ARIA The ANIMATION O.S.T./V.A.【2008】
※こう見えてショーロ名盤
サークルの方から教えてもらった作品。
その筋ではかなり評価が高いらしいのだが、全然知らなかったので取り上げます。
そもそもARIAってどんな話なんだろう...と思って調べてみると、テラフォーミングした火星上にあるヴェネチア風の都市で水先案内人を目指す少女の話らしい。情報量が多い。
ロゴが思いっきりアール・デコなのが素晴らしいですね。もしかして:ディズニーシー
さてこれの裏で聴こえてくる音楽、これが今回のお題、ショーロです。
ショーロってなんぞや?というとブラジルで生まれた室内音楽の形式。
ブラジル版のジャズと思えば話が早いが、Wiki先生によるとジャズより歴史が古いそう。
最初期はそこらへんの道端でやり始めたらしい。
木管楽器やヴァイオリン数名+ギター+少人数パーカスの形式でやる元気なボサノヴァ風の音楽。というか、ボサノヴァはショーロの進化系的な側面がある。
エスタンピーがラテンの風味をもっているというのが一番近い形容かな。
ショーロは現在でも愛されており、ブラジル本国ではボサノヴァよりも認知度は高め。
リオ五輪でブラジル国歌を演奏したのはショーロの演奏家だったりする。
古くはディズニー映画に使われたこともあり、ブラジル国外でも常に一定の人気があるいぶし銀な音楽である。
そんなショーロに日本で目を付けたのが笹子重治氏。今回のO.S.T.の多くの曲を作り上げたChoro Clubの主要人物である。
正直なところ、裏方稼業を主としていることもあって*1ブラジル音楽ファンでない限り全くと言って無名な人物だがブラジルで仕込んだ演奏力は折り紙付き。
大貫妙子、奥田民生、矢野顕子、鈴木慶一、宮沢和史という眩暈のするメンツでやったツアーBeautiful Songsに演奏家として参加していたり、今回のサントラのようにちょくちょく有名な作品にもかかわっていたりする。
また笹子氏がChoro Club以外に組んでいるバンド・コーコーヤはこのブログでも触れたことがあるので、そちらは読者の方はピンとくるかもしれない。
この通り、もちろん作曲力も非常に高く、Choro Clubによるサントラでもずば抜けたセンスが味わえる。
初夏の海を思わせる、風通しの良い音楽。
ヴェネチア風の世界観ということでブラジル感は抑え気味で無国籍を志向しているが、ショーロのイデアのようなものは保たれておりユルユルと進む異国の船にいる気分になる。
そしてアニメと合わさると完全にディズニーシーのそれになる。
前述の通り全体としてはブラジル感抑え目だが、中には思いっきりブラジルなものも。
ショーロの範囲内ではあるものの、よりボサノヴァ的。こういうのに弱いな~僕。
ちなみにこの曲名で検索をかけたところ名シーンと出たので、ファンにとっては思い出深い曲なのかも。見てみるか...
まずこれを聴いたときにビックリしたのがアニメのサントラでショーロという非常にマイナーなジャンルを取り上げていたこと。
このサントラの出た2008年と言えば、プログレ出身の多いゲーム音楽家の中で珍しくブラジル音楽を志向した、とたけけこと戸高一生氏の音楽が知れ渡り始めたころ。
つまり、ゲーム/アニメ文脈でブラジル音楽が受け入れられる下地があったのかもしれない。
また一種のアキシブ系の文脈としても捉えられるかもしれない。
先ほどの戸高氏にしかり、ニッチなブラジル音楽をゲーム/アニメにぶち込むという一種の渋谷系的姿勢が制作側にあったのだろう。
というのも、このサントラにはChoro Clubの他にRound Tableが入っているのだ。
アニメファンにとってはなんかよくED歌っている人という印象かもしれないが、渋谷系からアニソン音楽家に転身した、アキシブ系の元祖ともいえる存在。
わざわざこの人とセットで出てくる点にアキシブの波動を感じないわけにはいかない。
そして次年の恋愛サーキュレーションにつながる...と考えると虫が良すぎ?