハウス等テクノ中心のトラックメイカー界でかなり浮いている。

そしてやはり大滝詠一パロのアルバム名。

この方もなかなかのチャレンジャーである。

両者とも、今まであまり注目されてない形のシティポップを盛り上げてほしい。

 

 

www.youtube.com

 

 

*1:二位はINOYAMA LAND

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