Windy/桐ケ谷仁【1982】
そよ風ポップ
人生何があるか分からないもの。
音楽ファンの間で話題炸裂中のディグ・イン・ザ・ディガー6/1更新分の選盤を担当させていただいた。
思い出に間にあいたくて(1/2) pic.twitter.com/Yk4NvtuWc3
— ディグインザディガー【公式】 (@diginthedigger) June 1, 2021
結構メッセージ性の強い回のアルバムを選ばせてもらえて嬉しい。ありがとうございます...
まだ見ていない方は是非一度。
もう見てる人も、もう一回、もう一回だけ!(ハンバーガーちゃんリスペクト)
そして、この中で出てくるおじさんがアンニュイな顔しているアルバム、これが今回僕が選んだ桐ケ谷仁のWindyになります。
80年代は土曜日までが平日だったので、シティポップには「土曜夜めっちゃ最高ウェーイ」みたいな歌が点在しているのはシティポップ好きならよく知っていると思う。
みんな知っている有名どころの人ではEPO「土曜の夜はパラダイス」山下達郎「土曜日の恋人」なんかかな。
あんまり有名なところじゃないなら佐野元春と縁が深い佐藤奈々子の「土曜の夜から日曜の朝へ」なんかも入ってくる。
こうやってみると妙に良い曲が多いね。
そして今作、桐ヶ谷仁のWindy収録の「土曜日のダウン・タウン」もその一つ。*1
桐ヶ谷仁はアルファレーベルの男性歌手第一号。
第一号は華々しくデビューさせたい!という思惑があったのかどうかは知らないが前作1stはアルファ総出で作っており、
YMOと愉快な仲間たちは揃い踏み、その他深町純から佐藤博まで、参加メンバーの構成を聞いたらその手のファンが衝撃のあまり卒倒するような面子。
フォーク出身ということもあって他のシティポップに比するとフォーキーな作風。
柔らかな声質も相まって曽我部恵一を思い出す方も多いらしい。顔もちょっと似てるしね。
今作では同時代のAORを参考により都会派の音楽を目指し、それ故現在でもシティポップの名盤として知られる。
参加面子は前作ほどではないもののやはり鉄壁の布陣であり、PARACHUTEのメンバーに加え難波弘之、コーラスにはEPOなど。
とりあえずどんなアルバムでも一曲目を聴けば大体わかるので聴きましょう。
メロウな導入部からシティポップへ移行するのが素敵。
山下達郎なんかを聴いていると春先でも暑くなってくるが、このアルバムに関しては逆に微風のような涼しさが感じられるのが特徴的。
例にもれず海辺のドライブなんかで映える感じの曲である。
フォーク出身であるので、同時代のフォークを感じさせる曲もしっかり入っている。
編曲と相まってビリーバンバンのような雰囲気。
ニューミュージックを志向した、所謂はっぴいえんど周辺の人たちは当時はやりのフォークのような曲を避けたことは有名だが
今になって聴くと、独特の味があってこれはこれで良い気がしてくる。
そしてこの歌にフュージョン~プログレの馬鹿テク音楽家がバックを付けているのだから面白い。
この時代じゃなきゃ絶対に出てこない音楽。
そして件の土曜日のダウンタウンはこんな感じ。
土曜日からの解放ソングの例にもれず、やはり良い曲。
さっきの曲とはうって変わってフォークを微塵も感じさせない。
この三曲、三者三様に違った作風であり本当に同じ人??と思ってしまうが、同じ人の同じアルバムの曲なのです。エーホントー
フォークから王道シティポップまで作風が非常に幅広いのが桐ケ谷仁の魅力。
ただ、どんな作風であれ涼しく気怠げな雰囲気を常に漂わせているのが桐ケ谷仁の大きな特徴。桐ヶ谷さんはボサノヴァがお好きらしいので、そこに影響されたのかも。
ディスコティックじゃないとあまり海外で受けないシティポップにしては珍しく韓国などでも結構人気な様子。
さて、なぜ僕がディグディガでこのアルバムを選んだのか気になる方も多いと思う。
レコ屋で漁っている原作の栄免建設氏から「この中でどれが良いですか」と見せられたレコードの中に入っていたから
...だけではなく、桐ケ谷仁は金澤寿和氏のレコメンドアーティストであるからである。
金澤寿和氏はAOR・シティポップ系音楽ライターなのだがディガーとしての性質も強い人物であり、近年のシティポップブームの陰の立役者の一人、なんて紹介もされる人。
以前にもこのブログでした話題だが、彼の生み出した合言葉Light Mellowがディガー集団lightmellowbuの名称に使われているところから見て取れるように、現在の日本のディガーに彼の価値観なりセンスなりが多分に受け継がれていることは言うまでもない。
つまるところディグを主題にした漫画に使うということだったので、金澤氏を示唆するようなアルバムを「ディガー」の漫画に登場させてあげたかったのである。
その意味で言うと最高なのは東北新幹線なのだが、あれは存在自体がフィクションなのでしょうがない。
あまりにレアなのでラマダンしないと普通の会社勤めの人には買えないブツである。
とはいえど、栄免氏の行ったレコ屋に桐ケ谷仁が置いてあっただけでも奇跡的、そしていくつか選んだなかでこれを描いていただけたことに感謝である。
僕は桐ケ谷仁のレコード見たことないです。欲しい人頑張ってね。
*1:水曜日ではない。念のため
今月のディグ(2021/5)
月一回、僕がレコ屋・CD屋・中古屋などで適当に見繕ったものの中で数作、サクッと紹介するコーナーです。
Move Like A Dancer/Barry Coates & The Hats(見つけた場所:ヤフオク)
Numero Groupが最近出していたコンピNumero'95に選ばれていた人のアルバム。
これに入っていた人を一応全員調べたのだが、偶然この人のアルバムがヤフオクで安く出品されていたので落札した。
内容はというとアンビエントとフュージョンの間といった感じ。Stieve Hiettのフュージョン版というのが近いかな。
面白いことにギターシンセを使っているようで、それ故ギターのようなシンセの節回しが多くて新鮮である。Stieve Hiettともそういう部分で似ているかもしれない。
Artful Balance Recordsというレーベルのカタログらしく、どうやらここは他にもこういったフュージョン系ニューエイジをたくさん出している模様。買うっきゃないね。
Artful Balance collection:Randy Waldman/Randy Waldman(見つけた場所:Amazon)
それでArtful Balance関連でもう一作。適当にAmazonで見繕った一枚。これはどうやら四枚組のBoxで売り出されていたものが、中古市場でばら売りされているものらしい。
そのBoxの主旨は映画音楽家のソロ作品を再発しようという今でも通用するようなもので、僕が買ったこの方はかのBack to the futureなんかでシンセを担当されているらしい。
ピアノとシンセサイザーを併用しているのが特徴的で、ほわほわした空間系シンセとアコースティックなピアノが絡み合うのは絶品。久石譲はじめ、映画音楽家が自分の好きなことをやっているアルバムは親しみやすい上に音楽的にも高度で良良良だね。
80'sのフュージョンが好きな人にもおススメ。
Two Views of Amami Ohshima/Hideki Umezawa & Andrew Pekler(見つけた場所:Store15Nov)
奄美大島でのフィールド録音をもとに二人の音楽家が構築した録音。
こう聞いていたのでてっきりフィールドレコーディングものだと思い込んでいたのだが、全くそのようなことはなくしっかりしたアンビエント音楽だった。
フィールドレコーディングらしきカエルや鳥の声などを用いた、空間を感じさせるようなアンビエントが奏でられ良良良。
A面は実際フィールドレコーディングした人と同じ人による作品で日本人の奄美大島観に近い音楽性だが、
B面を担当したAndrew Pekler氏は奄美大島に行ったことがないからか、日本というより東南アジアの島っぽい雰囲気になっている。
同じ素材を使っても作曲者のイメージはかなり反映されるものなんだね~。
玉響/tamayura(見つけた場所:Amazon)
アンビエント・ジャズなるワードに惹かれて買った新譜の一枚。メンバーの太宰百合氏は砂原良徳の作品にも参加しているらしい。
日向敏文の馬鹿テク版みたいな演奏が繰り広げられる、今のアンビエントリヴァイバルの風潮だからこそ出てきたアルバム。
カバーとオリジナルで構成されているのだが、カバー曲は現在のアンビエントの語法によって魔改造され元曲知っていても言われなければオリジナル曲と思ってしまうほどの領域に達している。もちろん、オリジナルのレベルも非常に高い。
とんでもない作品で、みんな大騒ぎしているだろう...と思って検索したら誰も言及していない。
実はこの作品はCDのみでのリリースで、サブスクにもなければYoutubeのティザー動画もない。どうやら今の音楽ファンはネットに頼るあまり、CDのみでリリースされた新人の新譜を全く聞いていないのではないかという疑惑が出てきた。
10年後に今を振り返った時再評価される音楽は、このような「ネットに弱い音楽」なのかもしれない。
・Channel 505やっとこ届いた。もうあきらめていたので良かった。
・友人とレコ屋をやるかもしれない。もしそうなったら企画記事にするかも。
・今月もうさぎが可愛いかった。来月も可愛くあれ。
音楽初心者はコレを聴こう!邦楽20選
はじめまして、邦楽
このブログは音楽通の皆様から参照されることが多い。
が、弊ブログの本来の主旨は
「初心者がより深いところへ行けるようにするブログ」
であるので、元々の地点からズレてきてしまっている記事もちらほら。
というわけでこの記事を作りました。邦楽の最初の一歩支援記事です。
この記事の最大の特徴はロックに終始しない入門、文脈も合わせた入門であります。
だいたいの音楽初心者入門記事、邦楽ははっぴいえんどとブルーハーツ聞いとけ、ロケンロー!で終わっちゃうんですが
この記事はなるべくそれは避け、極力幅広いジャンルを取り上げています。
またこのアルバム気に入ったらこっちもどうぞ!という形で関連アーティスト等も紹介しています。
一応時代順に並べてあるので、歴史もちょっとは分かるはず。
正直20枚に絞るのかなりキツかったですが、ごゆるりとお楽しみください。
・音楽はヒット曲しか知らない人
・最近の邦ロックは少しは知っているが、昔のは知らない人
・皆が聴いていないような曲に手を出してみたい人
・研究所で作ったホムンクルスに「音楽」の概念を教えている人
アルバムNo.1/スパイダース
邦楽でのロックの祖とされる作品。
所謂グループサウンズにおいて一番重要な人たちであり、
ここからロックベースでの邦楽ポップス史が始まったと言えるね。
このアルバムの曲ではないが、バン・バン・バンは今でも非常に有名。
海外でもジャパニーズ・ガレージロックと称され人気の模様。GS風味の洋楽バンドなんてのも存在する。
ちなみに、はっぴいえんど史観のやつらはこれに注目していない!という人がいるが、はっぴいえんど史観の人にそんな人はいない。
これにハマった!という人は加山雄三やモップスなどをおススメしておく。
やや古くなっている感は否めないが、どれも今聴いても楽しめる音楽である。
風街ろまん/はっぴいえんど
で、さっきちらっと話に出たはっぴいえんど。 誰が呼んだか日本のビートルズ。
メンツは細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂、松本隆。今見るととんでもない集団。
商業的に大成功!とまではいかなかったが、同時代的にも音楽通ではよく知られた存在だったらしい。
それは当時の雑誌ははっぴいえんど界隈ばっかり取り上げたため内田裕也が拗ねるほど。そこから日本語ロック論争へとつながっていく。
そんなはっぴいえんど、とりあえずこれ聴いときゃ間違いはない。
今から音楽を志す日本人なら誰でも、海外の人でも手に取るかもしれない名盤である。
個人的には邦楽史を語る上で、はっぴいえんどより彼らの所属したレーベルURCに注目した方が良い気もしているので、良ければそちらも是非。おススメは五つの赤い風船。
また内田裕也ワークスもここで拾っておこう。
内田裕也何やってた人か分からないという声も多いが、彼がはっぴいえんどと同時期にプロデュースしたフラワー・トラベリン・バンドはカナダでチャートインするなど非常に偉大である。
はっぴいえんどと聴き比べると双方のロック観の差が見て取れ、とても面白いのでおススメ。
ライブ/村八分
さて、はっぴいえんど等ニューロックが台頭してもGS組だって負けてはいない。
カルトGSの代表格・ダイナマイツの山口富士夫による伝説的なバンド。
70年代初頭とは思えないほどの殺気と熱量であり、ロックが好きな人ならみんな大好きなはず。
この時点でもうほとんどパンクロックに片足を突っ込んでおり実際後々パンクブームが勃興したとき、ある音楽家は「村八分じゃん」と言ったとか。
村八分に限らず裸のラリーズ、後の世代だが非常階段など関西のバンドは時代を先どってしまったような人が多い。
村八分を気に入った方はここら辺を聴いてみると面白いかも。
POO-SUN/菊地雅章
日本のジャズはかなり良作が多いうえにKing Gnu筆頭に昨今の著名な音楽家を深く知るためにはジャズの文脈が不可欠なのだが、いかんせん内容が難しいものが多いので初心者に勧めづらい節がある。
この手の記事でロック・ポップスのみの紹介にとどまってしまうのはジャズ自体の難易度の高さに原因があるのかもしれない。
で、こちらのアルバムは和製エレクトリックジャズの初期盤でエレピ中心の音作り。ロックの空気に近くかなり軽快&爽快で聞きやすい。
この菊地雅章は日本ならではの音楽を追求した第一人者でもあるのでこのアルバムで興味持ったら他のアルバムも聴いてみよう。
そして菊地さん周りのメンツも日本のジャズ一線級の人であり、そこを調べても楽しい。
聴きやすいうえに内容も高度、縦にも横に広げられ、和ジャズ入門にうってつけ!
これにハマった方は日本のフュージョン*1やアコースティックジャズ*2にも手を出してみよう。広遠な世界が広がっている。
人間なんて/吉田拓郎
日本音楽史においてフォークも外せない。
特に重要なのは吉田拓郎。井上陽水と並ぶ、フォーク界のヒットメイカー。
アンダーカルチャーから邦楽をアップデートしたはっぴいえんど/内田裕也周辺とは対照的にメジャーシーンから変革していった人物である。
特にこの盤がおススメ。特に「結婚しようよ」は一番最初のニューミュージック*3と言われる。
実はURC界隈の人物もかなり参加している。優秀な人物は自然と集まるのだなあ。
吉田拓郎にハマった方は、もちろん井上陽水も聴いてみよう。井上陽水は80年代後半「第二次ブーム」が井上陽水黄金期なので気になる方はハンサムボーイから聴くのが良いと思う。
一触即発/四人囃子
【Amazon.co.jp限定】一触即発~デラックス・エディション~ [3CD] (Amazon.co.jp限定特典 : デカジャケ 付)
- アーティスト:四人囃子
- 発売日: 2019/10/23
- メディア: CD
日本ならではの芸術ロックの始まりはここからである。
芸術性の高い長めのロック、所謂「プログレッシブ・ロック」は洋楽が主流で日本人にできないと言われていたのだが、
彼らは海外勢の曲を完コピした上に、このアルバムで日本のプログレを確立してしまった。
このバンドの影響力はすさまじく、みんな大好き平沢進からフュージョン、果てはV系にまで影響したと言ってしまっても良いね。
四人囃子が良い!と思ったアナタは日本のプログレである新月やNovellaも聴いてみよう。そしてさらにプログレを聴いた後BUCK-TICKやL'Arc〜en〜CielなどのV系を聴いてみると違った発見があるはず!
Solid State Survivor/YMO
なるべく他のアルバムとの主要メンバー被りは避けたかったが、初心者に紹介する時これは外せない。
日本の音楽を定義づけてしまった名盤。日本の音楽全てに(これに反発するという形も含めて)影響していると言っても良い。*4
それまでシンセサイザーを使った音楽は高尚で難しいというイメージだったのだが、ダンサブルでアッパーなこのアルバムはそれを粉々に砕いてしまった。
その一方でちょっとした暗さも隠れており、電子音楽の多面性を紹介してくれている。
今回の20枚の中で一番最初に聴くべきアルバムであるかもしれないね。
YMOを一通り聞いたら、ポストYMOと言われたテクノ御三家*5、その後東京ロッカーズ、関西ノーウェーブも聴いてみよう。
また彼らより先に日本人でシンセを大々的に用い、海外でヒットした冨田勲も是非どうぞ。関連する日本のサントラ系音楽家たち、吉村弘、喜多朗、さらに初期久石譲や高橋悠治などの現代音楽家も聴いちゃえばパーペキ。
For You/山下達郎
今の時代だったらヤマタツはこの盤をオススメするのが定石かな。
世界中で知られるJapanese City Popの本命名盤。
大瀧詠一周辺、通称ナイアガラ界隈*6で最大の人物は山下達郎であり、彼が日本のポップスを一段階上に引き上げたことに異論はない。
そのキャリア中でもとびきり爽やかな曲がメジロ推しな今作は国内外で最も評価される一枚。これは絶対に聴いておこう。
ヤマタツが好きなら竹内まりやや師匠・大滝詠一は勿論、影響を受けた村田和人や角松敏生もおススメ。
また夏の象徴として山下達郎と並び称された、サザンオールスターズも是非聴いておこう。アルバム数が多くて戸惑うかもしれないけど、個人的おススメ入門盤はステレオ太陽族。
Timers/Timers
忌野清志郎の覆面バンド。あらゆるゲリラ的手法を用いて活動を行ったことで有名。
日本の音楽家で、全方位の権力に全力で立ち向かった人たちはこの人たちくらいである。
また意外と取り上げられないのだが、分かる人には分かるような当時のアングラシーンを意識したような音楽を表舞台で行ったのも結構大事。
楽曲自体も様々なジャンルのコラージュのようで意欲的なものばかり。
またなによりパフォーマンスが優れているのでYouTubeで当時の映像を見てみるのも面白い。
こんなことやっていいのか!!と爆笑と衝撃を受けるはず。
これに興味を持った方は、まずはRCサクセションを聴くべし。YMOと人気を二分したバンドであり、グラムロック・パンクロックが日本の頂点に立った稀有な例。
また、80年代の日本のパンクも漁ってみよう。アナーキーやスターリン、じゃがたらなど、今でも伝説と称されるバンドがわんさかいる。
さんだる/たま
バンドブーム期から誰を選ぼう...と思ったけど、ブルーハーツは音楽初心者でもそこそこ知ってそうだったのでこっち。ブルーハーツに並ぶ80年代バンドブーム最大の功績であり、インディーズからのヒットアーティスト先駆けになった。
音楽に詳しくないとコミックバンドに見えてしまうが高い技術力の必要なことをいとも簡単にやっており、そこから紡ぎ出される異質な世界感は多くの人たちを虜にした。
このアルバムは最大のヒット作「さよなら人類」も入っており、初心者におすすめ。
たまに興味をもった方は彼らのいたナゴムレコードをまず聴こう。
筋肉少女帯や後の電気グルーヴである人生など、たまのように一見珍妙だが高い技術力を持ったバンドが勢ぞろいしている。
またバンドブーム期の音楽を聴くのも◎。ブルーハーツを筆頭にBegin、ジッタリンジン、The Boom、ユニコーン 、X、BLANKEY JET CITY、果ては小室哲哉まで、各界の名アーティストめじろ押し。
Camera Talk/Flipper's Guitar
そんなバンドブームの対抗馬として出てきたのがフリッパーズギター。世界中の音楽を縦横無尽にパロディし、洒落たセンスで聴かせるスタイルは後々渋谷系と呼ばれ世界中に影響することになる。 またメンバーである小沢健二と小山田圭吾の各々のソロワークスも素晴らしく、どこを切り取っても申し分ないバンド。あまりに衝撃的だったため、フリッパーズ以前と以後で邦楽史を分けることもあるそうだ。
活動期間が短いためアルバムは三作しかないが、入門にはこれがおススメ。気に入ったら全部聴こう。
そしてフリッパーズを一通り聴いたら、各々のソロを聴くのが定石。
小沢健二はLife、小山田圭吾のソロCorneliusはFantasmaからどうぞ。彼らとコラボしたオリジナル・ラブ、Pizzicato Fiveを聴けばなお良し。さらにトラットリアレーベルなんか聴いちゃえば最早渋谷系は大体聴いたと言ってOK!目指せ渋谷系マスター。
もっとも渋谷系マスター後もCymbalsやPerfumeなどのネオ渋谷系、神前暁や前山田健一などのアキシブ系と派生ジャンルも尽きることはない。
あとここで拾ってしまうがデス渋谷系はノイズ音楽の入り口として最適。少なくとも海外音楽史でも超重要バンドのboredomsは絶対に聴こう。そこからやMerzobow、Boris、Coaltar of the Deepersのようなノイズ~ノイズロック系に行くのもよし。実はジャパノイズという言葉があるほど日本はノイズ音楽の名産地なのだ。
ちなみに渋谷系という言葉はあらゆる音楽家にラベリングされ、スピッツやミスチルまで渋谷系と言われていた時期があったらしい。へえ~
5th WHEEL 2 the COACH/スチャダラパー
日本語ラップである。
ラップはなんだかなあ...という人もまだ多い感じがするが、そういう人でもまずこれは聴こう。
スチャダラパーは渋谷系を代表するグループでありつつ、日本語ラップを大衆に広めた人たち。
このアルバムまでは特有のギャグ感・ポップ性が前面に出ていたのだが、今作では本格的なヒップホップを志向。とはいえど、初心者でも乗れるような非常に高度な曲がめじろ押しである。
特に「サマージャム'95」はあまりラップに詳しくない人でもフェイバリットソングにあげるほど定番と化した曲。一回は聴いてみよう。
これが気に入った方は日本語ラップ諸作をガンガン聴くべし。
キミドリ、いとうせいこう、ECM、キングギドラ、かせきさいだあ、SHING 02、PSGなど文学性の高いものが多く、海外のラップに比べマッチョイズムを感じないものが多め。マッチョイズム嫌いな僕が言うのだから間違いない。
個人的にはSmall Circle Of Friends、降神(とMCの志人ソロ)もおススメ!
空中キャンプ/Fishmans
そんなわけでサブカルでは渋谷系が流行りまくっていたのだが、だんだん行き詰りはじめる。そして渋谷系の終焉を象徴する存在の一つがFishmans。出たときから渋谷系にもバンドブームにも属さない、不可思議な存在であった。
そしてこの空中キャンプから一気に豹変。儚く透明感あふれる、唯一無二の音楽性はFishmansが辿り着いた境地であるね。これ以降の作品は海外でもかなり評価が高く、次のアルバムLong SeasonはRYMというサイトでへたなビートルズの作品より高位につけられている。まじかよ。
このバンドを気に入ったアナタは、渋谷系の終焉という意味でサニーデイ・サービス「東京」も聴いてみよう。空中キャンプと同じ年に出てきた70'sフォークリバイバルなアルバムであり、邦楽を軽視する「洋楽至上主義」が蔓延っていた音楽界を木っ端みじんにした。ちなみにこの人たちの流れは現在の「下北系」に接続する。
ギヤ・ブルーズ/Thee Michelle Gun Elephant
大分後になって「なんでみんな教えてくれなかったんだよ!!」ってなったバンド。故に紹介しないといけない。
渋谷系はネオGSというムーブメントから分岐しているとされているのだが、
ネオGSはモッズという60年代イギリス志向のスタイルのバンドも多く輩出した。
で、ネオGSそのものではないものの、その流れを汲む90年代の日本のモッズ中でも代表的な存在が彼ら。渋谷系と対になるような存在として認識すると良し。
60年代のブリティッシュビートを基調としており、かなりカッコいい。
いそうで意外といない音楽性で売れるか心配になるが、なんと大ヒット。特にこのアルバムが名盤。是非聴こう。すぐ聴こう。
これにハマった人はネオGS由来のモッズを聴いてみよう。コレクターズなんかがおススメ。
School Girl Distortional Addict/Number Girl
さて、渋谷系はめでたくFishmansとサニーデイ・サービスによって終焉したのだが、渋谷系にとってかわるように出てきたのが97年組と呼ばれるバンドたちである。その中でも特に大事とされるのがナンバーガール。今のロキノン系邦ロックやボカロ系など、多くの音楽に直接接続できる存在。
このアルバムについては正直音質が酷いのだが、それでも黙らせてしまうような迫力と疾走感あふれるギターロックは唯一無二。またZAZEN BOYSやKimonosなど、ナンバガ以降の関連作は前衛的になるのも面白い。テクノが好きな人はそっちの方が好きかもしれない。
ナンバーガールを聴いたら他の97年組、くるりとスーパーカーも聴いてみよう。どちらも偉大なバンドである。各バンドについてメンバーがやっている他のプロジェクトなりバンドなりを聞くのも一興。是非お試しあれ。
また、ナンバーガールにハマったアナタは椎名林檎・東京事変をちゃんと聴くと新たな発見があるはず。
また関連人物の多いbloodthirsty butchers、eastern youthとかのエモ方面を攻めるのも音楽オタクっぽくて良。
3/キリンジ
サニーデイ・サービスの「東京」というアルバムははっぴいえんどに再注目させることになったというのは先ほどチラッと言ったが、
それをさらにシティポップのレベルまで押し上げたのがキリンジである。
特に名盤とされるのはこれ。有名なエイリアンズもこのアルバムが初出。
ちなみに今でこそエイリアンズは日本の名曲扱いだが、当時の売上は全く振るわなかったらしい。ゆえにキリンジの現在の評価については歴史修正だと言われることがある。
キリンジが好きな方はLampやGuiro、benzo、Platinum900を聴いてみよう。今のブームの前、シティポップ的な曲が見向きもされなかった時代に今の土壌を作った偉大なる先人たちである。サブスクにない人も多いので注意!
この系統で(売上的には一発屋ながら)珍しく売れたキンモクセイなんかもおススメ。
3/ゆらゆら帝国
ゆら帝ことゆらゆら帝国。60年代~70年代サイケロックを志向する、意外に日本にいなかった感じのバンドである。
実は渋谷系期からいるバンド*7なのだが、表舞台に立ち始めたのは90年代終わりくらい。
前衛的な曲が多く、時代と合うまで時間がかかったタイプのバンドなのかもしれない。でもこのアルバムはポップで明るい曲が多く彼らの個性もビシビシに感じられるので、初心者にもおススメ!是非ここからゆらゆら帝国に入国しよう。この後ゆらゆら帝国のめまい/しびれや3×3×3に探検するのも◎。
そして彼らの一番の名盤といわれるのは「空洞です」。ゆらゆら帝国を一通り聴いた後に聴いてみよう。
空洞ですまで聴いた方は、ゆらゆら帝国を担当した名プロデューサー・石原洋のプロデュース作を聴くべし。代表的なところだとOGRE YOU ASSHOLE。昨今世界的流行の浮遊感のあるサイケロックへの良い入口になること請け合い。
ハイファイ新書/相対性理論
正直00年代は個人的に邦楽暗黒期だと思っており、
売れ線音楽は素人の芸人、ロックも音作りや編成に個性のないバンドばかり、
数少ない独自性の高い音楽の多くは古株、ないしはサニーデイやFishmansなどの流れをそのまま汲むポスト渋谷系*8で
結局90年代から変わっていない上にそこまで売れてなかったりと00年代独自の音楽という点ではあまり褒めるところがない。*9
それを打破したと個人的に思っているのが相対性理論。特にこの1stアルバムが最高に良い。
日本ではあまりないエモ系ポストロックのようなアルペジオに加えてギターリフは抑え目。その音作りは所謂「邦ロック」とは一線を画し、そして歌詞面もガロ系漫画を彷彿とさせる不可思議で中毒性の高いもの。
この雰囲気はボカロなどのネット音楽に影響したと見え、彼らが多くの人に知られるようになる2007~2008年付近から遅れながらも邦楽が復活していく萌芽が生まれることになる。
相対性理論が気に入った方は、まずさよならポニーテールとパスピエをおススメする。音楽性や顔出しの拒否などを受け継いだ、相対性理論の直接のフォロワー。
また邦楽復活の立役者としてフジファブリックやサカナクションも必聴。実は両者同時代のロックバンドと比すると売上は苦戦したのだが、現在ではレジェンド級の知名度であることから分かるようにその音楽性の高さには目を見張るものがある。
あと、あまり指摘する人はいないがここからポストロックに行くのも良いかもしれない。 People In the Boxやtoeも意外と気に入るはず。
cero/My Lost City
キリンジ周辺の00年代シティポップと今のシティポップブームをつなぐ者といえばcero。
彼らのいるカクバリズムは星野源を輩出した名レーベル。その中でも最も先鋭的で注目を集めているのがceroなのである。
初心者の方は2ndであるこのアルバムから入るのがおススメ。
震災後に作られたアルバムであり、「My Lost City」という題から分かるように明るい中に深刻な暗さが流れている。この後の邦楽を予見したような音楽である。
また、このアルバム後に発表した名曲Orphansは邦楽を変えたと言われるほど。必聴。
彼らのフォロワーとして代表的なのが皆さんご存知Suchmosである。Suchmosのヒットによって邦楽が何歩も前進したのはご承知の通り。
またカクバリズムからリリースした音楽家、スカート、VIDEOTAPE MUSIC、在日ファンク、そして星野源なども非常に重要。ちゃんと聴いてみてね。
ついでにカクバリズム近辺ということで折坂悠太、カネコアヤノ、中村佳穂、柴田聡子などのフォーク系シンガーソングライター諸氏も是非とも聴こう。
lost decade/tofubeats
今日のトラックメイカー、シティポップを代表する存在tofubeatsの1stアルバム。
今日の日本のポップスに通じて流れているシティポップとヒップホップの間を揺らめくような雰囲気は本作収録「水星」によるところも大きいと思う。
当時のtofubeatsはブックオフをめぐってはそこで買った安CDをサンプリングして曲を作る、ということをしており水星もそこから生まれた曲。
ブックオフなどに忘れ去られた良い曲を思い出させる試みは音楽家のみならず、ライター、リスナーにまで多分に影響しているはず。
tofubeats聴いた方は所謂トラックメイカーと呼ばれる人たち、STUTS、group_inou、長谷川白紙やパソコン音楽クラブを聴いてみよう。古い音楽に影響されつつも、全く新しい概念を生み出してしまっている彼らには腰を抜かすに違いない。
また彼らに影響した前時代のトラックメイカーたち、Nujabes、レイハラカミ、FPM、テイトウワ、竹村延和なども聴いてみよう。
今でも全く古びていないのに驚くはず。
さて、というわけで2010年代前半までの音楽から、音楽初心者へのおススメ20枚でした。
あれがないこれがないあるだろうけど、僕も入れられなくて悔しいアルバムが結構あったので我慢してください。僕が大好きな大滝詠一入ってないし...
もっと知りたい方は以前Twitterで音楽好きがやっていた邦楽名盤100企画を見てみてください。
今回涙を呑んで取り上げられなかったアーティスト*10の名盤もたくさんありますので是非。
また幅広く知りたい方はこのブログだけではなく、色々なブログを見て掘り進めていくことが大事です。
僕のあまり知らないメタルや青春パンク、ヒップホップ等の情報はそちらで仕入れることをお勧めいたします。
素敵な音楽との出会いがありますように。
*1:Casiopea"Mint Jams"がまずはおすすめ
*2:これはちょっと難しいのが多いのだが、ひとまず福居良。山本邦山参加作品も分かりやすいかもしれない。
*3:≒J-POP
*4:小室哲哉や某有名ボカロPなど、あまり音楽ファンに顧みられないアーティストも坂本龍一に衝撃を受けて音楽を志した例が多い。
*8:ここで紹介したものだと、キリンジもゆら帝も90年代以前からいる。有名どころでも椎名林檎は90年代からいるしPerfumeはポスト渋谷系である。
*9:80年代も70年代からの地続きとよく言われるが、80年代シティポップにはヒットが多いのに比してこっちでちゃんと売れたと言っていいのは椎名林檎とPerfumeくらいである。
Oasis/Il Guardiano Del Faro【1978】
イタリアからの熱帯夜
※先日選んだ非英語圏ベスト30に入れておきながら、このブログで全く触れてこなかったため、今回はこれです
みんな好きなアルバムにPlantasiaというのがある。
電子音楽・アンビエント好きの間ではそれなりに知られているアルバムであるのだが、一応説明すると、あるマットレスメーカーの販促用に企画されたアンビエントアルバム。
「植物とそれらを愛する人々のための暖かな地球の音楽」なるうさん臭さがにじみ出るテーマながらも内容は抜群によいため、最近になって音楽通の目に留まり再評価されたのである。
そしてPlantasiaが大好きな音楽ファン、通称植物とそれらを愛する人々は他のレコードやCDにまでその蔦をグネグネと伸ばし、様々な広く知られていなかったナイスなアンビエント音楽を発掘し、それらを愛しているとか。
そんな植物とそれらを愛する人々におすすめなのが今作Oasis。某兄弟の方ではない。
作った人はIl Guardiano Del Faro(=灯台番)ことFederico Monti Arduini先生。
白黒写真なのに目が異様にキラキラしているこの方である。
彼は所謂神童であったようで、ラジオから聞こえてきた曲を即座にピアノで演奏できるほど。
生来の音楽大好き人間で、親の持っていた灯台のある家でよく友人たちと歌っていたらしい。
高校生くらいになると内緒で曲を作ったりもしていたらしいのだが、ある日友人がイタズラで彼の音楽を勝手に録音・あるプロデューサーに持っていたところ気に入られ一気に音楽の道へ。友人、コネが凄い。
晴れて名門リコルディ*1でプロデューサーになった彼だが、ある日運命的な出会いをする。
プロデュースする音楽家に弾かせる予定だったそれを自分で弾いてみたところ、ドはまりしてしまい試奏のはずが録音までしてしまう。
身バレしないよう「灯台番」というヘンテコ名義でリコルディに持ち込んでみたところなんとリリース、そしてチャート一位を取ってしまった。
これがその1stアルバム。
灯台番なる謎の人物がチャートで一位を取ったとイタリア中で話題となり、彼は一躍時の人になったのである。日本での冨田勲的な立ち位置かもね。
彼が最も力を入れて取り組んだのがOasis。例の灯台に引きこもって作り上げた、自他ともに認める傑作である。
ジャケット絵の星空が広がるような出だし。
音作りにはPlantasiaに近いものがあるのだが、あちらに比べ緩やかな曲想なのが今作の特徴。Plantasiaが昼の作品とすれば、こちらは夜の作品ともいえるかもしれない。植物も寝静まるような夜の音楽である。
次の曲では打ち込みドラムが入りテクノテクノしてくるのだが、やはりどこか穏やかである。
メロディもしっかり弾きつつも決してハイにはならず、異国情緒あふれる緩やかな夜の雰囲気がアルバム内で保たれる。
ちょっとでも「作曲」しすぎてしまうと途端に崩れてしまうアンビエントにおいて、このメロディ感は他の人ではなかなか味わえない。
流石神童と呼ばれた人物である。
イタリアはディスコ音楽が盛んであるからか、ディスコを冠した曲も入っている。
確かにディスコっぽいのに決してアッパーではない。なんだこれ。
この曲がこのアルバムの奇跡的なバランス感を物語っているね。
イタリア国内でこそ有名であった彼だがシティポップよろしく海外でも知られ始めたのはつい最近のようで、特にOasisについてはこの2,3年で様々なところから何度も再発がかかっている模様。
日本向けにもつい最近出ており、なんと帯付きである。僕は買っちゃった。
DLコードがついていなくてちょっと凹んでしまったが、ともあれ内容は非常に良いのでレコードプレーヤー持っている人は是非買ってみよう。
ただしこの方、プロデューサーとしては「レーベル内の全プログレプロジェクト差し止め」のトロフィー持ちなので、イタリアンプログレファンの敵でもある。
イタプロファンは蜂起せよ。
↑Il Guardiano Del Faroによって発売を止められたと主張するプログレバンドの音源。かなり良いので発売できなかったのが勿体ない。
*1:ちなみに、彼のヒット後現代音楽分野は凋落します
今月のディグ(2021/4)
月一回、僕がレコ屋・CD屋・中古屋などで適当に見繕ったものの中で数作、サクッと紹介するコーナーです。
Travelogue/コーコーヤ(見つけた場所:大洋レコード)
まずはこちら。
ショーロというブラジル音楽があるのだが、それに基づいて独自の音楽をやっている日本人インストグループ。
ブラジル音楽はラウンジ的な解釈をされることが多いが、ショーロはそんなブラジル音楽中でも最初っからラウンジ音楽として作られた筋金入りのラウンジ。
お洒落なお店の店内音楽やWiiの待機画面BGMみたいな曲が沢山詰まっている。
また日本の人と言うこともあって、ブラジル感だけではなくしっかりJ-POP感も感じられる。
この優しい雰囲気は僕のHNの間接的な由来であるEPO氏もお気に入りのようだ。
コーコーヤ、見かけたらぜひ買ってみよう。
Cruise Control/Leon Lowman(見つけた場所:Amazon)
ディガー・門脇氏のニューエイジ・リヴァイヴァル入門のプレイリストにこの人の曲が入っており、
是非CDほしい!となったところこのアルバムのみAmazonで新品が格安であったので買ってみた。
ちなみにそのプレイリストにも入っている名盤・Liquid Daimondは下のような感じである。
上の動画で分かるようにLiquid Diamondは80年代感が溢れでているのだが、
今作は時代柄90年代の打ち込み音楽の香りがバチクソにする音楽になっている。
例えるなら4割増しでかっこよくしたスーパーのBGM。
流石にLiquid Daimondほどの勢いはなく、アルバム内の曲でも当たり外れが激しいがVapowaveを予感させる音づくりも随所にみられる。
少数存在すると言われる手振れジャケコレクターも必見。
Vaperror/Saccharine Synergy(見つけた場所:高田馬場DU)
そしてド直球にVaporwave。
高田馬場のユニオンにはVaporwaveミニコーナーがあるのだが、カセットばかりだったそこに置いてあった唯一のCDだったので買ってみた。
Saccharine Synergyはかのtelepathテレパシー能力者の変名であるようなのだが、
そちらが直球にVaporwaveなのに比べると、こちらはBlank Banshee的なVaportrapに近い作風。愉快でトロピカルなインスト・テクノポップが楽しめる。
さっきのコーコーヤがWiiのBGMならこちらは音色や底抜けの明るさが64のBGMっぽい。
パソコン音楽クラブのPARK CITYがお好きな方は是非。
去年出たLP在庫は流石にもう切れてしまったようだが、CDは最近発売されたばかりらしくまだ在庫がある模様。お早めにどうぞ。
Midnight Dive/深町純(見つけた場所:ココナッツディスク池袋)
深町純の名前だけをみてなんとなく買ってみたらニューエイジだった。
深町純は個人的にはアレンジャーやフュージョン音楽家のイメージだったので良い意味で期待を裏切られた。
やはり深町純、音作りもさることながらミニマルな演奏も正確で非常に心地よい。
...なんて思っていたら例の環境音楽のコンピに深町純がいた。そうなんですね...
Vol. 1-Spirit on Two Strings/Jie-Bing Chen(見つけた場所:Amazon)
適当にAmazonを徘徊していたところ、妙に安かった新品があったので何も知らずに買ったCD。
残念ながら今は順当な値段設定のものしかないらしい。
調べてみるとアメリカ在住の中国人二胡奏者の方らしく、このCDにも二胡の好演奏が沢山詰まっている。*1
曲目も二胡や中国音楽のスタンダードらしく、その入門にも良いかもしれない。
ちなみにVol.1があれば2もあるわけで。いずれ手に入れたいものである。
仮病な僕ら/汐千博(ストリーミングのみ)
この4月に発表されたインディ・フォーク。
70年代の関西フォーク・URCの雰囲気を携えた美メロ曲が2つ、カバー曲1つが入っている。そしてそれに隠された暗い歌詞。
特にM2などURCの未発表音源です買いませんか詐欺に使えるほど。
騙された側はそれのシングルを3万くらいで買い取ってしまうことだろう。
そういう懐古的な感じに終始するのではなく、一曲目は打ち込みフォークで折坂悠太の平成みを感じる。
「溶けだしたガラス箱」好きや五つの赤い風船「巫OLK脱出計画」ファンは必聴。
ところで、実はこの方、直接の面識はほぼないものの何を隠そう先輩である。
ただそれを抜きにしても良かったので紹介させていただいた。いえーい、見てる??