EPOCALC's GARAGE

本州一下らない音楽レビューブログ

Pet Sounds/The Beach Boys【1966】

名盤(諸説あり)

Pet Sounds (Original Mono & Stereo Mix Versions)

Pet Sounds (Original Mono & Stereo Mix Versions)

  • 発売日: 2001/02/05
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

何度か他の記事内でも言っているが、

このブログは脱R論というブログに多大なる影響を受けている。

drr.hateblo.jp

取り上げている音楽は広範にわたり、

文体も硬くなく、かといってチャラくもないので

私的お気に入りブログランキング一位に万年降臨する。

ニコ動的なシステムがあれば、もっと評価されるべきのタグをすべての記事につけたいくらいだ。

 

しかし去年か一昨年くらいに管理人さんが癌になってしまい

それ以降、少々ブログから離れ気味の様子。

記事内に有頂天の「君はGANなのだ」とか貼ってたので意外と大丈夫かなと思っていたのだが

去年の大晦日以来全く音沙汰がなく、とても不安に思っている。

早く元気になっていつものキレキレの記事を書いてくださいね。

 

 

で、この脱R論で度々上がる話題に「Pet Sounds分からねえ」というのがある。

drr.hateblo.jp

上のレビュー記事でも、明確に苦手と言っている。

なんでも超の付く名盤というよりかは微の付く妙盤らしい。

この言い回し、脱R論かこのブログ以外の音楽ブログじゃ絶対出てこないね。

 

大丈夫。こういう人、一つの市町村作れる位いるのだ。

かの村上春樹も「最初聴いたとき、そこまで衝撃を受けなかった」という話をしているし、

当時の反応もいつもに比べるとあまり良くなかったらしい。

(それでもラジオで強制ヘビロテし、リスナーを洗脳したそうな。)

しかし評論では絶対的な名盤でRYMでもRolling Stoneでも高順位。

 

その二極化した評価故にいいね!と言えば「権威に目がくらんでいる!」言われるし

駄目ね、といえば「全然げーじつを理解できてないね!」と言われる、

どういうコメントを言えば良いかわからんアルバムの一つでもある。

 

この記事ではじめて触れる人もいるだろうから、

The Beach Boysについてサクッと解説しておこう。

 

彼らはアメリカのロックバンドで、The Beatlesより古株。

今なおいるので、現存する最も古いバンドの一つでもある。

音楽性的にはサーフィン&ホットロッドという、

一言でいえば青春の夏!!!みたいなイメージの人たちだ。

Fun, Fun, Fun

Fun, Fun, Fun

  • provided courtesy of iTunes

 特徴は何といってもそのコーラスワーク

合唱風の対位法的で複雑なハモリがかなり耳につく。

また曲作りも一見素直に見えて異様で

二小節だけ転調するみたいなことが頻繁に起こる。

それもこれも中心人物ブライアン・ウィルソンによるもの。

彼らのフォロワーは特に日本に多く、大瀧詠一山下達郎細野晴臣も、

はてはCorneliusもフォロワーといって差し支えない。

海外だとクラフトワークとかもそうらしい。

まあサブカル御用達のバンドだ。

 

 

The Beach Boysはさっき言った夏!!のイメージであったものの、

The Beatlesアメリカでも売れ始めると彼らを超えるために色々試行錯誤をしはじめる。

しかしThe Beatlesはそれを簡単にいとも超えていく一方で、

どう頑張っても超えられないよ状態になったウィルソン氏は病んでいき、

結果できたのがPet Sounds

無駄にRTを稼ぐことに終始するTwitterの偽メンヘラ垢にもこの病みっぷりを見習ってほしい。

 

 

一曲目のWouldn't It Be Niceがこのアルバムで一番素直。

Wouldn't It Be Nice

Wouldn't It Be Nice

  • provided courtesy of iTunes

いつもの彼らのコーラスであるのだが、どうも暗い。

なんだか夏というより初秋の風がする曲である。

このアルバム、通しでこんな雰囲気だが、

それは恐らくウォール・オブ・サウンドを取り入れたからだろう。

フィル・スペクターがやったという、リヴァーブマシマシのアレである。

Be My Baby

Be My Baby

  • provided courtesy of iTunes

イギリス出身の奴らを超えるにはアメリカの技を使うしかないと思ったのか。

 

邦題は「素敵じゃないか」なのだが、 

皆さんご察しの通り原題は仮定法なので、

正確には「素敵だっただろうね」が良いはず。

多分それだとちょっとアレなのだろう。

一回仮定法で歌詞全訳したことがあるのだが、かなり絶望的になった。ヤンデルネー

 

 一時期はやった陽だまりの彼女で取り上げられたので

陽の者にとりあえずBeach Boys勧めるときにはこの曲を使おう。

 

 

陰の者はGod Only Knows好きなのが相場だ。

God Only Knows

God Only Knows

  • provided courtesy of iTunes

 コーラス少ねー!

その代わりにかなり充実している後ろのホーン隊。

ほとんどバンド関係なくなっているがゆえ、

ブライアン・ウィルソンのソロと言われることもままある。

後から入ってくるコーラスも輪唱のようで不思議な感じ。

フリッパーズ無許可サンプリングしたことでも有名だね。

 

 玄人好みなのがCaroline, No

Caroline, No

Caroline, No

  • provided courtesy of iTunes

かなーりスローテンポな一曲。これまたコーラスが少ない。

 こういう緩い曲が多いので、Pet Soundsは硬派なロックを好む人に受けが悪い印象。

でもこんな雰囲気、最近のシティポップ的なものに多い気がする。サックスの感じとか。

 

 

まあ、聴いてもらった感じで分かると思うが

賛否両論あるのもなんかわかるアルバムである。

 

この後、これに触発されたBeatles例のサージェント・なんだか・かんだかを発表。

  これは正直過大評価臭いな~と思っていたが、

レコードで聴いたら分かった。めっちゃ音良いわ。

丁寧な音作りというのがPet Soundsに通じるのかもね。

 

当時からこのサージェント・うんぬん・かんぬんは評価され、

後の「アルバム一枚で一作品」の理念を生み出したマイルストーンであるね。

 

さて問題は、これを聴いた米ロック界のヤンデレ*1ブライアン・ウィルソンの体調である。

案の定正気を保つことができず、次なるアルバムSmileで同じパートを複数曲に出すという

クラシックの交響曲を応用した手法で曲作りをすることにした。

だが結局あまりに複雑すぎて(本当に)発狂し、頓挫してしまう。

ちなみにそのアルバム中に入るはずだったのが、かの有名なGood Vibrations。

 

Good Vibrations

Good Vibrations

  • provided courtesy of iTunes

 正直Beatles越えしている気がしてならない曲である。

この曲を聴くとサビでAメロがハモるような構造になっていたり

全く毛色の違うパートが差し込まれていたりと

なんだかクラシック的なことをガンガンやっている。もはやプログレ

 

 

Smileは長らく封印状態だったが、

21世紀になってから実際に蔵出しされた。

正直万人受けしそうだし、色々面白いことやっているし、コーラスもあるし、

ちゃんと発売できていればPet Sounds越えしていた気がしてならない。

というかPet SoundsはSmileのための布石であって、

結局家が建たなかったので土台を有難がっているような感じがする。

だから賛否入り乱れるのだろう。

 

 

 

これは僕の個人的な見解に過ぎないのだが、

なんかね、Pet Soundsって人生追い込まれた時に聴くと良いと思うヨ。

僕の場合は受験失敗を含め数多の災難が一気に来た時があり、

その時「ああ、めっちゃ良いな・・・」と思いつつ一人公園で泣きながら聴いた覚えがある。 

それ以降大好きなアルバムなのですよ。うん。

 


The Beach Boys - Wouldn't It Be Nice (Original Video)

*1:英ロック界はシド・バレット

Marooned/Larry Lee【1982】

ドライブしながら聴きましょう

Marooned by Larry Lee

Marooned by Larry Lee

 

 

”Big In Japan”という言葉があるそうだ。

 日本でだけやたら流行る洋楽音楽家のことを指すらしく、

若干揶揄の意味が込められている。

ja.wikipedia.org

 

この中にはランナウェイズイアン・ギラン・バンドなんかが入るらしい。


The Runaways - Cherry Bomb

 

色々聞いてみたが、なんかちょうどそのころ日本で似たような音楽が流行っているときに

海外で偶々似たようなことをやっている人が売れるような気がする。

 

また、メロディが分かりやすいものも売れやすい気もする。

プログレだとELPなんかも割と他の地域より売れてたようだ。

 この手のインスト主体のバンドが日本では意外と売れるらしい。

ベンチャーズの続き、YMOの前という系譜かもしれないね。

 

で、今回紹介するLarry LeeのMaroonedもBig In Japanの一つ。

日本でやたらめったら見かけるが、本国ではどマイナーアルバムである。

 

Larry Leeはカントリーバンド、The Ozark Mountain Daredevilsのドラマーで中心人物だったらしい。

Jackie Blue

Jackie Blue

  • オザーク・マウンテン・デアデヴィルス
  • ロック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

ドラマーがリーダー格というのも珍しい気がする。

プロデューサーはかのイーグルスの担当でもあったようで、

それ故にそこそこの人気はあったらしい。

 

またカントリーといえど都会的な曲が多いのも特徴。

If I Only Knew

If I Only Knew

  • オザーク・マウンテン・デアデヴィルス
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

AORを先取りしていた、なんて言われることもある。

Maroonedはそんな都会的な面が前面に出たようなアルバムである。

 

一曲目からもう飛ばしていっている。

 


Larry Lee - Waiting To Let Go

全然カントリーじゃねえ。

ウォールオブサウンドを彷彿とさせるわしゃわしゃ感と

メロやギターの爽やかさが合いまって

君は天然色」の様な突き抜けっぷりである。

日本の夏もこういうからっとした感じだったらよかったのになんて思ってしまうネ。

 

一番有名なのはシングルにもなった"Don't Talk"

 


Don't Talk Larry Lee

 引き続き爽やかウォールオブサウンド

そしてここでは歌詞に"A Long Vacation"というワードが出てきており、

100匹目の猿現象が起こっている。

 

AORのコンピにもよく入っているのだが、

AORというとスティーリー・ダンだとかクリストファー・クロスだとか、

落ち着いて洗練された曲が多いので、

底抜けに明るいアメリカンポップス風のこの曲は

大抵コンピの中で洒落たバーにアロハシャツで入っちゃった人みたいになっている。

 

 

 

このアルバムの凄いところは捨て曲が一切ないところ。

この調子でずーーっと続いていく。

 
Larry Lee - Marooned

ちなみに、レコーディングメンバーがかなり錚々たる顔ぶれ

Chcagoのビル・チャンプリン、TOTOデヴィッド・ハンゲイト、The Bandのリック・ダンコ、

The BeatlesThe Whoでピアノを弾くニッキー・ホフキンスまでいる。

これだけ集まって全米80位代だったそうだ。何故だ。

しかし日本ではシティポップに音楽性が近しいことに加え映画で使われたこともあり、

かなーり売れたらしい。

まさにBig In Japanである。

 

そしてこのアルバムの独特な点はその商法にもある。

まず鈴木英人のジャケが爽やかだが、じつはコレ差し替え

差し替え前はLarry Lee本人が微笑みながらこちらを見るというもの。

 

 

f:id:EPOCALC:20200601164559j:plain

 

中身AORなのにジャケだけカントリーである。

さすがにこれでは売れないと思ったらしい。

 

さらにアルバム名まで変えた。

その名も「ロンリー・フリーウェイ」。

f:id:EPOCALC:20200601164912j:plain

Maroonedの一言も入っていない

というか鈴木英人だけ見て決めたと思わしきアルバム名だ。

さらに、シングル曲Don't Talkの題を"ロンリー・フリーウェイ"と変更。

もう何の跡形もない。

この手のジャケ変更はAORによくあることなのだが、

その中でも特にひどい例としてこのアルバムが挙げられる。

 

最後にこのアルバムの帯文句で締めくくろうと思う。

 

 

フリーウェイを駆けぬける真紅なキャディ、、まぶしい午後の乾いた心・・・。
気ままにアクセルを踏み、ラジオのボリュームをめいっぱい上げる。

音が流れ、青空にとけ込んでいく。なぜか淋しげ、ひとりぼっちのフリーウェイ。

 

 

ダッセ~!!!

 


Larry Lee - Number One Girl (1982)

awakening/佐藤博【1982】

Awakening(覚醒(目覚め))

 

アウェイクニング スペシャル・エディション

アウェイクニング スペシャル・エディション

  • アーティスト:佐藤 博
  • 発売日: 2014/12/10
  • メディア: CD
 

 

 先日、みんな大好きTHE1975の新譜が出た。

Notes On A Conditional Form [Explicit]

Notes On A Conditional Form [Explicit]

  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

THE1975といえば、あのクッソダサい印象的な題名でも有名だが、今回は和訳すると「仮定形に関する注釈」らしい。

回を追うごとに毒っ気が抜けていって寂しい気もする。

 

このアルバム、僕もサブスクリプションで聴いてみたのだが、結構僕の好みに合っている内容。

今までのTHE1975は評論で大絶賛されていても、「そんなに言うほどか??」という感じでピンと来ていなかった.

が、これはAORアンビエント等好きなジャンルのリファレンスが多く、ガレージやパンキッシュな曲も好きなタイプなものだったので好感触。1stと同じかそれ以上にお気に入りのアルバムになりそうだ。

ただ正直長いかな。半分にしても良かったかも。

 

で、他の人の評論的にはというと見た限りイマイチ

ジャケや雑多感からビートルズホワイトアルバムと連関させる意見もあったが、絶対にキャリア史上の名盤にはならないという声が多数。

なんだかTHE1975に関しては周囲の意見と一致しなくて哀しい。

 

で、このアルバムを課題やりながら聴いていたのだが、ある曲のサンプリングで笑ってしまった。

Tonight(I Wish I Was Your Boy)である。

Tonight (I Wish I Was Your Boy)

Tonight (I Wish I Was Your Boy)

  • provided courtesy of iTunes

 これ思いっきり佐藤博じゃんwwwwwと一か月ぶりぐらいに大笑いしてしまった。

 

というわけで、今回はTHE1975の元ネタ・佐藤博について迫っていきましょう。

 

 

佐藤博日本ポップス界を代表する鍵盤奏者で、坂本龍一と双璧をなし、山下達郎のバックバンドのメンバーであったなど多くのミュージシャンの名盤に参加した凄腕ピアニストである。

 演奏例:

論寒牛男

論寒牛男

  • 大滝 詠一
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

さらに、佐藤博の凄いところはピアノを20歳から始めたということ。

中学生の頃からギターやドラムなど多くの楽器に触れていたらしいのだが「編曲に向くのはギターじゃなくて鍵盤だ!」と思い、一番得意だったはずのギターを差し置いてピアノを極めた変人である。

 

その際ジャズの理論で勉強したからだと思うのだが、多くの鍵盤奏者がクラシックがルーツなのに対し非常にジャズ的な演奏をしたためジャズっぽいフレージングが必要なシティポップで重宝された人材であった。

そんな逸材を隙あらばバンドを組む細野晴臣が放っておくわけがなく、当時企画していたYMOのメンバーとして彼を誘ったそうだ。その為彼を横尾忠則のように「幻のYMOと呼んだりもする。

 

しかし誘われているにもかかわらず彼は渡米。やはり変人。

そして帰国後作り上げたのが、今回取り上げる名盤"awakening"

かの冨田ラボなど、多くの人に影響を与えている。

 

 

 一曲目はタイトル曲

AWAKENING(覚醒)

AWAKENING(覚醒)

  • 佐藤 博
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ピアノの素敵な小品。

なのだが、いかんせん題名が面白すぎる。 

この曲、awakeningと書いて覚醒とルビを振り、目覚めと読ませるのである。

毒薬 ポイズン 前科 まえ  とかがかわいく思えてくるレベルの当て字。

これを昔Twitterで呟いたら、なぜか人気のVtuberがいいねしてくれた。何故。

 

 次のYou're My Babyからが本番。

YOU'RE MY BABY

YOU'RE MY BABY

  • 佐藤 博
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 プロフェットやジュピターな音が素敵。

溌溂としたAORや踊りたくなるようなディスコと結びついた他の元気のよいシティポップとは一線を画す、アンビエントの佇まいを持ったからっとした夏の浜辺の様な曲である。

 また、この曲の凄い!と言われる点はかなりリアルな打ち込みドラムでかのポンタ氏に「これ誰が叩いてるの?」と勘違いさせたほど。

ポンタ氏のポンコツエピソードに挙げられることもあるが、この曲相手じゃ勘違いしても致し方がない気がする。

 

冨田ラボ氏はI Can't Waitに衝撃を受けたそうだ。

I CAN'T WAIT

I CAN'T WAIT

  • 佐藤 博
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

これはYoutubeに佐藤さんがテレビ出演したときの動画が上がっているのだが、服装がなんだかマジシャンみたいで集中できない。

 

そして色んな楽器を弾きまくる。なんだこの人。

編曲もDX7版になっていて、ちょっと元と違う印象。

こちらのバージョンはなんだか最近のトラックメイカーの作品っぽく、現在のシーンにも物凄い影響を与えているんだなあ、と実感。ドリカムの中村氏に打ち込みジェダイマスターと言われただけある。

 

THE1975の曲で使われたのはSay Goodbye

SAY GOODBYE

SAY GOODBYE

  • 佐藤 博
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

僕もこの曲がアルバムの中でも1,2を争うほど好き。 

イントロの無作為な感じのシーケンスパターンやボコーダーとかのテクノ音楽的な要素とギターカッティングやコーラスワークのようなシティポップ的要素が絡み合い、YMOとナイアガラの幸福な融合に思えてくる。

そしてカッティングめっちゃいいな~とか思っていると山下達郎だったりする。あなたのそばにいつでもタツロー。

佐藤博が実際YMOに入っていたら、増殖がこんな感じのシャレオツアルバムになっていた気がするね。

 

 

さて、最近の洋楽による邦楽のサンプリングは増えてきており、

タイラー・ザ・クリエータヴァンパイア・ウィークエンドが邦楽をサンプリングしたのも記憶に新しい。

2021

2021

  • provided courtesy of iTunes

しかしこれらの曲を聴いたとき、THE1975のように笑うことはなかった。

なんだかTHE1975の曲はVaporwaveのパロディであるように感じたのだ。 

また他の曲もなんだか色んなジャンルのパロディのように思える。

このことから、あのアルバムは現在の音楽シーンの図鑑を作ろうとしたのではないか?というように思う。

やはり先に言った通りホワイトアルバム的である。

しかし二枚組で飽きることのないホワイトアルバムとは対照的にもっと削れたのでは?という声が出てくるのは、THE1975の問題というよりも音楽シーンが画一化されすぎているということの証左なのかもしれない。

 

 

...なんだか佐藤博のレビュー記事のはずなのにTHE1975のレビューみたいになってしまった。

これではいけない。えっと、まあ、その、

佐藤博最高!!!!

 


Hiroshi Sato 佐藤博 - Say Goodbye セイグッバイ

 

 

 

All Vacation Long/Pictured Resort【2016】

世界よ、これがシティポップだ。

 

ALL VACATION LONG

ALL VACATION LONG

  • アーティスト:PICTURED RESORT
  • 発売日: 2016/08/10
  • メディア: CD
 

 

先日、とあるポッドキャストに出させていただき、

そこで諸氏と「シティポップとは何ぞや」という非生産的極まることについて

あーでもない、こーでもないと話した。

 

その一応の流れとして出てきたのは、

「今シティポップと言われているものは80’sのそれではないよね~」

という話。

 

これは常々僕が思ってきたことである。

 

 

最近リヴァイヴァルしているというシティポップを見返してみると、

Plastic Loveだとか、Sparkleだとか、

クラブでかかっているようなものばかりであり、

それに呼応するかのようにシーンにおいても

ディスコでノリノリなリズム重視の奴が

「シティポップ・リヴァイバルだぁ~!!」と言ってもてはやされている。

reiji no machi (feat. イノウエワラビ)

reiji no machi (feat. イノウエワラビ)

  • パソコン音楽クラブ
  • エレクトロニック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

そうでなければ、環境音的な味付けを施したもの。

こっちは恐らく佐藤博とかの影響である。

Kiss In KIX

Kiss In KIX

  • Tsudio Studio
  • J-Pop
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

 

しかし!!!!!

小学生のころからシティポップを聴いてきた我々は騙されないぞ!!!

 

そもそも、そういう曲の呼び方はニューミュージックが一般的で

シティポップはメジャーな名前じゃなかったこと!!!

何より、ディスコや環境音楽風のシティポップだけじゃなく

AOR、歌謡曲的なシティポップもあったこと!!!

そしてそれが主だったこと!!!

竹内まりやと言えば「けんかをやめて」と「」だったこと!!!


駅 - 竹内まりや

 

 

 

また、同様の理由からか、シティポップで山下達郎と双璧をなす大滝詠一

正直そんなに取りざたされない状況である。

 


大滝詠一 恋するカレン LIVE音源

 

 

このリヴァイバルはシティポップの素晴らしい側面をかなり削ぎ落している感があり

なんだかなあ、という感じがしてしまうのも事実である。

 

そんな中、大滝詠一的な手法で立ち向かうバンドがいる。

我らがPictured Resortである。

 

 

Pictured Resortは大阪のバンド。

ジャンル的には一応ギターポップらしいのだが、

ネバヤンやヨギーがシティポップと偽れる言えるなら、

この人たちはギターポップとかいうより断然シティポップである。

 

しかも音楽性も、先述の通り80’sのあの感じそのものであり、

リヴァイバルで削ぎ落されてしまった部分をうまく拾い上げているイメージ。

第一、1stアルバムタイトルがAll Vacation Longというのが好感が持てる。

もろロンバケやんけ。

 

 

一曲目は"Good Weather"からスタート。

Good Weather

Good Weather

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 もうね、最初のリードギターだけで泣けてくる。

これだよ、今のリヴァイバルに求めていたのは!!!

 

プロフェット系のシンセ歯切れのよいカッティングに、

サイダーの様な爽やかメロディが乗っかる。

細野晴臣大滝詠一を再融合させた雰囲気。

また、ギターポップよろしくボーカルがウィスパー気味で

それが爽快感に拍車をかける。

ギターポップとシティポップの理想的なドッキングでもある。

 

一応これに合わせて踊れなくはないが、

四つ打ちで強制的にガンガン踊らせようとする昨今の曲とは違い、

ナイアガラ系に通じるノリの良さ

クラブでガンガン頭を振るような感じではなく、

ベランダで揺れるように聴く音楽という趣。

出かけるのも億劫な文化系の僕はこういう曲の方が好き。

 

 

二曲目も素晴らしいのですよ。

Away To Paradise (Classic Beach Ver.)

Away To Paradise (Classic Beach Ver.)

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 もうね、カッティングギターをこれほどに上手に使った曲って

この10年でこれくらいだと思うヨ。

 

動的なギターに対比されるような静的なキーボードの音作りも絶品で

泣けるね。泣けるキーボードランキング一位ですよ。*1

 

この後にも、インスト・歌もの含め色々続くが、

全部必聴の名曲と言って差し支えない。

なんでこんな凄いのがメジャー流通じゃないのかよく分からないレベル。

 

Electric Birdland

Electric Birdland

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes
Picture Of You

Picture Of You

  • Pictured Resort
  • ポップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

全編を通して言えることは、

あからさまにクラブ・ディスコ向けにチューニングされた曲はなく、

かといって環境音楽によることもない、

純粋無垢のシティポップである。

 

もうPicture Resortって最高すぎてですね、

この人たちをいかに再現するかが僕の現在の課題です。

もっと売れてほしい。

 

去年、2ndアルバムも晴れて発売され、インタビューも公開されていた。

 

mikiki.tokyo.jp

これによると、かなり頻繁に引用をするようで、

大滝詠一に通じる音楽性はこの手法によるものかもしれない。

 

 

ちなみに、同様にリズム型でも環境音楽型でもないシティポップ人に

Pictured ResortのいるSailyardの姉妹レーベル、

Local VisionsHIRO.JP氏がいる。

 

こっちはremixとかで一応Future Funkも取り上げているものの謡曲で、

ディスコやハウス等テクノ中心のトラックメイカー界でかなり浮いている。

そしてやはり大滝詠一パロのアルバム名。

この方もなかなかのチャレンジャーである。

両者とも、今まであまり注目されてない形のシティポップを盛り上げてほしい。

 

 

www.youtube.com

 

 

*1:二位はINOYAMA LAND

Viva/La Dusseldorf【1978】

Viva クラウトロック

ヴィヴァ <Progressive Rock 1300 SHM-CD>

ヴィヴァ

 

 若者というのは常に大人に反抗しようと試みるものだ。

そんな反抗・反駁の繰り返しによって歴史ができてきたのは言うまでもないネ。 

 

音楽だってもちろん例外ではなく、

パンクに代表されるように、

旧世代のシーンにかみつくことによって

新ジャンルがポコポコと生まれるのである。

 

そういう音楽ジャンルは、時代を下るにつれ

どんどん「未来への絶望度」が高まっている気がする。

パンクを例に挙げると、

有名なピストルズGod Save The QueenのNo future連呼が思い出される。


Sex Pistols - God Save The Queen

No Future For You!

 

 

最近はやりのVaporwaveも「過去の懐古」という側面があり、

「未来に希望があった時代への憧れ」があるというのは常々言われていることである。

 

しかし、今回注目したいのは反駁されたサイドの音楽、

プログレからの返答である。

 

 

さてパンクの成立経緯をおさらいすると、

権威的・超絶技巧的なプログレに対して、

どんな人でもすぐ演奏できる音楽を!

ということで生まれたのだった。

 

 ↑楽器始めたての人がこんなことできっこないわけで。

 

 パンクが出てきて、プログレサイドの人たちはどうしたかというと

ニューウェーブに寝返ったり、AOR等産業ロックに手を染め始めた。

 


Asia - only time will tell

あの日の影はどこへやら。

 

しかし、プログレの中でも異質なあいつらは何とパンクに反抗した。

 それがクラウトロックの雄・La Dusseldorfである。

 

 

このバンドはNEU!の片割れ・クラウス・ディンガーのバンド。

例の8つ打ち・ハンマービートの上に歌やシンセと言った上物がのっかり

後期NEU!的な雰囲気が終始漂う。

と言うか、ほとんどNEU!のメンバーと同じらしい。

主要な一人が抜けたから名前を変えたようだ。

どっかのキリンジとは大違いである。

 

上の曲は1stアルバムの曲であるのだが、

2ndアルバムVivaが最も評価されている。

1stと2ndの間に例の拳銃sがアルバムを出すのだが

先述の通り、それへの回答となっていると言われている。

 

一曲目はタイトル曲からスタート。


La Düsseldorf - Viva

Viva!」と絶叫するボーカルに

なんだか統率が取れてるんだか取れてないんだか分からないlo-fiバンドが続く。

歌としては「地球人達よ、愛こそ生命なんだ!!」とか言ってるらしいです。

出だしからこのアルバムを象徴するかのような「躁」の曲で

鬱屈した英国パンクに食ってかかっている。

まあ、失恋してHallo Galloなる謎曲を生み出し、

その後も未練たらたらの歌を歌っていた人に言われると少しアレだが。

 

(多分これ失恋歌

 

このバンドで一番売れたシングルは3曲目のRheinitaらしい。


La Duesseldorf-Rheinita

7分間同じような展開が続くアンビエント的な曲である。

一応NEU!印のハンマービートがてくてくと続いているが、

正直あんまりNEU!感はない。

やっぱりギターも少しは欲しい。

 

A面にはこのような小品が収められているが

このアルバムの存在意義はB面である。

B面にはプログレらしく一曲のみ収められており、

その曲名はCha Cha 2000。


La Düsseldorf - Cha Cha 2000 (long version)

テーマは2000年代への希望。

明らかに「未来なんかねぇ~!」と言ったピストルズを意識している。

曲としてはピアノが割と全面であるものの

NEU!的なギターも聴け、

アンビエント過渡期を感じさせて面白い。

時折入る語りは英独混交

「未来が呼んでいる!」

「未来に向かって僕と踊ろう!」

「目を開いてごらん、楽園だ!」

「僕らがすべきなのはCha Cha Cha・・・」

みたいなネジが吹っ飛んだように陽気なものから

「過度の飲酒・喫煙・ドラッグ依存はやめましょう」

「貧しい人と分かち合いましょう」

みたいな道徳の教科書じみた文句まで様々。

こんな吹っ飛んだ人にドラッグ依存を指摘されても。

 

 

しかしこの20分の大作は凄まじく、

強制トリップさせられるという声が多数。

また、未来を手放し褒めているというよりかは

ちょっとディストピア的楽園感がある。

 

 

このアルバムは英米の主要ミュージシャンにも受け入れられ、

パンク後のニューウェーブとかに影響を強く与えている。

その中にはピストルズのメンバーによるP.I.L.も含まれているので

カリフォルニアロールみたいなことになっている。

 


Public Image Ltd.- Albatross

さっき言ったCha Cha2000の様なディストピア感もニューウェーブに強くみられるネ。

 

 

ちなみにLa Dusseldorfは度々来日しており、

1996年にはCha Cha2000を三時間以上ぶっ続けでやるという

狂ったライブを行ったそうだ。

このライブ盤はCD2枚組に収録された。

たま~に売られているので気が向けば買ってみてください。

僕は地元で一回だけ売ってたのに、逃してしまったのを後悔中です。

 


La Düsseldorf VIVA on TV 1978

 

ⒸEPOCALC