EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

春の海/井上宗孝とシャープ・ファイヴ【1968】

GSのプログレ!?

日本ではインスト曲はあんまり売れないと言われるが、エレキインストは不思議と受けが良い。

ベンチャーズやトルネイド―スに始まり、GS期には寺内タケシの諸作やブルーコメッツなんかの日本産も多い。その後の時代にも様々な角度から日本の音楽に影響を及ぼし*1YMOフュージョンといった80年代のムーブメントもエレキインストの文脈から説明されることもよく見る話。ノリとして津軽三味線に通じる部分があるので抵抗なく受け入れられるものと思われる。


www.youtube.com

 

そしてそういうわけで伝統的な日本の音楽をエレキでカバーする、という試みはグループサウンズ期の音楽によく見られる。好例はさっき挙げ寺内タケシだろうね日本民謡大百科と称し、多種多様な伝統曲を取り上げているシリーズも作るほどである。日本民謡における彼の功績はなかなかのもののはず。

www.youtube.com

それゆえ今でも寺内タケシはよく知られているが、ただ個人的にこの手で最も出来が良いと思うのが今回紹介するシャープファイブ春の海である。

 

もともとシャープファイブはロカビリーバンドとして当時よく知られた「ウェスタンキャラバン」由来らしい。ロカビリーの凋落とともに解散し、そのメンバーを中心に作ったコーラスグループ「シャープホークス」からさらに分派独立のがシャープファイブ。この時代によくある解散、吸収、独立を繰り返した末に成立したバンドだね。

彼らの一番有名な活躍はテレビ番組「勝ち抜きエレキ合戦」での模範演奏らしい。ただ手軽に見れる映像は現在さすがに残っていなかった。当時を知る人によると、ギタリストの三根さんの演奏が驚異的で、寺内タケシと比肩するという人もほど。個人的に彼のギターはロックというよりジャズとかフュージョンのギターに近いような気がする。

シャープファイブはその巧みな演奏技術を縦横無尽に生かした演奏と抜群の構成力が持ち味。そしてアルバム「春の海」では伝統曲というコンセプトのもと、シャープファイブ節が楽しめる。

 

白眉は冒頭、タイトル曲「春の海」


www.youtube.com

元曲はお正月になっているあれである。明治の琴の大家・宮城道雄の作曲。

序盤は純邦楽曲らしく比較的穏やかに開始。笙の如く鳴り響くオルガンも魅力的。

ユルユルとサイケ調に有名なテーマ部をひき終わると、待ってましたと言わんばかりにサーフロックに変貌。昭和の子供たちが熱狂したというギター捌きで現代人も圧倒していく。

邦楽~サイケ~サーフロックと違和感なく変容していくさまは、海外の音楽通曰くまさに日本のプログレ。このころのロックバンドに珍しくオルガンが目立って活躍しているのがプログレ感を助長しているね。
クラシックのロックカバーということでELP展覧会の絵を彷彿させる。まだプログレという言葉も生まれていない時代、本人たちもそこまで考えてなかったと思うが、日本にいながら彼らは世界的に見ても大変前衛的な音楽をやってしまったのだ。

この春の海のレベルの高さ故かアルバム内の他収録曲が霞みがちになってしまうが、もちろん他も素晴らしい。例えばさくら変奏曲。有名な「さくらさくら」を宮城道雄が琴用にアレンジしたもの。

尺八部をオルガン、琴部をギターが弾き倒す。寺内タケシも同じ曲をやっているのだがシャープファイブはより細やかなアレンジと演奏になっており、なんだかこの後でてくる和ジャズの民謡カバーたちを思い出す。

GSというと海外では「ジャパニーズ・ガレージロック」と称される通りどうもパンキッシュであったりサーフロック的であったりする音楽と捉えがちだが、ソフィスティケイトされた彼らの演奏はそれらとは異なるGSの側面を教えてくれる。

そして個人的に推しているのは木遣りづくし。残念ながらネット上に音源が見当たらなかったが、冒頭の掛け声をちゃんと再現しているのが偉い。ダサいとされたのか当時の民謡カバーではこういうのを省きがちなのだが、現代からみると和魂洋才の風がして面白い。

そして最後は春の海リプライズで終わり。当時最先端の「コンセプトアルバム」としてみても全く遜色のない選曲と編曲、構成。60年代日本のアルバム中でもトップクラスに位置するほど完璧なアルバムと言ってよい。

 

さて、このアルバムの何より凄いのはこれだけ意欲的なことをやりながら滅茶苦茶売れたところである。なんでも68年11月期のチャート一位をかっさらい、本命と言われた美空ひばりを抜きその年のコロンビアの年間アルバムトップ賞を取ったそうな。

この後このアルバムでやったような和風路線を進んでみたりクラシックのカバーをしたりするのだが、どうもレコード会社が無理やりやらせたと思わしき企画ものが増えてくる。また本人が「出来が悪かった」と言っているカバーを元曲が人気だからとシングルカットするなど、レコード会社の横暴が目立つ。もっともGSバンドには珍しくブーム後も長続きしたのだが、それ故その後のロック音楽家に商業音楽と思われ正当な評価を得られずに忘れ去られてしまった感が否めない。

シャープファイブがこのまま日本音楽をテーマにしたオリジナル曲なんかやっていたら、日本の音楽史どころか世界的に多大な影響を及ぼしたに違いない。レコード会社に縛られがちなGS故に忘れ去られてしまった、不運なバンドである。

 


www.youtube.com

*1:70年代大滝詠一の諸作にエレキインストがあったり、意外なところだと平沢進がエレキインストからギターを始めていたりする。

Corneliusのコメントは異様に短い

コメントミニマリスト

音楽ファンであれば「○○推薦!」みたいな文句とともに、偉い音楽家の推薦文がCDに添えられているのを幾度となく見たことがあるはずだ。特に期待の新人にはよく推薦文がついてあるように思う。

 

例えば去年発売された折坂悠太の「心理」へ寄せられたceroの高城さんからのコメントを見てみよう。

 

折坂くんの声を聴いていると、時々自分の声帯が動いているような錯覚を憶える。歌うことの純粋な快楽を、無意識のうちに私の身体が追体験しようとしている。こんなふうに身体を鳴らすことができたらさぞかし気持ちの良いことだろうと思う。歌唱の中毒になって四六時中歌ってしまいそうだ。しかし彼の声には自身の魂を観察する理性も宿っている。だから歌いすぎるということがない。理性はユーモアやアイロニーと言い換えてもいい。獣の身体と諧謔の精神が声のなかで手を繋いでいる。それが彼の音楽の一番の魅力と思う。

身体感覚に基づいた理知的な文章。ネオシティポップをバンドの枠組みでやることを常々考えている人物だからこそのこれである。

 

洋楽であっても国内盤に日本人音楽家からのコメントがつくことがある。例えばDiggs DukeOffering For Anxiousについていた菊地成孔の推薦文。

ノーマークだったんですけど、買って聴いてみて腰を抜かしました。1曲も捨て曲が無い。自分の番組で何曲かプレイしました。ドナルド・フェイゲンのフォロワー・マニアにも俊英ですが、それだけじゃない。「いまジャズ」のリズムマニアには必聴です。打ち込みですが「1拍の5等分」という、世界的なトレンドに最もポップな形で挑み、見事に成功させています。音楽マニア向けでもありますが、懲り過ぎではなく、カフェでかかっていても気持ちよいのが嬉しいですね。一聴してあんまり新しさが解らない物こそ、裏ですげえ新しい。そんなアルバムの代表だと思います。

音楽理論や膨大な知識に裏付けされつつも、ざっくばらんとしたいつもの菊地節で書かれたコメント。

 

このように推薦文ひとつとってみても音楽家(ないしは作家、評論家等々)の色が楽しむことができ、推薦文を見て「ああ~これ〇〇っぽいね~」とかニヤニヤしている気持ち悪い音楽ファンも多くいることであろう。

 

そんな中で異色の推薦文を書く人物がいる。それがCorneliusである。

例えば、長谷川白紙「エアにに」に付けていたコメント。

この綿密で複雑な楽曲を作ったのが、まだ20歳の青年とは驚きです。自分が20歳の頃を思い出すと恥ずかしくなります。

そう、驚くほどに当たり障りが無いし短いのである。らしいっちゃらしいのだが。

 

いやいや、そんなこと言ってもこれが特別なんじゃないの?原稿の長さも短めで発注されているのでは?とお思いのあなた。実は長谷川白紙の帯は割と書いている方なんです

他の例として、推薦文ではないけど、い・ろ・は・すのCM曲をヨルシカのn-bunaと一緒に作った時のそれぞれのコメントを見てみようじゃないか。

rockinon.com

まずはn-bunaの文章。

【n-buna(ヨルシカ) コメント】
水が跳ね上がるようなメロディを意識して作曲、演奏しました。水の音というのは不思議なもので、季節、場所、条件、そして勿論聞く人によって様々な印象に姿を変えます。そういった水の気まぐれで蠱惑的(こわくてき)な面を、白州の水音との交わりの中に感じていただければ嬉しいです。
初めは澄んだピアノフレーズをイメージして、もっと落ち着いた印象のデモをいくつか持っていきましたが、その中でも元気な印象のものが採用されたように思います。その演奏データを原案に、小山田さんには好きにアレンジ、音を追加するなどしていじっていただいています。
小山田さんはミュージシャンとしても作家としても大変大きな先輩なので、今回胸を借りるつもりで制作しました。大きく引っ張っていただいています。貴重な経験になりました。ありがとうございました。

 

先輩である小山田圭吾氏に気を使いつつ、楽曲に込めた思いまで丁寧に解説してくれている理想的なコメント。

対するCorneliusはこんな感じ。

 

コーネリアス コメント】
楽曲で使われている全ての水の音は、「い・ろ・は・す」の水源である白州で録音してきていただいた音を使いました。
水が奏でる様々な音の表情を、楽しんでください。

短い~!当たり障りがない~~!

比較して分かったと思うが、彼は本当に短いコメントしか出さないのだ。これがCorneliusの芸風なのである。

 

僕はこの芸風に憑りつかれてしまい、彼のコメントを片っ端からディグった。

良かったのはサ道の主題歌に引き続き選ばれた時のコメント。

www.tv-tokyo.co.jp

小山田圭吾Cornelius)コメント】

新シリーズ!嬉しいです!早く心からととのえる日が来ますように。

可愛い。そしてコロナにも気を遣う。そして短いし当たり障りがない。

 

この芸風が極北まで行っているのはNEU!のトリビュート盤へのコメントである。

skream.jp

Always NEU!

これは最早コメントなのか怪しい領域にまで突っ込んでいる。ミニマリズムここに極まれり。

 

さて、これだけ見てみて大体Corneliusのコメントの傾向が分かったと思う。

四つ挙げるとすれば、以下のとおりである。

・具体的な内容に触れない。

・自分の感情は「嬉しい」「楽しい」「驚き」程度でとどめ、それ以上ふみこまない。

・普段使いしない言葉は使わない。

・そして何より、短くて当たり障りがない。

 

実践編

さてここまでCorneliusの文体の特徴をみてきた。ここからは実践編として僕が最近買った良かったものをCorneliusっぽいコメントで紹介していこう。

 

コーヒーと一緒によく食べます。是非楽しんでください。

主観的描写を嫌うCorneliusは食品を紹介する時も「おいしい」とか「香りが......」とかは言わない。自分はコーヒーと一緒に食べるのだ、その事実だけを書くのである。己がうちの感情はCornelius流では言ってはいけないのである。「短くて当たり障りがない」を常に念頭に置くべきなのだ。

 

四十年も前にこのような漫画があったことに驚きました。

とはいっても時には己が感情を示すべき時もある。それは本の紹介や推薦など、直接取り扱うとどうしても内容に触れてしまうような状況に陥った時。そういう時は最小限度の感情表現をしよう。自分を主体ではなく媒体として扱うことで、内容に触れずに当たり障りのなく短いコメントを書くことができるのだ。このコメントは簡単そうに見えて深い思索の結果なのである。

 

ネピネピ

直接描写しようとすると内容に触れてしまい、自分の内にある感情を書こうとしても長文になってしまう場合もある。そういう時はナンセンスなただ軽い一言だけを添えるのが鉄則である。ただしこれは最終手段であることを忘れてはいけない。常日頃から苦心したミニマリズムを実践しているからこそ、このナンセンスが成立するのだ。

 

 

自分で書いてみると、決して手抜きではなく一種のCornelius流の哲学によってかような文章が錬成されていることが分かった。音楽に限らず、本の帯やお菓子のパッケージでこういった短いコメントを見かけたならば、主観を排したミニマリズムの美学を感じ取ってほしい。

 

コンピ盤のコンピ記事

良曲集合体

 

コンピレーションアルバム。特定のテーマや一定のコンセプトに基づいて集められた楽曲によって構成された音楽アルバムのこと*1

もともとはレコード会社のベスト盤から始まった文化らしいが、DJ、音楽家、ディガー、評論家などが己の趣味を全開にしてセレクトした通なアルバムもある。それを紹介しようと言うのがこの記事の目的です。

 

ただこう思う人もいるかもしれない。Spotifyで気軽にプレイリストを作って公開できる昨今意味あるの?、と。

実は最近でも環境音楽とかのLight in the Atticが作っているような辺境音楽コンピが大人気。コンピ自体の人気はまだまだ衰えてない。*2

とはいえ、色々雑多な曲を集めている都合上音楽家の一つの確固たる信念が貫かれたオリジナルアルバムよりチョイ下くらいでみられがち。

が、先述した音楽通たちが身の粉にして作ったであろう名盤も数多存在する。特に邦楽。

そういうわけで今回は有名無名問わず個人的におススメしたいコンピ盤を紹介する記事です。例によって邦楽多めでお送りします。

 

Nuggets

ああ、またこれかと思ったアナタは音楽好き。コンピを語るときにまず出てくるのがこのアルバム。山下達郎がサンソンで流したことでも有名。

Patti Smith Groupのメンバー、Lenny Kayeが編集したアメリカのガレージサイケを有名無名問わずひたすら集めたアルバム。発売された72年時点では既に忘れられた存在になっていたガレージロックだったが、このアルバムでの選曲のハイセンスさは再度光を当てる決起になった。

このアルバムの影響力はすさまじく、パンクムーブメントにはもちろんBlack Sabbathにまで影響したと言われる。そしてこのアルバムに収録された当時マニアックとされた曲たちはガレージロックの入門曲になってしまった。

また60年代のガレージをまとめるコンセプトもコンピ界のスタンダードになることに。New England Teen SceneBack From The GraveといったコンピはNuggetsフォロワーの代表格。どちらも非常に完成度が高いのでNuggets好きにはおススメです。

Back From the Grave 1

Back From the Grave 1

Amazon

こうして音楽家にもコンピにも影響を与えたNuggetsはコンピレーションアルバムの代名詞的存在となり、Nuggetsの名を冠したアルバムはLenny Kaye本人によるものは勿論パロディとしても数多存在する。最近だとシンガポール・ナゲッツとかあったっけ。そういうのを集めてみるのも楽しいかもしれない。

Nuggets収録曲では個人的には13th Floor ElevatorsやCount Fiveが好きかな。60年代アメリカにしか存在しえないガレージロックを楽しもう。


www.youtube.com

 

Pillows&Prayers

あとコンピの名盤ということでこれも取り上げておきたいところ。コンピといえばNuggetsとPillows&Prayersである。異論は認める。*3

こちらはCherry Redという80年前後のネオアコ系レーベルのコンピ。爽やかながらもどこか不穏な雰囲気が漂う、ニューウェーブ期の不安定インディーポップが収録されている。メンバーもBen WattやTracy Thornなど、この後非常に名の知れることになる人々ばかり。Nuggetsは音楽評論家などがコンピを作る際の指標になったのだが、こっちはレーベルがコンピを作る基本形になった。

この通り海外産のアルバムなのだが日本での人気が異様に高かったらしく、続編は日本限定で発売されている。そっちも必聴。ちなみにその続編には怖いCMでお馴染みのクリネックスティッシュCMのBGMが収録されている。


www.youtube.com

都市通信

80年代の日本にも東京ロッカーズや関西ノーウェーブ近辺をまとめた名コンピがいくつも存在する。その中でも内容は勿論のこと、その逸話でもよく知られているのがコレ。

逸話というのは、こういうことである。

野本氏(引用者註:都市通信の責任者)の家業が不渡りを出してしまい、その資金繰りにあてるために、少数ながら流通したアルバムの収益や通信販売分として届いた代金を着服してしまい、注文した人々の多くに作品が届かなかったという事件です。

それから40年、野本氏は還暦を迎え、そうした人々に作品を無償で届けるとともに、売り上げを参加バンドにすべて返すためにこのプロジェクトを実現しました。

VA ~ 都市通信 | あれも聴きたいこれも聴きたい (ameblo.jp)

そういうわけで40年間幻と言われわ高値で取引され続けた都市通信だったのだが、近年奇跡的な再発がかかり我々は気軽に聴くことができるようになった。

内容も非常に優れている。特にこの後一般的にも知名度を上げていくNon BandのHomeは東京ロッカーズでも指折りの名曲。一緒についてくる冊子も80年代サブカル臭がして素晴らしくよい。


www.youtube.com

 

Soft Selection 84'

www.discogs.com

非東京ロッカーズのコンピで80年代ものというとこれをオススメしたい。何せレーベル名がソフトレコードである。柔らかふわふわニューウェーブなのだ。

なにやら中華風味&チープなテクノポップがめじろ押し。ノンスタンダードがさらに地下にもぐったような都市通信とはまた違ったアングラ感を楽しめる。後々ナゴムに入ることになるPICKY PICNICがいるのでプレナゴムレコードと捉えるのもアリかも。ポップと地下精神のバランスが絶妙な点からもナゴム的な空気を感じるね。

個人的にはLa Sellrose Can Canがおススメ。YMO的な歌ものを目指そうとチープな機材でやれることをやった結果、YMOと別軸でさらに先まで行っている感がある。

www.youtube.com

 

Sixties Japanese Garage-Psych Sampler

海外産GSのコンピ盤。どうやら海外で初めてGSを取り上げたものらしく、GSコンピのパイオニア的存在。*4

GSでしょーと思って聴くと中々に衝撃を受ける。海外産ガレージと遜色のない曲ばかりが揃っているのだ。

またモップスやダイナマイツのようなマニアックなモノばかりではなく、ゴールデンカップスやスパイダースなどの売れた人々もちゃんと入れているところが好印象。

それでいて前述のとおり海外ガレージのように聞こえるのであるから、相当ディグったものと思われる。GSの新たな魅力に気づけること間違いなし!

ちなみに海外だとFlower Travellin' Band、Les Rallizes DenudesやFoodbrainのメンバー参加!!と言って売り出しているらしい。物は言いよう

RSDで再発がかかっているため、サブスクでも聴ける。是非聴いてみよう。


www.youtube.com

Back To The Lab

www.jetsetrecords.net

昔「コンピ 名盤」で検索して見つけたもの。さっき検索したときも上の方に出てきた。実際名盤なミドルスクール・ヒップホップのコンピレーション。DJ KOCOにも同名アルバムがあるが、それの元ネタである。

これを知って以降このDef Rhythm Productionsが何者なのか、収録されている人たちが何者なのか調べているのだが現時点では分かりませんでした!という最早最近見なくなったタイプのアフィリエイトサイトのような結論にしか達しなかった。詳しい人教えてください。

ただ内容は本当によく、特にI'm Groovinのカッティングギターの上でべらべらラップしていくさまはあまりラップに詳しくない人でも楽しめるのじゃないだろうか。ミドルスクールのヒップホップの良さに気づくことになった一枚。

www.youtube.com

Prego!'99

大分時代が飛ぶ。この間にもいくつか良いコンピはあるのだが、Pillows&Prayers風のレーベル編纂ものが沢山ありすぎて省略した。

かく言うこのアルバムも渋谷系レーベル・トラットリアのレーベル紹介アルバムなのだが、一風変わっている。コンピなのに曲ごとが繋がっているのである。

また内容も最早皆が想像するところの「渋谷系」ではない。テクノがあったと思ったらクラウトロックがやってきて、その後現代シャンソンが流れ...というようなFANTASMAを彷彿とさせるごった煮感。音作りも00年代的なプラスチックな音像。何もかもが新しいチャレンジで構成されている。

このコンピ以降明らかに日本の先鋭的なコンピ盤の質感が変わっており、コンピの概念を変えた名盤と言ってしてまってよい。


www.youtube.com

 

Contemode

Prego'99の作風をポスト渋谷系にまで高めたのが中田ヤスタカcontemode

イントロ曲から始まり時にキュート、時に凶暴な00年代的佳曲が並べられていくのは見事。可愛さと先鋭的な音楽とを違和感なく混在させる手法は、この後発生するアキシブ系への直接的な影響を感じさせるものになっている。

そしてやはりプラスチックな空気感。00年代以降のポップスを定義するあの音像が既に2003年時点で完成されて切っているのは中田ヤスタカの手腕に依るところに大きい。

ちなみにアキシブ系にはAKSBというコンピもある。これも併せてに聴いておきたいところ。*5

ContemodeでのオススメはHazel Nuts Chocolate。かわいらしさと不穏さが一緒くたになっている。こういうの好き。


www.youtube.com

O Brother, Where Art Thou? O.S.T.

こちらは一見映画のサントラのように見える。が、ほとんどブルーグラスのコンピと友人から教えてもらった。

どれどれと調べてみるとこのアルバム、全米にブルーグラス旋風を巻き起こしU2やDylan差し置いてグラミー最優秀アルバム賞をかっさらったそうである。

そういうわけでこれは誰が言おうが何を言おうがブルーグラスのコンピなのだ。これの素晴らしい点は音源が新録である点。

優しげな演奏も素晴らしく(ネット上のカントリー知識人たち曰く)選曲も大変良いため入門盤にうってつけ。これを聴いているとどこか遠くに旅をしたくなるね。

カントリーって古臭いんでしょ?というイメージを払拭してくれること請け合い。サブスクではアルバムのうち数曲聴けないので、中古で買うのが◎。同様に日本の戦前歌謡曲に対して新録をやっている大土蔵録音2020もおススメ。

大土蔵録音2020

大土蔵録音2020

Amazon


www.youtube.com

 

Ethiopiques

Ethiopiques Volume 1

辺境コンピの元祖というべき存在がEthiopiquesでしょう!かのBob Dylanも感銘を受けたとか。

その名の通りエチオピアの多種多様な音楽を収めたコンピシリーズ。未発表音源も惜しげもなく使い、レアグルーヴありSSWありで現在Vol.30まで出ているそうだ。よくエチオピアだけでそこまで続いたな...

元祖なだけあって選盤の腕も確か。レーベルやアーティストなど各Volごとでテーマも違うのだが、どれも高水準にまとまっているのは凄まじいの一言。

個人的に好きなのはVol.10のエチオピアブルース集。確か件のBob Dylanが感銘を受けたやつもこれだったはず。

人気作だからかサブスクにあるのも嬉しい。是非聴こう。


www.youtube.com

Amiga A Go Go

以前共産圏オススメガイドでも紹介した、東独のコンピ。国営レーベルAmigaに残された膨大な音源の内、今の耳でレアグルーヴとして聴けるものを集めたコンピになっている。

聞くところによれば東独をはじめとした共産圏はどうやらロックを禁止しおり、ロックバンド群は教会で「ミサ」という名目でライブをやっていたらしい。

一方でジャズやファンクはOKだったらしく、政府も力を入れていたのか共産圏のそれらは異様にレベルが高い

内容も共産音楽入門にうってつけ。今でもドイツで国民的に人気のあるManfred KrugUschi Burningベルリンの壁崩壊前から国際的に評価されていたModern Soul Bandなど。ドライブで流したら爽快なこと間違いなし。

この中のいくつかはサンプリングもされているらしく、そのネタとしてもおススメ。Red Grooveの波が来ている昨今、これを聴いて勉強するしかない!!


www.youtube.com

Childish Music

その名の通り、子供が遊びで作ったような無垢な印象を与える曲を集めたもの。日本やヨーロッパのフォークトロニカを中心に組まれている。

子供の無垢さには時にして恐ろしさがあるもの。ポップゆえの怖さが内包されている作品が揃っている。例としてはOren AmbarchiWorld Standard竹村延和など。もうちょっと後の時代に発売されていたらトクマルシューゴとかも入ってきそうな人選。

音楽的な技術力を備えた人たちが辿り着いたのが最終的に子供っぽい音楽だった、というのはキュビズムの絵に似ている。そしてこの着眼点でこのアルバムをまとめようと思ったキュレーターに賛辞を贈りたい。

脱構築ポップスが好きならきっと好きなはず。Pitchfolkが下げめのレビューをしているが気にするな!


www.youtube.com

東京ボサノヴァ・ラウンジ

2000年代初頭、ボサノヴァがちょっとしたブームになっていた。

それ故現代ではボサノヴァの印象はすこぶる悪いのだが、ブラジルのそれと引けを取らないほど高度なことを志向した音楽家も沢山日本にいた。それを集めたのがこのアルバム。

日本のボサノヴァ=ジャパノヴァの指標として今でも参考にされているこのコンピ盤。現在でもBook Offディガーを中心に歌謡曲ボッサを探す人がいるがその発端がここである。

内容も浅丘ルリ子の「シャムネコを抱いて」のような有名曲は勿論、音楽ファンに人気の笠井紀美子寺尾聡、そしてハプニングス・フォーかまやつひろしといったGS人脈、さらに大橋巨泉まで、あらゆる昭和ボッサを一つにコンパイルしている。そしてどれも大変高度。今の耳で聞いても古臭くないどころか新しいまであるほどである。

ジャパノヴァの名盤としてはもちろんのこと、昭和歌謡曲入門にも役立つのではなかろうか。歌謡曲を時代遅れと切り捨てるのは早計であると感じさせてくれる。


www.youtube.com

 

パリの地下鉄

大丈夫。走行音ではない。パリの地下鉄で演奏する音楽家たちの演奏をまとめたもの。無印良品が出していたらしい。

それ故ある人はピアノ、ある人はギター、ある人はバンドネオンと最小限の楽器と各々のスタイルがバラバラ。しかしながらアルバム全体としては何かの統一感があるが不思議。

パリの地下鉄で演奏するのは実は限られた人物だけ。地下鉄会社のオーディションがあり、それに受からないといけない。この不思議な統一感はこのオーディションによるものなのかもしれない。

個人的によく聴くのはEdith Piafのカバーで有名なPadam Padam。古いシャンソンアコーディオンと歌だけで魅せるカバーはこのアルバムの魅力の一つ。

 

[音源等無し]

塊魂トリビュートOST

こちらもゲームサントラながらコンピとして乗せたいもの。何せ使っている音楽家が凄い。

キリンジスキマスイッチ*6のような00年代のソフィスケイトポップとして今でも著名な人物から、GUIROBuffalo Daughterのようなゲームサントラにはあまり召集されないコアなメンツまでがそろい踏み。彼らが塊魂の曲を思い思いカバーしており、ゲーム名通り一種のトリビュートアルバムとしての性質が強いのである。

やはり白眉はGUIRO。よくこの人たちをゲームのサントラに呼び出したなあと思ってしまうが、彼らもノリノリだったのかGUIRO節全開の浮遊感たっぷりなカバーをしている。

 

www.youtube.com

 

8bit Music Power

これは非常に有名ですね。FCカセットの新作として幾度となく大きな話題になった代物。その中身はコンピになっているのです。ちゃんと聴いたことあります?

参加しているのはサカモト教授Saiotneなどといったチップチューンでお馴染みの音楽家たちと往年のゲーム音楽家たち。ゲームのサントラやアルバムだと機械そのものの音ではないが、カセットにすれば実機で鳴らせるという寸法である。

彼らの曲は普通にインストポップスとして楽しく聴けるものばかりで非常に高度。演奏するのはもちろんよく聴くファミコンのピコピコ音なのだが、それでこんなことできるの!?みたいな音も頻出する。

人気作品であり続編もいくつも出ている。サブスクでも聴けるが、続編含め安いものだとまだ3000円程度で買えるので実機で楽しんでみるのも一興。


www.youtube.com

 

Eiichi Ohtaki's Jukebox

大滝詠一の持っていたジュークボックスの中身が聴けるという、なんともありがたいコンピ盤。レコード会社別で三枚出ている。

よく知られているオールディーズからの選曲も多いが、ここは大滝詠一の選盤、なかなか他ではお目に掛かれない隠れ名曲も入っている。この三枚はオールディーズ入門にもうってつけ。

他にも大滝詠一関連のコンピは沢山ある。元ネタを集めまくったナイアガラの奥の細道は言わずと知れた定番になりつつあるし、GO! GO! NIAGARAで流れた音源をまとめたGO! GO! RADIO DAYSも頻繁にタワレコで見かける。よく売っているので余裕あるときに買ってみよう。


www.youtube.com

 

Thai Shoegaze Compilation

Thai Shoegaze Compilation, Vol.1

Thai Shoegaze Compilation, Vol.1

  • Thai Shoegaze Compilation
Amazon

シューゲイザー関連には不思議なコンピレーションが沢山あるが、最近のもので面白く話題になっていたのはこちら。タイ産シューゲイザーである。

実はタイではDesktop Errorという偉大なるバンドのおかげでシューゲイザーが人気。それ故現在のタイのシーンでは下手なイギリスのシューゲイザーバンドより質の高いバンドを拝むことができるのだ。その中で良いバンドをえりすぐった今作は折り紙付き。

ともすればマイブラの二番煎じの印象が出てしまうシューゲイザーだが、ここに収録されている音楽家たちはそんなことを思わせず己の靴見道を突き進んでいる。面白かったのはKrtkkkh.*7。まるでドゥームメタルのようなリフや空気感の曲を紛れもないシューゲイザーで見せている。これは非常に新しい!

ちなみにVol.2も出ている模様。こちらは加えてシューゲイザー関連の別ジャンルも入れてあるのでさらに彩り豊かになっている。

シューゲイザー関連のコンピだと日本から出ていたYellow Lovelessも面白い。少年ナイフBorisCoaltar of the Deepersなど日本人音楽家Lovelessの各曲をカバーしたもの。また韓国人音楽家によるBlue Lovelessもある。こちらも併せてどうぞ。

YELLOW LOVELESS -JAPAN-

YELLOW LOVELESS -JAPAN-

  • アーティスト:V.A.
  • High Fader Records
Amazon


www.youtube.com

 

 

Heisei No Oto

Heisei No Oto

Heisei No Oto

Amazon

この記事最後に紹介するのは昨今人気のディグレーベルMusic From Memoryのコンピ。

この手のコンピはLP時代の音楽をコンパイルしてることが多かったのだが、今作では平成の音ということでCDフォーマットで日本で発売されたものに限定しコンパイルしているのが大きな特徴。日本だとそうでもないが、海外のディガーはあまりCDに注目してこなかったようでその点で大きな意義がある。

収録されている人もDream DolphinePOiSON GiRL FRiEND*8といった(このアルバム発売前までは)よくBook Offでたたき売りされていたような人たち。またこのアルバム発売直後、収録されている井上陽水のPi Po Paが音楽ファン界隈で流行するという謎の現象を生み出したのも記憶に新しい。

こういうコンピはこれ以降増え始め、音の和というものもあった。そちらもCD時代に寄せている。

現代のみならず当時から俗物として敬遠されていた音楽が復古し始めている。これからの音楽、次なる指標はこのアルバムになることは間違いない。


www.youtube.com

 

 

 

 

その他にもクリスマスアルバムには良いコンピがいくつも存在するね。シーズンになったらぜひ買っておきたいところです。

良いコンピの旅を。

 

*1:Wikipediaよりまるごと引用

*2:bandcampのレーベルに多いよね。Mississippi Recordsとか

*3:先生!トロピカリアはコンピに入りますか!?!?

*4:60's Japanese Garage Psych Sampler - Jahkingのエサ箱猟盤日記 (goo.ne.jp)

*5:ただしやや古いアルバムであるためかアキシブ系の代表格たる恋愛サーキュレーションが入っていない。現代版として再度作り直す必要があると思う。

*6:今作では大橋氏のみ

*7:なんて読むのこれ

*8:某漫才師はここから名前を取ったのだろうか。

さ・え・ら ジャポン/Pizzicato Five【2001】

年の初めの試しとて

 

謹賀新年。2022年はこちらのアルバムのレビューからスタートさせていただきます。

 

Pizzicato FiveはFlipper's Guitarと双璧をなす渋谷系の名門バンドとして知られている。フレンチやモンドリアンを取り入れたファッションやデザインは今見ても十二分に新鮮。90年代以降の日本のデザインに多分に影響を与えているよね。


www.youtube.com

 

それため彼らには90年代のイメージが強いが、見直してみると彼らの諸作中で名盤と言われるものは意外と80年代のプレ渋谷系期のアルバムに集中している。のちのオリジナルラブこと田島さんがボーカルだった頃だね。bellissima!とか女王陛下とか。


www.youtube.com

 

90年代中はシングルでは名曲を連発するもののアルバムの方はレーベル名よろしく「レディーメイド」ということなのか過去のアルバムの再生産的なものが多く、ちゃんと今でも聴かれているのは女性上位時代くらいな気がする。出せばなんでも売れるという状況だったため、一種のおふざけとしてそういうことをしていたのかもしれない。

 

そして時は流れ20世紀末。椎名林檎くるりなどのポスト渋谷系と評される音楽家たちが増え渋谷系の終焉が見えていた。渋谷系と呼ばれていた音楽家たちに変革が求められたのだ。

フリッパーズ側からの回答としては過剰なパロディ満載のFANTASMA、一転自然音や間をフィーチャリングしたアンビエントPoint毎日の環境学

これらによって単なるサブカルポップスに過ぎなかった渋谷系が、前衛音楽のよき理解者へと変容することになる。オルタナバンド主体だったポスト渋谷系へのさらなるアンチとして機能し、これは後の非バンド音楽に通じていく。


www.youtube.com


www.youtube.com

そしてPizzicato側からの返答だな、と思えるのがさ・え・ら ジャポン渋谷系を外部から相対化させてみせたポスト渋谷系のように、海外から見た日本文化というテーマに基づき豪華客演を交えて繰り広げられる不可思議なコンセプトアルバム。

 

現代において伝統的な日本文化といえば正月ということなのだろうか、アルバム冒頭は一月一日から始まる。年の初めの試しとて♪というやつである。正月に聴きたくなる理由の七割はコレのせい。
そして二曲目にPizzicato Fiveらしさ全開のNonstop to Tokyo。アルバムだと松崎しげるとやっている。

www.youtube.com

 

東京出身の方には分からないかもしれないですが、東京旅行にはこういう感じの近未来感やワクワク感があるんですよ。地方出身の小西さんだからこそ分かる、非東京出身者の思う東京観が反映されている。

この後、カバーバージョンはこれと忌野清志郎くらいしか知らない君が代、戦前ジャズ歌謡のようなさくらさくら(童謡ではない)、「国民番号制度にはやっぱり大反対ですけど」のパンチラインで知られる現代人、奇怪な外国人が日本文化をむやみやたらと褒め称えるFashion Peopleなど、密度濃度ともにドロドロに濃い曲が目白押し。

 

特にこのアルバム中でにやけさせるのは、戦時中と労働環境が何ら変わっていないじゃないかと批判する1964年の音楽「アメリカでは」のカバー

www.youtube.com

 

からの「ポケモン言えるかな?」。このアルバム中最も感動した構成である。

www.youtube.com

戦争や直後の過酷さを忘れてしまった現代の気楽さのズレ敗戦国ながらアメリカどころか世界に伝播した日本文化の奇妙さを際立たせている。曲の個性が非常に強いため「ポケモン言えるかな?」はアルバム内でどうしても浮いてしまうが、それを逆手に取った現代日本批判。

全くクリスマス関連のワードが出てこない日本流クリスマスソング12月24日、別に坂本九は関係ないスキヤキ・ソングと来てPV含めて名曲の東京の合唱、そしてはっぴいえんど愛飢をのカバーをボッサバージョンでやり、幕を閉じる。

 


www.youtube.com

www.youtube.com

この最後の愛飢を。一種のネタバラシとして機能しているのではないだろうか。

愛飢をは大滝詠一作曲。そしてこのアルバムは一月一日で始まってさくらさくらを経由し、12月24日、東京の年末の象徴たるスキヤキに向かう。そう、大滝詠一のナイアガラカレンダーを意識している構成になっていると思いませんか?

epocalcgarage.hatenablog.com

 

以前、このブログでナイアガラカレンダー収録の「クリスマス音頭」は音頭という日本文化礼賛のように見えて、実は日本文化批判であるという話をした。

epocalcgarage.hatenablog.com

 

それをアルバム単位で実行したのがこのさ・え・ら ジャポンなのではないだろうか。本作を単に日本文化礼賛と受けとるのは「自衛隊に入ろう」をそのままの意味で受けたるようなものである。あらゆる角度の日本文化を切り取り*1、対象化し横一列に並べ日本の奇怪さ奇妙さを言い表したのだ。

ここら辺の手法をさらに発展させたのが東京事変、そして椎名林檎だと思う。椎名林檎は問題行動も含め一見右翼的に見えてしまうが、そうではない。日本文化*2を切り取って持ってくることによって日本の問題点や奇妙さを我々に投げかけているのだ。


www.youtube.com

*1:切り取り=サンプリングは渋谷系の得意技だ

*2:ないしは右翼的思想

優しい時間の中で/田中友紀子【1993】

𝓑𝓪𝓵𝓮𝓪𝓻𝓲𝓬 𝓒𝓱𝓻𝓲𝓼𝓽𝓶𝓪𝓼...

クリスマスソング何にするかの不毛な議論が白熱しつつあります今日この頃。Wham!山下達郎が2021年にもなって毎冬しのぎを削っているとは80年代の人が想像できたでしょうか。JR東海おそるべし。

というわけで、クリスマスソングレビューを久しぶりにいたします...といってもクリスマスソングかスコブル怪しいですが...

 

この作品の入っているアルバム・1/2ダースの想い出のプロデュースは村田和人おどろく方も多いかもしれない。

村田和人といえば山下達郎の愛弟子で、師匠を裏切り今年サブスク解禁されたのが記憶に新しい。


www.youtube.com

この通り山下達郎み全開*1であり、山下達郎関連のレコードが高騰する昨今ジェネリックタツローとして彼のレコードも人気がある。

またその手*2の人たちには90年代のガールズポップの諸作でなじみ深い名前のはず。

80年代はムーンレコードから何作かソロを出していたのだが、90年代は打ち込みに苦戦したりソロでパッとした売り上げを出すことができなかったりという状況で、裏方稼業で食い扶持をつないでいたらしい。

www.youtube.com

その為、Book Offに漂着した残骸の中に村田和人裏方期の作品が転がっていることがあるのだ。

中でも村田和人ファンの間で有名なものが田中友紀子の「君たちのくれた夏」と「1/2ダースの想い出」。二枚で一セットになっている。*3

 

君のくれた夏はその名の通り夏をイメージしたアルバム。

直球の村田和人節が聴ける、非常にハイセンスな内容になっている。

www.youtube.com

特に本作収録のSummer Vacationは本人も相当気に入っていたらしく、のちに竹内まりやと一緒にセルフカバーしたバージョンも残っている。

www.youtube.com

こちらはなんかロンバケが凄いアレンジ。

 

夏があれば冬があるわけですが、その冬サイドが1/2ダースの想い出

一応前作の続きということで一曲目は「出会ったあの夏」というワードから始まる。

収録曲はやはりハイセンスなモノに満ち満ちておりどれも一線級のクリスマスソングとして扱えるようなものが揃っているが、個人的には優しい時間の中でを推したい。

www.youtube.com

正確無比なコーラス。一人コーラスは山下達郎インスパイアドな人はよくやる芸当だけれど、村田和人が頭一つ抜きんでているのに異論はないはず。

そして曲。完膚なきまでにオールディーズですね。特に最後のベースコーラス。

この手の打ち込み×オールディーズでパッと思い浮かぶのは山下達郎Girl In White*4だけれど、それにSeasons Greetingのエッセンスをまぶしたような雰囲気があって良良良。成功が約束された組み合わせと言ってよいでしょう。

 

また、昨今のリヴァイバル的には所謂「バレアリック」的な解釈も可能なのが高ポイント。*5ティーブ・ハイエットみを感じる瞬間もちょくちょくあるよね。

勿論田中友紀子自身の歌唱力もなかなかのもの。田中友紀子自身による甘々コッテリな歌詞なのだが、さらっと聴かせてしまうのは彼女の声質と歌に依るところが大きいね。

シティポップにおいてはコーラスワークが効いている曲は夏が似合う曲でしょ!なイメージがあるけど、ビーチボーイズやスペクターなんかの古い例を持ち出すまでもなくこの曲を聴くといや本当にコーラスが輝くのは冬の情景を表した曲なんじゃないかと思えてしまう。

 

さて、このアルバムには他にも冬の佳曲が盛りだくさん。届かないX'masなる曲もあるんですが、YouTubeになかったので割愛。やいサブスク解禁しろ!

 

ちなみにファンからそもそも人気があったのに加えてBOOKOFFディガーの魔の手に落ちる例も増えており、ほとんど売りに出されていないのが現状。フィジカルを見かけたらすかさず買ってしまうのが良いかもしれない。

ちなみに僕は某ディガーさんに売ってもらった。ラッキー。

 

www.youtube.com

*1:若い頃日本の音楽で聴いていたのは山下達郎だけだったらしい。

*2:主に異常Book Offディガー

*3:五つの赤い風船のNew Sky/Flightのような分割商法

*4:山下達郎で一番攻めてる曲だと思う

*5:二百マイナポイント相当

ⒸEPOCALC